月の主催者により生み出されたアルターエゴ。
基本となる7クラスを除き、意図的に「エクストラクラス」の英霊のみを抽出して作成された特別機。
ハイ・サーヴァントならぬ
エクストラ・サーヴァント。性能の優劣ではなく、構成そのものが異なる別規格のアルターエゴである。
エクストラクラスは通常のサーヴァントよりも更に限定的な、より狭い範囲の役割を与えられた存在である。
であれば、その特別な役割をそれぞれ抽出し1つの器へ詰め込んだなら、様々な限られた状況・環境下に於いても高い性能を発揮する事が出来るのでは――?
言うなれば「局地適応型アルターエゴ」。運営側が手を出しにくい地域、環境へと潜り込むことを目的として設計された。
そして注がれたクラスは「ブラックスミス」「ディエティ」「ターミネーター」。加えて基体は――――宝具級の魔眼を保有した彷徨海の少女。
クラスの偏りに関しては少々不安があったもののあとはなるようになれ、史上希に見る特異性を注ぎ込んで生まれたアルターエゴは―――――――
……なんと、月の主催者の思惑通りの性能を持つアルターエゴなのであった。
性格的に難があるわけでもなし、災害的な能力を持つわけでもない。その上であらゆる地点への侵入、脱出を得意とする汎用性。
まさに設計通りの逸品―――――なのだが、どこか物足りなさを感じる月の主催者であった。
所属としては主催者側、運営陣の一員であるものの、聖杯戦争自体の運営に携わっているわけではない。
そのため
ノワルナや
ジェネラギニョール、
セディヴローモンとは異なり運営エゴとしては数えられない。
良く言えば現地諜報員、悪く言えば便利屋の駒。役割としては
ジェネラギニョールの監視に近く、メイプラビスタの場合はより深い場所への潜入を担当する。
とはいえ……この月世界はその全域が主催者により監視されている。故にメイプラビスタという存在の必要性は少なく、運営エゴ/幹部として数えられない理由の1つでもある。
だと言うのに何故彼女が造り出されたのかと言えば……それはきっと、「直接手を下せる」為なのだろう。
高い監視能力を持ち、単独で動くことのできる適応力を兼ね備えた実働部隊。主催者の意向に従い、働く暗殺メイド―――――。
尤も、現状はその役割を果たす機会もなく、ただのんびりと月を見て回っているだけのようだが。
分身体を各地に散らばらせており、月のどの階層でもメイプラビスタの姿を目にする事になる。
役割としては監視カメラ、及び直接違反を取り締まる警備員に近いか。いずれにせよ、運営グループの中では最も下位のヒラ社員である。
よく姿を見かけ、戦闘能力も平均ということもあってか、ある程度戦い慣れた参加者からは「適度なサンドバッグ」として認識されている。
サーヴァントの調整、新たな技の試し切り、憂さ晴らし、嗜虐欲……様々な理由により、メイプラビスタの分身は一人、また一人と命を散らしていく。
人型かつNPCであるため、フィールドを闊歩するエネミーよりも叩き台として丁度良いらしく、人気のない場所に連れ込まれては無残な最期を遂げるのである。
上層ではさほど荒れていないものの、下層に向かうほど残骸を見かけることも多くなり、自分の残骸を片付けに来る彼女の姿を見かけることも少なくない。
一応感覚や情報は共有されているが、末端の分身体まで共有してしまうと逆に処理が追いつかなくなるため、定時連絡という形で対処しているが故の悲劇。
……分身体にかかるコストなど些細なものなので、多少の損害には目を瞑っている。
もし腕に自身があるのなら、適当に歩いている彼女に喧嘩をふっかけてみてもいいかも知れない。
なお、分身体にもしっかりと自意識や個人としての自覚が存在していることを追記しておく。