最終更新: nano69_264 2010年01月20日(水) 16:15:58履歴
688 名前:野狗 ◆NOC.S1z/i2 [sage] 投稿日:2009/10/17(土) 22:08:36 ID:ecmcnQqY
689 名前:野狗 ◆NOC.S1z/i2 [sage] 投稿日:2009/10/17(土) 22:09:19 ID:ecmcnQqY
690 名前:野狗 ◆NOC.S1z/i2 [sage] 投稿日:2009/10/17(土) 22:09:51 ID:ecmcnQqY
691 名前:野狗 ◆NOC.S1z/i2 [sage] 投稿日:2009/10/17(土) 22:10:33 ID:ecmcnQqY
とっとこ歩くよユーノスクライア。
というわけでユーノは今、ナンバーズ更正施設近くの森の深奥へととことこ進んでいる。この森は自然のままが手つかずで残された地域で、癒しスポットとしての人気も高い。
浅い辺りには割と一般の人たちも出入りしているのだが、ユーノがいるのは森のさらに奥。普通ならまず入ってこない位置である。
そこには、ユーノを含めてごく少数の人間しか知らない穴場があるのだ。
うっそうとした森を抜けると、突然ぽっかりと木のない場所が。まるで吹き抜けのホールのような場所がある。
ちょうど昼頃には太陽の光が真上から差し込み、柔らかい草に寝ころぶと本当に心地の良い眠りに誘われる。そう、絶好の日当たりお昼寝隠れ家なのだ。
ちなみに、ユーノはフェレット形態で侵入している。
空間が広々と使える上、この形態はユーノ自身にとっても非常に心が安らぐのだ。さらに、適当に寝転がっても衣服の汚れる心配がない。
勝手知ったる獣道を進んで行くと、見知った姿が一頭。
(こんにちは、ザフィーラさん)
(ああ、スクライアか)
フェレット形態と狼形態なので念話で会話する。
二人(一匹と一頭?)は、この場の常連であった。
(ここは落ち着くな)
(うん。無限書庫の激務も忘れられるよ)
(ナンバーズとの激戦も、ここにいると幻だったのではと思えてくる。本当に心安らぐ場所だ)
二人は心ゆくまで身体を弛緩させている。
時間はある。一眠りしたところでどうと言うことはない。
(寝ようかな)
(ああ、構うまい。私も……)
茂みを踏み分ける音がした。
二人は人の気配に気付くが、殺気の類を感じないのでスルーする。ひなたぼっこを楽しむ同好の士ならば、排除するつもりなど全くないのだ。
「あ……」
(あ、あの子は)
(どうした、スクライア。……む。彼女は……)
突然抱き上げられるユーノ。
キューキュー鳴いても放してはもらえない。一言「放して」と言えばいいのだろうが、果たしてこの子に正体を明かしていいものなのか。
「……可愛い……」
ルーテシアは、フェレットユーノに頬ずり。
(どうしてこの子がここに?)
直接の面識はないが、顔は知っている相手だ。勿論、ルーテシアはこのフェレットがユーノであることなど知らない。
ザフィーラは、立ち上がってルーテシアを見上げる。ルーテシアとザフィーラには面識がある。六課襲撃の際に一応は顔を合わしているはずだ。
「……狼さん?」
どうやらルーテシアは覚えていないらしい。
ユーノを片手に抱いたまま、ルーテシアはザフィーラの背を撫でる。
「いい子……」
どうするべきかと悩んで動けないザフィーラを尻目に、ルーテシアはそのまま座り込んだ。片手はザフィーラを抱きかかえている。
左手にユーノ、右手にザフィーラである。
(スクライア、これは一体……)
(そういえば、この近くに更正施設があったんだ。もしかすると、ぬけてきたのかも知れない)
(脱走か? それにしては様子が)
(少しくらいは見て見ぬふりってやつかな)
(更正担当者はギンガ・ナカジマだったか。ありえん話ではないな)
(うーん。どうやら、僕たちの正体には気付いてないみたいだけど)
(しかし……)
(フェイトとキャロに聞いたことがあるんだけど、召喚士はこうやって動物と親しくなる子が多いらしい)
(……ふむ。確か、キャロもそうだったか……。つまり、ルーテシアもそうだと?)
(うん。特にルーテシアは人間相手のコミュニケートに慣れてないらしいから、動物相手の方が心を開きやすいんだと思う)
(我々はどうすればよいのだ)
(そうだね……)
ユーノは少し考え、言った。
(もし良ければ、だけど。このまま動物のように振る舞うべきかな。ちなみに、普通の動物は召喚士には懐きやすいんだよ)
(しかし……)
(なのはが言ってた。ルーテシアは、寂しがってるって)
ユーノの言葉にザフィーラは絶句する。そう言われてしまえば、このままルーテシアを拒否することができないではないか。
(恨むぞ、スクライア)
(ヴォルケンリッターに恨まれるなんて、怖すぎるよ)
(ヴィータや将ですら単独で抜くには苦労するシールドを張る、その魔道師の言葉とも思えんな)
(護りに特化した守護獣の言葉とは思えないなぁ)
などと言っているうちに、ルーテシアは本格的にひなたぼっこの体勢になっている。その両手はしっかりとユーノとザフィーラを抱えたままに。
(仕方ない。つきあうぞ、スクライア)
(うん。女の子には親切にしなきゃあね)
(……テスタロッサと高町が嘆くわけだ)
(なにか?)
(いや、気にするな)
(はあ…………あれ?)
(どうした……む?)
二人は殆ど同時に別の気配に気付く。先ほどのルーテシアとは違う。今度は確実に敵意が混ざっている。殺意とまではいかないが、明確な敵意だ。
(お前も気付いたか)
(これは……)
辺りを見回そうとするユーノだが、ルーテシアに抱きしめられたままではうまくいかない。
(ザフィーラさん、何か見えますか?)
なにしろここにいるのは、ゆりかご事件でスカリエッティに与したと言われている一人だ。何処で敵を作っているか知れた者ではない。全くの見知らぬ他人に恨まれていたとしてもおかしくはないのだ。
(なにも……。いや、待て、アレは……)
ザフィーラの視線を追うユーノ。
そこには……
木の陰に隠れたガリューがいた。
(ガリュー……だったっかな?)
(うむ、ルーテシアの召喚蟲だ。主に忠義を尽くすあっぱれな騎士だとエリオに聞いたことがある)
(何してるんだろう)
(主を隠れて護衛している……訳ではないようだが)
(なんか、怒っているような雰囲気が)
(ものすごい握力で木を握っているな)
(あ、今、バキバキって、木が削れたような)
(視線はこちらを見ているが)
ルーテシアがユーノに頬ずり。すると、ガリューの視線がユーノを捕らえる。
ルーテシアがザフィーラを撫でる。すると、ガリューの視線がザフィーラに向けられる。
(……嫉妬?)
(召喚蟲ともあろうものが嫉妬などと……)
(視線が凄く怖いんですけど)
(いや、しかし……)
ガリューが背後に隠していた何かを取り出す。
(わら人形!?)
(……主はやての故郷の言葉で何か書いてあるな……)
「ゆうの」「さ゛ふら」
(「ざふら」ってなに?)
(うむ。おそらく濁点を含めてひらがなで四文字までなのだろう)
(最初のドラクエ!?)
かつーん かつーん
(五寸釘打ち始めたーーーーー)
(まさか、古代ベルカのレアスキルを奴が持ってるのか!?)
(古代ベルカに「丑の刻参り」あったんかぁぁああーーー!!??)
(確か、次元跳躍攻撃の一種)
(いや、あれ、呪いだから、純然たる民間信仰の呪いだから! しかもなのはの故郷の!)
ルーテシアから離れようとするユーノだが、ルーテシアはしっかりとユーノを抱きしめ放さない。そして何故かガリューに気付いた様子もない。
そしてガリューは一心不乱に五寸釘を叩く。時々ユーノの方を見ながら。
(めっちゃ見てる! こっちめっちゃ見てる!! ていうか、睨んでるっ!!)
(さすがに一言言わねばならんか、この状況は)
(お願いします、ザフィーラさん!)
(丑の刻参りは当人に目撃されては効果がないのだぞ!)
(突っ込むところはそこじゃねぇええええ!!! つか、間違ってるし!)
しかし、二人はまだ気付かない。
二人、いや、ルーテシアを含めて三人の死角にいる、某教導官とその親友の使い魔に。
その手には、「るてしあ」と書かれたわら人形が。
かつーん かつーん
著者:野狗 ◆NOC.S1z/i2
689 名前:野狗 ◆NOC.S1z/i2 [sage] 投稿日:2009/10/17(土) 22:09:19 ID:ecmcnQqY
690 名前:野狗 ◆NOC.S1z/i2 [sage] 投稿日:2009/10/17(土) 22:09:51 ID:ecmcnQqY
691 名前:野狗 ◆NOC.S1z/i2 [sage] 投稿日:2009/10/17(土) 22:10:33 ID:ecmcnQqY
とっとこ歩くよユーノスクライア。
というわけでユーノは今、ナンバーズ更正施設近くの森の深奥へととことこ進んでいる。この森は自然のままが手つかずで残された地域で、癒しスポットとしての人気も高い。
浅い辺りには割と一般の人たちも出入りしているのだが、ユーノがいるのは森のさらに奥。普通ならまず入ってこない位置である。
そこには、ユーノを含めてごく少数の人間しか知らない穴場があるのだ。
うっそうとした森を抜けると、突然ぽっかりと木のない場所が。まるで吹き抜けのホールのような場所がある。
ちょうど昼頃には太陽の光が真上から差し込み、柔らかい草に寝ころぶと本当に心地の良い眠りに誘われる。そう、絶好の日当たりお昼寝隠れ家なのだ。
ちなみに、ユーノはフェレット形態で侵入している。
空間が広々と使える上、この形態はユーノ自身にとっても非常に心が安らぐのだ。さらに、適当に寝転がっても衣服の汚れる心配がない。
勝手知ったる獣道を進んで行くと、見知った姿が一頭。
(こんにちは、ザフィーラさん)
(ああ、スクライアか)
フェレット形態と狼形態なので念話で会話する。
二人(一匹と一頭?)は、この場の常連であった。
(ここは落ち着くな)
(うん。無限書庫の激務も忘れられるよ)
(ナンバーズとの激戦も、ここにいると幻だったのではと思えてくる。本当に心安らぐ場所だ)
二人は心ゆくまで身体を弛緩させている。
時間はある。一眠りしたところでどうと言うことはない。
(寝ようかな)
(ああ、構うまい。私も……)
茂みを踏み分ける音がした。
二人は人の気配に気付くが、殺気の類を感じないのでスルーする。ひなたぼっこを楽しむ同好の士ならば、排除するつもりなど全くないのだ。
「あ……」
(あ、あの子は)
(どうした、スクライア。……む。彼女は……)
突然抱き上げられるユーノ。
キューキュー鳴いても放してはもらえない。一言「放して」と言えばいいのだろうが、果たしてこの子に正体を明かしていいものなのか。
「……可愛い……」
ルーテシアは、フェレットユーノに頬ずり。
(どうしてこの子がここに?)
直接の面識はないが、顔は知っている相手だ。勿論、ルーテシアはこのフェレットがユーノであることなど知らない。
ザフィーラは、立ち上がってルーテシアを見上げる。ルーテシアとザフィーラには面識がある。六課襲撃の際に一応は顔を合わしているはずだ。
「……狼さん?」
どうやらルーテシアは覚えていないらしい。
ユーノを片手に抱いたまま、ルーテシアはザフィーラの背を撫でる。
「いい子……」
どうするべきかと悩んで動けないザフィーラを尻目に、ルーテシアはそのまま座り込んだ。片手はザフィーラを抱きかかえている。
左手にユーノ、右手にザフィーラである。
(スクライア、これは一体……)
(そういえば、この近くに更正施設があったんだ。もしかすると、ぬけてきたのかも知れない)
(脱走か? それにしては様子が)
(少しくらいは見て見ぬふりってやつかな)
(更正担当者はギンガ・ナカジマだったか。ありえん話ではないな)
(うーん。どうやら、僕たちの正体には気付いてないみたいだけど)
(しかし……)
(フェイトとキャロに聞いたことがあるんだけど、召喚士はこうやって動物と親しくなる子が多いらしい)
(……ふむ。確か、キャロもそうだったか……。つまり、ルーテシアもそうだと?)
(うん。特にルーテシアは人間相手のコミュニケートに慣れてないらしいから、動物相手の方が心を開きやすいんだと思う)
(我々はどうすればよいのだ)
(そうだね……)
ユーノは少し考え、言った。
(もし良ければ、だけど。このまま動物のように振る舞うべきかな。ちなみに、普通の動物は召喚士には懐きやすいんだよ)
(しかし……)
(なのはが言ってた。ルーテシアは、寂しがってるって)
ユーノの言葉にザフィーラは絶句する。そう言われてしまえば、このままルーテシアを拒否することができないではないか。
(恨むぞ、スクライア)
(ヴォルケンリッターに恨まれるなんて、怖すぎるよ)
(ヴィータや将ですら単独で抜くには苦労するシールドを張る、その魔道師の言葉とも思えんな)
(護りに特化した守護獣の言葉とは思えないなぁ)
などと言っているうちに、ルーテシアは本格的にひなたぼっこの体勢になっている。その両手はしっかりとユーノとザフィーラを抱えたままに。
(仕方ない。つきあうぞ、スクライア)
(うん。女の子には親切にしなきゃあね)
(……テスタロッサと高町が嘆くわけだ)
(なにか?)
(いや、気にするな)
(はあ…………あれ?)
(どうした……む?)
二人は殆ど同時に別の気配に気付く。先ほどのルーテシアとは違う。今度は確実に敵意が混ざっている。殺意とまではいかないが、明確な敵意だ。
(お前も気付いたか)
(これは……)
辺りを見回そうとするユーノだが、ルーテシアに抱きしめられたままではうまくいかない。
(ザフィーラさん、何か見えますか?)
なにしろここにいるのは、ゆりかご事件でスカリエッティに与したと言われている一人だ。何処で敵を作っているか知れた者ではない。全くの見知らぬ他人に恨まれていたとしてもおかしくはないのだ。
(なにも……。いや、待て、アレは……)
ザフィーラの視線を追うユーノ。
そこには……
木の陰に隠れたガリューがいた。
(ガリュー……だったっかな?)
(うむ、ルーテシアの召喚蟲だ。主に忠義を尽くすあっぱれな騎士だとエリオに聞いたことがある)
(何してるんだろう)
(主を隠れて護衛している……訳ではないようだが)
(なんか、怒っているような雰囲気が)
(ものすごい握力で木を握っているな)
(あ、今、バキバキって、木が削れたような)
(視線はこちらを見ているが)
ルーテシアがユーノに頬ずり。すると、ガリューの視線がユーノを捕らえる。
ルーテシアがザフィーラを撫でる。すると、ガリューの視線がザフィーラに向けられる。
(……嫉妬?)
(召喚蟲ともあろうものが嫉妬などと……)
(視線が凄く怖いんですけど)
(いや、しかし……)
ガリューが背後に隠していた何かを取り出す。
(わら人形!?)
(……主はやての故郷の言葉で何か書いてあるな……)
「ゆうの」「さ゛ふら」
(「ざふら」ってなに?)
(うむ。おそらく濁点を含めてひらがなで四文字までなのだろう)
(最初のドラクエ!?)
かつーん かつーん
(五寸釘打ち始めたーーーーー)
(まさか、古代ベルカのレアスキルを奴が持ってるのか!?)
(古代ベルカに「丑の刻参り」あったんかぁぁああーーー!!??)
(確か、次元跳躍攻撃の一種)
(いや、あれ、呪いだから、純然たる民間信仰の呪いだから! しかもなのはの故郷の!)
ルーテシアから離れようとするユーノだが、ルーテシアはしっかりとユーノを抱きしめ放さない。そして何故かガリューに気付いた様子もない。
そしてガリューは一心不乱に五寸釘を叩く。時々ユーノの方を見ながら。
(めっちゃ見てる! こっちめっちゃ見てる!! ていうか、睨んでるっ!!)
(さすがに一言言わねばならんか、この状況は)
(お願いします、ザフィーラさん!)
(丑の刻参りは当人に目撃されては効果がないのだぞ!)
(突っ込むところはそこじゃねぇええええ!!! つか、間違ってるし!)
しかし、二人はまだ気付かない。
二人、いや、ルーテシアを含めて三人の死角にいる、某教導官とその親友の使い魔に。
その手には、「るてしあ」と書かれたわら人形が。
かつーん かつーん
著者:野狗 ◆NOC.S1z/i2
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