Censoyclopedia：センサイクロペディア

　2018年の5月3日、鎌倉生涯学習センターで開かれた鎌倉市主催の講演会。
　イベントそのものは無事行われていたのだが、講演者の選定過程で、憲法学者の木村草太首都大学東京教授（当時）を、鎌倉市が拒否していたことを、2021年になって東京新聞が報じた。
　2017年まで市と実行委員会の共催だったが、2018年から主催を市、企画運営を実行委と分担されることになった。
　実行委は2018年2月に木村氏を含む3名を講演者候補として選定したが、市の担当者側から「少々政治的要素が見られる」と難色を示されたという。委員会ではそのときの会議で名前が出た2名をあわせ、計5名の候補を出して再度かけあったが、このときも第一候補は木村氏であったという。
　後日、担当者は東京新聞の取材に対し、「「事業実施に当たっては行政の中立性を損なわない内容が前提。憲法記念日のつどいで憲法学者が講演すると憲法九条にも言及する懸念があり、木村氏の講演は遠慮願いたいと実行委に伝えた」と言っている。　
　木村氏は同紙取材に「憲法学を専攻する学者が、憲法記念日に憲法について解説する講師として不適切な合理的な理由は考えにくく、差別に当たる可能性がある。学者が九条を分析すれば、改憲・護憲どちらかに有利になることはあり得るが、それで行政が政治的中立性を害したことにはならない」とコメントした。

　そもそもが憲法をテーマとして全く政治と無関係な講演をするのは、第何条に言及するにせよ困難である。
「行政の中立性」とは、どの政治的立場の者にも公共財や行政サービスを利用して意見発信する機会が開かれ、そのプロセスに中立が求められるという意味でなければならず、特定の政治的立場の者を排除するのはむしろ行政の中立性に違背すると考えるのが妥当であろう。
　でなければ、左右いずれにせよ公民館を使った講演会も、公立博物館の「政治的な」歴史系の企画展も全く開けなくなる。
　
　ネット上では当然、左派系のアカウントがこぞって木村氏を応援し鎌倉市の決定を批判している。
　ただし彼らの多くが、【一橋大学KODAIRA祭百田尚樹講演会】や【千葉麗子『くたばれパヨク』出版記念サイン会】など、右派系の者が講演会やイベントを抗議で中止させられたりした場合には、快哉を叫ぶか少なくとも一切批判しないという態度を取っており、その矛盾が指摘されてしかるべきことは言うまでもない。

参考リンク・資料：
【独自】憲法記念日の講演に憲法学者・木村草太さんの起用ＮＧ　鎌倉市が「9条に言及する懸念」で拒否
憲法記念日の講演・木村草太さんを２度提案も…「拒まれて驚いた」と鎌倉市の実行委経験者