80 名前:クイント・ナカジマの子育て奮闘記[sage] 投稿日:2008/08/12(火) 23:59:33 ID:NOFs8hPG
81 名前:クイント・ナカジマの子育て奮闘記[sage] 投稿日:2008/08/13(水) 00:01:14 ID:NOFs8hPG
82 名前:クイント・ナカジマの子育て奮闘記[sage] 投稿日:2008/08/13(水) 00:02:09 ID:NOFs8hPG
83 名前:クイント・ナカジマの子育て奮闘記[sage] 投稿日:2008/08/13(水) 00:02:58 ID:NOFs8hPG
84 名前:クイント・ナカジマの子育て奮闘記[sage] 投稿日:2008/08/13(水) 00:03:40 ID:NOFs8hPG

○月○日

戦闘機人の開発施設から二人の子供を保護した。どうやら、そこで開発された戦闘機人のプロトタイプらしい。
このまま管理局へ引き渡したところでモルモットにされるだけだろう。
そんな可哀相なモルモット達を、私は養子として引き取る事にした。
ぶっちゃけ、歳のせいにしてなかなか子作りに励む事のないあの人への当てつけだ。

当然の事ながら法的な問題はあった。だが、さすがは天下の時空管理局。どうとでもなった。
後は、あの人を説得するだけだが、こちらもどうとでもなるだろう。
あの人が私の意見に異を唱えた事はただの一度もない。



○月×日

あの人を説得して、戦闘機人の姉妹を養子に迎えたのはいいが、どうとっついたらいいのかわからない。
いや、戸惑っているのは私達以上に、あの子達なのだろう。
私達を敵なのか味方なのかも判断できず、姉妹2人して体を寄せ合ったまま、
私達に近づくとも離れるともいえない距離を保っている。
無論、物理的な意味だけではない。精神的な意味においてもそうだ。これでは、下手に触れる事も出来ない。
家族ごっこは思ったよりも難航しそうだ。

ああ、そうそう、名前はそれぞれギンガ、スバルと名づけた。姉がギンガで、妹がスバルだ。
あの人が良く見ている番組のテーマソングの歌詞から適当に拝借してつけた名だ。
風の中の〜〜〜♪ 砂の中の〜〜〜♪



○月△日

子供達の目つきは相変わらず私を刺す様に冷たい。全く、無愛想な子供達だこと。
まあ、もともと好きで育てている訳じゃなし、私達に子供が生まれたら、
適当な理由をつけて管理局にクーリングオフすればいい事だ。
戦闘機人のサンプルを欲しがる連中など腐るほどいる。



○月□日

認識が甘かった。拾った子供を安易に養子にしたのは、
子育てというものを舐めていたとしか言いようがないだろう。訳ありの子供であるというのなら尚更だ。
あれらはモンスターだ。少し目を離せばふらふらと迷子になってしまうし、何度教えても危ない事を繰り返す。
気の休まる暇などなく、これでは子作りどころの話ではない。



×月○日

あの人がギンガとスバルに「とうさん」と呼ばれていた。むしゃくしゃしたので、あの人を殴った。
今も反省はしてない。
あの人は「DVだ! 家庭崩壊の始まりだ!」とか叫んでいたが、知った事ではない。
この家では私が正義だ。神だ。法律だ。代償として、ギンガとスバルとの距離はさらに広がったが。
私、そんな怖い顔してたかしら。



△月○日

スバルが倒れた。といっても、1ヶ月は前の話だ。
最近、ようやく落ち着いてきたので、ここいらでまとめる事にする。

倒れた原因はメンテナンス不良らしい。あの子達は戦闘機人なので、寝る子は育つ形式では育たてない。
生の体と機械の体のバランス調整の為、定期的なメンテナンスが必要なのだ。
おそらくこれから一生そうなのだろう。
特に、成長期の今は、体の成長に合わせてより多くメンテする必要があるという。

そもそも、発見された段階で前回のメンテからかなりの時間が経過していたらしく、
身体に相当のストレスを溜め込んでいた様だ。まだ体の小さいスバルは特に影響が顕著に表れた。
結果、スバルとギンガを直す為、コネを方々駆け回って直してもらう破目になった。

メンテが終わって目を覚ましたスバルが、キョトンとした顔で「おはよう」なんて言うから、
腹が立ったので抱きしめてやった。
当のスバルも、それを見ていたギンガも心底不思議そうな顔をしていた。
あの人は何だか分かった様な顔をしていたので殴っておいた。



△月×日

今日の私は誰と戦っても勝てる気がする。多分、隊長とやっても勝てる。
だって、だってだってだって!
ギンガが、あの、無愛想で、冷たい顔しかしてくれなかったギンガが、初めて私に笑いかけてくれたのだ!
テンション上がってきたぜぇー!

そう思っていたら、
「え? ずいぶん前からそんな感じだぞ」とか言っちゃう空気を読まないあの人の事は殴っておいた。



△月△日

スバルが私を初めて「かあさん」と呼んだ。鼻血が出た。ギンガにまでそう呼ばれた後の事は覚えていない。
目を覚ませば丸一日以上経っていて、病院のベッドで寝かせられていた。
出血多量によって昏睡状態に陥っていたらしい。
医者の先生がどうやったらそんな状態になるのかと首を傾げていた。

その後、すぐあの人がスバルとギンガをつれて見舞いに来た。
来てそうそうギンガとスバルは泣きながら私に抱きついた。私は鼻血を噴出しながら再び気絶した。

「なるほど、そういう事ですか」

意識をとばす寸前、先生が妙に納得した様に言った。



△月□日

定期メンテを担当するマリーから、あの子達が私の遺伝子を作って作られたクローンだと知らされた。
なるほど、どおりで似ていると思ったら、何の事はない、あの子達は私の姉妹の様なものだった訳だ。

厳密には違うそうなのだが、血が繋がっているというのは私を温かい気持ちにしてくれた。
あの人には悪いけれど、まあ、大目に見てほしいものだ。私より先にあの子達に懐かれたんだから。

それにしても、私のクローンなんか作ろうとした奴は何が目的だったのだろう。
普通に考えれば、我が家伝来のインヒューレント魔法、ウイングロードが目当てなのだろうが、
物好きもいた者だ。あんな使い勝手の悪い魔法を欲しがるなんてね。



□月○日

ギンガが私にシューティングアーツを教えて欲しいと頼んできた。
おお、いいだろう。ならば、お前をシューティングアーツの伝承者として鍛えてやろうじゃないか!
とまあ、何だかみなぎって来て、だったらスバルも一緒にどうかと、無理矢理外に引っ張り出したら泣かれた。
その日、ギンガの命で日が暮れるまで正座をさせられた。



□月×日

スバルがシューティングアーツをやりたがらないのは寂しいものがあるけれど、
水を吸う砂の様に私の技術を吸収していくギンガを見るのが、最近の私の楽しみになっていた。

ていうか、マジ天才。同い年の私はあんなに動けなかったし。
この子は本当に私と同じ遺伝子から作られているのだろうか。
ギンガがこれなんだから、スバルだって相当なものだろう。
スバルにシューティングアーツを教えられないのは、本当に残念で仕方ない。

まあ、でも、あの子は気の優しい子だ。もとより戦いになんて向いてないのはわかってる。
このまま優しい子として育ってくれれば、それでいいと思う。



□月△日

ギンガとスバルが私に鉢植えをくれた。ピンク色の可愛らしい花が一厘植えられていた。
プレゼントをくれるのは嬉しいが、特に誕生日とかではないし。私は首を傾げる。
と、ここで仕掛け人が登場。

第97管理外世界、地球には母の日という風習があり、ちょうど今日がその日なのだとか。
そして、母の日には母親に対する感謝の印として、このカーネーションという花を贈るのが通例だという。

「かあさん、いままでそだててくれてありがとう。これからもよろしくね」

ギンガとスバルが声を合わせてそう言った時、私は不覚にも泣いてしまった。
でも、泣いてる顔を見られるのが嫌だったので、私は2人を抱きしめた。
そんな中、空気を読まずに地球薀蓄を続けるあの人の事は、とりあえず殴っておいた。



さいごの日

初めこそ、単なるあてつけで養子にした子達だったのに、一緒にいるのが楽しくなって、
それが当たり前になっていた。そう、私はいつの間にか「女」ではなく「母」になっていたのだ。

あの子達の育っていく姿を見るのは嬉しいものだった。
ギンガはきっと強くてとてもカッコいい女性になるだろうし、
スバルは優しくておしとやかな女の子に育つに違いない。
今の私にはあの子達の未来が、そんな眩く輝けるものであると信じられる。

でも、あの子達は戦闘機人だ。いずれ、あの子達が世界に虐げられる事もあるかもしれない。
いや、今だってその危険はあるのだ。だから、私は戦おうと思う。
管理局の正義には吐き気がするほど同意できなかった。
けど、今は少しだけ本気で願ってやってもいい、誰もが幸せに暮らせる平和な世界を。

その為には、まず変えなければならないものがある。
戦闘機人と管理局上層部、繋がりがある事は薄々察してはいたのだ。
けれど、あえて核心に踏み込む事はしなかった。単純に、命が惜しかったからだ。
だが、もうそんな事は言っていられないだろう。だから、私は特秘とされるこの任務に志願した。

隊長はいつもの厳つい顔で、

「ナカジマ、お前には家族がいるのだろう。今回の任務は命懸けになるかもしれん。それでもいいのか?」

と聞いてきた。

「それは間違ってますよ、隊長。家族がいるからこそ、命懸けで戦わなければならないんです」

それが私の答え。

もしも、なんて話をするのは嫌だったけど、あの人には私が死んだ後の事をお願いしてある。
あの人はいつになく頑なで、説得には随分と骨が折れた。でも、あの人も最後には納得してくれた。
あの人が私のお願いを聞いてくれなかったのは初めてだったな。

これで、私が戻ってこられなかったとしても、
あの人はギンガとスバルをちゃんと普通の子として育ててくれるだろう。
それなら、私は胸を張って戦える、あの子達の為に。

ギンガ、スバル、母さんが帰ってきたら、約束した遊園地にみんなで行こうね。
ああ、仕事の事なら大丈夫。いい加減、母さんも有給消化するし、
父さんは母さんが殴ってでも仕事休ませるから。

それじゃあ、ギンガ、スバル、ゲンヤさん、いってきます。


著者:81スレ79

このページへのコメント

俺の妄想すみません
クイントさん(涙)

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Posted by ユウキ・ナカジマ(優輝中将) 2010年11月05日(金) 18:57:34 返信

俺の妄想の中でもクイントさんは亡くなっています。理由は俺が弱かったからです。クイントさんの護衛兵なのにクイントさんに守られてばっかりで護衛兵失格ですね。すみませんでした。クイントさん…(涙)
そして
俺の妄想は、気にしないでください、ただ書きたかったです。本当にすみませんでした。

0
Posted by ユウキ・ナカジマ 2010年11月05日(金) 18:49:11 返信

クイントさん−(泣)

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Posted by ギンガ 2010年04月18日(日) 02:38:24 返信

感動した。
こんなSSはたくさんあるが、その中でも特に良い作品だと思う。

これを書いた作者様に感謝と畏敬の念を。

0
Posted by 通りすがり 2009年09月08日(火) 11:17:55 返信

すまない、これは本気で泣いた。
こんな笑えて切ないSSが未だかつてあっただろうか。

GJ、ただそう言わせてくれ。

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Posted by パロの名無し 2009年07月21日(火) 16:42:54 返信

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