最終更新: nano69_264 2012年02月06日(月) 22:15:43履歴
892 名前:もう人間じゃない1 [sage] 投稿日:2011/11/08(火) 23:00:41 ID:MWtXa7PE [4/6]
893 名前:もう人間じゃない2 [sage] 投稿日:2011/11/08(火) 23:01:17 ID:MWtXa7PE [5/6]
あの日から随分と月日が立ちました。あの頃の私には、自分がこんなことになるなんて思いもよりませんでした。
八神はやては、目を覚ますとぐぐっと伸びをした。
カーテン越しに差し込んでくる日差しは、近づいてくる春を感じさせて暖かい。
はやての傍らには髪を下ろしたヴィータが丸まっている。
ヴィータの眼を覚まさないように、そっとベッドから立上がった。
夜天の書の管制人格・リインフォースの消滅という形で『闇の書事件』が終息してから、二ヶ月が経とうとしていた。
その二ヶ月の間に、良いことが二つあった。一つには来春から聖祥小学校へ編入することが決まったことだ。
すずかはもちろん、アリサ・なのは・フェイトも、
「おめでとう!」
と祝福してくれた。
もう一つは、はやてが立ったのである。もうはやては杖もなしで歩き回れるほどに回復していた。
はやての異例の回復に、主治医の石田医師は喜びつつも首をひねったものだ。
最近のはやては、よく笑う。
はやては歩いていた。
歩けるようになってからは、はやては散歩を日課にしている。
ヴォルケンリッターたちが闇の書から現れてからは外出する事も増えたが、それでも家に引きこもりがちだった事もあり、体力を養うべく始めた事だった。
もちろんそれだけの事ではない。はやて自身も歩き回れる事が、
「めちゃ嬉しい」
のである。
ずんずんと歩くと、見慣れた筈の町の様子も車椅子を使っていた時とはまるで違って感じる。
まるで生まれ変わったような気分だった。
「はあ……?」
どういうことだか理解できない。
はやてはぽかんとしてマリエル・アテンザを見つめ返していた。
マリエルの痛ましげに眼を伏せたのが実に不快だった。
はやての身体は夜天の書由来の組織に置き換わって居るのだと言う。
ヴォルケンリッターたちは、まるで取り返しの付かない失敗をした子供のように打ち拉がれた顔を並べていた。
「それで、どういうことでしょう。何か不都合が?」
歩けるようになったのだ。リインフォースと同じ融合騎の肉体になったとして、何の不都合があるというのだ。
当時の私は愚かにも、人間ではないと言うことの意味が理解できませんでした。
あの日からもう随分と立ちましたが、私の身長はあの日から全然変わっていません。これから先もずっと変わらないことでしょう。
次の年の春には、私たちは海鳴の家を引き払っていました。もうそれ以上は成長しないことを誤魔化して暮らしていくのは難しかったものですから。
あの頃の友達で、生きているのはもう一人もいません。
でも寂しくはありません。私にはヴォルケンリッターのみんなが居てくれます。
そう、ずっと、永遠に……
著者:しずひと ◆XCJ6U.apcs
893 名前:もう人間じゃない2 [sage] 投稿日:2011/11/08(火) 23:01:17 ID:MWtXa7PE [5/6]
あの日から随分と月日が立ちました。あの頃の私には、自分がこんなことになるなんて思いもよりませんでした。
八神はやては、目を覚ますとぐぐっと伸びをした。
カーテン越しに差し込んでくる日差しは、近づいてくる春を感じさせて暖かい。
はやての傍らには髪を下ろしたヴィータが丸まっている。
ヴィータの眼を覚まさないように、そっとベッドから立上がった。
夜天の書の管制人格・リインフォースの消滅という形で『闇の書事件』が終息してから、二ヶ月が経とうとしていた。
その二ヶ月の間に、良いことが二つあった。一つには来春から聖祥小学校へ編入することが決まったことだ。
すずかはもちろん、アリサ・なのは・フェイトも、
「おめでとう!」
と祝福してくれた。
もう一つは、はやてが立ったのである。もうはやては杖もなしで歩き回れるほどに回復していた。
はやての異例の回復に、主治医の石田医師は喜びつつも首をひねったものだ。
最近のはやては、よく笑う。
はやては歩いていた。
歩けるようになってからは、はやては散歩を日課にしている。
ヴォルケンリッターたちが闇の書から現れてからは外出する事も増えたが、それでも家に引きこもりがちだった事もあり、体力を養うべく始めた事だった。
もちろんそれだけの事ではない。はやて自身も歩き回れる事が、
「めちゃ嬉しい」
のである。
ずんずんと歩くと、見慣れた筈の町の様子も車椅子を使っていた時とはまるで違って感じる。
まるで生まれ変わったような気分だった。
「はあ……?」
どういうことだか理解できない。
はやてはぽかんとしてマリエル・アテンザを見つめ返していた。
マリエルの痛ましげに眼を伏せたのが実に不快だった。
はやての身体は夜天の書由来の組織に置き換わって居るのだと言う。
ヴォルケンリッターたちは、まるで取り返しの付かない失敗をした子供のように打ち拉がれた顔を並べていた。
「それで、どういうことでしょう。何か不都合が?」
歩けるようになったのだ。リインフォースと同じ融合騎の肉体になったとして、何の不都合があるというのだ。
当時の私は愚かにも、人間ではないと言うことの意味が理解できませんでした。
あの日からもう随分と立ちましたが、私の身長はあの日から全然変わっていません。これから先もずっと変わらないことでしょう。
次の年の春には、私たちは海鳴の家を引き払っていました。もうそれ以上は成長しないことを誤魔化して暮らしていくのは難しかったものですから。
あの頃の友達で、生きているのはもう一人もいません。
でも寂しくはありません。私にはヴォルケンリッターのみんなが居てくれます。
そう、ずっと、永遠に……
著者:しずひと ◆XCJ6U.apcs
- カテゴリ:
- 漫画/アニメ
- 魔法少女リリカルなのは
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