きのこたけのこ大戦@wiki - 藍の海底に沈み逝く
作者:社長
初出:http://kinotakehinan4.exout.net/test/read.cgi/pray...



―――此処は、いたって普通の高等学校。

私は、その高校の美術部のひとりの部員。

高校に入学してすぐに入り、一年経て。

可愛い後輩もできて、先輩として頑張って。


そんなある日、一人の後輩の子に、アドバイスしてあげた。
その子は、あまり深く美術をしたことがないという。
いろいろと、先輩として、後輩に教える。

「せんぱい、ありがとうございました!」


ぱあっとした表情で、後輩の子はお礼を言う。

「また、今度何かあったらおねがいしてもいいですか?」


「いいわよ、いつでも困ったことがあったら相談に乗るわ」


――――これがあの子との出会い。この出会いが、私の運命を変えた。



そうして、時は過ぎ、夏休み―――

暇なある日、あの子と、二人で遊びに出かけた。

ショッピング、映画館、ファーストフード店…

楽しんで、夕空が近づくころ。

「せんぱい」

あの子は、緊張した様子で、けれどはっきりと話を切り出した。

「なあに?」

「わたしは、その…
 …………
 そ、その…せ、せんぱいのことが 好き です…!!」


「えっ?」
私は、唐突に好きと言われて、混乱する。
けれども、私はすぐに、頭を撫でながら。


「ふふ、私も、あなたが好きよ。これからもよろしくねっ」

私は、あの子の好きが、愛だとは、分からなかった。


―――その日から、あの子は、機会があるたび私に触れるようになる。

お弁当も一緒に食べたり、勉強も教えたり。

私はすこし鬱陶しさを感じるときもあるけれど、あの子と一緒にいることは苦じゃないから。

季節は移り、冬休みのある日。

私は、あの子の家に呼ばれた。
あの子の親は、旅行に行っているから、寂しいのだと。
また、勉強を教えて欲しいのだと。

「せんぱい、こんにちは!」

笑顔で癒されるのに、何故だか、その目は凍りついているようだった。

「せんぱい」

「どうしたの?」

勉強の小休憩のときに、彼女とお茶を飲みながら、話をした。

「わたし、せんぱいのこと、好きです」

「前も聞いたわよ?」

彼女は、少し顔を赤らめて
「せんぱい、わたしは…その、Likeではない…好…きなんです…」

「えっ?」

つまり、それは――ー

「あいして、います」
「愛して…いる?」

突然のことに、わたしは混乱する。
「え…っと、その……」

「せんぱいは、わたしのこと…」

「私は………」

好きではあるけれど、それか恋なのか。

「どっちの好きかが、分からない……」

「……………」

気まずい空気が流れて――
「あ、お茶が切れてる…すぐ持ってきます!」

彼女が戻って、再びお茶を飲みながら。

無言、無音の空気が続く。

……あれ?
「ちょっと…眠く…」



私の意識は、まどろみのなかに。


――――起きてしまえば、すでに夜。



私は、ベッドの上に、手足を縛られていた。



「せん、ぱい…」

「!?」

彼女が、私をじっと見つめる。

「え……?」

縛られた手足を動かしても、ただベッドをぎしぎしと揺らすだけで。


「これで、いっしょですね、ふふ…」

―――私は、彼女の凍った目に吸い寄せられてゆく。


私の髪の毛を、柔らかな手で撫でるのが、感触で伝わる。


私は、深い闇へ堕ちてゆく。
私は、深い闇へ沈みゆく。

ああ、わたしも―――



「ん……」

唇に、柔らかな感触を感じる。



あの子の、私への口づけの感触を感じながら、私は深い闇へと沈み込む。

もう、このまま堕ちてしまえば二度と光をつかめないだろう。


…ああ、そうだとしても、あの子に沈められるなら、堕とされるなら。

わたしも あのこが すきなのだから。





この からだをも ささげよう。
この こころをも ささげよう。



「せんぱい…」

「いいよ………」

私は、深い深い、藍色の海の、闇の底へと。



愛の生まれる其処へと、沈んだ。



藍の海底に沈み逝く 完


せんぱい 17歳
山元高校 2年生 美術部。
どこにでもいる普通の女子高生。
「こうはい」との出会いが、彼女の運命の分岐点。

こうはい 16歳
山元高校 1年生 美術部。
美術部に入り、「せんぱい」と出会う。
彼女の愛情は、世間的には異常なものと捉えられるほど、深い。

2014/06/22 公開