◆File.03 【賽殺し編】 其の弐

『昭和58年6月!?』
『すべてが…すべてが違う』
『この世界では 入江も 鷹野もいない』
『…そして』
『前原圭一もいない!』
『なによりも…オヤシロさまの祟りが起こっていない』
『サイコロが振られるスタート地点から 全てが違う世界!!』
『ここはいったい…どこなの?』
『鷹野があらわれず 入江機関もなく』
『雛見沢症候群の研究もないなら』
『私の両親が死ぬこともない』
『母は騒ぎ出すと なかなか静まらないヒステリックなタイプだった』
『隠密に研究を進めたい入江機関にとって 口封じをしたくなるのは当然だ』
『なにしろ 何度やり直し忠告しても 両親は聞こうとしなかった』
『だから私は両親を…』
『昭和56年にリタイアする存在だと諦めてしまっていたのだ』
『その両親が この世界の昭和58年6月には…いる』
「は…羽入!」
「何してるの」
「は…はやくあらわれなさいよ」
「…っ」
「羽入…」
「…っ!」
「…羽入?」
「羽入 いる?」
「羽入 どこなの?返事をして!」
「…っ!」
「羽入!聞こえるわ!」
「私よ!梨花よ!」
「私はここにいわるわ」
「…何言ってるのよ?」
「私をはやくこの世界から連れ出してよ」
「そんな情けないこと言ってないで」
「はやくなんとかしなさいよ!」
「なんとかして!」
「神様のあんたを拒む力って何よ」
「っ…そんなのある訳ないでしょ」
「カケラが…鍵?」
「ってことは…」
「私が今いるこの世界というカケラ…」
「…いえ ジグソーパズルのピースは 噛み合う部分がどうにかなっていて」
「まわりのピースと組み合わない」
「…だったら」
「そのカケラをどうにかすればいい訳ね」
「そのカケラはどこにあるの?」
「それをどうすればいいの?」
「はぁ?」
「わからないものをどう探せってのよ」
「カケラってからには こんな感じの水晶のキラキラ光る破片みたいな感じなの?」
「探しモノの形もわからないとは…最悪ね」
「で 仮にそれを見つけたらどうすればいいの?」
「それすらもわかんないっての」
「おまけに こんな訳のわからない世界に飛ばされて」
「…その使えないはずの力で 私を助けてくれたという事は…」
「…タイヤの前…?
「車につぶされて頭がぺしゃんこだった って訳ね…」
「…つまり」
「結局のところ すべて自業自得って訳ね…」
「で 私を元の世界に連れ戻すには 羽入がここへやって来なくてはならない」
「そうなのね」
「当然よ!」
「100年を越える日々を経て勝ち取った あの世界へ」
「戻るのよ!」
「帰る…帰るわ!」
「私は絶対に元の世界へ帰る」
「それがどんなに細い道でも…」
「絶対…!絶対に帰る!」
「もしかして この世界に羽入がいない以上」
「ここで私が死んだら…ジ・エンドってこと?」
「わかったわ」
「なるほど」
「電池の切れかかったトランシーバーってことね」
「なら 無駄な連絡は慎むわ」
「大丈夫 絶対にカケラを探し出し」
「あなたと一緒にあの楽しかった世界へ戻る」
「だからあなたも頑張って」
「何かヒントになりそうな事がわかったら 教えて」
「も 文句なんかないです…」
「…ごめんなさいです」
「じろじろ見ないです…」
「……っ」
「何かわかった?」
「形を失うって…壊せってこと?」
「そう」
「…っ!」
「仮に人だったらどうするの?」
「…まさか」
「ってことは」
「カケラが宿っているのが人だったら…」
「嫌な話ね」
「どういう訳か 嫌な想像に限って当たるものよね」
「嫌な想像はたいてい当たる」
「を逆手にとって それを先に探すのも手ね」
「仮に人だったら やっぱりオヤシロさまに縁の近い人?」
「それが私自身という可能性は?」
「となれば 次は…」
「古手神社神主の父か 古手家の血を継ぐ母」
「もしそうだったら ぶっ殺せばいいって訳ね」
「他に方法があるなら もちろんそれは避けたい」
「でも それしか方法がないのなら…私は躊躇しない」
「祈ってて 私も祈るわ」
「あなたは引き続き 何かヒントを集めて」
「古文書…」
「もしかしたら この中に何か」
「いつもボクのご飯を作ってくれて ありがとうなのですよ」
「にぱー☆」
『…何も感じない』
『母の中にカケラはないようだ』
「日頃の感謝の気持ちなのです」
「あ…!」
「っ!」
「…っ」
「っ!」
「……!!!」
「っ!」
「!」
「沙都子…あんた少しうるさい」
「あたしの親友と同じ顔してるから ちょっと多めに見てきたけど」
「いい加減…あんたのそのかん高い声にもイラついてきたわ」
「以後 あたしの半径1メートル以内に入ったら 言い訳なしで即ぶん殴るから」
「そのつもりで」
「よろしく」
『そうなんだ』
「私の本当の友達は…遠くへ行ってしまったわ」
「とてもとても遠くへね…」
「私はそこへ帰りたいだけ」
「まぁ…気分です…」
「無理だと思う あなたには」
「そう いいわ」
「なら話してあげる」
「どうせ信じないと思うけど」
「ボールが当たった時 多分…古手梨花は死んだと思うんです」
「私 山本たちの知ってる古手梨花じゃないんです」
「私は…オヤシロさまの生まれ変わりなの」
「そして私は 別の世界から来たの」
「同じ雛見沢だけど まったく別の世界」
「そうです」
「昭和58年の後も ずっとのどかな生活が続いて行きます」
「だから私は 元の世界へ帰らなければならない」
「あります…」
「……」
「この水晶玉が羽入と私の通信機の役目を果たすの」
「声が聞こえるの」
「ええ…」
「力が…まだ回復してないの」
「時間がたてば 力は多少回復するようなの」
「その時もう一度試してもらえれば」
「本当に?」
「山本の なんの話を信じるの」
「……」
「何かご用なのですか?」
「お昼休みの事なのですか?」
「沙都子…お椅子で叩いたりとかして ごめんなさいなのです」
「なら どうして呼び止めたのですか」
「……」
「あ…」
「わかりませんです」
「…ゲーム部!」
「部活?」
「自業自得なのですか」
「…お姫様…?」
『そうか』
『この世界の梨花はそんなやつだったのか』
「聞いてますですよ」
「…え」
「ほ 本当にありがとうです」
「とても嬉しく思いますのです」
「いえ…あの…」
「少しだけ心の整理をしたいのです」
「ありがとうです」
「もし お願いするときは どうか」
「この古手梨花をみんなの仲間に加えてやって下さいです」
『圭一も 入江も 羽入もいない』
『でも そのかわり悟史がいて 両親がいる』
『部活はこれから始まるかもしれない』
『沙都子も親友ではないけれど これからなる事もできる』
『レナの言うとおり この世界でも良い思い出をたくさん作れるかもしれない』
「ぁ…」
『私が母親のあたたかさを拒絶したのは…』
『死別する悲しさを和らげたかったからかもしれない』
『昭和56年の運命が変えられないなら 母を嫌いになればいいと』
『でも この世界の母は昭和56年を過ぎてもいなくならない』
『こんな母なら…』
『これからずっと一緒に過ごすのも あたたかで楽しいかもしれない』
『明日のご飯が ハンバーグかサンマの塩焼きか』
『どちからアタリでハズレかの問題じゃない』
『どちらの世界だって 家族で楽しい夕食を過ごせる幸せがある』
『元の世界と この世界のどちらにも優劣はないのだ』
『もしかしたら 元の世界に変える方法なんて どうでもいいのかもしれない』
『私が どちらを元の世界と決めるか』
『それだけの事だったのかもしれないのだ』
「っ!」
「みぃー」
「勝手におしゃべりするなんて 山本はヒドイやつです」
「みっ」
「あれは…」
「山本がしつこく心配するので からかってやったのです」
「ごめんなさいなのです」
「あっ」
「それは…」
「っ!」
『…オヤシロさまの…生まれ変わり!?』
『わ…わたしじゃなくて』
『っ!!!』
『あつい!』
『違う…これは 羽入と同じ力の気配?』
「……」
『お母さんなのだ』
『やっぱりお母さんが カケラを宿しているのだ』

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