「殴られたい女の子がいる」と紹介をされたとき、

懸念したのは「うまくやれるだろうか」ということだった。

僕は変態的な行為なら何だってしたいと思っているけど、
それまでに女を殴ったことはなかった、完全な素人だ。

殴られたいという女を満足されることができるのだろうか、という不安があった。

殴り終わったとき、
お互いに体力が限界まで消耗した状態で、立ってられないくらい疲労していた。

僕は「なにか飲む?」とユリに声をかけた。

水、と答えたので、冷蔵庫からペットボトルの水を2つ取り出して、並んで座って、飲んだ。

ふたりともヘトヘトで、汗だくで並んで座って、無言で水を飲んだ。

結果として、この日の暴力で、ユリには「痛み」は、そこまで大きくなかった気がする。

ヘッドギアとボディープロテクターをしていたし、押し込むような殴り方が多かったので、

「衝撃」は大きかったと思うけど、「痛み」はそれほどではなかったのではないだろうか、と感じた。

横にいる汗だくのユリから感じたのは「疲労感」だった。

本当にスポーツのあとみたいだった。

この日、防具をつけさせたのは正解だったと思う。

もし防具がなければ、僕はまともに殴れなかっただろう。

初めて人を殴るのは、かなり勇気がいる。

グローブと防具のおかげで、かなり本気で「殴る」という行為ができた。

ただ、ユリに「本物の痛み」を感じさせることはできなかったと思った。

ボディを殴ったときは苦しそうだったけど、「暴力による本物の痛み」とはまた違う感じがした。

言うなれば、厳し目の格闘技スクールで練習をした見たいな感じだったと思う。

今回のプレイで、ユリの「殴られたい」という欲求を満たせたとは思えなかった。

でも、「はじめての経験」をお互いに出来たとは思った。

だから僕はそれなりには満足できた。

ユリもそうなんじゃないかと思った。

そして、「次はもっと満足させてやれる」という気持ちがあった。

今回は、お互いが初めてなりに、暴力体験らしきものを経験したとは思う。

次は、もっと本物で「より本質的な暴力」ができる自信があった。

ここで「どうだった?」とか、感想会をするのは、違うと思った。

お互いに、何かに満足して、何かに物足りなかった。それは言わなくてもわかった。

だから僕は「またやりたい」と言った。

ユリは「いいよ」と答えた。

いま思えば、この1回目はやはり「ままごと」だったかもしれない。

でも、これによりお互いに「目覚め」があった。

その後、僕とユリは、相当に深いところまで「暴力の世界」にハマりこんでいく事になる。

何もしらない素人同士だからこその「危険な遊び」に突入していくことになった。

(つづく)

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