『Ceonsoyclopedlia』は、Censor(検閲)にまつわるEncyclopedlia(百科事典)です。旧称『表現規制用語集』。民主主義社会の根幹をなす最重要の「人権」である表現の自由――その規制・弾圧・バッシングにまつわる事例や用語について、あらゆる知識を保存伝達するためのサイトです。

 2020年3月、東京オリンピック・パラリンピック開閉会式の演出を担当する「総合統括」をつとめるクリエーティブディレクター佐々木宏氏が、チームメンバーに送信したLINE上で出したアイディア。
 恰幅の良い体型でおなじみのタレント渡辺直美氏に「オリンピッグ」なるブタの姿に扮してもらうというもの。

 1年後の2021年3月に『週刊文春』に暴露されたことでスキャンダルとなった。
 渡辺氏に対する「侮辱的」「差別的」であるとしてバッシングを受け、佐々木氏は直ちにといって良いほどスピーディに辞任した。
 
 しかしそもそも、これはあくまで「ネタ出し」の際の候補に過ぎない。こうしたクリエイティブの製作にあたっては、最初にとにかくアイディアを沢山出すものであり、その後の選別過程で「差別的」だとか「不謹慎」なものは削除され、あるいは適切な形に修正されていくものだ。
 実際にこのアイディアはメンバーに不評であり、早い段階で没案となっている。
 週刊文春がこのスクリーンショットを入手したのは、佐々木氏に反感を持つ関係者のタレコミ以外にないと思われるが、このようなボツネタを「スクショして週刊誌に垂れ込む」という行為に正当性はまったくない。

 またこの最初の段階でさえ、佐々木氏は「可愛く見せる」ことを前提として書いており、べつだん侮辱しようとしているわけではない。
 チーム内でも「女性を豚に喩えるのはあり得ない」とする意見があったようだが、そもそも渡辺直美氏自身、実際に、みずから豚の仮装をしたことがある。テレビ東京のバラエティ番組『ピラメキーノ640』(2009〜2010)のなかで「ピッグレディ」なる歌手に扮している。はっきり言って駄洒落のレベルとしてはオリンピッグと大して変わりはない。
 渡辺氏は「太っていて何が悪い!」というスタンスで自身の体型をポジティブに捉えているからこそ、そういう演出にも挑んでいるのである。

 また自身のインスタグラムでもこのような投稿をして、自身を豚になぞらえている。 

 3月19日には否定的な態度を強調するようになったのだが、これは世論が「非難しなければならない」という空気になった以上、タレントとして仕方が無い迎合とも言えるだろう。特に彼女は今、アメリカ進出を控えているための打算もあると考えられる。

 また日本には「変身すると豚になる美少女ヒロインのアニメ」というものが実在する。1994〜95年に放映された『とんでぶーりん』がそれだ。もちろん「作中でヒロインを惨めに扱うブラックなアニメ」でもなんでもなく、である。

(右側の豚の姿が本編中の「変身後」)

 つまり女性が「豚になる」からといってそれが侮辱や差別を意味するということには直結されることにはならない。
 仮に「オリンピッグ」が没にまではならなかったとしても、渡辺氏のそれまでのスタンスを取り入れ、具体化される頃にはむしろ体型をポジティブに評価するようなものになっていった可能性は大いにあるだろう。
 渡辺氏が豚になるというアイデアがそれ自体をバッシングし、提案者を辞任に追い込むような話では、本来全く無いのである。


 最後に、佐々木氏の「オリンピッグ」案をバッシングした「左派」「フェミニズム」系の人々が、これまで豚という動物をどのような比喩に用いていたか、再確認して本稿を終わることにしよう。



参考リンク・資料:
渡辺直美さん侮辱演出を提案 東京五輪開閉会式の総合統括 文春報道
「渡辺直美をブタ=オリンピッグに」東京五輪開会式「責任者」が差別的演出プラン
”オリンピッグ”問題で東京五輪・パラ開閉式演出の佐々木宏さんが辞意 「取り返しのつかないこと」と事実認め陳謝
フット岩尾、「メス豚とか言うなら侮辱だが…」渡辺直美への不適切演出に私見

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