BBSPINKちゃんねる内で発表されたチャングムの誓いのSS(二次小説)を収集した保管庫です

   ピルトゥ×チェ尚宮  (私の名はピルトゥ)       見習尚宮様


ソングム様と出会ったのは、私が11才の時だった。私は奴婢の家に生まれたが、
両親は早くにこの世を去り、たった一人の妹も流行り病で亡くしたばかりだった。
天涯孤独の身となった私は、商売屋の使い走りのようなことをしながら、何とか毎日の
糧を得ていた。ある日いつものように使いに出た帰り道、何やらわめく声と、幼い少女
らしき泣き声が聞こえた。泣き声が聞こえる方に行ってみると、私と同じくらいの
年頃の少年が、少女をかばって酔っ払いに殴られていた。
幼い頃から腕力が強かった私は、酔っ払いに飛びかかって殴りつけると、その男は
あっという間に逃げて行った。

「お兄ちゃん、ありがとう。」 少女は私に礼を言うと、倒れている少年の方に
心配そうに駆け寄った。
「兄上、しっかりして下さい!」
「大丈夫か?」 私が少年に尋ねると、一人では歩けない様子なので、私は背負って
家まで送ってやることした。案内された家は立派な屋敷で、私が中に入るのを躊躇
していると、私が少年を殴ったと勘違いした門番に、いきなり胸倉を掴まれた。

 「やめて!このお兄ちゃんは兄上を助けてくれたのよ!」 少女が慌てて門番に言うと
私は屋敷に入ることを許され、部屋で一人で待つように言われた。
しばらくすると、少年とその父親らしき男の人が部屋に入ってきた。


「息子のパンスルを助けてくれたそうだな。礼を言うぞ。」
私は黙って頭を下げた。
「子供ながらに大変強かったらしいな。」
「亡くなった父から武術を習っておりました。」
「そうだったのか。ところでお前は身寄りはあるのか?」
私は黙って首を振った。
「それなら、今日からこの家の使用人にならないか?余計な事を喋らない所が
気に入った。武術も好きなだけ習わせてやるぞ。」

 これで毎日、食べ物や寝る場所の心配をせずに済む。私は有り難い話だと思い、
宜しくお願いしますと頭を下げた。
その時、襖が開いてさっきの少女が飛び込んで来た。

「これ!ソングム。お前は外で立ち聞きしていたのか!」
「父上、ありがとうございます! お兄ちゃんよかったね!」
大きな目を輝かせて無邪気に笑う少女が、6才のソングム様だった。

その日から私は、チェ一族に生涯忠誠を尽くすことを固く誓った。


 私は雑用をこなしながら、武術の鍛錬に励む日々を送った。
2才上のパンスル様は、どちらかと言えば家で静かに書を読むことを好まれたのだが、
ソングム様は好奇心旺盛というか、大変やんちゃな少女であった。
ある日村の少年達が木に登って遊んでいるのを見て、自分でも登ったのはいいが
下りられなくなり、大声で私を呼びながら泣いていたこともあった。
またある時は川で遊んでいて、夢中になって足を取られて流されかけたこともあった。
その度に私がお助けしたのだが、迷惑と思ったことは一度もなく、
むしろ妹を守る兄のような気持ちであった。

 ソングム様が8才になった時、チェ一族に生まれた女の宿命ともいうべきか
宮中へ上がる時が来た。家族や私と離れて一人ぼっちになるのは嫌だと、散々
駄々を捏ねていたが、泣きべそをかきながら、迎えの人々に引きずられるようにして
屋敷を後にした。その後姿を見送りながら、私は再び妹を失ったような、切なく
寂しい気持ちになったものだ。

 宮中に上がったソングム様は、すぐに同じ年頃の友達も出来て、元気に
やっているようだと、後日パンスル様から伺って私はほっとした。


 ソングム様は休暇でお帰りになる度に、私にも宮中の友達や、厳しい尚宮様の
お話などを聞かせて下さった。何より私はソングム様が健康そうで、お変わりない
ご様子にほっとするとともに、少し気取って上品に振舞おうとするところが
微笑ましかった。しかし反面、自分には手の届かない遠い世界へ行ってしまったという
思いも強くなり、寂しくもあった。

 少女から大人へと成長していく過程で、元々綺麗な顔立ちであったソングム様は
ますます美しい女性に成長され、身体つきも丸みを帯びて女らしくなってきた。
たまに顔を合わせると眩しくて正視できず、胸の鼓動が激しくなるのを感じた。
夜、布団に入る度にソングム様の顔がちらつき想いが募る。
しかしもう無邪気でいられた子供の頃とは違う。身分の差を弁えなければいけない。
ソングム様も、大人の声に変わり、背も伸びて逞しく成長した私に戸惑いが
あったのだろうか。私と目が合うと、恥ずかしそうに逸らすようになった。

 女官試験に無事合格されたソングム様は、家業を継いだパンスル様とともに
これからチェ一族を担っていかなければならない。ご実家で開かれた祝いの宴に
特別に出席を許された私は、その少し緊張した美しい横顔を見ながら、何が
あっても私がお守りしますと、心の中で呟いた。


 その宴から間もなく、当時スラッカンの最高尚宮の座に就いていた、ソングム様の
叔母上の致命的ともいえる醜聞が明らかになり、チェ一族の存亡にも関わることだと
パンスル様が、毎日チャン執事と深刻な顔をして話し合いをしていた。
 ある日パンスル様が、宮中の実力者であるオ・ギョモ様にお会いになるために、
ユン・マッケ様の妓房にお出かけになるのにお供をした。話が終わって屋敷まで
帰る道すがら、パンスル様は青ざめた様子で一言も口を聞かなかった。

 その翌日ソングム様が宮中から急遽お戻りになり、パンスル様の執務室に
呼ばれたご様子であった。お話が終わった後、食事も取らずにお帰りになられたようで、不思議に思っていると、今度は私がパンスル様に呼ばれた。

「ピルトゥ。ソングムが宮中に戻っていないらしい。他の者と手分けして探してくれ。」
「こんな遅い時間なのに、まだお戻りになっていないのですか!」
「ああ。家を捨てる覚悟かもしれない…。」

私は驚き、慌てて部屋を飛び出すと他の使用人達とともに屋敷の外へ出て行った。
ソングム様に何があったのだろう…と思いを巡らせながら、あちこち探し回ったが
全く手がかりが掴めない。その時、幼い頃パンスル様も一緒に3人でよく行った
山中の廃屋のことをふと思い出した。あそこにいらっしゃるかもしれない…。
私は一人でソングム様をお迎えに行きたかった。だから他の使用人達には、
心当たりの場所があるとだけ告げて駆け出して行った。



真っ暗な山道を、松明の灯りだけを頼りに登って行くと目指す廃屋はまだあった。
松明を消して廃屋の中に入り、闇の中で人の気配を感じようと息を殺して耳を澄ませた時、
誰かの息使いが聞こえたので咄嗟に声を掛けた。
「ソングム様ですか?」
相手が息を飲んで驚いた様子だったので、安心させようと続けて言った。
「ソングム様、ピルトゥでございます。私一人ですのでご安心下さい。」
やがて目が慣れてきて、柱の向こうにソングム様が膝を抱えてお座りになって
いるのが見えた。私が近づいて行って、声を掛けようとした時

 「ピルトゥ、お願いよ。見逃して。私を逃がして!!」と悲痛な声が聞こえた。
「ソングム様。大変心配いたしました。私ごときにとてもお力になれることでは
ないかもしれませんが、よろしければ昔のようにお話いただけませんか?」
 
 ソングム様が話し始めた。一族の存亡の危機ともいえる、叔母様の醜聞を
揉み消してもらうよう、パンスル様がオ・ギョモ様にお願いに行ったこと。
その見返りにソングム様に酒席の相手をさせろと言われたこと。
私は怒りで両拳が震えた。つまりソングム様を差し出せと言うことか。
 「どういうことかお前にもわかるでしょう?そんなこと絶対に嫌。兄上には
申し訳ないけれど、一族の為とはいえそれだけは受け入れられない。」
 
ソングム様は涙を浮かべながら、私の手を強く握り締めて続けた。
「ピルトゥ、お願い。私を連れて逃げて。お前と一緒ならどこへ行っても安心できる。」



 ソングム様は私にしがみついてきた。その柔らかくて壊れそうな身体を、私は強く
抱きしめたいという衝動にかられたが、安心させるようにそっと肩を掴んだ。
月明かりだけが微かに射し込み、沈黙が続く。私の頭の中は千々に乱れていた。
自分に出来るのか?パンスル様を裏切る事、すなわちチェ一族を裏切る事を…。
 だが、自分の手で他の男にソングム様を渡す事だけはできない。
私は心を決めてソングム様に告げた。

「夜が明けたらここを出て、とりあえず私の両親の故郷に逃げましょう。
少し時間が経てば、ソングム様を大事に思われているパンスル様のこと、きっと
お怒りも解けることでしょう。私からもお願いに上がります。」
 「ありがとう、ピルトゥ。お前だけはいつも私の味方でいてくれるのね。」
「明日はかなり歩いていただくことになると思います。ですから今夜はもう
お休み下さい。」
「わかったわ。お前が側にてくれたら安心して休めるわ。」
そう言うとソングム様は緊張が解けたのか、間もなく私にもたれかかったまま
静かに寝息を立て始めた。その無邪気な寝顔を見ながら、私は口には出せない夢を見た。

両親の故郷で、ソングム様と暮らせたらどんなに幸せだろう。豪華な屋敷や
大勢の使用人を持たずとも、子供達に囲まれた素朴で温かい家庭を築けたら…。
そんなことを思っているうちに、私も少し眠ってしまった。


 夜が明けて空が少し明るくなった頃、私はソングム様を起こした。
「ソングム様、起きて下さい。もう出発いたします。」
私達は辺りを伺うように廃屋を後にすると、自然に手を取り合って山道を歩き出した。

その時、数人の男達に道を塞がれた。パンスル様の屋敷で一緒に働く使用人達だった。
ソングム様が怯えたように私の背後に隠れた。
「お前だけにいい格好をさせるのはしゃくだと思って、後を付けたらこんな事だった
のか!」
「頼む!今度だけは見逃してくれ!」
「お前、正気なのか?旦那様を裏切る気か?」 

男達が私に飛びかかり、私も負けじと応戦する。しかし、ソングム様の腕が掴まれて
ひねり上げられるのに気を取られたその一瞬の隙を突かれて、背後から頭に強烈な
一撃を食らってしまった。

「ピルトゥ、ピルトゥ!!しっかりして!」
ソングム様の悲痛な叫び声を遠くに聞きながら、私はそのまま意識を失った。


意識が戻った時、私はパンスル様の執務室に転がされていた。
パンスル様はいつもの場所にお座りになり、接待以外では家で酒を口にすることなど
殆どないのに、手酌で一人飲んでいた。私は慌てて飛び起きると土下座した。

 「旦那様。何も言い訳することはございません。この命、旦那様に委ねます。」
「お前はわしを不甲斐ない兄と思っているだろうな。」
私は無言で頭を下げたままであった。

「わしだって、大事な妹を駆け引きの道具などに使いたくない。しかしこのままだと
我がチェ一族はもう終りだ。わしは当主として、一族全ての者を守らなければならない。
ソングムもそれは承知しているはず。オ・ギョモ様は我々を悪いようにはできないだろう。」

 パンスル様は一息で酒を飲み干して言った。
「ピルトゥよ。ソングムは諦めろ。わかっているな?大事に思うなら、我が一族の為に
力を貸してくれ。」
掠れた声で諭すように話すパンスル様に、私はただ黙って頷くしかなかった。

ソングム様は連れ戻されても抵抗を続けたようだが、パンスル様の深い苦悩を
目の当たりにして、一族の為に己の身を犠牲にすることを決意した。
オ・ギョモ様の元からお帰りになった日の夜遅く、ソングム様の部屋からは
すすり泣く声が漏れてきた。

泣き声を耳にした私はオ・ギョモ様を呪い、自らの無力さを呪った。
どうしようもなく自分を抑えられなくなった私は、衝動的に屋敷を飛び出すと、
酒場で浴びるように酒を飲み、したたかに酔うと誘われるままに女を抱いた。



それから2年余りの間に、パンスル様はオ・ギョモ様と癒着の度をますます
深めていき、チェ一族が宮中で影響力を増すことに心血を注いでいた。
私はソングム様への想いを断ち切ろうと、自分に与えられた仕事に没頭し、
パンスル様に言われるまま、或いはそれ以上に非情なこともした。
 
ソングム様が屋敷に戻られる時は、極力顔を合わせないようにしていたが、
私の願いはソングム様が料理の道に精進され、これ以上一族の犠牲にはならないで
欲しいということだけであった。しかし権謀渦巻く宮中において、富と権力を
手にするには、私の願いなど所詮綺麗事にすぎなかったのかもしれない…。

その夜、庭の離れにある納屋で、明日宮中に納める商品の整理をしていた私は、
入り口に人の気配を感じて振り向くと、ソングム様が立っていた。私は大変驚いたが、
そんなことはおくびにも出さずに冷静を装った。

「ソングム様! このような所においでになってはいけません。御用がおあり
でしたら、伺いますのでお呼びつけ下さい。」

「ピルトゥ。お前は幼い頃からチェ一族のために尽くしてくれたわね。」
「旦那様やソングム様への御恩を考えたら当然のことです。」
「もう私は、そんなことを言ってもらえるような人間ではないわ」


「ソングム様もパンスル様とご一緒に、一族の繁栄を支えていらっしゃるでは
ありませんか。」
「一族の繁栄ね…」 ソングム様が言いかけると、目から大粒の涙がこぼれ出した。
「ソ、ソングム様! 一体どうなさったのですか?」
「私は一族の名誉を守るため、宮中に上がったときからの友を手にかけた…
私が毒を盛った所さえ見なければ!自分の胸に仕舞っておいてくれさえすれば
よかったのに! 何もあの子の命まで奪わなくてもよいのに!」

 ソングム様は堪えていたものが爆発したかのように、私の胸にしがみついて
泣きじゃくった。私は掛ける言葉が見つからず、ただそっと抱き締めていた。

「家でも宮中でも孤独に苛まれる。でも、もう通った道は引き返せない。
私の手で一族を没落させるわけにはいかないのよ。こんな家に生まれた宿命だと諦めて
受け入れようと思う。でも今だけは、私の思いを分かち合える人にそばにいて欲しい。
その人の温もりが欲しい。ピルトゥ… お願いだから私を抱いて。」


「ソングム様。今は神経が昂ぶっていらっしゃるだけです。今のお言葉は聞かなかった
ことにいたします。」
「私が嫌いだから?それとも私は…汚れているから?」
「そんなことを仰るのはお止め下さい!私は… 私は許されないこととは
知りながら、幼い頃からずっとお慕いしておりました。」
「ピルトゥ…」
「でも許されないことです。一族の御恩に背くようなことは出来ません。
私はソングム様に何があってもお守りいたします。それだけはお約束します。」
「ありがとう、ピルトゥ。それだけ聞かせてくれれば充分よ…」

ソングム様は私から身体を離すと、ゆっくりと着物を脱ぎ始めた。
私は石になってしまったかのように身動き一つできなかった。
月明かりに浮かび上がる均整の取れた白い裸身と、
豊かな乳房が否が応にも目に飛び込んで来る。
全てを脱ぎ捨て一糸纏わぬ姿になったソングム様が、再び私に身体を委ねてきた時
私の理性は砕け散った。

 私はソングム様を抱え上げると、そっと枯草の山に横たえた。自分も着物を
脱ぎ捨てるとソングム様にのしかかり、愛撫をするのももどかしく両足を大きく
開かせると、小さく呻き声を漏らすソングム様を半ば犯すように一つになった。

「申し訳ありませんでした。お身体は大丈夫ですか?」
ようやく落ち着きを取り戻した私がソングム様に尋ねると、答える代わりに、
私の唇に自分の唇をそっと合わせた。私は夢中になってその柔らかさを
味わいながら、幸福感に酔いしれた。


その夜から、ソングム様が宮中にお戻りになるまでの数日間、私達は毎晩
時を忘れて夢中で愛し合った。しかし刹那的に肌を合わせながら、2人とも
わかっていた。ソングム様は自分の感情で一族を捨てることは許されないし、
私もチェ一族を裏切ることはできなかったのである。ソングム様が宮中にお戻りに
なった時、この想いは永遠に封印しよう…。私はそう心に決めていた。

 激しい営みの余韻に浸りながら、ソングム様が私の腕の中に包まれている。
「ピルトゥ…。私が屋敷で過ごせるのも明日で最後よ。お前には世話になって
ばかりいるから、何かお礼がしたいとずっと思っていたわ。欲しい物があれば
兄上に頼んででも手に入れるから教えて欲しい。」
「そのようなお心遣いは無用でございます。」
「お前は私が子供の頃から、何かをあげようとしても決して受け取らなかったわね…。
でも、私もお前に何かしてあげたいのよ。」
そんなソングム様のお心に応えようと、私は最初で最後のお願いをした。
「それでは… 私だけの為に料理を作っていただけませんでしょうか…」

最後の日の夜、私はソングム様にチェ一族が来客をもてなす別荘に来るように
言われた。約束の時刻に到着すると、美しく着飾ったソングム様が出迎えてくれた。
すでに用意された膳の上には、宴会のように贅を尽くした料理こそなかったけれど、
とても美味しそうな皿がいくつも並んでいた。
 ソングム様が恐縮するような口ぶりで言った。
「急なことで、あまり材料が揃わなくてごめんなさい…」
「そんなことはありません。どれも心のこもった美味しそうな料理です。」
ソングム様が杯に酒を注いでくれて、食べるように促した。
 

食事が終わった後、私達は縁側に腰掛けて月を眺めていた。
「あれほど美味い食事を今まで食べたことはありません。」
「私は料理をしながら幸せを感じたことなど一度もなかったし、そんなことは必要ないと
思っていたわ。豪華な食材を使って、己の技を見せつけることに優越感さえ覚えていた。
でも今夜は初めて、食べる人の喜ぶ顔を思って料理を作る幸せを感じたの。
こんなことはもう二度とないかもしれないわね…。」
ソングム様の頬に一筋の涙が伝う。私はソングム様を自分の胸に抱き寄せた。
そしてそのまま抱え上げて寝室に運んで行くと、夜具の上にそっと横たえた。

目を閉じているソングム様の着物をゆっくりと脱がせてゆく。私も全てを
脱ぎ去ると、ソングム様に覆い被さった。首筋をそっと吸いながら、両手を
豊かな乳房に伸ばすと、下から押し上げるように揉んで柔らかな感触を確かめる。
鎖骨をなぞっていた唇を徐々に胸元に下ろし、尖った先端をそっと咥えると
強弱を付けて吸い上げると同時に、指先や舌で転がし刺激を与える。
「んぅ… あっ… あぁ… 」 ソングム様が堪えきれず、吐息を漏らす。
この甘くて切ない吐息が、私の情欲の炎を燃え上がらせる。
唇を全身に這わせながらソングム様の感じる場所を責めると、陶器のように
ひんやりしていた肌が次第に上気して熱を帯びてくるのがわかる。

 「ピルトゥ、そこは駄目… お願い…」 
私がソングム様の両足を大きく開かせて、蜜で充分すぎるほど潤っているその間に顔を埋めた時、
ソングム様が恥じらいながら懇願する。しかし快感に抗えないのはわかっている。
私は茂みをかき分けて舌を差し入れると、柔らかな襞の間を丹念に愛撫していく。
私の頭を押さえていたソングム様の手の力はすっかり抜け、熱い吐息が部屋中に響いている。
このままソングム様の中に入って果ててしまいたいという欲望を抑えながら
私は絶え間なく責め続ける。敏感な部分に舌を這わせると、ソングム様は
腰をひねって逃げようとしたが、私にしっかりと腿を掴まれてどうすることもできない。
舌を柔らかく回転させて優しく磨き上げたり、尖らせた舌先で突付いたりを繰り返すと
ソングム様は大きく喘ぎながら果てた。

 ソングム様が下になった私に跨るようにして、ゆっくりと腰を落として貫かれていく。
「あぁぁ… はぁ…」
布団の上に後ろ手を付いて、私を見下ろしながら前後に腰を緩やかに動かすと
白い乳房が妖しく揺れて、次第に上半身を仰け反らせていく。
官能に耐えるソングム様の艶やかな表情に私は我慢できなくなり、下から敏感な部分に
手を伸ばして指で弄ると、せめぎ合う快感にソングム様の腰の動きが鈍くなる。
 
 今度は私が下から突き上げると、もはやソングム様は私に支配されるがままである。
「あぁっ あっ いやっ… あぁん…」
両手で支えるように乳房を掴み、揉みしだきながら激しく突き上げると
ソングム様は身体を震わせながら、私の胸の中に崩れ落ちた。

 私がソングム様の髪を優しく撫でながら唇を求めると、ソングム様も柔らかい唇を
押し付けて応える。最初はついばむように軽く合わせていたが、次第に深く求め合いながら
私は身体を入れ替えてソングム様を組み敷く。

「ピルトゥ…」
私はソングム様の足を開くと、ゆっくりと中に入っていく。
「あぁ… んぅ…」
この滑らかで美しい肌、官能に溺れる表情、私を蕩かす甘い吐息の全てを記憶にとどめたい。
私は夢中で腰を振りながら奥へ奥へと入っていく。
「あぁっ ピルトゥ… はぁぁ… もう、私、私… あぁぁ!!」
「ソングム様!!」
私達は互いを強く抱き締めながら同時に果てた。


 私達はその夜を最後に、想いを交わすことは二度となかった。私の心が変わることは
なくても、時は無情に流れていくものである。ソングム様はやがて尚宮に昇格し、
次に目指した最高尚宮の座は競い合いでは負けたのだが、オ・ギョモ様と陰謀を企てて
奪い取った。姪のクミョン様を最高尚宮に据えて、チェ一族で初めて女官長の地位にまで
昇りつめても、何かに取り憑かれたかのように、富と権力をがむしゃらに追い求める
ソングム様を稀代の悪女と噂する人々もいた。自分の誇りを捨て、他人をも犠牲にして
失った物があまりにも大きいが故に、満たされることなど決してないのか…
屋敷の庭で、夜空を見上げながらよく物思いに沈んでおられたが、その胸中に去来して
いたのは過去の痛みだったのかもしれない。
 
“この世に確かな事など一つもない”というのは、皮肉にもパンスル様の口癖で
あったが、これまでの数々の罪が暴かれたことによって、沈まぬ太陽の如きであった
チェ一族は崩壊し、その瞬間に私も立ち会わなければならないとは…。
 
自分の誇りを貶め、他人の血や涙から得た富や権力など、一夜の夢のように儚いものである。
私はパンスル様を屋敷から逃がした後、山の中に潜伏していたのだが、
結局パンスル様は捕らえられ、罪に問われて護送中に絶命したと知った。

 そして私は愛しい人もお守りすることが出来なかった…。
宮中から逃げ出して、トンイン山で最期を迎えたと聞かされたが、今となっては
何故トンイン山に向かい、一人で何を思われていたのか私には知る由もない。
だがこれでソングム様が、一族の名誉という重圧からやっと解放されたのかと思うと
悲しみよりも、私は不思議と安らかな気持ちを覚えた。

私はゆっくりと立ち上がり山を下ると、麓の川で身を清めた。
そしてトンイン山を目指して歩き始めた。

ソングム様… 貴女は今何処にいますか?
長い旅に出発されたのでしょうか?それは今まで犠牲を強いた人々に許しを乞う、
辛い旅路になるかもしれません。
もし貴女が道に迷った時は、決して動かずに手を差し伸べて待っていて下さい。
私はどこにいても必ずや駆けつけると約束いたします。
そして今度こそ、その手を掴んで永遠に離すことはないでしょう。

【  終  】 



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