623 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU [sage] 投稿日:2008/05/26(月) 20:54:58 ID:bQmPdHga
624 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU [sage] 投稿日:2008/05/26(月) 20:55:53 ID:bQmPdHga
625 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU [sage] 投稿日:2008/05/26(月) 20:56:41 ID:bQmPdHga
626 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU [sage] 投稿日:2008/05/26(月) 20:57:32 ID:bQmPdHga
627 名前:野狗 ◆gaqfQ/QUaU [sage] 投稿日:2008/05/26(月) 20:58:24 ID:bQmPdHga


 (スバルのモノローグ)

 ナンバーズの更正施設でギン姉は言った。
「動物を飼うのは情操教育にいいの」
 だから、ニワトリがいた。
 チンクが餌をあげていた。
 それを見て、あたしは思ってしまったんだ…

 ……ああ、今夜は鳥鍋がいいな。


 魔法少女リリカルなのはEaterS
始まります

  「メリーさんは羊」


「お前ら……チーコちゃんに何をする気だ」

 きたこれ。チーコちゃんときた。
 チンクってば、ニワトリに名前付けてる。チンクの子供だからチーコなの!?
 スバルはツッコミたいのを押さえて、冷静に言う。

「何をって…食べるんだよ」
「あっさり言うな」
「………………………………食べる」
「じっくり言い直すな。チーコちゃんは私のペットだ。お前に食わせる気はない」
「家畜だし。食材だし。独り占めは良くないよ?」
「そもそも食べるつもりはない」
「そもそもニワトリは食用だよ?」
「最初はそうだったかもしれない。しかし今は私にとって可愛いペットだ」
「あたしにとっては美味しそうなチキンだから」
「知るか!」

 チンクがナイフを取り出したのを見てスバルは身を退いた。
 一応、ランブルデトネイターの使用…というか、ナンバーズのISは封印されているはずだ。
 しかし、ナイフを投げるだけなら別に関係ない。そして、チンクのナイフ投げは一流だ。

「いいか。チーコちゃんに何かしてみろ。絶対に許さんからな」
「うん。わかった」

 ここに来るまでに鶏小屋の存在は確認している。どう見ても一羽や二羽ではないのだ。チーコちゃん以外にもニワトリはたくさんいるだろう。
 この程度で鳥鍋を諦めるスバルではない。ストライカーの名が泣こうというものだ。
 早速、鶏小屋まで行ってみると、数羽のニワトリがウェンディ達にエサを貰っていた。
 一羽欲しい、と交渉すると、一緒に世話をしていたセインが首を傾げる。

「どうするつもり?」
「うん。鳥鍋にしたいなと思って」
「鳥鍋……。鳥鍋か…」
「そうだよ。セインも食べる?」
「いや、このニワトリたちはチンク姉が大事にしているから、多分勝手に始末はできない。卵くらいなら分けてもいいけど」
「卵も美味しいけどね。ヤッパリお肉だよ」
「肉ッスか!?」

 肉という言葉に反応するウェンディ。

「こいつらって、肉だったんスね。卵を食べるために育てているのかと思ってたっス」
「あれ? チキンって知らなかった?」
「いや、チキンは食べた事あるッス……でも、肉になる前はこんな姿なんスね。もっと、大きいものかと思ってたっス。
 フリードくらいかなあって」
「……それは食べ甲斐がありそうだね…」



「チーコちゃん以外なら、多分大丈夫だよ。それに、地鶏は美味しいよ?」
「うーん。食べたいけれど、チンク姉の大事なチーコちゃんが…」
「え? チーコちゃんはチンクさんが向こうで…」
「あ、きっとそれはチーコちゃん一号ッスよ」
「は?」
「これがチーコちゃん二号ッス」
「こっちがチーコちゃん三号、それが四号、それから五号、六号…いや、七号か」

 チーコちゃんはたくさんいた。というより、ニワトリは全部チーコちゃんだった。
 これだけいれば一羽くらい食材にしてしまってもわからない。とスバルは思った。

「いや、多分すぐばれると思う」
「そうッスよ。チンク姉は徒者じゃないッス」
「万が一の時は…」

 じっと自分の拳を見つめるスバル。

「また、この力を使うときが…」
「ちょ、アンタどんだけチーコちゃん食べたいんスよ!」
「自重しろ。食欲魔神」
「その通りよ、スバル」
「ギン姉!」
「チンク姉とギンガさん?」

 チンクとギンガの姿に驚く三人。
 ギンガは大きく溜息をつくと、スバルに近寄って言う。

「スバル。チンクのチーコちゃんを食べようだなんて…」
「ギン姉…」
「独り占めは駄目よ?」
「ちょっと待て、ギンガ」
「いいわね。私だって食べたいの。その日のために育ててきたのよ」
「待て、ギンガ」
「食べるときはみんな一緒よ」
「お前も食べる気だったのか!」

 ギンガはチンクに向き直る。

「鶏肉はヘルシーなの」
「戦闘機人には関係ないだろ」
「美味しいのよ?」
「私の可愛いペットだ」
「貴重な蛋白源よ?」
「お前ら…」

 ギラリ、とチンクのナイフが輝く。

「いい加減にしろ。チーコちゃんには指一本触れさせない」


 
 チンクは強かった。

「守るべきモノがある強さ、それを教えたのはお前達六課だろう? 今の私には守るモノがある」

 チンクの守るモノってニワトリです。後ろでコッコッコー言ってます。
 因みに、スバル側に付いた妹二人をチンクは容赦なくシバき倒している。
 つまり、
 チーコちゃん>>>>>(越えられない壁)>>>>>セイン、ウェンディ
 妹も守ってやれよ、ナンバーズ姉。

 対峙したまま動かないスバルとチンクの間に入るギンガ。

「ギン姉?」
「このままじゃ埒があかない。こうしましょう」
「何を言われようと、私はチーコちゃんを諦めるつもりはない」
 
 しかしギンガの提案はチンクの予想を超えていた。

「絞めたニワトリの一部は収監施設に送ります」

 つまり、ドクター、ウーノ、トーレ、クアットロ、セッテの所へ。

「更正施設組からの差し入れだと言えば、喜ぶかも知れませんね」

 チンクは考える。
 なんだかんだ言って素直に受け取るドクター、姉様達(一人除く)、セッテ。
 皮肉や嫌味を言いながらもしっかり完食するクアットロ。
 様子が脳裏に浮かぶようだ。
 監獄ではないと言っても、自由に動けるわけでもない自分たちがドクター達に会いに行くことはできない。
 でも、こういう形で気持ちを伝えることは可能なのだろう。

「……せめて、姉様達に食されるのなら、本望かも知れないな」

 チンクは構えていた腕を下ろし、その夜、スバルは無事鳥鍋をゲットした。
 とても、美味しかった。スバル達はチンクのコケコッコブリーダーぶりを褒め称えた。




 夜の海を見つめながら、チンクは膝を抱えて座っていた。

「チーコちゃん……」

 やっぱり、寂しい。食べられることを覚悟していなかったと言えば嘘になる。家畜なのだ。ニワトリは立派な食肉なのだ。
 でも………

 メェエエエ

 背後に聞こえる声に、チンクは振り向いた。

「そうだな、メリーさん七号。私にはまだお前たちがいるものな」

 チンクは羊の身体を優しく撫でた。チンクがニワトリと同時に飼い始めた動物である。
 大きくなったら、羊毛を刈り取って小さなケープでも作ろうかと思っている。



 その頃スバルは……

 何故か急にジンギスカン鍋が食べたくなっていた。



著者:野狗 ◆gaqfQ/QUaU

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