適材適所とはよく言ったものだが、人の情熱はそれをも易々と覆すものなのだな
‥‥記者のつぶやき
都市の建物の作りは周辺の気候に合わせて一種類に統一される事が多いが、
ディグシードの建物はレンガ造りと木造の二種類に大別される。
これは建物を建てる地盤の性質が街の東西で大きく異なる事と、
ディグシード近郊が比較的穏やかな気候であるために
住居の快適さのために構造上の工夫をしなくても良い事、
そしてどちらの素材も周辺地域で比較的潤沢に用意できる事による。
まずはレンガ造りと木造の家の双方の特徴を見ていこう。
▽レンガ造りの家
○耐熱性と保温性に優れ、室内や家そのものの温度が急激に変化しない。
そのため夏の昼間に涼しく冬は暖炉を落としてもしばらくは暖かい。
○地震以外のほぼ全ての災害に強く、隙間風とも無縁である。
○外壁(レンガ)部分の経年劣化がほぼ無く、修繕もほとんど必要ない。
×夏の夜はその保温性が仇となり昼間の熱が家から抜けてくれない。
×室内の湿気の調整能力に欠ける(レンガそのものは湿気に強い)。
そのため、建築時に空気の通り道をしっかり設計する必要がある。
×地震にだけは非常に弱い。
×念入りな地均しも含めて、建築時に莫大な初期投資が必要になる。
×費用・労力の両面で修繕・リフォームが非常に困難。
▼木造の家
○建築コストが安い。建て方によっては地均しも簡易的なもので済む。
○費用・労力の両面でリフォーム・修繕・増築が容易に行える。
○室内の湿気の調整能力に優れる。
○その軽さと柔軟さ故に地震に非常に強い。
(ただし重量のかさむ構造で作られた場合はこの限りではない)
×地震以外の各種天災に弱い。さらにカビや虫でダメージを受けやすい。
これらに対し適切な手入れを行わないと上に挙げた長所も発揮できなくなる。
×手入れを欠かさない上でも耐用年数はレンガ造りに比べて短い。
快適に住みたいなら一代に一度は大規模な改修が必要だと思った方がいい。
‥‥このようにほぼ反対の性質を持つ事がお分かり頂けるだろう。
ちなみにダウンタウン以外の三つの通りはレンガ造りが比較的多い。
これは潮騒横丁は遺跡で地盤作りが既にされており地均しの手間を省けるため、
潮風埠頭と細波広場はレンガの「内部の環境を一定に保つ」特性が
様々な品物を保管する倉庫に向いているためである。
逆にダウンタウンはしっかり区画整理された場所でなく地盤が不安定なため、
コストが安く、地面の質に柔軟に対応できる特性を持つ木造住宅が好まれる。
しかし近年は住居の好みの多様化、建築への投資を惜しまぬ市民の増加などから
通りに拘らず様々な建物が建てられ、今までの「伝統的な傾向」が徐々に崩れつつある。
筆者の私見だが、そう遠くない内にこの記事自体が全く意味の無い物になる時が来るだろう。