2011/11/22(火) 21:47:24.19 ID:XZSXQzhq

A.N.JELLの専属スタイリストとして安藤社長から辞令を渡され、もう5年ほどが経った。
以前はガールズグループを担当していたのに突然で不思議だったけれど、やってみれば男性用の衣装選びやアクセサリー選びも楽しい。
何よりも、マネージャーの馬淵が頼りないせいか、何かと姉のように慕ってくれるメンバーの柊や勇気、美男はカワイイし。
ただ、リーダーの廉は気難しくて口数も少なくて。いろいろと衣装のこだわりも多く、やや手を焼いている。
それなのに…最近いつの間にか、ふと見せる寂しげな表情…音楽に対するひたむきな姿勢。
ごくたまに見せる優しい笑顔、歌っている時の艶やかさに心を奪われていた。
まさか、自分が廉にこんな気持ちを抱くなんて…。

「ま、それに気付いたところでどーしようもない、か…」
「おい、どうかしたか?」
衣装合わせをしている時につい独り言が出てしまい、その悩みの種である廉に聞かれてしまった。
「あ、いやぁ、何でもないわっ!それよりコレ、早く向こうで着替えてきて」
カーテンで仕切られた試着室へ行かず、廉は面倒がって私の横で着替えを始めた。
廉の長い手足や広い背中を見つめるだけで胸は苦しくなってくる。
どうやったら、この想いを消せるのだろう…。きっと、望みなんてない。

「RINAさん、顔が赤いな…体調悪い?大丈夫?」
ぼーっとしていると、柊が優しく声をかけてきた。
「風邪じゃない?!俺、薬持ってるよ!飲む?」
勇気も心配して、ガサガサと自分のバッグを探している。
「季節の変わり目はひきやすいしね。体冷やさないで」
美男は部屋の隅においてあるウールのひざ掛けを渡してくれた。
「俺らに移す前に今日は早く帰れよ。とにかく、さっさと寝ろ」
他の3人とは対照的に、想い人にはキツく言い渡された。
「あはは、大丈夫よー!ありがとね…」
そう言ったものの、言われてみれば少し頭痛もして体が熱い。
馬淵が迎えに来て4人をテレビの収録に送り出した後、私は椅子に座ったままテーブルに突っ伏して眠ってしまった。

「RINA?おい、こんなところで寝てんな!起きろよ」
「え…?廉?」
廉に肩を揺す振られて起きると、既に2時間ほど経過していた。
番組の収録を終えて戻ってきたメンバーが心配そうに私の顔を覗き込んでいる。
廉の手のひらが、私の額に当てられた。
「…かなり熱あるな。早く帰るぞ。お前の車のキーは?」
「え…?自分で運転でき…」
「そうは行くかよ。馬淵に頼むか…あ、あいつ今日は無理か」
この後、美男のソロでの収録で馬淵はついて行くことになっていた。
「じゃ…俺が送る。おい、柊。勇気と一緒に先に帰ってくれ」
「わかった。RINAさん、お大事に」
「早く元気になってね〜!」
私は意外な展開に、ふらふらと立ち上がって廉の後ろを歩いた。
「ねぇ廉…ほんとに自分で…」
「いいから、黙って送られろよ。ほら、キー貸せ」
振り返った廉の顔が、あまりに優しくて。速くなる鼓動に胸を押さえながら素直にキーを渡した。

「こっから30分くらいだよな?それまでこれ被って寝とけよ」
車内で、廉はナビを私の自宅に設定しながら自分のジャケットを私に被せた。
でも私の車を運転する廉…なんていう光景に、私は助手席で眠るのがもったいないと思ってしまう。
薄暗い空間で浮かび上がる廉の横顔に見惚れながら、とろんと下りてきた瞼との闘いに負けて眠りに落ちた。

*1
聞きなれたナビのアナウンスで目を覚ますと、マンションの暗い駐車場に着いたところだった。
「起きたか…?どこに停めればいい?」
「あ、あの奥の…7番のトコにお願い」
廉は中をゆっくり進み、スムーズに駐車した。
「ほんと、ありがとね。助かったわ、もう大丈夫」
車から降りてドアを閉めようとした時、いきなり眩暈がしてその場に座り込んでしまう。
「おいっ、全然大丈夫じゃねーぞ!」
「あ、あれ…?おかしいわね」
のろのろと立ち上がると、廉が腕と背中を支えてくれた。
「部屋に行くまで送ってやるよ。途中で倒れられても困るからな」
そう言ってそのまま廉は、7階の部屋まで一緒について来てくれる。
なんだかんだ言って、やっぱり優しい…。
熱で気弱になっているせいか、いつも以上に廉を想う気持ちが強くなってくるのを感じていた。

「廉…ありがとう、もうほんと大丈夫だから」
「さっきから、お前の大丈夫はアテになんねぇな」
部屋に入ると、廉はキッチンから水を持ってきてくれた。
「ほら、薬飲んで早く治せ。明日は俺らもオフだしゆっくり寝とけよ」
「うん…そうね。そうさせてもらう」
私がベッドに座って薬を飲むと、廉は一安心したようにふぅ、と息をついた。
「じゃあ、俺は帰るから。おやすみ」
「・・・おやすみ」
薬を飲み、ベッドに横たわる。
最近少し忙しかったから…もう若くはないなぁ、などと考えていたけれど、すぐに意識が飛んだ。


滅多に飲まない薬が効いて、翌朝の目覚めは最高に良かった。
体からダルさが消えて、むしろいつも以上に元気な気もする。
熱ももう下がったみたいだ。
「んん〜〜〜〜っ!と」
思い切り伸びをして起き上がろうとすると、足元が少し重い。
「…!!廉っ!やだ、なんで?」
ベッドの縁に腕を乗せて、なぜか昨日帰ったはずの廉が眠っていた。
状況が把握できなくて頭には「なんで?」ばかり浮かんでくる。
でも子供のようにあどけない廉の寝顔をそっと覗き込むと、自然に笑みがこぼれてしまった。
「…んん?」
「あっ、廉!どうしてあんたが…」
「起きたか。あ〜体痛ぇ…」
ひとつ伸びをして、廉は体を起こした。
「熱は下がったか?」
「うん…多分。あ、あんた昨日、帰ったんじゃなかったの?」
「覚えては…なさそうだな」
廉は呆れたように言ってベッドに腰掛け、ふぅ…とため息をつく。
「あたし…何か、しちゃった…?」
全く、覚えてなどいなかった。

廉が言うには、私が寝たと思って帰ろうとすると、ずっと廉の名前を呼んでいて…帰るに帰れなくなったらしい。
もう、なんていうか。恥ずかしすぎる…。
「あぁ〜もうっ。ほんとにゴメン…」
「…たく、それにしてもお前はこういう時に、俺のほかに名前呼ぶ男も居ないのか」
「それはっ、廉だから…!」
つい、口が滑った。でももう、隠しておけない。苦しい。
「俺だから…?何なんだ?」
「あんたを…好きなのよ」
言ってしまった。でも胸のモヤモヤが取れて、どこか清々しい気分でもある。
こうして、後先を考えずに行動してしまうのは悪いクセだけど、後悔は無い。
少しの沈黙の後、顔を上げて廉を見ると難しい顔で固まっていた。
「ごめん、あんたは迷惑だよね」
「あ、いや…。その、驚いたっつーか」
「聞かなかったことには出来ないだろうから、せめて聞き流してよ」
ちょっぴり強がって、そんな風に言ってみる。
本音を言えばもちろん、気持ちに応えて欲しいけど…。
「もう聞いちまったんだから、そんなの無理だ」
そう言った廉の顔はなぜか真っ赤になっている。

どう対処したものかと視線を泳がせて考えているのが妙に可愛くて。
ほんの出来心。私はそっと廉の顔を覗き込んだ後、その唇を奪った。
私は目を閉じていたけれど、廉は目を見開いているのがわかる。
柔らかい唇を軽く吸い、舌でペロリとなぞって口を離した。
「あははっ、告っちゃった記念に、ご馳走様でした〜なんて…」
「お前…」
「怒っちゃった…?やっぱ」
おどけて見せたけど、さすがにマズかったか…。
「お前から、仕掛けたんだからな」
「えっ?」
一瞬、何が起こったかわからなかった。
廉の顔が目の前に来て、さっき触れ合わせた互いの唇が、また重なる。
そしてさっきみたいに唇だけでは終わらない。
「んっ…ぁ…」
少し口を開くと声が漏れ、それを合図に廉の舌が入り込んできた。
私は廉の頭の後ろに手を回し、より深くそのキスを貪る。
顔の角度を変えて、もっと…もっと。2人の唾液が交じり合って口の端から零れ落ちた





続き>>【廉×RINA】風邪の悪戯02*エロあり

管理人/副管理人のみ編集できます