797 名前:機動六課の男達[sage] 投稿日:2009/05/21(木) 22:43:15 ID:8bxcuioY
798 名前:機動六課の男達[sage] 投稿日:2009/05/21(木) 22:45:27 ID:8bxcuioY
799 名前:機動六課の男達[sage] 投稿日:2009/05/21(木) 22:46:36 ID:8bxcuioY

機動六課の男達 ファミレス編


 そこには、一つの賑わいがあった。
 硬質な陶器や金属が織り成す音と、活気に受け答えをする澄んだ女性らの声。
 女性、総じて皆が皆若く美しい少女らは、短いスカートから見えるすらりと伸びた足であわただしく駆け回る。
 ここはクラナガンでも有名なファミリーレストラン、ジョアンナミラーズのチェーン店の一店舗。
 時刻は昼時、店内では多くのウェイトレスが注文を受けそしてまた受けた注文の品を運び、忙しいランチタイムを駆け抜けている。
 と、そんな時だった、一人のウェイトレスの少女の目が店の入り口に向く。
 そこには新しく入店してきた四人組の、容姿も年代もバラバラの客の姿。
 少女はこれに、思わず手にした用済み食器をトレーから落としてしまいそうな勢いで駆け、店の厨房に飛び込んだ。
 そんな彼女に、厨房に同僚が驚き、問う。


「どうしたの?」

「き、来た!」

「何が?」

「ろ、六課の人たち!」


 答えるや、その場にいたウェイトレスの少女らは一斉に厨房入り口に詰め寄り、件の客が座った席を見る。
 そこには案の定、四人の男、機動六課の男たちがいた。
 これに、少女らは歓喜の声をあげる。


「ああん、今日はヴァイスさんも一緒よ!?」

「グリフィスさんもいるじゃない!」

「きゃー! ザフィーラさん人間形態だわ! 素敵ぃ!」

「エリオ君カワイー!」


 と、ウェイトレスの少女らは口々に四人の男性客に、嬉しげにそして姦しく喜ぶ。
 彼女らにとって、機動六課のお客さん、といえばそれは決してなのはやフェイト達のような美女・美少女ではない。
 それは、ヴァイス、グリフィス、エリオ、ザフィーラの四人の、機動六課では数少ない男性陣の事だ。
 明るく気さくな兄貴分、少し悪っぽい雰囲気がある大人の男であるヴァイス。
 眼鏡の似合う理知的な美貌を持つ、クールな美青年グリフィス。
 あどけない笑顔が堪らなく愛らしい、幼い美少年エリオ。
 褐色の肌に逞しい長身をした守護獣の偉丈夫、ザフィーラ。
 それはもう、美男・美少年の宝庫である。
 ショタから屈強な美男子まで、おおよそあらゆる女性のニーズに応えるであろう男のチョイス。
 これに、ここジョアンナミラーズで働くウェイトレスの少女らが惹かれぬ訳がない。
 ヴァイスの気さくな微笑に心奪われる者、グリフィスの眼鏡を掛け直す仕草に狂喜する者、ザフィーラの剥き出しの肩の筋肉に興奮する者、エリオに萌え狂う者。
 好みは様々だが、皆自分の好きなタイプの男性に潤んだ瞳を投げ掛けている。
 中にはヴァイ×グリやザフィ×エリというBLネタに走る者すらいた。
 熱視線を送りながら、少女らのが言った。


「あー、いつものくだけた感じも良いけど、真面目な顔のヴァイスさんも素敵ねぇ」

「ほんとねぇ」

「グリフィスさんは相変わらず知的なところが堪んないわぁ」

「エリオくんも可愛い〜♪」

「ザフィーラさんも寡黙なところが素敵だわぁ」

「みんな何を話してるのかしら?」



 少女らは語る、憧れの男達への想いを。
 そして想う、自分らの知らぬ彼らの事を。
 きっと彼らの事だ、何か素敵な話でもしているんじゃないか。
 四人掛けのテーブル席で食後のコーヒーを飲みながら語らう美男の集団を見つめながら、少女らはそんな事を想った。
 それがどれだけ現実からかけ離れているか知らずに。




「なんだと? もう一回言ってみろグリフィス」

「ええ、何度だって言いますよ。あなたは見る眼がない、と」


 立ち昇るコーヒーの湯気より濃密な殺気を眼光に込めて交わしつつ、ヴァイスとグリフィスが言い合う。
 その様はまるで決闘に興じる古き騎士のように勇ましく、狂犬同士の殺し合いのように凄まじい。
 同じテーブルに座ったエリオとザフィーラは、ただその気迫に押され押し黙っている。
 しばしのにらみ合いの後、グリフィスは先ほどの一言に繋げるように言う。
 理知的に、囁くような残響で、されどしっかりと。


「ストッキングは黒でも白でもガーターが最高です」


 馬鹿馬鹿しいエロ話題を吐いた。


「何言ってんだ! ストッキングといえばパンストで黒オンリーだろうが!」


 と、ヴァイスも同じくエロスで返す。
 そう、これは機動六課の男達にとってはただの食事ではない。
 定期的に集って行うエロチック座談会なのである。
 ちなみに、今日の話題は足関係からストッキングへと移行し、ヴァイスとグリフィスの議論へと発展した。


「あのムッツリとした肉厚の尻を包み込むパンストの黒、下に穿いた下着と織り成す二重奏、正に男として生まれた事を泣いて喜びたくなる至福だ」


 果たして誰の事を思い返しているのか、ヴァイスはどこか遠くを見ながらまるで一個の芸術品を愛でるように語る。
 これにグリフィスも負けじと言葉を紡いだ。


「何を言いますか。ほっそりとした腰を覆うガーターの芸術的ラインと太股の白が描く様は、それこそ思わず時を忘れて魅入ってしまうほど甘美な情景でしょう。個人的には白ストが良いですね」


 最上の工芸品を説明するかのように、グリフィスは夢想した情景にうっとりとしながら静かに語る。
 そんな彼に、ヴァイスは眉根を怒りに歪めて言う。


「白ストだ? 男なら黒だろ黒!」

「白ストの良さがわからないとでも!?」

「悪いとは言わんが、黒には負ける! それにパンスト破いてする方が無理矢理感あって良いじゃねえか」

「言いましたね!」

「言ったとも!」


 男の誇りと性嗜好を賭けた議論は白熱し、さらなる激化を辿る。
 ちなみに、余談ではあるがシグナムは黒スト、はやては白ストを愛用しているが、それが両者の語らいに関係あるかどうかはまったく別の話。
 どんどんエスカレートするヴァイスとグリフィスの言葉の応酬。
 その様を、横のエリオとザフィーラは静かに聴いていた。
 あまりに激しい言い合いに、言葉を挟むきっかけが見つけられないのだ。
 と、しかしそこで、ふとヴァイスが視線を横のエリオに向けた。


「おいエリオ、お前はどう思う?」

「ご意見伺いましょう、エリオ君」


 グリフィスも視線と疑問符を少年に向ける。
 少年はこれに待ってましたとばかりに意気揚々と言葉を返す。


「僕は断然ニーソですねぇ。やっぱりニーソックスがミニスカと見せる合体技“絶対領域”に勝るものはありませんよ!」


 少年は、それこそ太陽のような明るい笑顔で自分のエロチック願望を語る。
 ちなみにルーテシアはニーソであるが、これと本件が関係あるかどうかはまた別の話。
 だが少年の語った夢に、男二人は吼えた。


「はっ! ニーソ? これだからゆとりは」

「少々青いですねぇ、ニーソでは。ま、悪くないんですが」

「な! ニーソのどこが悪いんですか!?」


 今度はエリオも混じり、バカエロス談義はさらなる白熱を見せる。
 ただし、パッと見は真面目な顔で美男が話しているだけなので、それを知らぬウェイトレスの少女らはウットリとその様を見ていた。
 彼女らがこれを知ればどんな顔をするのか見ものである。
 と、三人が激しい萌とエロスの言葉を交わす中、今まで沈黙を守っていた男が静かに口を開いた。


「まあ、待てお前ら」


 静かな渋い残響を吐いたのは寡黙なる男、楯の守護獣ザフィーラ。
 守護獣の静かな言葉、その深みのある響きに三人は押し黙る。
 そんな彼らに、ザフィーラはまた静かに言葉を続けた。


「足とは何もつけぬ状態が最も美しいのだ。太股から爪先まで、滑らかな白い素足が見せ付ける生まれながらの、むしゃぶりつきたくなるような状態こそがあるべき姿だ」


 蒼き狼は自身の性癖を、それこそ天下正義とばかりに謳う。
 その様は勇壮ですらあるほどに勇ましく、同時に馬鹿馬鹿しくてずっこけてしまいそうだった。
 ちなみにアルフは素足全開であるが、それが彼の語る理想と関係あるかどうかはまた別の話。

 こうして、パンスト派・ガーター派・ニーソ派・素足派、まったく嗜好の異なる男共のエロス談義はコーヒーを都合100杯以上消費するまで続いた。
 余談ではあるが、議論の締めくくりは『やっぱりオッパイ最高、あと尻もね』で終わったのは、また別の話。


終幕。


著者:ザ・シガー

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