BBSPINKちゃんねる内で発表されたチャングムの誓いのSS(二次小説)を収集した保管庫です

   チャングム×ハン尚宮  済州島日記〔1〕       見習尚宮様


 ハン尚宮とチャングムは謀反の濡れ衣を着せられて宮中を追われ、奴婢として済州島に送られた。
厳しい拷問を受けて体の衰弱が激しかったハン尚宮は、チャングムに背負われて瀕死の状態で島に到着したが、
チャンドクという医女の適切な治療のお陰で一命を取り留めることができた。

チャンドクは非常に優れた医女であるという評判で、その名声は済州島のみならず
漢陽の都にまで聞こえていたが、宮中の医女長として迎えたいという再三の要請にも
「死んだことにして下さい」と、まるで人を食ったような返事で全く取り合わなかった。
奴婢であっても優秀な医女であれば宮中に配属されると知ったチャングムは、
希望の光を見出し、母やハン尚宮そして自分を貶めた者達に復讐するため
医女になっていつか宮中に戻ると心に決め、自ら志願してチャンドクの弟子になった。
 ハン尚宮は、チャンドクの薬房でチャングムが献身的に看病した甲斐もあって
徐々に体力が回復し、その料理の腕を見込まれて済州牧使の屋敷で住み込みの
使用人として働くことになった。
ハン尚宮とチャングムは違う道を歩むことになったが、互いの身を案じながら
新しい土地で懸命に生きていた。


ある日チャングムはチャンドクの遣いで牧使の屋敷に行き、ハン尚宮に一目会いたい
と姿を探して裏庭に回った。ハン尚宮は洗濯をしていたが、時々体が痛むのか
辛そうに手で叩いたりしていた。その背中を見ながらチャングムは、スラッカンで
2人で並んで料理をしていた頃の光景を思い出し、また濃緑の最高尚宮の制服に身を
包んだ、ハン尚宮の美しく威厳に溢れた姿を思い出して涙が溢れてきた。
 気配に気づいたハン尚宮が振り返ると、チャングムは慌てて涙を拭って近寄った。

「尚宮様、私もお手伝いします」 
「もう終わったから大丈夫よ」とハン尚宮は優しく制した。
「尚宮様のお体が心配です」
「大丈夫だから心配しないで。それよりお前の方が心配よ。ただでさえ好奇心が
旺盛で突っ走るお前は、チャンドクさんを振り回しているのではないの?」
「私は尚宮様を振り回してばかりでしたね…」 チャングムの目に再び涙が光る。
「私のことはいいから、しっかりと前を向いて生きていきましょう。」 
ハン尚宮はそっとチャングムを抱き寄せた。しばらくの間互いの温もりを感じていたが
 「ペギョン、ちょっとこっちへ来ておくれ!」 と遠くで呼ぶ声が聞こえたので、 
ハン尚宮は名残惜しそうにチャングムを体から離し、気をつけて帰るように言うと
屋敷へと入っていった。遠ざかる後姿を見送りながらハン尚宮の温もりに包まれていると
「おやチャングム、来てたのかい!」 と不意にチャヒョンの声がした。
 チャヒョンはハン尚宮と同じくこの屋敷で働いている使用人で、お節介なところもあるが、
面倒見が良く気のいいおばさんで、チャングムを娘のように可愛がってくれていた。
 「全くペギョンさんは生真面目でね。洗濯なんて適当にやっておけばいいものを。」
 「ふふふ。それがペギョン様の性分なんですよ。でもチャヒョンさん、私はペギョン様
のお体が心配でたまりません。くれぐれもよろしくお願いしますね。」
「ああ大丈夫、任せておくれよ。決して無理はさせないから」
チャングムはチャヒョンの言葉にほっとすると、薬房へ帰って行った。


― それから数週間後 ―
漢陽から高官の一行が倭寇の問題で済州島に視察に来ており、明日は接待を兼ねた
宴会を牧使の屋敷で催すため、その準備に追われたハン尚宮はここ数日間寝る間もない
くらい忙しかった。宴会を明日に控え、夜までかかって料理の下ごしらえを全て終えて
一人で厨房の最終点検をしていたハン尚宮は、生姜がたくさん余っているのを見つけた。
― チャヒョンさんが買い過ぎたようね。まだ夜もそれほど遅くないから、カンナンを
作ってチャングムに持って行ってあげよう。ついでに足りない薬草をチャンドクさんに
分けてもらいましょう。
 ハン尚宮は余った生姜で手早くカンナンを作ると、薬草の在庫を調べるため
裏庭の保管庫へ向かった。中に入ってよく使う薬草の袋を順番に開けながら、
確認を始めて間もなく、脇に山のように積んである枯草の束の間から、
ガサッ、ガサッと不審な物音が聞こえた。
― 何の音かしら? 逃げた家畜でも入り込んでいるのかしら?

ハン尚宮が物音のする方に近づいた途端、急に伸びてきた手に腕を強く掴まれて
あっという間に枯草の中に引きずり込まれてしまった。
「何をするの!!」 ハン尚宮は咄嗟に叫んだ。そこには見知らぬ男がいた。
「訳あって隠れているんだが、こんな美人がやってくるとは俺も運がいいな」
流れてきたお尋ね者のような風貌をした男が、いやらしい笑いを浮かべているのが
月明かり越しに見えた。
「今すぐここから出て行けば誰にも言わないわ。だから手を離して!」 
ハン尚宮は、必死に恐怖を隠して男に言ったが、
 「こんな美貌を拝めるなんて、滅多にないことだからな」
男は舌なめずりをしながらハン尚宮を押し倒した。ハン尚宮は激しく抵抗したが
男の力に敵うわけもなく、とうとうその場に組み敷かれてしまった。
「止めなさい!人を呼ぶわよ!」

「ここまで見張りは来ないからな。大声を出しても無駄だぜ。」 男がのしかかってきて
顔を近づけてくると、生臭い息がかかりハン尚宮は思わず顔を背けた。
情欲に憑かれた男の、ザラザラした熱い舌が首筋や喉元を這い回り、
両手で着物の上から身体を弄られて荒々しく胸を掴まれると、
ハン尚宮は嫌悪と屈辱で吐き気がしてきた。
「無礼者!」 ハン尚宮は何とか男から離れようと、必死にもがいたが無駄だった。
「へへへ、もっと可愛がってやるからよ」 

男はハン尚宮の上着に手を掛けて、襟元をぐっと押し開くと白い両肩が露になった。
 ハン尚宮の脳裏には幼い頃、両斑の男に辱めを受けそうになった忌まわしい記憶が
甦る。(あぁミョンイ! お願い、私を助けて…。)
「真っ白で柔らかくて、たまらねえな」 男の手が両の肩を撫で回し、
息を荒くしながら貪るように唇で吸い付くと、しばらくそれを繰り返していたが、
ハン尚宮が激しく抵抗すればするほど、男は一層興奮した。
「もう我慢できねえ」 男は、ハン尚宮の着物の裾に手を掛けてまくり上げると、
肌着を一気に剥ぎ取った。 

「や、止めて!! 嫌ぁーーー!!」 どんなに抵抗しても男はびくともしない。
ふくらはぎを撫で回していた男の手が、だんだんと上がってきて太腿を掴んだ時
ハン尚宮は恐怖と絶望感に打ちひしがれた。このまま辱められるのか…。
(チャングム、助けて…)
男が無理やり足を開こうとするのを必死で拒みながら、
ハン尚宮は声の限りを振り絞って叫んだ。
「誰か来てーー!」

「おい! 今、女の叫び声が聞こえなかったか?」
「ああ、聞こえた。あっちの小屋の方からだ。」

近頃、牧使の屋敷周辺で盗人が横行しており、今日は牧使の屋敷に侵入した形跡が
あったため、兵士が警備を強化していたところだった。
兵士達は一斉に保管庫へ向かって駆け出した。
地響きのように遠くに聞こえていた足音が近くなったと思った時、扉が開け放たれた。
男は驚いてハン尚宮の足から手を離すと、転がるように逃げ出そうとしたが、兵士に
すぐさま捕らえられた。ハン尚宮は慌てて、身体が兵士の目に触れぬよう着物を整えた。
「お前は最近この辺を荒し回っている盗人だな。牧使様の屋敷にまで侵入するとは、
ただで済むとは思うなよ」 兵士達は男を鞭で叩くと、縛り上げた。
「使用人がこんな時間に出歩いて男を誘っていたのか? 今回ばかりは見逃して
やるから気をつけろ」
ハン尚宮に侮辱的な言葉を投げつけると、兵士達は男を引っ立てて行ってしまった。
末端の兵士が好色そうな視線で見つめるのが、ハン尚宮には耐え難いことであった。

一人残されると、間一髪助かったという安堵感と、男や兵士に受けた屈辱がこみ上げて
きてハン尚宮は堪えていた涙が溢れて止まらなくなり、声を押し殺して泣いた。
だがずっとここに居るわけにもいかず、ハン尚宮は震える手で身づくろいをすると
側に転がっていたお菓子の包みをそっと拾い上げ、ふらつく足で保管庫を出た。
私には一人で泣ける部屋もないのね…。ハン尚宮は雑然とした大部屋に戻る気に
なれなかった。張り詰めた糸が切れたかのように、ハン尚宮は屋敷の裏口を出て
行くあてもなく彷徨い歩いていた。
― 疲れた…。このまま海辺から身を投げたら楽になるかしら… 
でもチャングムがどんなに嘆き悲しむか…
そんなことを考えながらぼんやりと歩いていたら、いつの間にか
チャンドクの薬房の前に来ていた。


薬房にはまだ灯りが点っていて、ハン尚宮が扉の陰からそっと覗くと
チャンドクがチャングムに試験をしているようで、チャングムは答えを間違える度に
チャンドクに鞭でふくらはぎを叩かれていた。チャングムのふくらはぎには
血が滲み、叩かれる度にハン尚宮はとても見ていられず顔を背けた。
「これぐらい覚えられなくて、お前は医女になる気なの?」
「申し訳ありません。もう一度お願いします。」
「お前はそんなに宮中に戻りたいの?」
「はい。この世で一番大好きで、大切な方の無実を証明したいのです。そのためなら
何があっても耐えてみせます。」
― チャングム… お前って子は…。
ハン尚宮は包みを扉の入り口にそっと置くと、涙を拭いて屋敷へと帰って行った。

「今夜はこれで終りにするわよ。明日までにこの本を全部覚えなさい。私は寝るから
戸締りをお願いね」 チャンドクは有無を言わさず、さっさと寝室に入って行った。
「ふぅ…」 チャングムは渡された本を前に思わず溜息をついた。
しかし気を取り直して部屋を片付け、戸締りをしようと扉の前に行った時
包みが置かれているのに気づいた。(何かしら?)包みを開けると、中には
カンナンが入っていた。
― カンナン! 私が初めて尚宮様に出会った時にお作りになっていたわ。
あの鮮やかな手さばきは今でもはっきりと思い出せる…
「尚宮様!!」 
チャングムは表へ飛び出して辺りを見回したが、もうハン尚宮の姿はなかった。
「尚宮様、ありがとうございました」 
チャングムはハン尚宮の思いやりに胸がいっぱいになった。

【  続  】


― 季節は流れ冬がやってきた。温暖な済州島であるが、ここ最近天候が荒れていて
その日も朝から雪がちらついていた。雪は一向に止む気配がなく、だんだん激しく
降ってきた。
「今日はよく降るわね」 チャンドクが往診から戻って来た。
「はい。こんなに降るのは珍しいですね。」 
迎えに出て来たチャングムが、扉を開けて空を見上げた。

― その時、チャヒョンが慌てた様子で薬房に入ってきた。
「チャヒョンさん、そんなに慌ててどうなさったのですか?」
「ああチャングム。ペギョンさんは来なかったかい?朝から薬草を摘みにハルラ山に
一人で出かけたきり、まだ戻らないんだよ。奥様の具合が悪いからお粥を作って
差し上げようとしたのだけど、足りない薬草があってね。似たような草を入れようと
思ったんだけど、ペギョンさんが『人の口に入るものだから』と探しに行って
しまったの。どうしよう…。無理にでも止めればよかった。」
「山の天気は変わりやすいからとても心配だわ。道に迷ったのかもしれない。」 
チャンドクが腕組みをしながら呟いた。
チャングムは動揺のあまり体が震えるばかりで言葉が出なかったが、思い詰めたように
部屋へ行った。しばらくして戻ってきたチャングムは、腰に荷物を巻きつけて出かける
支度を済ませていた。チャンドクは驚いて言った。

「ちょっと!まさかお前はこの雪の中、ハルラ山に探しに行く気かい?」
「チャングム、気持ちはわかるけどお前まで帰れなくなるよ」チャヒョンも心配して言った。
「暗くなるまでにはまだ時間もあるし、ペギョン様はきっとどこかで雪を避けておいでに
なるのでしょう。薬草が生えている場所は私がお教えしたので、私には庭のような
所です。」 そう言うとチャングムはすぐに駆け出して行った。
「何て無謀な子なの…」 チャンドクは遠ざかる後姿を見やりながら肩を落とした。



― その頃ハン尚宮は、激しく降る雪に視界を遮られ、下山しようにも道を見失っていた。
チャングムに教えられ、何度か来たことがある場所とはいえ、幼い頃から野山を駆け
巡っていたチャングムとは違う。ハン尚宮は山歩きには慣れておらず、体力は既に
限界に達していた。
「困ったわ。雪のせいで道がわからなくなってしまった。段々と暗くなって
きたし、せめて雪を避けられる洞窟でもあればいいのだけれど…。」
ハン尚宮は念のため、持っていた紐を目印として近くの木の枝に結び付け、力を振り
絞って歩き出したが、しばらく歩いたところで木の根に躓いて転んでしまった。
何とか起き上がろうとしたが体がいうことを聞かず、体力も気力も尽きていた
ハン尚宮は諦めてその場に倒れ込んでしまった。
雪は止むことなく舞い降りて、ハン尚宮の体の上に降り積もっていった。

― チャングムはハルラ山へと急ぐ道中、ずっと母に語りかけていた。
「お母さん、ハン尚宮様をお守り下さい!私に力をお貸し下さい!」
山に入るとチャングムは注意深く辺りを見渡しながら、いつも訪れる薬草畑の
近くまで登って来たがハン尚宮の姿はどこにもなかった。
「段々視界が悪くなってきたから、暗くなる前にはお助けしなければ。」 
チャングムは大声でハン尚宮を呼びながら更に山道を登って行く途中、
ふと見上げた木の枝に、紐が結わえてあるのに気づいた。

「きっと尚宮様が結ばれたに違いないわ。そうしたらこの近くにいらっしゃるはず。」
チャングムが必死で辺りを探していると、雪を被った人影らしきものを視線にとらえた。
「あっ!!」 チャングムは素早く駆け寄ると、雪を払いのけて懸命に呼びかけた。
「尚宮様、しっかりして下さい! 尚宮様、私がお分かりになりますか?」




ハン尚宮は、薄れゆく意識の中でミョンイに語りかけていた。
「ねぇミョンイ、もう貴女のそばに行っていいかしら?本当はもっとチャングムのそばに
いてやりたいのだけれど、あの子は逞しく成長したから、私がいなくても一人で
やっていける。ねぇミョンイ。なぜ返事をしてくれないの…」

「尚宮様、尚宮様!!」 
ハン尚宮は誰かが懸命に自分を呼んでいるのが聞こえ、うっすらと目を開けた。
「チャングム…なの!?」
「尚宮様、眠ってはいけません!」 チャングムはハン尚宮の頬を軽く叩きながら
呼び続け、雪の中からハン尚宮の体を起こすと背負って歩き始めた。
「もう少ししたらお休みになれますから頑張って下さいね。」 
チャングムはハン尚宮を励ましながら山道を歩き続けた。
間もなく誰もいない山小屋に到着すると、チャングムはハン尚宮をそっと横たえ
雪に濡れたハン尚宮の着物を素早く脱がせると、持ってきた着物に着替えさせた。
そして火をおこして小屋の中を暖めながら、薄い布団を探し出してくると、
ハン尚宮にそっと掛けてやった。
チャングムは休む間もなく、今度はハン尚宮を少しでも暖めようと手足をさすり始めた。
ハン尚宮は、そんな献身的なチャングムを見つめながらゆっくりと体を起こした。
「尚宮様、横になっていらっしゃらないといけません。」
「ありがとうチャングム。もう大丈夫よ。」 ハン尚宮が話し始めた。
「思えばお前には助けてもらってばかりね。最高尚宮になったばかりの時、皆に反発されて
挫けそうになったときもお前が助けてくれたし、牢に入れられた時もお前には
申し訳なかったけれど、一緒に居てくれてどんなに励まされたことか…。」


「尚宮様は、私にとってこの世で一番大切なお方です。今はお側にはいられませんが
何があってもお助けしたいのです。」
「雪の中に倒れていたとき気弱になってしまったのか、ミョンイにもう側に行っていいか
聞いたのだけど返事をしてくれなかったの。まだ早かったのかしらね?」
「尚宮様、二度とそんなことを仰らないで下さい!私を残して死んでもいいなんて。」 
チャングムは涙をポロポロと流しながら泣き出した。
「チャングム…」 (この子は私をこんなに一途に想ってくれているのね…)
 
ハン尚宮は愛しさが募って、思わずチャングムを抱き寄せた。
「尚宮様…」 チャングムが涙で潤んだ目でハン尚宮を見上げると、
ハン尚宮は唇でチャングムの涙をそっと吸い取ってやり、今度は唇を求めた。
(尚宮様の柔らかい唇… どんなに懐かしかったことか)
チャングムも応えるように唇を合わせたが、二人は段々気持が高ぶってくると
どちらからともなく舌を絡ませ、久しぶりの感覚を確かめるように激しく求め合った。

「尚宮様、お許しいただけますか?」 
ハン尚宮の体を気遣うチャングムの問いかけに、ハン尚宮は黙ってチャングムの
上着に手をかけ脱がせ始めた。チャングムもハン尚宮の上着の襟元を緩め徐々に
脱がせながら、首筋に唇を寄せうなじを味わおうと背後に回ったとき
驚きのあまり言葉を失った。


ハン尚宮の白くて美しい背中には、むごたらしい拷問の痕が無数に残っていた。
動きが止まったチャングムを察して、ハン尚宮は穏やかに言った。
「この醜い傷跡をお前にだけは見られたくなかったわ。」
「醜いのは尚宮様をこんな目に遭わせた人たちです。私は絶対に許しません!」
「私はお前が生きていてくれさえすればいい。生きていてくれてありがとう、
チャングム!」 

ハン尚宮の言葉に涙を流しながら、チャングムは背中の傷跡を指でそっとなぞり
癒すように唇を寄せていった。ハン尚宮はチャングムの首に手を回し、自分の方に
向かせると再び唇を求めた。チャングムは唇を合わせながら、そっとハン尚宮を
床に押し倒すと着物を全て脱がせ、自分も一糸纏わぬ姿になった。
首筋に唇を寄せ喉元に吸い付きながら、両方の手でハン尚宮の乳房をそっと揉むと
手の平の下で先端が段々と固くなっていくのがわかる。

指先で先端をそっと摘み、親指と中指の腹で優しく捏ねるように愛撫すると
「んぅ… あぁぁ…」  ハン尚宮は甘い吐息を漏らした。
チャングムが片手を外して、唇に先端を含んで吸い上げたり舌で転がしたりすると
指と舌の両方で責められて、ハン尚宮は異質の快感に腰がうねるのを止められず
体の奥から熱いものが溢れ出てくるのを感じていた。
 
チャングムがそっとハン尚宮の足の間に手を伸ばすと、驚くほど湿っていた。
「尚宮様… 尚宮様のここはもうこんなに…」 耳元で囁いた。
「お前はいつからそんな意地悪な子になったの?」
「うふふ。恥ずかしがる尚宮様はとても可愛いです…。」
「もう!またそんな事を言って。それはもう止めなさい。今度生意気な事を言ったら
許さな…あっ、あん… あぁ…」
悪戯をするように、チャングムが湿ったその場所に指を入れて軽く震わせたのだ。

「尚宮様は私のそばから離れてはいけません」 
甘い言葉を囁いてハン尚宮を酔わせながら、チャングムは欲しくてたまらなかった
白くて滑らかな肌の感触を確かめるように、指と舌で撫で回した。

チャングムはだんだん唇を下の方にずらしながら、ハン尚宮の足を開いていき
蜜で溢れている中心に口付けした。舌を差し入れると柔らかな襞を押し広げるように
舐めたが敏感な部分にはなかなか触れず、たまに寄り道をしてそっと舌で押すように
してハン尚宮の体がびくっと反応するのを楽しんでいた。
 
ハン尚宮は散々焦らされ、もどかしいような切ない気持ちにさせられていたが
やっとチャングムの舌は敏感な部分を捉えた。あくまでも優しく、宝物を扱うように
そっと舌で磨き上げるとハン尚宮の吐息が激しく乱れた。
「ここには私たちだけしかいません。だから尚宮様の声をもっと聞かせて下さい…」
チャングムは囁きながら、手の甲を唇に押し当て声を出すのを堪えようとする
ハン尚宮の手をそっと外した。

舌の回転を段々早くしていくと、ハン尚宮の腰が跳ね上がるようにくねるので
チャングムは太腿をしっかりと押さえつけなくてはならなかった。
舌で敏感な部分を執拗に磨き上げながら、胸の先端に両手を伸ばして愛撫する。
「あっ、あぁぁ… はぁ あぁ… チャングム、もう駄目… 」 
ハン尚宮は背中を仰け反らせるようにして絶頂に達した。
 チャングムは再び舌でゆっくりと愛撫を始めた。長い間触れられなかった渇きを
満たすかのように、ハン尚宮を責めて昇り詰めさせる。
ハン尚宮は愛しい子の情熱を受けとめて、悦びのうちに何度も果てた。

チャングムはハン尚宮から体を離し、その美しい身体をうっとりと眺めていた。
焚き火の炎に揺らめく肢体は、薄紅色にほんのり染まりとても艶かしかった。
ハン尚宮がチャングムの視線に気づいた。
「チャングム、恥ずかしいからそんな風に見ないで…。ねぇ、チャングム、
お願いだから 早く… 来て…」

チャングムはハン尚宮の足を大きく開くと、すっかり柔らかくなっているその場所に
ゆっくりと指を沈めていく。指を締め付けられるような感覚に心地よさを覚えながら、
チャングムが優しく指を挿し入れたり出したりすると
「はぁ… あぁ…」 ハン尚宮が次第に昂まってくる。

チャングムが、折り曲げるようにしてハン尚宮の膝を立たせると
ハン尚宮の腰が少し浮くような姿勢になり、一層深い部分にチャングムの指を
受け入れた。チャングムが奥深い部分を突いてくると、ハン尚宮は思わず悲鳴の
ような声を上げた。(あぁ… 身体の芯を貫かれているみたい…)

ハン尚宮の反応を見ながら、チャングムが少しずつ抜き差しの速度を速めると
ハン尚宮は奥に当たる感触に身悶えし、無意識に腰を上げて指を迎え入れようとする。
チャングムも興奮し、一層指の動きを速めながらハン尚宮の乳房を掴んだ。
「あぁ… うぅう はぁ… チャングム… お願い、もっとそばに来て」
ハン尚宮に喘ぎながら懇願されると、チャングムは指の動きは止めないで
ハン尚宮を横から抱きかかえるようにして身体を密着させ、ハン尚宮も背中に
手を回してしがみついてきた。
 
チャングムはハン尚宮を強く抱きしめながら、指の動きを激しくして追い詰めていく。
「チャングム! あっ、あぁぁ、もう駄目、はぁ あぁ…」
チャングムの背中に回した手に一瞬力がこもると、ハン尚宮は果てた。


気だるいような幸福感に包まれながら、二人は並んで横たわっていた。
チャングムは甘えるように頭をハン尚宮の胸に載せ、ハン尚宮は優しく髪を
撫でてやっていた。

「このまま時が止まって欲しいです。」
「お前はかなりチャンドクさんに鍛えられているようね。」
チャングムは黙って微笑む。
「でもね、チャングム。チャンドクさんはお前が憎くてやっているのではないのよ。
私にはよくわかる。 あら、どうしたの? 何がおかしいの?」
「だって、尚宮様。私が見習いの頃、尚宮様が私に水を持ってくるように仰った時、
私が途方にくれて泣いていたら、チョン尚宮様が全く同じ事を仰いました。」
「まぁ、そんなことがあったのね…。私は料理しか知らないけど、医術は人の命を救う
尊い仕事。おまけに優れたお師匠様に出会えて、お前は幸せよ。」
「はい。でも人体は不思議でわからないことが多すぎます。尚宮様のお体なら、隅々まで
わかっているというのに…」
「な、何を言うの!? そんなことないわよ。」
「それでは、もっと修練しないといけませんね…」

チャングムは再びハン尚宮に覆い被さり、ゆっくりとその身体を開いていった。
「チャングムったら… あぁぁ… 」
過ぎてゆく二人だけの夜を惜しむように、空がうっすらと明るくなるまで
二人は何度も求め合った。


二人が目を覚ました時は、昨日の悪天候が嘘のような快晴だった。
チャングムは、ハン尚宮を労わるようにしながら山を下りていった。
山の麓には、心配で居ても立ってもいられないチャンドクとチャヒョンが来ていて
二人の姿を見つけたチャングムは、笑顔で大きく手を振った。

二人の無事を喜んで泣き崩れたチャヒョンに対して
「あんたのことだから大丈夫だと思ったけどね。」
チャンドクは喜びを押し隠すように、わざとぶっきらぼうにチャングムに言った。
「ペギョンさん、お体は大丈夫ですか?」
チャングムが横から口を挟む。
「大丈夫です。昨夜私が全身を診察…」
「い、いえ。だ、大丈夫です。何かありましたら伺わせていただきます。」
チャンドクは訳がわからず不思議そうな顔をした。

ハン尚宮は、余計なことを言ってとばかりにチャングムを軽く睨むと、
チャングムは首をすくめて舌を出した。
その無邪気な仕草に、思わずハン尚宮の頬も緩んでしまうのであった。
(やっぱり私にはお前が必要なの…)ハン尚宮はつぶやいた。

【  終  】


* 済州島日記〔2〕 済州島物語〔2〕(番外編)


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