2011/10/28(金) 21:18:25.38 ID:CtmOusOB

「美男?何見てるんだ?」
リビングのソファに座り、窓の外の景色を見ている美男を見つける勇気。
美男は、勇気の声に気がついていないのかずっと窓の向こうを見ていた。
いつものことながら、愛想がないなぁとか考えたが、窓の向こうから声が聞こえる。

勇気は、その声が美男の向いている方向から聞こえていることに気がつくと、窓の方へと視線を移す。
外には、美子と廉さんがちょっかいを掛け合いながら仲良さそうにバーベキューの準備をしていた。

そんな二人の様子を・・・と言うよりも、美子の様子をぼんやりと美男は目で追っている。
勇気は、少し笑みを浮かべると忍び足で美男に近づき、座っている美男の後ろに立つと「み〜お」と言いながら両肩に手をそっと当てる。

ぼんやりとしていた美男は「うぉ!」と声をあげて、振り返り「何だよ・・・。」とぶっきら棒な口調で言い返す。
勇気は、無愛想な表情を浮かべる美男に対しても笑みを絶やさず
「ささ」っと小走りして、美男のすぐ隣に腰を下ろす。

「な〜に美子ばっかり見てるんだよ!」
「は、はぁ!?な、何言ってんだ!お、俺がいつみ、美子のこと、見てたって言うんだよ!?」
「誰がどう見たって、外の美子を目で追ってるようにしか見えなかったぞ?あれは。」
自分が、美子の事ばかり見ていたことを他人に見られ動揺する美男。
そんな美男の心境など関係なしに勇気は「まぁまぁ」と美男を宥めさせながら、どんどんと話を進めて行く。

「そういやさ、前から聞きたかった事があるんだけどさ・・・。」
「何だよ・・・いきなり話し変えやがって・・・。」
「兄貴としてさ、美子のことどう思ってる?」
勇気の言葉を聞いて、少し「ぴくり」と体を反応させると、再び外にいる美子に視線を向ける美男。
そして、ぼそりと小さな声で「変わったと思う・・・。」と呟く。

「変わった・・?」
勇気の声が耳に聞こえると、美男は視線を部屋の中へと戻した。
「2年前、美子が俺の代わりにA.N.JELLのメンバーとして活動してから・・・変わったと思う。」
「そりゃ、色々な事経験すれば変わるのなんて当たり前じゃない?」
「まぁ・・・そうだけどよ・・・。」
勇気の言う「当たり前」が何だか悲しく胸の中で響く美男。
被っていた帽子を深々と被り直すと、再び美男は話し始める。

「けど・・・何だか遠くに行っちまったな・・って。」
美男の言葉の意味がわからない勇気は、首を傾げて美男に「遠くに?」と言葉を返す。
その言葉に美男は「あぁ・・・」と小さな声で言う。

「最後に美子を見た時、まだ幼さが残る感じだった。けど、2年前に久しぶりに再会したら美子は「女」の顔つきをしてた。
それを見て、何だか「俺の知ってる美子はどこに行ったんだろう」って思えて寂しくなったのかもな。はは・・可笑しいよな。」
帽子と髪の毛の隙間から見える美男の瞳は寂しげにうっすらと開いているだけだった。

そんな美男を見て勇気は「馬鹿だな。」と微笑みながら言う。美男は何も言わず顔を俯かせたままだった。

「どんなに変わっても、美子は美子だぞ?」
「・・・・・」
「例え時間が経とうが、美子にとって美男は大切な家族であり兄貴だろ?
そして、美男にとっても美子はどんなことがあっても大切な妹に違いないじゃん!」
勇気の言葉を聞いてから「ふ」と笑みを零す。そして、帽子を取り勇気の方を見ると
「たまには良いこと言うじゃん。」とまたもぶっきら棒に言う。
勇気は、「たく、素直じゃないな!」と苦笑しながら美男に言った。
そして、美男はその場に立ちあがると勇気から顔を逸らす。

「けど・・・」
「ん?」
「・・・ありがとう・・・。少しだけ気持ちが楽になった・・・。」
勇気は美男にとって精一杯の感謝の表し方なんだと思うと自分も立ち上がると
「もう少し表情柔らかくして言えよな!」と冗談混じりに笑いながら美男に言う。
「良いじゃねーかよ・・・これでも精一杯やったつもりなんだからよ・・・。」
「はいはい、わかってるわかってる!」
自分が子供扱いされているように感じ、「むす」とした表情で睨みつけるが
勇気はそんな表情なんてお構いなしに笑いながら美男を見ている。

「ち・・・調子狂うな・・・・。」
テーブルに置いておいた帽子を取ると、被り直す。
そんなやり取りをしていると窓の外から「おにいちゃ〜ん」と言う声が聞こえる。
窓の方へ視線を向けると、美子がリビングに向かって走ってきていた。

「もぉ!お兄ちゃん!勇気さんとばっかりお話してないで手伝ってよ!!」
そう言うと、美男の腕を掴んで「早く行くよ!」と催促する。美男は後ろにいた勇気が気になり、後ろを振り向く。
勇気は笑いながら「ほら、妹直々の御指名なんだから早く行けよ!」と背中を軽く叩きながら言う。

その言葉を聞いて、もう一度美男は「ありがとう」と小さくつぶやくと腕を引っ張っていた美子と一緒に庭の方へと走っていった。
そんな二人を、勇気は後ろから微笑みながら優しく見守る様にしばらく見ていた。





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