[121] 名無しさん@ピンキー sage 2007/10/16(火) 20:39:09 ID:ROitFHW1

 悲鳴を上げてヴァイスは飛び起きた、夢、そう何度も見ている夢だと自分に言い聞かせる。
「アルトは・・・よかった寝てる」
起こした上半身の左では衣服を乱した彼の後輩がすやすやと寝息を立て眠っている。
ヴァイスは誰かを起こさぬよう静かに立ち上がるとキッチンのシンクの前へ、
ノブをひねりコップ日本の少しの水を注ぎ、のどを潤すとようやく心臓の鼓動が落ち着くのにため息をつく、
思い出すのは過去の苦い記憶
自分に打ち抜けない犯罪者はいないと思い上がっていたころの最初で最後の失敗
・・・そう今やただのヘリパイロットであるヴァイスには関係ないことだ。
思い出されるのは家を出る自分をただ見つめる妹、ラグナの泣きそうな、しかし空ろな視線

「俺の責任、なんだよな」

自分を慕う妹の片目とはいえ光を失わせた。あれ以来ヴァイスは妹のことをうまく見れていない
今こうして六課の寮にすんでいるのも本当はただ逃げているのだ。
そう目をつぶると思い出す。

『ねえお兄ちゃん、責任取ってくれるよね』

そういって夜中寝室に忍び込んできて

『この傷はね、お兄ちゃんが私に刻んでくれたものだから』

そういいながら愛おしそうにもう見えない片目の傷跡を指でなぞる

『でもね、お兄ちゃん、これだけじゃ足りないよ、私をもっとお兄ちゃんのものに』

頬に手を寄せる妹はすでにただ一人の女で

『ほらこんなにもう濡れてるんだよ、見えるでしょ、ほら触って』

呆然とするヴァイスの目の前で妹の秘裂は蜜をたらし引き寄せられたその手はそこに招き入れられ

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

そして逃げ出したヴァイスは二度と銃をその手にもてなくなった、それだけの話だ。
あれから毎晩あのときの夢を見る、おかしくなってしまった妹の幻影は今もヴァイスを苦しめる
そして今のヴァイスにはただ自分を抱きしめることしかできない、
あの可愛かった妹の姿を奪ったのはこの自分なのだから

「・・・先輩?どうかしたんですか?」

ふと声をかけられた方向に顔を上げる、そこには先ほどまでとは違いYシャツを身に着けたアルトが立っていた。

「ん、ああ喉が渇いてな、アルトも飲むか?」

ヴァイスはごまかすように飲みかけのコップをアルトに手渡すと「風呂入るわ」とだけ言い残し
部屋を出て行く、その後姿にアルトはただ「先輩の嘘つき」とだけ小さくつぶやき、
そして部屋の中には誰もいなくなる、六課の夜は今日も静かに更けていった。


著者:34スレ121

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