マリー・アントワネット(原作):自己と同じく神の恩寵の如き美貌を持ちながら、博愛的な精神性を見せているのが気に食わない。
また、英霊という存在の醜悪さを直視せざるを得なくなるのでマリアには珍しく、刺々しく突っかかる。心の奥底ではマリアにはもう、到底手の届かぬ崇高な精神的美しさ(裏切られたものへの赦しなど)に対して嫉妬を持っているのかもしれない。
『真に美しいものは、何かを少しも付け加えたり減らしたいとは思わない完全性
*1とは誰が仰った言葉だったかしら。わたくしたちのようなものは、傅かれるままにそこにあるだけで良いのよ』
『それにしても、英霊という存在はたいそう美しくないものだと思いませんこと? 誰も彼もが人生の影法師、そのまた影法師を一側面として切り取られてしまうんですもの。
人目を憚る関係のお方を拐かし、国を見捨てて逃げようとした王妃ですら、博愛の女神をお気取りになるなんて……マリー様も、お気をつけ下さいませね?』
ちなみにマリアはヴァレンヌ逃亡事件を、アントワネットが亡命しようとしたのではないとちゃんとわかっている。その上で煽っている。
ただ、計画の杜撰さや無計画にはいささか嘲笑が絶えないようだが。
グリム姉妹:童話の元になることは有名税と仕方なく思いながらも、書かれ方が一部気に入らないらしい。具体的には白雪姫が学習能力もなく幾度と継母の計略に騙されること。
『わたくし、それほどおつむがいまいち優れないようにお見えになったのかしら? 「美しい女はきっと学習能力に難がある」という空想と偏見によるものであるなら、少々お痛をご覚悟された方がよろしくてよ』
ダンテ・アリギエーリ:生前読んだ『神曲』に感銘を受けており、表現の細やかさや描写の一つをとっても筆舌に尽くしがたい、天に祝福されし者の手腕だと思っている。しかし……
『「嫉妬」自体は地獄へ墜ちるほどの罪業ではないというところが、わたくし納得いきませんでしたの。あなたに舌を尽しても仕様がございませんけれど、嫉妬で起こった破滅には枚挙に暇がありませんもの』