[290]エリ×スバ?(1/5)<sage>2007/06/28(木) 12:06:54 ID:x+w8hMTJ
[291]エリ×スバ?(2/5)<sage>2007/06/28(木) 12:08:02 ID:x+w8hMTJ
[292]エリ×スバ?(3/5)<sage>2007/06/28(木) 12:09:03 ID:x+w8hMTJ
[293]エリ×スバ?(4/5)<sage>2007/06/28(木) 12:09:49 ID:x+w8hMTJ
[294]エリ×スバ?(5/5)<sage>2007/06/28(木) 12:10:49 ID:x+w8hMTJ

「エ〜リオっ、お疲れ様!」

「はい、スバルさん!」

 本日の戦闘任務を楽に、とはいかなくても、危なげなく終わらせた前線コンビは無事に帰還。
 どちらからともなく片手を挙げて、ハイタッチ──
 と言うには少し高さが足りないけど──が交わされる。
 パンッ、といい音をさせた手と手を握り合って、魔導師と騎士の二人は笑い会った。


『ある日ある時その後のお話』


「ね、エリオ。今回の作戦、なかなかいい感じだったよね」

「はい、技の選択とか、タイミングもばっちりでしたし」

 報告書の提出も無事終えて、宛がわれている部屋へと戻っての一時。
 瞬く間に過ぎていったような六課での日々から、早数年。
 揃って救助隊志願、ということで、経験積みがてらあちらこちらの部隊を渡り歩くことになった
 二人は、なんだかんだで結構なお手柄を上げていた。
 ここまで来るのに事件と人間模様の紆余曲折が多少あったりしたものの。
 恋人兼パートナー兼ストライカーにはまだ少し、届かない。
 近代ベルカ式使いの魔導騎士コンビとして、目下精進中、なのである。

「スバルさん、なんだかご機嫌ですね」

「ん〜、ちょっとね。今日は特にキッチリ決められたし、それに使った技も、だったし」

「?」

「ほら、最後の連携で使ったの」

「…ああ、そうでした」



 ストライク・ドライバー。
 もう随分とバリエーションの増えた連携技、アサルトコンビネーションの最初の一つ。

「エリオとフォワードになって初めて実戦で使ったやつだったからさ。
 思い出したらなんだか懐かしくなっちゃって」

「そうでしたね…」

 スバルにとっては二つ目の、エリオにとっては初めての職場となった機動六課。
 設立されて間もない頃にあった出張任務、ロストロギア探索で初めて使った、所謂、合体攻撃。

「あの頃はエリオとこんなことになるなんて、全然思ってなかったんだけどね」

「それは、僕もです。今だから言えますけど、
 配属されたばかりの頃は周りのみんなの顔を覚えるだけで精一杯でしたし」

「あ〜、それはあたしもかも。なのはさんしか見えてなかったような気がするし」

 昔、と言うほどでもないけど、それは随分と前のこと。
 ロストロギア・レリックを巡る事件で集まったメンバーは皆、もうそれぞれ自分の道を歩いていて。
 偶然に出会った多くの人たちの中の二人が、今は隣り合って歩いている。

「会ったばっかりの頃はエリオもずっとちっちゃかったんだけどなぁ」

「それはそうですよ。…成長期なんですし」

 何気に気にしている話題に触れられて、エリオの言葉が鈍る。
 あの頃と比べれば大分伸びたとはいえ、エリオの背丈はスバルにはまだちょっと届かない。
 一日の長の壁は以外に厚く、かつマッハキャリバーの補助(上底)は優秀だった。
 体格差によるコンビネーション不良は解消されたものの、あの頃から見上げていた背中には
 いまだに届けないのが現状であり──同時にそれが小さなコンプレックスにもなっていたりもする。


「せめて、もう少し上背があったらいいんですけど」

「エリオはもっと背が伸びたほうがいい?」

「そういうわけじゃないですけど、せめて、もう少しは」

 スバルさんと同じくらいには欲しいです、という本音は飲み込む。
 追い越したいわけじゃないけど、せめて隣に並ぶ程度は望みたい。

「でも、今でも十分伸びてると思うけど。まだこれからなんだしさ」

「スバルさんは…その、僕の背は高かったりするほうがいいですか?」

「ん〜、どうだろ。ちっちゃかったころのエリオも可愛かったし。
 あ、でも、背が高いのもストラーダ構えた時とかに、いい感じかも」

 なんだかミーハーな答えが返ってくる。
 割と本音を混ぜた質問をあっさり流されたような気がしないでもない。
 ていうか、つまりその答えは──

「…それってスバルさん的にはどっちでもいいってことですか?」

「え? ぇえっ!? あ、えと。いや、そういうんじゃなくってね。あたし的には──」

「…冗談です」

 くすっ、と小さく喉を鳴らして、エリオは降参のポーズで笑みを浮かべる。
 ちょっとした反撃のつもりが、結構な不意打ちになったらしい。
 意外なからかいに、スバルは数秒間、かつてのパートナーが見たら頭痛を訴えそうな呆け顔を
 見せていたが、それでも立ち直るなり、今度は膨れっ面を作って現パートナーへと食って掛かった。

「もうエリオ! そんな意地悪なこと言うの禁止っ!!」

「あはは、すいません、スバルさん。…って、あれ? あたたたたっ、ご、ごめんなさい!
 スバルさん、痛い、痛いです!」

「や〜だよ。悪戯っ子は離してあげないの」

「そ、そんなぁ」

 全身を的確、かつ容赦なくホールドされて情けない声を上げるエリオ。
 スバルもそんな反応が気に入ったのか、両手、両足、頭まで使って完全固定モードに入る。
 ちょっとした出来心のつもりが、随分と高くついたらしい。
 むぎゅ、とか音を立てて潰れかけるエリオの耳元で、拗ねたようにスバルが囁く。

「だって…エリオってば普段は素直で真面目一筋〜な感じなのに、時々スッゴイ意地悪するし」

「ス、スバルさん…」

「しかも、いっくら言っても敬語もさん付けも直らないし」

「ぅ…」

「そ・れ・に・フェイトさんともキャロとも、いまだにとっても仲良しさんだし〜」

「それはっ…」

 違います! と叫びかけて、いつの間にか至近距離にあったスバルの顔に声が止まる。
 じっと覗き込んでくる、昔と変わらない大きな瞳。
 意趣返しのつもりなのか、それとも本心を引き出せて満足したのか。
 なんとなく、な以心伝心。
 それでも、何か言おうと口を開きかけて、

「ぁ…スバル、んっ……」

「ん、ぅ……さん、はいらないの…」

 名前を呼び捨てにしたまま、口で塞がれる。
 入り込んでくる異物感に、間近で聞こえる水音と、吐息。
 ほとんど零に近い距離の中で、どちらからともなく、瞳を閉じあった。

「…いいよ、エリオ。そのまんまで」

 少しの間があった後で、そう呟いたスバルの声が聞こえた。

「え…?」

「ちょっと意地悪言っちゃったけど、エリオはあたしと一緒にいてくれてるから。
 だから、いいの。そのままでいてくれて」

「…はい」

 ごめん、とも、スバル、とも返さずに、ただ口づけを返す。
 かなわないなぁ、とそう思う。
 気持ちよさそうに細められる瞳は、いつも見ていて、見てくれている人のもので。
 だから、今の精一杯の想いを伝える。

(…大好きです、スバルさん)

 まだ、胸を張って名前を呼べてはいないけれど。
 でも、いつか、ううん。きっとすぐに。
 もう少しだけ、背が伸びたなら。
 貴女と並んで立てるようになったら、その時は。

「エ〜リオ、ふふっ、大好き!」

「僕も大好きです、スバルさん」

「うん♪」

 だから、それまでを、その時を、そしてその後も。

 ずっと一緒に、僕と歩いてくれますか──?

著者:19スレ289

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