泣いた紫竜

のっしのっしとアンドレアル改めレミールは山道を歩いていく。
その肩には新たな主人となったデボラを乗せて。

「それでアンタは何が出来るの？　レミール」

「何、とは？」

「アンタさっきの戦闘まったくやる気なかったでしょ。
　手抜きとは言わないけど使わなかった技や道具もあるんじゃないの？
　アタシの下僕となったからにはそういうのちゃんと報告してよね」

レミールは大きく裂けた口端を苦笑するように歪めた。

「承知した主殿」

その音に含まれる響きは皮肉げだった。
彼は袋の中から二つの道具を取り出す。
一つは巨大な斧。その銘はグレイトアックスという。
「唸れ」の言葉をキーワードに後に続く言葉に則した魔力を解き放つことができる。
「真空」の言葉でバギマが。「業火」の言葉でメラミが。「爆音」の言葉でイオラが
それぞれ解き放たれるのだ。

「すごい武器ね。3種類使い分けられるのは便利そうだけどアタシには重過ぎるようだわ」
「人間が使うならかなり力がないと難しいだろう」

次に取り出したのは竜の翼を模したアミュレットだった。
光竜の守り。ギラ系とイオ系の呪文を完全に防ぐアイテムだ。

「あなたが持つがいいだろう」
「あら感心ね、そうやって貢いでくれる心がけは結構だけどアンタはいいの？」

その言に彼は頷く。
彼にはすでにイオ系への完全耐性があり、ギラ系も強耐性を持っている。
そこまで必要なアイテムではないのだ。では何故これがレミールに与えられたのか。
それはエビルプリーストがアンドレアルの能力を完全に把握してなかったからだろうと
レミールは推測している。
そして復活の玉に光竜の守りと強力な生存するための道具が与えられたのは……

「我が魔族四将の中で一番弱い故……だろうな」

「そうなの？　じゃあ他の3人はもっと強いんだ――って
アンタはいびきプラシーボの手下は5匹いるって言ってなかったかしら」

「言ったとも」

もはやプしか共通点のないデボラの指す相手を思いレミールは笑いを堪える。
そしてデボラの勘違いを説明してやるのだった。

「四将、もしくは四天王はピサロ様に使える魔族の幹部4人だ。
　その内一人が件のエビルプリースト、今回の主催者様だ」

レミールが死した後のおおよその事情を把握している。
ピサロを陥れたエビルプリーストは進化の秘法を使い魔王となった。
それを勇者と共闘したピサロが倒し全ては終わった筈だった。

だが何故か復活を果たしたエビルプリーストは神の域まで力を高めており
目的は不明だが時空を超えて参加者を集めこのバトルロワイアルを開催した。

そしてそこに投入されたのが

「奴の切り札【JOKER】の名をもつ5体の魔物だ」

「ふーん、四天王の3体とその他2体ねぇ。つまりアンタは最低でも三番目以下と」

レミールはそれを否定する。おそらく残りの2体も進化の秘法によって強化されている筈であり
かくいうレミールも強化はされているがおそらく5体の中で最弱と考えていた。

「なんでそんなに堂々と情けないこと言ってるのよ。アタシの下僕なんだからもうちょっと気張りなさいよ」

「事実だ。それに情けないとは思わない。我は決して他の4体に勝てない訳ではないからな」

「その武器を使って？」

「いや、己自身の能力のみでだ」

個体の強さという観点のみでならばレミールは弱い……とは語弊があるが、強くはない。
だが戦とはそれだけが勝敗を分ける要素ではないのだ。

「超絶的な技量を持ってるとでも言いたいのかしら？」

「戦いは数だよ、主殿」

得意げに答え、レミールは腕を振り上げ唱える。

「来たれ、我が分身よ」

足元に淡く輝く魔法陣が浮かび上がり、そこからなんともう一体のレミールが
陣からせり上がってきた。

レミールはなかまをよんだ。なんとレミールBがあらわれた。

「レミールがもう一人？」

「これが我が『一族』だ。」

レミールの特性。それは魔法陣から自分の分身を召喚する能力。

「お見知りおきを我が主。我はアンドレアルB、Aから分かたれた分身である」

「アンドレアルではない、我が名はレミールAだ……レミールBよ」

「くっくっく失礼した、そうだったなレミールA」

「な、な……」

「おっと我もいるぞAにBよ。主殿、我がレミールCである」

いつの間にか新たな魔法陣からまたもう1体のレミールが現れている。

「我らは全にして個。個にして全。全てがレミールであり、同じ能力をもつ者だ」

「同時には3体までしか存在できぬ」

「だが例えどの個体がやられてしまっても1体でも残っていれば再び『一族』を呼べる」

「連続で分身を出すのは26体が限度。だが休めばそれも回復しよう」

「は、反則でしょ！？　こんなの勝てるわけないじゃない！！」

レミールAが話す。

「そうでもない、弱点はある」

レミールBが語る。

「我らが分散できるなら無敵にもなれよう」

レミールCが喋る。

「だが我らは互いに目が見えるほどの位置まで離れるのが限界なのだ」

レミールはまるで一個の存在であるかのように順番にデボラに語り聞かせる。

「故に広範囲呪文などで3体同時に倒されたり、分身を呼ぶのが間に合わず全滅」

「もしくは限界の26体を全て倒されると我は死ぬ」

「現に我は勇者に倒され一度死したのだ」

三方向から聞こえてくる声にデボラはこめかみを抑える。
デメリットは理解したがそれでも強力な能力だとわかった。

「……悪いんだけどサラウンドで喋らないでくれるかしら。頭に響くわ」

「おおっと、それは失礼」

レミールは分身を消し、元通り1体となる。

「これが我の力だ。個体は最弱でも3体同時に戦えば他のJOKERと互角以上に渡り合える自信はある」

「さっきこの力を使われていたらアタシも危なかったかもね。それでも勝ったでしょうけど」

「言われた通り我には勝つ気がなかったからな」

道具と能力を封印し個の力だけで挑んだのは武人として死にたいと思ったからだ
だがそれは相手に対しての侮辱に他ならない。武人にあるまじき行為であったと彼は反省する。

「いいわ、許してあげる。アタシは別に武人なんて汗臭い存在じゃないし素直な下僕に対しては寛大なの」

「感謝しよう」

「なるほど、ね。いいわ、認めてあげる。これからもアタシに尽くしなさいレミール」

「応とも」

互いに認め合い、主従の誓いを新たにする。

「ところで」

「何？」

「前方に人影が2つほど見えるのだが接触するか？」

向こうは歩いているのでレミールの歩幅ならば走らずともすぐに追いつけるだろう。

「そうね……って、レミール避けなさい！！」

「何！？」

なんと人影の一人がこちらに向けて呪文を放ったのだ。
撃ちだされた火球の巨大さからそれが上位火炎呪文メラゾーマであることが解る。
レミールは肩のデボラを下して背に庇うと仁王立ちで壁となった。

「レミール！！」

その言葉もかき消し爆炎が疾り――メラゾーマが炸裂した。
爆音が轟き、爆風がデボラの髪をかき乱す。
そして衝撃が収まった時、デボラが見たものは……無傷で彼女の前に立つレミールであった。

「無事……みたいね？」

「我の一族、Bが身代わりとなってくれた。咄嗟の召喚だったがなんとか間に合ったようだ」

「なら、いくわよ！　レディに対してこんな真似してくれて、お仕置きが必要だわ」

「応さ」

デボラは剣を、レミールは巨大な斧を携え駆ける。
相対する2人の影はどうやら男と女性？のようだった。
魔法使いと思わしきメラゾーマを放った相手は紫のローブに何故か鉄仮面という異様な風体をしている。
だがそのローブの上から見た体つきは女性のようだった。
男の方はまるで山賊のような髭面にパリッとした背広にネクタイと洒落たスーツのアンバランスな出で立ち。

（怪しさ大爆発ね）

「お待ち下さい！　誤解です！」

こちらを確認したのだろう鉄仮面の女から制止が入るが、デボラは無視して斬りかかる。
戦闘中止は受け入れるが、それは一撃入れてからにするつもりだった。
問答無用の攻撃に、彼女は怒っていたのだ。
あの怪しい鉄仮面を斬り裂いて素顔を白日の下に晒す。
その一念で振り下ろされた剣だったが、デボラの斬撃は女に『素手で』受け止められた。

「なん……ですって」

「お久しぶりですね、デボラさん……でしたか」

片腕で剣を受け止めた仮面の女性はもう片方の腕で鉄仮面のフェイスガードを上げる。
そこから現れた素顔はデボラに衝撃を与えた。

「あ、あなたはアベルのママ！？」

「む、知り合いなのか」

男のほうに襲いかかろうとしていたレミールはデボラの声を聞いてその動きを止めた。

「アタシの旦那のママよ。どうしてアベルのママがここに……」

「私も訊きたいです。どうしてあなたが主催者の手先と共にいるのかを」

◆

「そういうことだったのですか……」

デボラの説明を聞いてマーサはうなずいた。
マーサはあの広間にいなかったレミールを主催の手先と判断していたそうだ。
その姿を認め、攻撃を仕掛けたというのが先ほどの顛末らしい。

「我はもうエビルプリーストの言いなりになるつもりは無い。命果てるまで主殿に付き従うのみ」

「で？　そちらの髭もじゃさんは誰なのかしら、アベルママ」

「俺はカンｄ……いやパパスというッス」

「は？　アベルのパパァ！？」

グランバニア城で見た肖像画と全く違う姿にデボラは戸惑う。
いや、髭と筋肉質な体は共通しているので、もしや画家に美化させたのかと疑ってしまう。

「いいえ、こちらはこの殺し合いに乗ろうとしたことを悔い、生まれ変わりたいとおっしゃるので
　私の知るもっとも強い戦士の名前をあげたのですわ」

「ちょっとそれは酷くない？　アベルのパパはこの世界の何処かにいるのよ？」

「あの人もわかってくれます」

デボラは絶句する。
あのエビルマウンテンで見たマーサはとても気高く、強い女性だった。
その愛と覚悟に感銘を受け、デボラは彼女に憧れたのだ。
しかし目の前のマーサを名乗る女からはそれが全く感じられない。
それに……

「アタシは名簿を確認したわ。アベルのパパの名前はあってもママの名前は無かった……
　家族以外であったのは憎きゲス野郎の名前ね」

「ゲマのことですね。おそらく私は彼と取り違えられたのだと思います」

そんなことがありえるのかとレミールを見るが、彼もまた訝しげにしていた。

「私もパパスも死んでいる筈なのに今生きてこの場にいる。エビルプリーストに死者蘇生の力があることは確実でしょう。
　そしてゲマでなく私がここにいる理由は……ぇぇと、そう
　おそらく私はゲマと死んだ場所が同じだった為に起こった事故なのではないかと推測します」

「……そう、ところでアベルのママ。アベルは何度も人間に化けた魔族と戦ったって知ってる？」

「……なぜ今そんな話を？」

「それでアイツは人間に化けた魔物を見破る方法を見つけたそうよ。それは……」

マーサは警戒した目をデボラに向けている。

「魔物はね……アタシみたいに高貴な人間がつけている香水の匂いを吸うと――

　　鼻の頭に ―― 血管が浮き出るの」

そういってデボラは自分の鼻先に指先を触れさせた。

「！？」

「へ、何やってんですかいマーサさま？」

「それは、本当なのか主殿？」

マーサは思わず自分の鼻に手をやり、
パパスを名乗る男はそんなマーサを不思議そうに見て、
レミールは驚いてデボラに真偽を確かめる。

「いいえ、嘘よ。　でも……『マヌケ』は見つかったようね」

「「「あ！？」」」

時が静止したかのような錯覚。
マーサを名乗る女の顔にはもう笑みは浮かんでいなかった。
いや違う。
先ほどまでの優しい作り笑顔ではなく、今度は邪悪さを
滲ませるような笑みが浮かんできた。

「ほっほっほ……渋いですねぇ……あなた、本当に渋いですよ……
　参考までに訊きたいのですが何故バレたのでしょう？」

「アベルのママの言葉はそんなに薄っぺらくない。アベルのパパの名前はそんなに軽くない。
　そして何よりあの人はそんな残念なファッションセンスはしていない！」

「おやおや、これ結構悪くないと思うんですけどねぇ……
　まぁあなたのセンスではそうなりますか」

「そのふざけたファッションとムカつく笑い方は覚えがあるわ……
　いつぞやはお世話になったわね、マゲ！！」

「ゲマです」

マーサ―― の姿をしたゲマは嗤う。

「勘違いをしていると困りますが、私は本当にこのバトルロワイアルとやらを阻止したいのですよ。
　その為仲間を集めようとこう変身しているわけですが……あなたとは利害が一致すると思うのですがね？」

「信じられるわけがないでしょ！　アンタがアタシたちに何をしたのか……忘れたとは言わさないわよ！！」

アベルの父パパスを殺した。
アベルを奴隷へと落とした。
アベルとデボラを石化させた。
アベルの母マーサの死の一因となった。
彼女が最も大切に想う家族が、目の前の魔族によってボロボロにされたのだ。
けっして許せるはずも、信じられるはずもない。

「忘れました、と言いたいですが……残念です」

「レミール！」

「応！」

レミールはグレイトアックスをもってマーサの姿をとったままのゲマへと襲い掛かった。

「パパスさん、あの女の足止めをなさい！　このトカゲは私が片づけましょう」

「は、はいぃ！」

カンダタはマホカンタの呪文を掛けられ、そのままデボラのいる方向へ突き出される。

「うおお、こうなりゃヤケだ！　このパパス様の一撃を喰らえぇい！」

「アンタがその名前を言うんじゃないわよ！」

奇跡の剣とパパスの剣が交差し、火花が散る。

◆

巨大な戦斧が空気を裂き、ゲマの頭頂をカチ割らんと迫る。
だがそれを危なげなくかわすと隙のできた脇腹へめがけて拳を突き出した。

衝撃。

見るからに魔法使い然とした姿からは想像もつかないほどの威力がレミールの臓腑を抉る。

「グフゥッ」
「他愛のない、とどめで――」

最後まで言うことはかなわず、ゲマは突然現れた殺気に反応しその場から飛びのいた。
一瞬の後にゲマの頭部があった場所を鋭い爪が通過する。
そこにはレミールが召喚したレミールＣがいたのだ。
さらにゲマは横っ飛びに地に伏せる。やはり先ほどの場所を竜の尾が薙ぎ払っていた。
レミールDの攻撃だった。
不意討ちを完全に回避され、レミールACDは一度距離を置いてゲマを窺う。

「これは……あの竜が召喚したのですか」

「いくぞ、トライアングルフォーメーション！」

三体のレミールはゲマを囲い込み、同時に攻撃を仕掛ける。
回避する隙は無い……筈であったが、ゲマは最初に攻撃を当てたレミールAの動きが
僅かに遅れていることに気づいていた。
レミールCとDの攻撃を紙一重で回避するとワンテンポ遅れたレミールAへと向かって突進する。
それを迎え撃つべくレミールは斧を振るった。

「唸れ、轟火よ！」

「遅いですよ」

グレイトアックスから発される炎を半身でかわし、それが地面に着弾する前に上へと跳ぶ。

「唸れ、真空！」

「この程度！」

巻き起こる真空の渦が空中のゲマを捉える。

しかし呪文耐性の強いゲマはその渦を力尽くで振り払った。

「唸れ、爆音！」
「メラゾーマ！」

再び振るわれた斧の魔力に対しゲマは火炎呪文を放った。
両者の魔力が空中で炸裂し、爆炎が互いの視界を染める。
その一瞬の隙を付いてレミールの頭上からゲマが強襲。
迎撃すべくグレイトアックスを振るうが、それはゲマの爪によって軌道を逸らされた。
レミールの体が泳ぎ、致命的な隙を見せたその脳天にゲマの拳が打ち付けられた。

「グァァアア！」

レミールAは地に叩きつけられ、弾みでグレイトアックスがその手を離れ宙を舞う。
ゲマはそれをキャッチすると振り向きざまに迫っていたレミールCDを同時に薙ぎ払った。
レミールCの首が飛び、Dは腕が切断される。
動きが止まったその瞬間、ゲマの美貌から激しい炎が吐き出された。
紅蓮の奔流に巻き込まれた2体は黒焦げになって吹き飛んだ。

「ふぅ、これで終わり……」

言葉を止め、ゲマはレミールAに振り向いた。
そこにはかろうじて立ち上がったレミールAと
再び召喚されたレミールEとFが立ちふさがっていた。

「小癪！」

ゲマは相手の更なる増援に備える……が、一向に増える様子はない。
瀕死のレミールAは折れた様子なくゲマを睨んでいる為、
出来るのならば更に仲間を呼ぶとゲマは考えていた。

「なるほど……三体までしか存在できないのですね？
　おそらく攻略法は仲間を呼ぶ隙を与えずに全滅させること、と」

「「「出来るならやってみるがいい！！」」」

レミールAEFは同時に高熱のガスをゲマに向かって吐き出した。

「なんですか、その哀れなブレスは」

ゲマは嗤いながら冷たく輝く息を吐きだす。
高熱のガスはゲマの輝く息によって吹き散らされ、霧散。
更に凍気は無数の氷の矢と化してレミール達を貫いた。

レミールAは即死し、レミールEとFも全身が凍り付いてしまう。

「ぐ、ぐぅ……ここまでの力の差があるとは……」

「さぁ今度こそトドメです」

凍り付いたレミールEにグレイトアックスを振り下ろし、Eは粉々に砕け散る。
そして返す攻撃でFを砕き散らそうとしたその時、ゲマは振り向いて襲い来る攻撃を受け止めた。

「やらせないわよ！」

「チッ、パパスは何をやっているのですか……」

斬りかかってきたのは予想通りのデボラ。
カンダタの姿を探せば少し離れた場所で気を失っていた。

「なんと使えない奴でしょう」

そう吐き捨てると今度はデボラに向かい焼け付く息を浴びせた。
剣で斧と鍔迫り合っていたデボラにこれを回避することはできない。
抵抗虚しく、彼女は麻痺に侵されその場に膝をついた。

「しま……った……」

「殺しはしません。あなたは利用価値がありますからねぇ……だから」

「主殿！」

そこに新たに出現したレミールGがゲマへと迫る。

「しつこい！」

ゲマの双掌から放たれた青い輝きがデボラと迫るレミールを包み込む。
光が収まった時、そこに存在するのはデボラとレミールFとG、3体の石像だった。

「ほっほっほ……再び石と化した気分はどうですかなデボラ王妃様？
　あなたは交渉に使えるかもしれませんからな、命はとりませんとも」

そうしてゲマはデボラの石像を袋の中へと放り込んだ。

「しかし……愚かなあの小物の走狗など必要ない。虫唾が走ります！」

グレイトアックスが無慈悲に振るわれ、レミールFとGの石像は破壊された。

「ほっほっほっほ……正義の道はなんと険しいことか。さぁ行きますよパパス！
　いつまで寝ているのですか！」

「ハイィイ！　あ、あれ？」

気絶しているカンダタを叩き起こし、ゲマはまた進みゆく。
このバトルロワイアルを壊す、仲間を集めるために。

◆

散乱するレミールの遺体。その中で五体満足に残っていたのはレミールAのもの。
その体がぐらり、と揺れた。

Aの死体を押しのけて下から現れたのは……レミールH。

最後の攻防の時に全滅を避けるために隠れていたのである。
死体から這いだした彼の胸にあるのは嘆きと不甲斐なき己への憤怒だった。

「申し訳ありませぬ主殿……必ず、お助けします……どうか、それまで……生きて……」

レミールは崩れ落ち、号泣する。
涙を見せるなど武人にあるまじきこと。
しかしそれでも自分の情けなさに内から溢れ出る激情を、彼は押しとどめる術を持たなかった。

.

【H-1/山/午前】
【ゲマ＠DQ5】
　[状態]：HP9/10　MP4/5　マーサの姿
　[装備]：てっかめん　グレイトアックス@ダイの大冒険
　[道具]：支給品一式　変化の杖　デボラの石像
　[思考]：この殺し合いをぶち壊す。

【カンダタ＠DQ3】
　[状態]：HP1/2　素顔
　[装備]：おしゃれなスーツ、パパスのつるぎ　
　[道具]：支給品一式　こんぼう
　[思考]：マーサ（ゲマ）に従いエビルプリーストを打倒する。あとパパスって名乗る。

【デボラ@DQ5】
　[状態]：石化（装備ごと石化しています）
　[装備]：奇跡の剣、ダイヤモンドネイル、水の羽衣光竜の守り@DQ8
　[道具]：支給品一式
　[思考]：自分を貫き、エビルプリーストに反逆する

※石化の術はDQ5本編よりも弱体化しています。
　呪いの解呪方法や上位の状態異常解除方法ならば石化を解ける可能性があります。
　（シャナク、万能薬、月のめぐみ等）

【I-1/山/午前】
【レミールH @JOKERアンドレアル】
　[状態]：健康　分身残り　18/26
　[装備]：なし
　[道具]：支給品一式
　[思考]：基本方針；新たな一生を歩み、エビルプリーストに抗う
　　　　　第一行動方針：デボラを救出する方法を探す

Back←	039	→Next
035:消えた命は紡がれて	時系列順	041:欲深き者
038:彼の翼になれたなら	投下順	040:事件の鍵はすぐ隣
029:REBELLION	レミール	068:バラモスの憂鬱／救済
029:REBELLION	デボラ	74:対策、新たなる姿
031:Raise Your Hands	ゲマ
031:Raise Your Hands	カンダタ