万城目学によって書かれた小説。
「いちばん年下なんだから、本当は旭がチケットを買うはずだったんだぜ」
途中、何度も振り返り、鳥居は非難めいた視線をゲーンズブールに投げかけた。
「私は昨日までロンドンに行ってましたので」
「いいよなあ、優雅で」
「遅れてゴールデン・ウィークの休みを取っただけです。三月に検査員に出向になってから
ほとんど休みがありませんでした。どこまでも正当な休暇です。あと、旭と呼ぶのは、やめてください」
「だって、そういう名前じゃないか」
「何度もお伝えしていますが、旭はファースト・ネームです」
登場人物
会計検査院
真田家
真田大輔:大阪市立空堀中学の二年生。男という性に戸惑いを感じ、セーラー服で登校し出した。
真田幸一:大輔の父親。お好み焼き屋「太閤」の店主。
真田竹子:大輔の母親。
真田昌一:大輔の祖父。大輔が小学校一年生のとき、この世を去った。
橋場茶子:大阪市立空堀中学の二年生。
初子:橋場茶子のおば。茶子を引き取り育てている。
蜂須賀勝:大阪市立空堀中学の三年生。
島猛司:大阪市立空堀中学の二年生。あだ名は家の家業の「ジャコ屋」。
浅野:空堀商店街の和菓子屋。
島商店:空堀商店街のジャコ屋。
後藤
大阪市立空堀中学、二年B組の担任。左頬には印鑑で押したような丸いほくろがあり、その中心から一本長い毛が生えている。
『その毛を抜いたら、後藤は動かなくなる』という噂がまことしやかにささやかれた。
大野:大阪市立空堀中学、体育教師。
社団法人OJO:空堀商店街の長浜ビル四階にある社団法人。ビルの入口の表札は「長濱ビルヂング」。
石田:大学で法律を教えている。白髪まじりの髭をたくわえた小太りの男。
片桐:公認会計士。度の強そうなメガネをかけた髪の薄い痩せすぎな男。
長宗我部:小学校で社会科を教えている。
大阪府警
増田:医務室勤務。
宇喜多:刑事。髪が短く眉毛の薄い四角い体格の中年。
大阪人
前田玄二郎:四十四歳。本町に本社のある中小電気機器メーカーの中間管理職。
加藤清志:六十二歳。露天商。
正やん:姓は福島。加藤清志の隣で、縁起物のひょうたんを売っている。
大谷直也:二十一歳。梅田にある専門学校生。
南場勇三:三十四歳。
長塚:大阪女学館の教頭。
豊崎:大阪女学館の教員。学年主任をしている。
竹中丁兵衛:八十五歳。
黒田孝一:八十五歳。腎臓を悪くして外出時は車椅子が欠かせない。
速水久繁:六十八歳。朝食はごはんに味噌汁、卵焼き、白菜の漬物で、テレビは「おはよう朝日です」を見る。
塙団次:浜寺公園の売店でたこ焼きを作ってるが、腕はあまりよくない。
小西:三十七歳。淀屋橋にある商社で働いている。洒落たメガネをかけている。
千野(ちの):弁護士。五十代半ば。
蜂須賀正六:蜂須賀勝の父親。蜂須賀組組長。
趙氏:台湾台北で靴屋を営む。四十三歳。十九歳も歳が離れた彼女と大阪に観光旅行に来る。
榎木大明神(えのきだいみょうじん)
富士山のジンクス
行きの新幹線から富士山がくっきり見えたら、検査でデカいものが見つかる。
空堀商店街
地下鉄長堀鶴見緑地線松屋町駅を出て、松屋町筋を百五十メートル南下し
通りに面した古い案内ゲートをくぐると、正面に入口が見える。
大阪城の空堀だったという言い伝えはあるが、堀の跡はどこにも残っていない。
大阪女学館
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