2011/09/25(日) 20:54:23.42 ID:kxF7i97u

廉と美子の衝撃の告白。そして、二人の想いが真に一つになった。周囲の関係者たちは二人の幸せを祝福した。かつて美子を好きになった勇気も柊も二人の幸せを誰よりも望んだ。けれど、ただ一人だけ納得していない人がいた。


「桜庭美男」
桜庭美子の唯一残った家族であり彼女の兄。彼だけは二人の幸せを素直に喜ぶことができなかったようだった・・・・・。

この話は美子がアフリカに旅立って間もない話・・。

「それじゃあ・・・一度みんなで演奏してみるか。」
練習場に響く柊の声。
A.N.JELLのメンバーはライブに向けて演奏の練習をしていた。
いつも通りの場所。いつも通りの練習風景。ただ少し違うところがあった・・・。
美男が本物の美男になっていたこと。そして、美男が練習場にいないことだった。理由は本物の美男は廉とは仲が悪かった。
もともとあまり他の人と喋らない美男だが、練習の際などは勇気や柊と演奏についての話はしていた
。しかし、廉とは話をするどころか避けているように見えると周りの人間は言っている。


「♪〜♪〜〜♪・・・・駄目だ。やっぱり全員居ないとうまく調整ができない。」
演奏途中に廉がギターの演奏を止めて納得いかない顔で言った。
「そもそもあいつはどこ行ったんだ!俺がいるときはいつもいないだろ。」
そう言うと「何か知らないのか!?」と言わんばかりの顔で廉が柊と勇気の顔を見た。
廉のそんな怒りを募らせた顔を見た勇気は咄嗟に柊の顔を見た後に、
「美男・・・・はあれだよ!廉さんがいるときはきっと別の仕事で忙しいんだよ!
あいつ、馬渕さんの頼みで色々な所に仕事しに行ってるから!」
と美男をフォローするように勇気が言うとそれに合わせて柊も
「まぁ、いつもグループで仕事できるってわけでもないからな。仕方ないだろ?」
と言って少しでも廉の怒りを納めようとした。だが廉はそれに納得いかない顔をして、
「ほぉ・・・今日の朝も普通に俺が来る少し前まではここで練習してたのにか?」
練習しに来ていたのを知っていた廉が二人に言い放つ。
まさか廉に美男が来ていたのを見られていたのを知らない二人は動揺を隠せなかった。

「もういい!お前らも俺に隠し事をするつもりか!たく!どいつもこいつも人をのけものにしやがって!」
二人をにらんだ後、ギターを練習場において廉は立ち上がり、練習場の扉を叩きつけるようにして閉じてその場を後にした。
その場に残された二人は顔を合わせて焦った顔をしていた。少しの間沈黙が続き先に勇気が口を開いた。
「美男、どうして廉さんの事避けてんだろうね?柊さんは何か知ってる?」
と柊に聞き、柊も少し考えた後に
「いや、何も知らないけど・・・・。」と言った。

二人は知らなかった。
既に解決したことではあったが美子と美男の母親を孤独に追いやった張本人が廉の母親であることを。
廉と美子の間でそのことは解決したが美男自身は納得していなかった。

気分が晴れない廉は一人先にA.N.JELLの合宿所に戻った。
この日は特に仕事も入っていなく、行く場所もなかったからなのか自分の部屋で作曲をしようとしていた。

合宿所に戻ってリビングに来た廉はふと、美男の部屋からキーボードの音が聴こえることに気がついた。
少しだけ扉が開いていたから聴こえたのだが、その音を聴いて廉は
「あいつ・・・・こんなところで!」
と再び顔を怒りに染めて美男の部屋に入って行った。

案の定、部屋には美男がいてキーボードを演奏していた。
美男子自身も誰か入ってきたことに気がついて扉の方に目を向けて廉の姿を見てすぐに
「勝手に人の部屋に入らないでくれない?」
と廉に言い放った。廉はその言葉に今まで溜まっていたイライラが爆発して美男の所まで行って美男の後ろに立つと服を掴み無理やり自分の方に体を向かせた。そして間を開けずに、
「お前・・やる気あんのか?A.N.JELLに入った以上、何が納得いかないか知らないがグループに迷惑かけるな!気に入らないことがあってA.N.JELLでやって行きたくないならさっさと辞めろ!
俺たちはA.N.JELLに命かけてやってんだ!生半可な気持ちでやられたらこっちが困るんだよ!」
廉は美男の胸倉を力いっぱい掴み持ち上げてそう言った。
5秒ほど美男は黙っていたがふと、気がつくと美男の瞳から一粒、涙が零れ落ちた。

そして、悔しそうに下唇を噛んでいたのに廉が気がついた。そして、気がついてすぐに美男の口が開いた。

「・・・・・だったら辞めるよ。あんたと一緒の空気を吸いたくない。

例え美子が許しても俺は許さない・・・。」
廉は一瞬何の事を言われたのか分からなかった。

だが、美子と美男の関係を考えるとふと何かに気がついたような顔をしていた。

「まさか・・・お前・・・。」

その続きの言葉を言う前に苦しそうな表情をした美男が
「美子はずっと小さな頃から顔も知らなかった母親を探してた。
幼い頃から美子は学校に行っても周りの奴らから両親のことで冷やかされたり馬鹿にされてきた。
・・・俺は・・幾ら言われても我慢できた・・・。
美子のためにも常に涙を見せずに頑張って美子を支え続けた・・・・。
いつかきっと・・・母親に会わせる事ができる信じてたから・・・。
だが、日本に帰ってきて美子から全てを聞いた。
全てを知った上で美子はもう終わったことだからあんたとあんたの母親を許すって言った・・・・・。」

廉は帽子のつばの部分で美子の表情全体を見ることはできない。
だけど、話が進むたびに美男の瞳から涙はどんどん零れていた。
そして、その涙が胸倉を掴んでいた廉の腕に次々と落ちていった。
少しずつ廉の掴む力は弱くなっていった・・・・・。

「だけど、俺はあんたとあんたの母親を許すことができない!
たとえ美子が許したとしてもあんたの母親のしたことは許さることじゃない!
そしてあんた自身が美男を傷つけたことも!!
あんたは・・・・俺たちの親父のせいで捨てられたと思った・・・・。
そして、あんたのことを好きだった美子を・・・・拒絶した。
美子は何も悪くなかった・・・。
ただあんたの憎む人間の娘だったっていう理由だけで!!
美子がどれだけ苦しんだか!美子がどれだけ傷ついたか!!
そして・・・・妹を傷つけておいて・・・また一緒になりたいなんて・・・・
結局、あんたの都合じゃないか!!都合の良い時は美子を愛して、都合が悪くなれば美子から離れる!!
どんな言葉を言われてもあんたの言葉を俺は信じることができない・・・・・。」

顔を俯かせて涙を流し続けながら話す美男の言葉に廉は何も言い返せなかった。
言い返すことはできたのかもしれないが
今の自分に目の前にいる人に言い返すだけの資格があるのかと考えたから・・・・・・。
そして、廉自身も美男の姿に美子の姿を見たのか
涙を流している美男の姿を直視することができなくなっていた。

「・・・・俺自身も・・・結局はあんたと同じだ。
親のしたことで関係のない息子を恨んで・・・・。最低な人間・・・・。
それでも、あんたには・・・・わかるはず・・・・。俺の気持ちが・・・・・。
このまま、あんたの近くにいたら・・・・美子の幸せを・・・自分自身で壊してしまうかもしれない・・・・。
だったら・・・もう、辞めることにするよ。それが・・・今の俺にとっても・・・・二人にとっても・・・」

止まらない涙・・・・・。
きっと、その涙には伝わりきらないほどの
「苦しみ」や「悲しみ」、「怒り」が込められていると廉は悟った。

(傷ついたのは美子だけじゃない・・・。こいつも・・・今まで辛い気持を抱えながら生きてきた・・・。)


「今は・・・気持ちが落ち着かない。だから・・明日。明日社長に伝える。A.NJELLでは・・・・やっていけない・・って。だから・・・もう出て行ってくれ・・・・・。」

これ以上涙を見せないためなのか、廉に背を向けながらそう言い放つ美男に廉は何も言わずに部屋を後にした。

(今の自分にあいつにかけられる言葉は何もない)

複雑な気持ちを胸に廉は自らの部屋に入り、部屋に置いてあったぶたうさぎを見つめながら

(美子・・・・俺は・・あいつになにかできることはないのか?)

と苦しいさともどかしさを胸に抱き
ただただどうすることもできない気持ちを拳に込めて机を叩いた。

(お兄ちゃん・・・。お母さんはどこに行っちゃったの?・・お兄ちゃん・・・)

「また・・・・あの夢・・か。」

廉との会話をした後、泣き疲れてしまった美男はそのままベッドで寝てしまっていた。
どれだけの時間眠っていたのかは一瞬ではわからなかった。
ただ、部屋の中も窓の外も真っ暗だったので相当時間が経っているのだけはわかった。

すぐに美男は時計を見た。
「午後11時21分・・・・・。10時間ぐらい寝てた・・・。」
時間を確認して「ふぅ」と少しため息をついた美男。

(あいつだって・・・俺たちの両親のせいで傷ついたのに・・・・)

今更だが、昼間に廉に言った言葉を思い出して美男はそう思った。
美男達兄妹も傷ついたが、廉自身も自分たちの両親のせいで深く傷ついた。
そんなことは美子から聞いていて知ってたのに・・・。
気がついたら俺はあいつに自分の怒りをぶつけてた。

「それでも・・・どんなに言葉で納得してもあいつを目の当たりにしたら・・・気持ちが抑えられなくなる・。」
全てを許しきることができないから廉を見たら今までの想いが爆発してしまった・・・・。
美男は後悔した。自分のために美子は3ヶ月間頑張ってくれたのに、それを自分自身で台無しにしてしまったのだから。

「美子・・・ごめん。俺、もうあいつと一緒に居れない。お前みたいに全てを許すことができないから・・・・。」
幼い頃に修道院で過ごしていた頃に撮ってもらった二人での写真を見ながら、美男はそう呟いた。

「廉の奴・・・。どうかしたのか?帰ってくるなりどこか行ったし・・・」
勇気は仕事でまだ帰ってきていない。柊は一人リビングお茶を飲みながら考えていた。
「美男は帰ってきて部屋覗いたらベッドで寝てたし・・・・。」
柊は二人の間で何かあったのか心配で仕方がなかった。
ようやく本物の美男が揃って本当のA.N.JELLとして活動して行かないといけない矢先に
メンバーの間で問題が起こるのは良くないと考えている。

そんなことを考えると美男の部屋の扉から「ガチャ」という音が聞こえた。
その音を聞いた柊は振り返る。そして、美男の姿を見てすぐに側に行った。

「美男・・廉と何かあったのか?」
柊の一言を美男が聞いた瞬間、美男が開いてた右手を強く握ったのに気が付いた。
「全く・・お前ら兄妹はわかりやすいな。」
「・・・わかりやすい?」
ぎろりと睨まれたがそんなことは気にしないで柊は喋るのを続けて
「取り敢えず・・・喉渇いてるんじゃないか?お茶でも飲むか?」
いつも通り微笑んだ顔で柊は美男に聞いてみて、少ししたら美男が頷いた。
(驚いたな・・・いつもの美男なら断ると思ったのに・・・。)
心の中でそう思った柊はすぐに美男をリビングのソファに座らせてお気に入りのハーブティーを渡した。

ハーブティーを渡された美男はそれを少し飲んで「ふぅ」とまた溜め息を出した。
「溜め息なんていつもの美男らしくないな・・・。廉と何かあったのか?」
心配した柊はすぐさま本題に入った。けど、美男は頑なに口を開きはしなかった。
仕方ないので柊は勝手に話を進めた。

「多分だけど・・・廉が美子と付き合ってるのが嫌なんじゃないのか?」
と鋭い部分をついてきた。いきなりだったため手に持っていたティーカップを落としそうだった。
幸い、中身は全部飲んでいたので衣服にこぼれたりはしていない。

「やっぱりか・・・・。コンサートの時も、お前だけは嬉しそうにはしてなかったからな・・・。」
美男は否定しようとしたのか柊を一瞬睨んだが柊が美男を見ていなかったので意味がなかった。
そのまま柊は話を続けた。

「確かに、最初は俺も何で廉なんだ!って思った。
あいつよりも俺の方が美子を大切にできるって自信があったから。」
少し納得のいかない顔をしながらもすぐにいつもの表情に戻って
「美男達兄妹たちと廉に何があったかはわからない。
ずっとあの二人を見ていたけど苦しんでいる時の方が多かったと思う。
けど、だからこそ今の二人があるんじゃないかって最近思うようになった。」
そう言うと柊は美男の顔を見た。美男は柊が真剣に話しているのを悟ると帽子を外した。
美男自信が柊の話を真剣に聞いていた表れだろう。
「二人の道は波乱なものだったと思う。廉自身も美子を傷つけていることで一緒にいるのを戸惑った時期もあった。
けど、だからこそこれからは誰よりも美子の事を大切にしてくれると思う。
美子に告白する前、最後に見たあいつの眼にはその覚悟が感じられた。」

(わかっていた・・・。美子があいつの話をするとき、どんな奴の話をするよりも
誰の話をしている時よりも嬉しそうに話していたのを。
アフリカに出発する前の数分間、廉について聞いたとき・・・。)

柊の話を聞いて美男は自分の心に何度もそう訴えていた。
それでも、やはり拭い切れない「恨み」の感情。

苦悩する姿を見た柊は立ち上がり自分の部屋に戻ろうとする時、去り際にこう言った。
「今、お前は廉の悪いところばかり見えてるんだと思う。けど、少しずつで良い。
あいつの良いところも見てやってくれないか?
あいつ、不器用だけど誰よりもメンバーの事は大切にしてるからさ・・・。
お前が廉と一緒に演奏するの、楽しみにしてるからさ。」

最後にそう言うと柊は自分の部屋へと戻っていった。
美男は少しの間、その場で泣いた。昼間のことと柊に言われたこと。
廉に対する複雑な感情を抱きながら涙を少しの間流した・・・・。

(あいつにとって俺は憎むべき対象なんだよな・・・。)
(あいつと俺、互いの親のせいでその「子」を恨んだ。皮肉な運命だ。)
(だが、あいつと俺の「恨み」には違う部分がある。)


(あいつの「恨み」は勘違いなんかじゃなくて紛れもない事実であること。)


美男が柊と会話をしていた時、廉は一人合宿所から大分離れた海岸にいた。
最近の廉は何かあると静かで星がきれいに見える場所に行き心を落ち着かせていたのだ。
無論、廉にはぼやけてしか見えなかったが、どこで見る星よりも海岸で見る星が綺麗に見えたからだろう。
いつもなら、ちょっと海に行きぼんやりと「点」としか見えない星を見て美子の姿を思い出す。
そうすれば、大抵の場合は心を落ち着かせることが出来ていたけど・・・・


今日だけはそういうわけにもいかなかった。


昼間の美男とのやり取りが、美男の言葉が廉の心に突き刺さる。
今後のA.N.JELLのこと、次回曲の事。気分を変えるために考えることなんていくらでもある。
それでも、何を考えてもあいつのあの泣き顔が・・・・言葉が消えることがなかった。

(美子と同じぐらい、美男も俺の母親のせいで苦しんだり悲しんだり、時には涙していたのか?)

そんなことばかりが頭を埋め尽くす。
そして、気がついたら合宿所から出ていた。
外に出ると、辺りは既に日が沈みかけていたせいか少し暗くなり始めていた。
合宿所を出る直前、たまたま柊が帰ってきたみたいだったが
全くそんなことも気がつかないほどただただ

「あいつと同じ空間にいてはいけない」

という気持ちだけがその時の廉の心を、体を、意識すら支配していた。

そして今、廉は如何すればいいのか分からなくなっていた。
このままでは美男は明日、A.N.JELLからいなくなる。
あいつがそれを望むならそれでいい!・・・・・・・・。

「なのに・・・どうしてこんなにも苦しい?
あいつが!美男が辞めることを望むならそれがあいつにとって一番なんだ!
俺には関係ない。なのに・・・・どうしてだ?・・・・」


暗黒が広がる空に叫ぶ廉。
その声を聞く者は誰もいない。
虚しさはただ叫びとなり、辺りに広がる闇に消え
最後にはさざ波の音のみがその場に響き渡った・・・・。


空を見上げて叫んだ廉はしばらく「ハァ・・ハァ・・」と息を切らせていたが
1分ぐらいしたら再び辺りにはさざ波の音のみが聴こえるようになった。

そして、空を見上げたまま廉は
「美子・・・・。お前なら・・・どうした?」
と自分にすら聞こえないぐらいの声で夜空に広がる「星」に語りかけた・・・。


そして、廉は砂浜に背中から倒れゆっくりと瞳を閉じた。
少しずつ、意識も遠くへと消えていった・・・・・。

(お兄ちゃんって・・・廉さんにそっくりなんですよ?)
・・・これは・・何だ?

(お兄ちゃんは意地っ張りで強がりでプライド高くて・・・・。)
(でも、誰よりも優しくて繊細で・・・・いつも私のことを考えてくれてたんです。)


そう言えば・・・・美子にペンダントを渡したあの日
あいつは兄貴の話をしていたのをふと思い出した。
何故かわからなかったが今まで思い出さないようにしていた気がする・・・・。
それは・・・無意識のうちにあいつ自身に俺が「壁」を作ってしまったからなのかもしれない・・・。



(私、ここに来る前にお兄ちゃんに全部話したんです。
お母さんのこと・・・水沢さんのこと・・・・。
廉さんが水沢さんの息子ってことも・・・。)

(最初は・・話そうか迷ったんです。
これから本格的にA.N.JELLとして活動していくのにこんな話を聞いたら
お兄ちゃん、A.N.JELLでやっていけなくなるんじゃないかって思って。
実際お兄ちゃん、話しをした後ピクリとも動かなくなっちゃって・・・。)

(けど、お兄ちゃんには全てを知った上で乗り越えてほしいと思ったんです。
そうじゃないと、結局意味がないと思って・・・。いつかわかっちゃうことですし。)


そうだ・・なんで今までこのことを忘れていた?
あいつは俺のことを知っていた。
そして、俺自身もそれを美子から聞いていた。
それなのに俺は・・・・・大事なことをまた見失っていた。

(きっと、私と同じぐらい・・・それ以上に苦しんでしまうかもしれない。
でも、私も乗り越えられたんだからお兄ちゃんにも絶対乗り越えられる。
だけど、一人じゃきっと倒れちゃいます。
だから、廉さんにお兄ちゃんを支えてあげてほしいんです。)

俺が・・・あいつを?

(きっと、お兄ちゃんもわかってくれると思います。
恨んだり憎んだりしても過去は変えられないってこと。
傷ついたのは私たちだけじゃなくて廉さんもだってこと。
最初のうちはきっと・・・許してくれないと思うけど
けど・・・廉さんがお兄ちゃんに本気で接してくれればきっと・・・
お兄ちゃんもわかってくれると思うんです。
だから・・・お兄ちゃんのこと、よろしくお願いします・・・・。)


そこで俺の意識は少しずつ現実に戻されていった・・・。
そして、瞳を開けると今まで見えていなかった闇夜を照らす星が一瞬だがはっきり見えた。
今まで霞がかったかのようにぼんやりとしか見えなかった星が一瞬だが見えた。


「俺が・・・今できること・・・。」
海へ来る前までは迷いや苦痛ばかりが頭をよぎり
虚ろであった瞳には確かな光が宿っていた。


廉はその後、一人海を後にした・・・。


続き>>美男の涙02*エロなし

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