【勇気×美男】距離*エロなし

2011/11/02(水) 22:31:45.48 ID:EV4LrwlY

テレビ局の控室でA.N.JELLメンバーは、次の番組の収録まで休憩を取っていた。
控室では、柊と廉が色々な話をしていた。
「ふぅ・・・。今日もなかなかハードだなぁ・・・。」
「そりゃ、新曲披露やらライブの打ち合わせやら同時に重なれば忙しいのも当たり前だろ?」
「まぁ、忙しいのは嫌いじゃないから良いけどさ。」
廉の「忙しい」と言う言葉に、得意げな表情をしている柊。
その表情に、「ぴくり」と眉を動かした廉は柊を見ると
「ほぉ〜。それじゃあ、もっと仕事増やすか?」と言う。
「い、いや・・・遠慮しとくよ。廉から頼みごとされて簡単に終われた事ってないから・・・。」
柊は苦笑いを浮かべて、廉に言葉を返すと「仕事なら山ほどあるからいつでも言えよ?」と言うと、不敵な笑みを浮かべた。

ここ最近、A.N.JELLメンバーの仕事の多さは尋常じゃない。
新曲披露。1週間後に迫るライブの打ち合わせや楽曲の最終仕上げ。その他盛りだくさん。
メンバー全員が忙しかったが、ずば抜けて廉の仕事の多さは他のメンバーとは比べ物にならないほど多かった。
そのせいか、最近は美子ともろくに会話できていないようだった。
だから、柊の「忙しいのは嫌いじゃない」と言う言葉に過剰反応したのだと思う。

「はっは・・・。」
柊は何か、踏んではいけない爆弾を踏んでしまった事を悟り苦笑いを続ける。
けれど、控室全体を見渡すと違和感を感じ「そう言えば、勇気と美男は?さっきからいないようだけど・・・。」
と話を逸らすように廉に告げる。
話を切り換えられて「むす」と表情を曇らす廉だが、すぐに控室内を見渡す。
部屋の扉に目を向けた後、再び横に座っている柊に視線を戻し
「知るかよ。俺はあいつらの保護者じゃないんだぞ?」と言い放つ。
しかし、柊は話を振っておきながら廉の言葉をあまり聞いていなく
「まぁ、トイレかどっかに行ったんだろう。」と首を傾げて言う。
その後、しばらく部屋に沈黙が漂った。


「・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・おい。」
先に沈黙を破ったのは廉の方だった。
柊は廉に「ん?どうした?廉?」と素の表情で廉に聞く。

「・・・何か・・・喋れよ・・・。」
「・・・・え?」
「話すネタ・・・ないんだよ・・・。」
ぼそぼそと小さな声で何やら色々と言葉を並べている廉。
そんな廉に「くす」と笑う柊を見て廉は、「な、何笑ってんだよ・・・。」と横目で柊を見る。
小さな笑い声を出し続けていた柊は、「す、すまん・・・。ちょっと意外だったから・・・。」
と、廉の顔とは逆の方向を向き、腹を抱えて笑い声を堪えていた。
「わ、悪かったな!意外な事しちまってよ!」
顔を真っ赤にさせて、大声で柊の方へと声を出すと「たく!」とそっぽを向いた。


柊は笑いながらも、廉のこの2年近くでの変化を嬉しく思っていた。
今まで廉はあまり感情的にならないというか、自分のありのままを他人に見せるような奴じゃなかった。
それが、美子と出会い、少しずつ自分に素直になり、メンバーともコミュニケーションを取るようになって・・・。
そんな事、A.N.JELLが出来たての頃の廉からは想像も出来なかったのに、
その想像すら出来なかった「桂木 廉」が目の前で見れて、柊は何だか嬉しく思えた。
こんな最高のバンドでこれからもずっとずっと・・・何十年も色々な物を積み重ねていければと、柊は廉を見ながら思っていた。

笑い声を止めると、柊はそっぽを向く廉の方に視線を移し
「廉・・・・。」と改まった表情で言葉を投げる。
先ほどとは違った声に、廉は柊の方を向き「な、何だよ・・・改まって・・・。」
と困惑した表情を浮かべる。

柊は廉の前に右手を出すと、「これからもよろしくな。」と力の籠った声で廉に言う。
「・・・お、おぅ・・・。」
状況の分かっていない廉は、差し出された右手に自分も右手を差し出すと、1度だけ強く握手を交わした。

握手をしていた手を解くと柊は
「そう言えば、美子とは最近どうなんだ?」と唐突に話を切り出す。
「は、はぁ!?な、何でそんな話になんだよ!?今日のお前、何か変だぞ?」
突然、美子の話しに切り替わったせいか、顔を真っ赤にして柊に「ぎゃーぎゃー」と文句を言い続ける廉。
二人の騒がしいやり取りは勇気と美男が帰ってくるまで続いた。


一方、勇気と美男はA.N.JELLの控室のある
通路の突き当たりにあった休憩所のガラス張りから、二人並んで外の景色を眺めていた。

「・・・・・・・。」
「ん?どうした美男?元気ないぞ?」
ぼんやりと暗がりに輝く建物の明りを見つめていた美男の目の前で、何度も手を振って反応を待つ勇気。
しかし、語りかけても何をしても反応を示さない美男に勇気は
「お〜い!桜庭美男〜!!起きてるかぁ〜?」と耳元で大きな声で言う。

流石に気がついたのか、大きな声に耳が「き〜ん」となった美男は耳を手で塞ぐと
「そんな大きな声出さなくても聞こえてる・・・。」と呆れた表情で勇気を睨む。
しかし勇気は、「んだよ!その大きな声出すまで何一つ反応しなかったくせによ!?」
とぶーぶーと頬を膨らませて文句を言う。
勇気が何をしていたかよく覚えていない美男は、「え・・・何かしてたのか?」
と、つい思いを言葉として表してしまう。

「はぁ・・・やっぱり聞いてないのかよ!!」
「いや・・・その・・ごめん・・・。」
若干機嫌を損ねている勇気に謝ると、どうして良いか分からずに窓の外へと視線を逸らす。
けれど、勇気はその場で「ふぅ」とため息をつくと
「何かあった?珍しく声掛けても何しても反応なかったからさ・・・。」と美男を心配した。
「・・・いや・・・特に何かあったわけじゃなくて・・・。」
いつもの癖か、帽子を深くかぶろうと頭に手を当てるが今はステージ用の衣装。
そのため、帽子など被っているわけもなく、その手が空を掴むように何度か開いて閉じ手を繰り返し、美男は上を見上げる。

「ぷ!」
美男が空を掴む姿に声を漏らす勇気。
その勇気を「む」とした表情で美男は睨んだが、笑っている勇気の姿を見てなんだか複雑な気持ちになる。

な、何でだよ・・・。この前から何でこいつの事ばかり意識してんだ・・・俺・・・。
無邪気に笑う勇気の姿を見て、熱くなる自分自身に戸惑う美男。
心臓の鼓動はその姿を見るたびに高鳴り、正常な判断が出来なくなる。
何がどうなっていくのか分からなくなる。

勇気の笑っている姿を見ていた美男は、その場で顔を俯かせた。
笑っていた勇気は、美男のそんな姿を見ると少しずつ笑いを抑えて行く。
「み・・・美男?ど、どうした・・?」
「・・・・・」
「ご、ごめん。笑いすぎたか?」
「・・・・・」
美男の反応がなく、困り果てた表情をして辺りを見渡す勇気。
「えっと・・・その・・・。」
美男の横でおろおろとしている勇気の姿を横目で見ていた美男は、小さな笑い声を発する。
「み・・・美男・・?」
「・・・・・面白い・・・」
「へ・・・?」
美男の突然の発言に訳が分からなくなった勇気は、首を傾げて美男を見る。
そんな勇気を、美男は残すように何も言わずに後にする。
「お、おい!美男!たく、訳分かんねーの・・・・。」
一人、控室へと向かう美男の姿を微笑んで見ると
「待てよ!美男!」と言いながら、勇気も美男の後を追うようにして向かった。

・・・憧れ。
今はそういう風にしておこう。
俺も、あいつみたいに素直に笑ったり、泣いたり、怒ったり・・・・。
出来るようになりたいな・・・・。あいつみたいに・・・・。
そんな事を考えながら、美男は後から来た勇気に見えないように笑みを零した。

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