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SWITCHING!?


「おはようございます」
ファミリーレストラン「ワグナリア」の厨房に向かって挨拶する。
もはや学校生活と同じくらい日常の一部となったバイトの時間の始まりだ。
健全な学究の徒としていかがなものかと思われるが、自分の生活と将来のためだから致し
方ない。
「あ……、かたなし君。お、おはよう」
「おはようございます、先輩」
そんなやや乾燥気味の生活サイクルに一つの潤いを与えてくれるのが、この種島先輩。
なんてったって、小さい。とにかく小さい。
何を食べたらこんなに小さくなれるのか、調査して今すぐうちの家族にフルコースで振る
舞いたいくらいのミニサイズだ。
「? どうかしましたか、先輩?」
「べ、別に、なんでも……」
なんだか、妙におどおどしているというか、警戒されているような。また何か隠している
のかな?
「まあいいか、今日もよろしくお願いしますね」
胸より下、ちょうどいい位置にあるポニーテールの頭をぽんぽんと撫でる。
ああやっぱり可愛いな先ぱ
「い……、いやあああぁぁぁーーっっ!!」
「ゴふっっ!?」
次の瞬間、斜め下からかち上げるような正拳突きがみぞおちを貫いていた。
身長の3乗に比例して少ないはずの体重で、しかし砲丸のように重たい見事な一撃。
ああ、伊波さんには顔を殴られてばかりだったから腹は鍛えてなかったなあ……などとぼ
んやり考えながら崩れ落ちる。
「せ、せんぱい……、いきなり何を……」
「怖い!」
腹を抱えて鈍痛に悶える俺を、固めた拳をわななかせて見下す先輩のほうが怖い。でも可
愛い。怖カワイイ? いかん、思考が乱れてきた……。
「もう、いきなり頭なんか触んないでよ! かたなし君のバカーっ!」
涙目で叫ぶと、先輩はパタパタと走り去ってしまった。



「そ、んな……」
殴られたダメージよりもよっぽど衝撃的な一言に、ついにガクリと膝を落とした。
先輩に、嫌われた? あんなにきっぱりと拒絶されるなんて……。

「いったい、どうして……」
「わっ、小鳥遊君、大丈夫!?」
ぽろぽろと涙を流していると、背後から伊波さんの声がした。
「いえ、けほっ、身も心も全然大丈夫ではないんですが……えっ」
ふっと気配が近づいたかと思うと、伊波さんは俺の腕をぐっと抱えて、起き上がらせてく
れた。
「ちょ、なっ、なっ」
「小鳥遊君……」
殴られる、と咄嗟に身構えたが、
「もー、いったい何があったの?」
……拳は飛んでこない。
なんだか今日の伊波さん、やけに落ち着いてないか……?
「あ……、いや、その、先輩の頭を撫でたら、なぜか思いきり殴られて……」
「それは殴られるよ……。種島さん男嫌いなのに」
「………………は?」
様子がおかしいだけかと思ったら、何を言ってるんだこの人は……?
「でも、種島さんのパンチ食らってももう平気みたいだね。やっぱり小鳥遊君は強い子だねっ」
「……伊波さん、伊波さんですよね?」
「もー何言ってんの小鳥遊君ったら」
バシッと胸を叩かれる。
おかしい。何もかもが全力で間違ってる。
少なくとも、俺の知ってる伊波さんは男の近くでこんな朗らかに「えへへ」と笑ったり
なんかしない。
いや、間違っているというより……。



「伊波さん、ちょっと……」
「なにー?」
無邪気に顔を寄せてくる伊波さん。ああもう違和感。
深呼吸をひとつ、意を決して恐る恐る伊波さんの頭に手を伸ばし、撫でる。
「わ。もう、私のほうがお姉さんなんだから、子供扱いしないでよー」
……ここまでしても怒らない。それどころか、まるであやされる子犬のよう。
「これは、まさか……」
「?」

「伊波さん、お客さんがお呼びです」
「あ、はーい。今行くね」
山田に呼ばれて、伊波さんはフロアに駆けていった。
「……気づきましたか、小鳥遊さん」
「ああ。だがその前に言っておくが、ナチュラルに人に仕事を任せるな山田」
「さすが小鳥遊さん、夢の中でも手厳しい……」
「当たり前だ……。って、夢?」
「そうです。これは小鳥遊さんが見ている夢なんです。この夢の中では、なぜか皆さんの
性格、というよりキャラが入れ替わってるんです」
「ああなるほど、身も蓋もないオチだな……」
まったくろくでもない。が、確かにそう考えればあの二人の行動は納得がいく。
「ちょっと待て、夢なのになんで殴られた腹がこんなに痛むんだ」
「そんなこと山田は知りません」
くそ、妙なところでリアリティのある……。

「ん? 皆さん……、ってことはまさか他の人も」
「そうですよ、ほら」
山田が指差した先、そこにはチーフが、……のんきに生クリームをすすっていた。
「チーフ……、何やってるんですか」
「ぅぅ、甘い……。あ、あら、小鳥遊君。何って、仕事してるのよ。チーフは仕事しない
のが仕事なんだから……けほっけほっ」
店長と入れ替わってるのか……。ていうか、なんか無理してないか?



「八千代」
休憩室から店長が出てきた。すすすとこちらに近づいてきたかと思うと、チーフにぴたり
とすり寄った。
うわあ、いつもと立場が逆転しただけだけど、なんか絵的に非常にきつい……。
「なんだ小鳥遊。文句か」
「何も文句はありません逆らいません刀をしまって下さい」
って帯刀まで入れ替わってるのかよ! この人にこんなもん持たせたら始末に終えないじ
ゃないか……!
店長はフンと鼻を鳴らすと、腰元の鞘に日本刀を納め、またごろにゃんとチーフにすり寄る。
「杏子さん……。……はっ、駄目よ私ったら」
至福の表情で店長を抱き寄せていたチーフは、気を入れなおしてキッと店長を睨んだ。
でも顔は赤い。
「ゴホン。杏子さん、私にパフェを作って、くださ、……くれ」
「………………わかった」
自分の役柄を思い出して、厳しく店長に命令するチーフ。
対して店長は、実に渋々といった様子でチーフから離れて調理台に向かった。
「ああ、杏子さんが私のために……」
申し訳ないやら嬉しいやら、チーフは複雑な表情でそれを見守る。
のろのろとパフェの材料をかき集め、いざ調理台に立った店長は、……そのまま固まって
しまった。
ぐー、と響く、心もとない腹の音。
「きょ、杏子さん……」
「だ、大丈夫だ八千代、パフェくらい簡単に……」
言いつつ、コーンフレークの開封口に手を差し入れかけている店長。いや、よく耐えてい
るほうだと思う。本気で。

店長が、己の食欲と戦い作業は何も進まないこと数分。
「…………やっぱりダメ! 杏子さんが料理するなんて! 私が作って、杏子さんがそれ
を食べなきゃ駄目なの!!」



チーフは、どいてくださいっ、と店長をはねのけるように調理台に立つと、ものの数秒で
特大サイズのフルーツパフェを作り上げた。
「どうぞ、杏子さん……っ」
「うむ」
満面の笑顔でパフェを差し出すチーフと、もの欲しそうな餓鬼(ああ、ぴったりの言葉だ
な)の顔つきで早速それをぱくつく店長。
チーフの愛が、世界の掟(ルール)を打ち破った瞬間だった。
「ていうか、これじゃいつもと変わりないじゃないか……」
「そうですね」
「ずいぶんといい加減な夢だな、おい?」
「だから、山田は知りません。自分の頭に文句言ってください」
まったくだ……。どうしたんだろ俺。やっぱ疲れてたのかな……。

「何遊んでんだ小鳥遊、山田」
「佐藤さん。いえ、ちょっと店長とチーフが……」
「あ? ……いつも通りじゃねえか」
いや、今はね。
「山田、これ3番テーブル」
「えー」
「えーじゃねえ。さっさと行け」
 不承不承といった様子で仕事に戻る山田。
「お前もさっさと仕事しろ、小鳥遊」
「あ、はい、すいません」
よかった。佐藤さんはまともぽい……。
「じゃあ早速、あそこのゴミ出しといてくれ」
「……は? いや、俺皿洗いありますし、キッチンで出たゴミはキッチンの人が出すのが……」
「そうか、仕方ないな」
佐藤さんはふー、と溜息をつくと、ぴらりと一枚の写真を取り出した。



「ってまさかその写真は……!」
「察しがいいな小鳥遊……。ほんとにびっくりするくらい女の子だな、お前の幼少期は」
「か、返してください!」
取り返そうと手を伸ばすが、あっさりと身をかわされる。
「というわけでだ。よろしく」
くそ、相馬さんに比べて実に率直に脅してくる……。感心すべきかせざるべきか。
「ふふ……、しかし甘いですね佐藤さん」
「何?」
「これはあくまで夢の中なんですよ。いくらここで俺の悪評が高まろうとも、現実の人間
関係には何の影響もない! 一時の恥に耐えれば済むことです。だから、そんな脅しには
屈しません!」
俺は高らかに言い放った。佐藤さんはいつも通り少しも表情を動かさないが、反論も出来
ない様子だ。勝った……!
「……ふぅ、そうか、仕方がない。じゃあこの写真は種島に見せてくるか」
「え……?」
「ただでさえ今は男嫌いの種島だ。この上小鳥遊が女の子の服を着て喜ぶようなちょっと
お近づきになりたくない人だと知ったら、どうなるだろうな」
こ、この人は……。
「どんな目でお前を見て、どんな言葉をお前に浴びせるんだろうな、お前にあんなに懐い
ていた種島が……。夢の中の事とは言え、現実のお前はその記憶を引きずることになる。
お前はそれに耐えられるかな……?」
脅迫という武器を手に入れると、ものすごく普通に嫌な人だ……!
「…………行ってきます」
「おう」
涼しい顔の佐藤さんに見送られつつ、水物が多くてクソ重たいゴミ袋を3つ担いで店を出た。
もうやだ、こんな夢……。

一方、相馬さんは真面目に働いていた。




「はあ、いつになったら覚めるんだこの夢……」
ゴミ袋を収集かごに放り込んで、深く溜息をつく。
そこにひょっこり現れたのは……。
「……先輩」
「か、かたなし君……。さっきはごめんね……」
先輩はこちらを警戒しつつも、ぺこりと頭を下げて謝ってくれた。
「いえ、俺がいきなりあんなことしたのが悪いんです。こちらこそ、すみませんでした」
俺も、深く頭を下げる。
そういえば、現実の先輩とケンカなんてしたことなかったな……。
はちゃめちゃな夢だけど、これはこれでいい体験だったのかもしれない。
「……えへへ、仲直りだね」
顔を上げた先輩は、照れくさそうに顔いっぱいの笑顔を浮かべた。
「……ああ! やっぱり先輩可愛い!!」
こんな笑顔を前にして、我慢できるはずがない!
「ひっ……、きゃああああああぁぁっっ!!!」
思わず抱きつこうとした俺の顎に、先輩のアッパーカットが見事に炸裂――

「うっ、うぅぅ……。はっ」
「あら、起きた宗太? なーんか、だいぶうなされてたわよ?」
「……それはお前が人の顎蹴り上げてるからだとは思わんのか」

「あ、おはよー、かたなし君っ」
「お、おはようございます。先輩……」
「? なんでそんな遠くから挨拶するの?」
「おはよう種島さん。……と、小鳥遊君」
「あ……、伊波さん。ちょっといいですか?」
「何……、ひっ!?」
近づいてきた伊波さんの隙を突いて、思うさま撫でてみた。あ、夢の中と感触がいっしょ
「キャーーーーーーッッ!!!」
次の瞬間、過去最高レベルのパンチをお見舞いされた。軽く宙に浮いたかもしれない。
「よかった……。殴られた……。現実だ……」
「か、かたなし君……?」
「小鳥遊……。最近のお前の変態具合は目に余るものがあるぞ」
2006年12月12日(火) 16:33:18 Modified by ID:Bgf4UKA6nQ




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