【美男×NANA】Funny Date02*エロなし

2011/12/02(金) 23:59:38.74 ID:yp82xLpV

NANAと手をつなぎ、彼女の歩幅に合わせてゆっくりと出口へ歩いていく。
柊の車のエンジン音が薄れていき、やがて消えた。
コツコツと硬い足音が響く薄暗い地下駐車場で、美男の心はまだ少しざわめいていた。

柊が美子の名前を呼んでいた。
本当に好きだったんだな、と思う。
『美男は美男だ。お前は美子とは違う』
そう言っていた柊が俺と美子を重ねてしまうほど、まだ少しだけ、想いを断ち切りがたいままでいる。
美子が柊とのそういう話をあまりしたがらなかった理由が少し分かったような気がした。
美子だって、柊と同じように辛かったんだろう。
あいつは人の気持ちを軽く受け流せるようなやつじゃない。
美子は柊の心を深く受け止めて…それでも廉を選んだ。
選択のベクトルが違うのは、選ぶのも選ばれるのも、どちらも苦しい。

「どうしたの美男?さっきから黙っちゃって」
少し不安そうに美男の顔を覗き込むNANAに、小さな声で答える。
「俺さ…。俺がNANAの隣にいられるのは、すごく幸せなことなんだなって思って」
NANAの部屋で何度か身体を重ね合った今でも、こうしてただ手をつなぐだけで胸が高鳴る。
そんな甘い気持ちになれるのは、NANAが俺のことを選んでくれたからだ。
手のひらに伝わる彼女の温もりがうれしくて。
美男はしなやかなNANAの手をきゅっと握りしめた。

NANAに出会って、恋に落ちて、想いを伝えて、それが通じた。
この世でたった1人の大切な人が俺だけを見つめていてくれる。
奇跡なんて一言で簡単に片付けたくはないけれど、間違いなくこれは奇跡だ。
美子じゃないけど、神様に感謝したくなる。

地上へ向かうエレベーターの中。
扉が閉まり、次に開くまでの7秒間。
2人きりの小さな箱の中で、溢れる恋心を唇越しに伝え合った。

エレベーターの扉が開き、不思議なデートが始まる。
今日のプランは特に決めていなかった。NANAの思いつくままに1日を楽しもう。
「NANA、これからどうする?」
「買い物したいな。行きたかったお店があるの」

小さなショップが立ち並ぶ通りに着くと、NANAの心に火が点いた。
美男は手を引っ張られて、あちこちの店を連れ回される。

「美子!見て見て!これ可愛くない?」
「う、うん。そうね」
「あー、こっちもいいなぁ。どうしよう。迷っちゃう」
NANAがブラウスとニットを手に鏡の前で悩んでいると、すぐに店員が寄ってきて声をかける。
「それ、どちらも今すごく人気のある商品なんですよ〜」
「やっぱりそうなんですね。どっちにしようかな」
迷うNANAに少し待つように声をかけ、店員がスカートを手に戻ってきた。
「この2つに合わせるとこんな風にコーディネートできて……」
2人が盛り上がるのを横目に見ながら美男は店の中の洋服をひととおり眺め、NANAの好みを頭に入れる。
そうしている内に名前を呼ばれて振り向いた。
NANAが試着室のドアの向こうから顔だけ出して手招きしている。
「どう?似合うかなぁ?」
試着室を出て鏡の前に立ち、ちょっぴり照れた笑顔でくるりと回ってみせる。
とろんとした素材のスカートがふわりとひるがえり、またNANAの脚にまとわりついた。
やわらかく揺れる服は彼女にぴったりで、首を傾げて見つめられたらそれだけでもう、ノックアウト。
「…すっごく、可愛い」
「ホント?じゃあ…。すみません、これ全部くださぁい!」
「えっ?!」
1つだけ選ぶはずが3つになった。
ショップ店員恐るべしだ。セールストーク上手すぎるだろ。

こんな調子で次々と紙袋が増えていくことに美男は圧倒されていく。
NANAって、こんなにパワフルだったの?!
「NANA、重いよ…」
「え〜、まだ欲しいものいっぱいあるのに」
「でもおれ…じゃなくて私、女の子だからこんなにいっぱい持てな〜い」
女装しているのをいいことに、試しに甘えてみたら呆れたようにプッと吹き出された。
「もぅ、しかたないわね!私も持ってあげるから貸して」
「よろしくお願いしまーす」
なるべく小さな紙袋を2つ、NANAにうやうやしく進呈する。
「でもこんなことしてあげるの今日だけなんだから。次は覚悟しといてね!」
そう言ってNANAはいたずらっぽく笑った。


買い物をひととおりすませ、近くのカフェで少し遅めのランチ。
食事が済むとデザートのケーキとドリンクが運ばれてきた。
NANAの前にはシフォンケーキと紅茶、美男の前にはチョコレートケーキとコーヒーが並ぶ。
「ん〜、おいしい!…でも、美子のもいいなぁ…」
甘いものに目がないNANAが美男の皿を羨ましそうに見る。
だったら全部あげるよと言っても、太っちゃうからそんなにいらないと彼女は答える。
「違うの。ちょっと味見したいだけなんだってば」
NANAが美男のチョコレートケーキを一口食べて満足そうに微笑んだ。
「うん、こっちもおいしい!ねぇ、美子も私の食べてみる?」
NANAはそう言うとフォークでシフォンケーキとクリームをすくい、美男の口元に差し出した。
あーん。ぱくっ。もぐもぐ……
甘いものはあんまり得意じゃないけど、たまにはいいな…
NANAと見つめ合って幸せな気分に浸っていると、周りのテーブルからの視線が痛いことにふと気が付いた。
あわてて我に返って周囲に背を向け、息をひそめて話し合う。
「みんなが怪しそうな目で見てるんだけど…」
「どうしよ…部屋にいるつもりでいつもの癖が出ちゃった…」
「とにかく少し、落ち着こう」
「そうね…」
それから2人は澄ました顔で背筋を伸ばして目の前にあるものを黙々と口に運んだ。
せっかくのデザートもドリンクも、もうほとんど味がしなかった。

会計を済ませると、レジを打ったアルバイトの大学生らしい女の子が声を掛けてきた。
「あのっ、NANAさんですよね?!私、大ファンなんです!握手してもらってもいいですか?」
NANAがにっこり微笑んで握手をすると彼女はとても興奮したようで、口を開いたら止まらなくなった。
「きゃー、ありがとうございますっ!感激です!あのあのっ、NANAさん今日はお友達とお買い物ですか?」
「そうなの。今日はお休みだから、久しぶりに外に出掛けてみたのよ」
「あの、NANAさんのお友達ってA.N.JELLの美男さんにそっくりですねっ!さっきデザート食べさせてあげてるのを偶然見ちゃって、それで、女の子なのになんだか恋人同士みたいでちょっとドキドキしちゃいました〜」
「こっ、こ、恋人同士なんてそんな!か、彼女は私の大親友で、美男さんに似てるってよく言われるの…」
隠さなければいけないキーワードが立て続けに出てきて、慌てたNANAの声が軽く裏返る。
「そうだったんですね〜。あっ、引き止めちゃってごめんなさい!これからもお仕事頑張ってくださいねっ!」




【美男×NANA】Funny Date04*エロなし

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