- 十影典世
- マスター。この聖杯戦争における我が主。
第一印象と後々知りゆく彼の周辺事情から、最初は周囲からの必要に迫られ戦場に立つ、願いを込められた器として評価している。
無論、極度の悪意を感じさせない、むしろ純粋な善性に満ちた彼の在り方は主として守護するに値するものであり、
最初から最後まで一貫して彼の力となって尽くすことになる。
ライダークラスのランスロットはクラス特性に沿った機動戦や、各種宝具を活用する局地戦を得意とする。
一方でステータス差が響く正面戦闘や徒に魔力と宝具を消耗させる防衛戦は不得手では無いが、このクラスでは特別秀でるわけでもない。
初期の典世の指示はランスロットを扱うにはやや慎重にすぎるきらいがあったが、当人は持ち前の応用力でその局面を切り抜けていく。
ランスロットの立ち振る舞いに一切の乱れはなく、典世を支えていくが、次第に典世の方が戦いの中で変化を見せ始める。
殺し合いに順応し、戦いを終えるために戦いと向き合うその姿勢に、ランスロットは正と負の両面を見出した。
負は、本来の典世が殺人に適性がないであろう点。その上で順応してみせようと自らを縛る姿勢は彼を苦しめ、
そして如何なる理由があろうとも、手を血に染める者が辿る道をランスロットは理解していた。
しかし一方で、ランスロットは典世の戦う動機を、妻のため、愛のために戦いに臨む姿に正を見出した。
その選択は貴方をいずれ殺すだろう。
だが、貴方の想いを私は否定しない。私が私である限り、それだけは否定してはならない。
貴方の覚悟は―――かつての俺と同じだ。
その中で、典世の妻の静留と彼女たちの子の話題になると、動揺を見せた典世に対してややオーバーリアクションな喜びを見せた。
その時だけは主人と騎士ではなく、共に父となった者同士で語らい、ランスロット自身も今は遠い場所にいる己の子に想いを馳せる。
「マスター。……いや、暫し無礼を許して貰いたい。ノリツグ、俺にも子供がいた。子供と一緒に、僅かの間だが旅をしたことがある―――あれは、良い。良いものだ」
「親が子に背負わせる期待などは、いつも変わらず重いものだ。だが、それは謝意よりも、未来へ後押しする善意のものと俺は信じている」
「今は笑って見せてくれ。君の妻に、君の子に。それこそが何より貴い祝福になるだろう」
そして、必ず子供の命を未来に繋げることを約束し、それが最終局面において二人が命を捨てる選択を選ばせた。