Censoyclopedia：センサイクロペディア

　BLとはボーイズラブの略で、男性同性愛を扱う創作物を指す。男性同性愛者自身よりも、俗に「腐女子」と呼ばれる女性ファンによって製作・嗜好されるのが特徴であり、20世紀には「やおい」と俗称されていた。
「BL無罪」とは一言でいえばBLの有害性や非道徳性の否認、あるいはそれらにもかかわらずBL表現の自由を擁護する意見のことである。
　言うまでもなく表現の自由の観点からは、BLもまた他の性癖と同様に自由であるべきこと自体は正論である。

　ただしBLファン女性*1の中には、男性向けの性表現を蛇蝎のごとく嫌って規制や排除を唱えながら、自分自身が好むBL作品のこととなると打って変わって擁護する――というダブルスタンダード丸出しの者が少なくない。特にBLファンとフェミニストを兼ねている女性に、顕著にその傾向が見られる。
　しかもその言い分はほとんどの場合、男性向けのポルノや萌え作品に対して彼女達自身が向けてきた非難に、男性やファンが返してきた反論とまったく重複している。もしくはそれ以上に原始的で感情的な反発に過ぎないことが多い。
「BL無罪」という言葉は、主にこうしたBLファン女性たちの手前勝手なBL擁護意見を指して言われる。


　以下引用ははてなブログ「twitterのBLポリコレ論争が面白すぎる」よりの抜粋である。

めちゃくちゃ笑った意見の数々を抜粋するね！

・「作者ほとんど女性の女性向け作品にガチな人向けの適正な表現求めるのはそもそも違うのでは」

→男性が作っている男性向け作品の女性描写、完全に許された……！

・「ポリコレはリバ促進キャンペーンではなくない……？」

→それ我々男オタクがさんざん言ってきたやつー！　「『女性らしい女性キャラ』を追放する運動になってない？」「別に巨乳キャラがいたっていいだろ……」ってさんざん言ってきたやつー！

・「腐女子はゲイがBLをロールモデルにしていることを前提として創作活動を行っているわけではないし、あなたが勝手にBLを読んで固定観念に縛られていただけでは？」

→お、おう、そうだな……少年漫画のステレオタイプな女性描写によってジェンダーロールを内面化、みたいな批判にも、勝手にジェンダーロール満載のマンガを読んで固定観念に縛られていただけでは？　と返していこうな……

・「あなたは最近、BL作品を読まれましたか？」（以下、最近のBLでは色んなCPの在り様があるという話が続く）

→エロゲーや萌えアニメやライトノベルの内容ちゃんと把握した上で叩いてんのかよ？　お前らの脳内のイメージを叩いてるだけだろ！　ってのも俺らはさんざん言ってきたよな……

「あれは内容的にも意味不明な一般の人(非作家/非研究者)のお気持ちツイートなので、下手にRTして拡散に加担するのはやめて欲しい」

→当事者の告発を無効化するやつだ……

　BLファンの中には「BLは男性向け性表現と異なり、十分な自粛を行っているので、規制の必要はない」と叫ぶ者もいる。
　しかしそれは嘘である。BLの性表現は男性向けに劣らず過激なものがいくらでもある。また、男性向けなら18禁になっているような過激な内容のものが、年齢制限なしに売られていることは珍しくない。「間違えて見てしまう」人だって後を絶たない。
　さらに言えば、男性向けの性表現に対して頻繁に規制派フェミニストが口にする言い掛かり「性犯罪を冗談として済ませている」だとか「被害者が性的被害を許してしまう」などといったものも、別にBLは排除してなどいない。上下関係や金銭関係を介したセックスの強要も、覗き・盗撮・強姦などの性犯罪シーンもふんだんにある。
　未成年の性描写だって盛んだ。1980年代、初期のコミケで特に盛んにこうしたBL同人*2のターゲットとなっていた【キャプテン翼】のキャラクターは小中学生、『聖闘士星矢』の主人公たちは15歳である。
　さらに性的虐待をきっかけに男性がゲイの歓びに「目覚め」るという展開さえある。これは男性向けポルノの規制を叫ぶ勢力が特に敵視する「レイプ神話」と呼ばれるものであるが、BLの場合は最も広く知られている作品や全年齢作品にすら平気で登場する。たとえばヨネダコウ『囀る鳥は羽ばたかない』の矢代や、魔夜峰央『パタリロ！』に登場するバンコランの過去編がそうである。
　なお、これは作品が古いから許されていたということではなく、上記『パタリロ！』のバンコランのエピソードは2019年の実写映画版にも登場している。

　ではどうして彼女らは「自粛している」と自分で思い込んでいるのだろうか。
　それはBLジャンルの内部で、彼女ら同士が好みでない性表現を排撃しあっているからだ。その「好みでない」理由も別に信念や外部に対する社会的配慮に基づいていたりするものではなく、早い話がカップリング、つまり「キャラAとBとの同性愛でどちらが男役をつとめるか」とかいうものである。
「腐女子」たちは自分の嗜好と異なる作品を見せられると本気で敵対しバッシングをし合うのである。男性向けの「ポルノ漫画」のファン達からは理解しがたいことなのだが、女性達はそうするのだ。そんな自分達自身の異常な攻撃性に対する恐怖心から、彼女らは自分達の作品が誰と誰の、どちらが男役の組合せかを明記したり*3、「敵対勢力」の目に触れるのを避けるようになった。
　要するに女子同士のイジメ・内ゲバの恐怖を「自分たちは男よりマナーを守って自粛している」と脳内変換しているに過ぎないのである。

　また「BLは同性愛・ゲイの人権を重視して寄り添う意識の高い、リベラル的思想を学ぶジャンルである」という自己弁護もある。

　これも嘘である。彼女らはただ欲望のままに描いているだけだ（もちろんそれは正当なことである）。
　むろん同性愛者の何らかの実態をBL作家が知った場合、それが自分の趣味・創作に都合が良ければ取り入れることはある（男性向けポルノの作家もまたそうであるように）。だが同性愛者の実態が彼女たちの欲望に沿わない場合、彼女らは平気でリアリティを、現実の同性愛者の正しい姿のほうを切り捨てるのだ。
　プロのBL作家である水戸泉氏に至っては「同性愛者の人権向上を目的に執筆しているBL作家など会ったこともない」と断言している。

　
　ちなみに先述の「どちらが男役か」ということへのこだわりも、まさに現実のゲイと腐女子のニーズとのズレの一例である。
　どちらが男役かは、彼女らのあいだで頻繁な内ゲバの原因となるほど非常に重要な「こだわり」をもたらす嗜好差であるため、同じ作者・作品内でこれが逆転することは少ない。しかし現実のゲイカップルではこうした「役割交代」は珍しくないらしく、BLの同性愛描写は現実に反し、偏見さえもたらすものだ――と、このように批判したゲイ男性への腐女子たちの「反論」が、先の引用部分である。

　そもそもBLの旧称「やおい」の語源からして、一部の腐女子が自称するような意識の高さとは無縁なものである。
　この「やおい」とは「ヤマなしオチなしイミなし」の略である。すなわち自分達が描いている「ホモ同人」には物語としてまともなクライマックス（ヤマ）もエンディング（オチ）もメッセージ（イミ）もない、好きなキャラのホモセックスが好きだから描いているだけだ、という開き直りの言葉から出た自虐的名称なのである。
　この『好きなものは好きだからしょうがない!!』という開き直りの文句は、商業初のアダルト向けBLアドベンチャーゲームという記念碑的作品のタイトルにまでなっている。



　そして重要なことは、「BL無罪」はファン以外から社会的支持を、特に表現規制勢力からの支持をまったく受けていないということだ。
　事実、近年では東京都の【有害図書】に指定される書籍は、BL作品はお目こぼしされているどころか、逆に圧倒的多数の指定作品がBL漫画となっており、その割合は年々増加している。

　特に最近では【コンビニの成人誌】が撤去されたことにより役所側が他にターゲットを失っていることも大きいと考えられている。
　ポリコレ系ではなく伝統的な規範意識による性表現規制が強い国では、BLは更に苛烈に罰されることもある。中国では2018年、女性BL作家が懲役10年半の判決を受けるという事案も起こっている。
　しかし相当数のBLファン女性たちは、これらの事実から目をそらし、あるいは不服として、いまだに「BL無罪」を声高に叫び続けているのである。


参考リンク・資料：
「BLとポリコレ」に関するあれこれの議論
フェミ系社会学者堀あきこ、著書でBL無罪を主張する。それに対する批判と、BLの置かれた表現規制の現実。
日本はぶっちぎりダントツ世界一の女性向けポルノ大国という現実。ゾーニングもしてません。
BL同人誌の脇役カップリング論争
BL本がバンバン都条例で規制を受けるのは「法の下の平等」の運営に依るものだから
twitterのBLポリコレ論争が面白すぎる
BLは存在自体がポリコレに反する……で、だから何？