事件の鍵はすぐ隣
最終更新：ID:myxAbLg0qQ 2016年04月25日(月) 21:10:00履歴
閑散とした村。
ひとつの死体とひとりを除き、そこに人は誰もいない。
村を賑わすのは、たったひとつの金属音。
しゃきーん しゃきーん
ベッドにおおばさみを突き刺し、勢いよく閉じて引き抜く。それを数回繰り返す。
樽の中におおばさみを突っ込み、何度も開閉しては引き抜く。ただの木片となった樽がパラパラと地に崩れる。
村の中を見回す。
誰も、いない。見当たらない。
隠れている者もいなかった。民家の中にもいなかった。
ならば。
次は。
どこへ行く？
ゆっくりと首を動かす。
村の門。出入口の門。
しゃきーん しゃきーん
鳴り止まない金属音。
立ち止まらない足。
もうここに人はいない。
ならば。
次は――
「ふう、やっと外に出られました」
リーザス像の塔を下りてきたスクルドは、軽く伸びをして息を吐いた。
天使信仰を取り戻すという目的の元に行動を始めたはいいが、回転扉などの仕掛けに思いの外食い止められ、中々に時間がかかってしまった。
最も、一番悩まされたのは最後に立ちはだかった門だったが。
押したり引いたりするのに疲れて座り込み、ふと見上げた時に隙間に気付かなければ、塔の中に閉じ込められていたかもしれない。
上に持ち上げる扉なんて普通は設置しないだろうと軽く地団駄を踏んだのは内緒だ。
「あとは真っ直ぐ行けば、村があるんでしたよね」
地図を見ながら確認するように呟く。
行動の拠点にできる村ならば、遅かれ早かれ人が集まってくるだろう。
人を殺すにしても協力者を探すにしても、誰にも出会わなければどうしようもない。
地図をしまうと、スクルドは道を踏みしめた。
その足取りはどこか意気揚々としている。
女神セレシアが復活して以来、スクルドの気持ちが晴れることはほとんどなかった。
崇拝していた天使様にはおいていかれ、天使様を忘れた人々には奇特の目で見られ。
これがどうして沈まずにいられようか。
だが、天使信仰を復活させられるまたとないチャンスがやってきたのだ。
祈りが届かない日々とは違う。
手を伸ばせば、この身を砕けば願いは届く。
これがどうして喜ばずにいられようか。
こんなに軽やかに歩くのは、あの旅以来かもしれない。
踏みしめる一歩ごとに、天使様が近付いてきてくれるような気がした。
しゃきーん しゃきーん
それが聞こえ始めたのは、村の囲いに差し掛かってきた頃だった。
既に誰かが斬り結んだりしているのだろうかとも思ったが、それにしてはどこか不自然過ぎる。
刃物のような音以外は何も聞こえないし、その音はゆっくりと移動している。
もし戦闘が行われているのなら忙しない足音が聞こえてもいいはずだし、のんびりと動く余裕もないだろう。
何かの罠ではと警戒し、スクルドは歩みを止めて囲いに張り付き様子を窺う。
と、ほぼ同時に。
それが姿を現した。
漆黒の衣、手に取り付けた大振りの刃物。
おぞましい姿に上がりそうになった悲鳴をなんとか抑え込む。
距離が空いているため顔ははっきり分からないが、参加者名簿で見た覚えはない者だ。
あれが手にしている刃物は、まるで獲物を求めるかのように一定間隔で不気味な音を鳴らしている。
背筋が凍るようなその唸りは、聞く者全てに害意があると囁きかけているようにすら思えてしまう。
少なくとも、ただ仲間を探しているだけの者でないのは確実だろう。
あの音を聞けば余程危機感が薄い者でもない限り、まず間違いなく近寄らない。
だが殺し合いに乗っているにしても、常に自らの居場所を知らせる音を蒔き散らすというのは、どう考えても不利にしか為りえない。にも関わらず、あれは音を止める様子がない。
人間というのは、自身に理解できないものに恐怖心を抱き易い。
経験則がなく、自分の常識が通用しないものなど、恐怖以外の何物でもない。
――おぞましい出で立ち。
――騒ぎ続ける金属音。
――理解の範疇を超えた行動。
スクルドがそれに恐怖の烙印を捺したのは、無理もないことだろう。
今のところあれはこちらの反対側を向いて周囲を確認しているらしく、暫くは気付かれそうにない。
ならばとそっと囲いから離れ、物音を立てないように海岸線へ駆けていく。
入口を塞がれている以上、村には入れない。
塔に隠れるという選択肢もあるが、逃げ場がない上に、自分以外には誰もいなかったのは確認済みだ。
万が一あれが登ってくれば、為す術もなく殺されるだろう。
となれば、選ぶべき道はひとつ。
(海辺の方で、力になってくれそうな人を探しましょう！)
アークを優勝させようとは決めたが、あれを自分ひとりで殺害できるとは到底思えない。
ここはあれと渡り合える者を探し出し、早めに対処してしまうのが得策だろう。
怪しまれないよう自身も回復などでサポートし、倒してもらった後に余裕があれば協力者を後ろから槍で突き刺す。
余裕がなければなんとか信用を勝ち取り、同行しつつ隙を窺う。
そしてもし協力者がやられそうならば、囮になってもらいこっそりと逃げる。
頭の中でプランを立てている内に、村と海辺を隔てる岩山に近付いてきた。
もう少しであれの視界から逃れられる。
そう思い、ちらりと村の入口を振り返ると。
――あれと目が合った、気がした。
顔と大振りの刃物が真っ直ぐこちらを向いている。
先程は分からなかった般若の視線がじっとこちらを射抜いている。
村から出てきた時よりも素早くこちらに駆けてくる。
あの刃物の不気味な音が段々大きく迫ってくる。
しゃきーん しゃきーん
最早足音を殺すのをやめ、スクルドは全速力で走り出した。
見つかったのなら、もう忍ばせる必要はない。
大事なのはただひとつ。
――あれに捕まらないことだけだ。
ここで死ぬわけにはいかない。
望みを断ち切られるなど、真っ平御免だ。
迫りくる音と恐怖に震え上がりながら、それでも頭のどこかでこれはチャンスだと言う自分がいた。
恐ろしいモノに追いかけられ助力を求める僧侶。誰がそれを見て殺し合いに乗っていると思うだろうか。
これはきっと天使様の試練であり、それと同時にお導きでもあるに違いない。
ならばこの試練、必ずや乗り越えてみせようではないか。
もっと近付いていれば、感じられたかもしれない。あれが身に付けている邪面の呪力を。
解呪の力を持つ僧侶である自分なら対処は可能だと、気付けたかもしれない。
――だが、誰が好き好んであの恐ろしいものに近付くだろうか。
気付けないのも仕方がないことかもしれない。
彼女は彼の解呪の鍵。
彼は彼女の作戦の鍵。
事件の鍵は、いつも事件のすぐ隣に隠れている。
しかし互いが互いに、自分の持つ鍵に気付けない。
しゃきーん しゃきーん
音はまだ、鳴り止まない。
鋏音が断ち切るのは、ハーゴンの呪いか、スクルドの望みか。
それとも――
【I-6/森/1日目 朝】
【スクルド（僧侶♀）＠DQ9】
[状態]：健康
[装備]：ホーリーランス
[道具]：支給品一式 支給品0〜2（本人確認済み）
[思考]：アークを優勝させる
海辺方面に行き共に追跡者と戦ってくれる者を探す
【I-6/平原/1日目 朝】
【ハーゴン@DQ2】
[状態]：混乱？ 般若の面により防御力超上昇 闇の衣により回避率上昇
[装備]：般若の面@DQ3 闇の衣@DQ8 大鋏@DQ3
[道具]：支給品一式
[思考]：？？？（呪いの影響により方針不明）
正気の時の行動方針
1：主催に反抗し､脱出する
2：ピサロという男を探す
ひとつの死体とひとりを除き、そこに人は誰もいない。
村を賑わすのは、たったひとつの金属音。
しゃきーん しゃきーん
ベッドにおおばさみを突き刺し、勢いよく閉じて引き抜く。それを数回繰り返す。
樽の中におおばさみを突っ込み、何度も開閉しては引き抜く。ただの木片となった樽がパラパラと地に崩れる。
村の中を見回す。
誰も、いない。見当たらない。
隠れている者もいなかった。民家の中にもいなかった。
ならば。
次は。
どこへ行く？
ゆっくりと首を動かす。
村の門。出入口の門。
しゃきーん しゃきーん
鳴り止まない金属音。
立ち止まらない足。
もうここに人はいない。
ならば。
次は――
「ふう、やっと外に出られました」
リーザス像の塔を下りてきたスクルドは、軽く伸びをして息を吐いた。
天使信仰を取り戻すという目的の元に行動を始めたはいいが、回転扉などの仕掛けに思いの外食い止められ、中々に時間がかかってしまった。
最も、一番悩まされたのは最後に立ちはだかった門だったが。
押したり引いたりするのに疲れて座り込み、ふと見上げた時に隙間に気付かなければ、塔の中に閉じ込められていたかもしれない。
上に持ち上げる扉なんて普通は設置しないだろうと軽く地団駄を踏んだのは内緒だ。
「あとは真っ直ぐ行けば、村があるんでしたよね」
地図を見ながら確認するように呟く。
行動の拠点にできる村ならば、遅かれ早かれ人が集まってくるだろう。
人を殺すにしても協力者を探すにしても、誰にも出会わなければどうしようもない。
地図をしまうと、スクルドは道を踏みしめた。
その足取りはどこか意気揚々としている。
女神セレシアが復活して以来、スクルドの気持ちが晴れることはほとんどなかった。
崇拝していた天使様にはおいていかれ、天使様を忘れた人々には奇特の目で見られ。
これがどうして沈まずにいられようか。
だが、天使信仰を復活させられるまたとないチャンスがやってきたのだ。
祈りが届かない日々とは違う。
手を伸ばせば、この身を砕けば願いは届く。
これがどうして喜ばずにいられようか。
こんなに軽やかに歩くのは、あの旅以来かもしれない。
踏みしめる一歩ごとに、天使様が近付いてきてくれるような気がした。
しゃきーん しゃきーん
それが聞こえ始めたのは、村の囲いに差し掛かってきた頃だった。
既に誰かが斬り結んだりしているのだろうかとも思ったが、それにしてはどこか不自然過ぎる。
刃物のような音以外は何も聞こえないし、その音はゆっくりと移動している。
もし戦闘が行われているのなら忙しない足音が聞こえてもいいはずだし、のんびりと動く余裕もないだろう。
何かの罠ではと警戒し、スクルドは歩みを止めて囲いに張り付き様子を窺う。
と、ほぼ同時に。
それが姿を現した。
漆黒の衣、手に取り付けた大振りの刃物。
おぞましい姿に上がりそうになった悲鳴をなんとか抑え込む。
距離が空いているため顔ははっきり分からないが、参加者名簿で見た覚えはない者だ。
あれが手にしている刃物は、まるで獲物を求めるかのように一定間隔で不気味な音を鳴らしている。
背筋が凍るようなその唸りは、聞く者全てに害意があると囁きかけているようにすら思えてしまう。
少なくとも、ただ仲間を探しているだけの者でないのは確実だろう。
あの音を聞けば余程危機感が薄い者でもない限り、まず間違いなく近寄らない。
だが殺し合いに乗っているにしても、常に自らの居場所を知らせる音を蒔き散らすというのは、どう考えても不利にしか為りえない。にも関わらず、あれは音を止める様子がない。
人間というのは、自身に理解できないものに恐怖心を抱き易い。
経験則がなく、自分の常識が通用しないものなど、恐怖以外の何物でもない。
――おぞましい出で立ち。
――騒ぎ続ける金属音。
――理解の範疇を超えた行動。
スクルドがそれに恐怖の烙印を捺したのは、無理もないことだろう。
今のところあれはこちらの反対側を向いて周囲を確認しているらしく、暫くは気付かれそうにない。
ならばとそっと囲いから離れ、物音を立てないように海岸線へ駆けていく。
入口を塞がれている以上、村には入れない。
塔に隠れるという選択肢もあるが、逃げ場がない上に、自分以外には誰もいなかったのは確認済みだ。
万が一あれが登ってくれば、為す術もなく殺されるだろう。
となれば、選ぶべき道はひとつ。
(海辺の方で、力になってくれそうな人を探しましょう！)
アークを優勝させようとは決めたが、あれを自分ひとりで殺害できるとは到底思えない。
ここはあれと渡り合える者を探し出し、早めに対処してしまうのが得策だろう。
怪しまれないよう自身も回復などでサポートし、倒してもらった後に余裕があれば協力者を後ろから槍で突き刺す。
余裕がなければなんとか信用を勝ち取り、同行しつつ隙を窺う。
そしてもし協力者がやられそうならば、囮になってもらいこっそりと逃げる。
頭の中でプランを立てている内に、村と海辺を隔てる岩山に近付いてきた。
もう少しであれの視界から逃れられる。
そう思い、ちらりと村の入口を振り返ると。
――あれと目が合った、気がした。
顔と大振りの刃物が真っ直ぐこちらを向いている。
先程は分からなかった般若の視線がじっとこちらを射抜いている。
村から出てきた時よりも素早くこちらに駆けてくる。
あの刃物の不気味な音が段々大きく迫ってくる。
しゃきーん しゃきーん
最早足音を殺すのをやめ、スクルドは全速力で走り出した。
見つかったのなら、もう忍ばせる必要はない。
大事なのはただひとつ。
――あれに捕まらないことだけだ。
ここで死ぬわけにはいかない。
望みを断ち切られるなど、真っ平御免だ。
迫りくる音と恐怖に震え上がりながら、それでも頭のどこかでこれはチャンスだと言う自分がいた。
恐ろしいモノに追いかけられ助力を求める僧侶。誰がそれを見て殺し合いに乗っていると思うだろうか。
これはきっと天使様の試練であり、それと同時にお導きでもあるに違いない。
ならばこの試練、必ずや乗り越えてみせようではないか。
もっと近付いていれば、感じられたかもしれない。あれが身に付けている邪面の呪力を。
解呪の力を持つ僧侶である自分なら対処は可能だと、気付けたかもしれない。
――だが、誰が好き好んであの恐ろしいものに近付くだろうか。
気付けないのも仕方がないことかもしれない。
彼女は彼の解呪の鍵。
彼は彼女の作戦の鍵。
事件の鍵は、いつも事件のすぐ隣に隠れている。
しかし互いが互いに、自分の持つ鍵に気付けない。
しゃきーん しゃきーん
音はまだ、鳴り止まない。
鋏音が断ち切るのは、ハーゴンの呪いか、スクルドの望みか。
それとも――
【I-6/森/1日目 朝】
【スクルド（僧侶♀）＠DQ9】
[状態]：健康
[装備]：ホーリーランス
[道具]：支給品一式 支給品0〜2（本人確認済み）
[思考]：アークを優勝させる
海辺方面に行き共に追跡者と戦ってくれる者を探す
【I-6/平原/1日目 朝】
【ハーゴン@DQ2】
[状態]：混乱？ 般若の面により防御力超上昇 闇の衣により回避率上昇
[装備]：般若の面@DQ3 闇の衣@DQ8 大鋏@DQ3
[道具]：支給品一式
[思考]：？？？（呪いの影響により方針不明）
正気の時の行動方針
1：主催に反抗し､脱出する
2：ピサロという男を探す
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ハーゴン | 067:CURSE | |
005:ああっ天使さまっ | スクルド |
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