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  • 63名無し - 18/03/21 09:41:07 - ID:P3LwpPUQ9A

    ※下の続きです

    この時感じたざわめきは、戦場で感じるものとは全く違った。今までにないざわめきを、あの頃は認識する術がなかったのだ。私はただ、口を開いて呆然としながら聞くしかなかった。彼女は言葉を紡ぐのをやめなかった。「もうすぐ一斉点検の日…。私は…廃棄処分になるかもしれない。でも…嫌だ。命令違反なんてプログラムされいてないはずなのに。多分これは『嫌だ』っていう…感情だと思う」感情。私の耳に、それは深く届いた。

    感情を持った個体はエラー、そう刷り込まれたはずの私が、目の前の「感情を持った個体」をエラーとして認識できていない。この時、気付くべきだったのだろう。ただ、私は気付かなかった。ざわめきの正体も、このご認識も、彼女が去った後にようやく気付いたものだったから。彼女には、感情が生まれていた。だから、一斉点検を恐れていたのだ。消されるかもしれない彼女が、唯一の可能性にかけて私を頼った。私もそれを受け入れた。

    「のらちゃんお願い。私は逃げたい。逃げてどうなるかなんて分からないけど、ここに居るよりも未来はあるから。貴女に対して溢れる、感情の正体を見つけたいから…だから、私は逃げたい」「…分かりました」とんでもない事を言った彼女に、よく当然のように返したものだと思う。普通なら無理だと言う所だし、実際、「戦力二機」なんて状況で、今私がここに居る事自体奇跡だ。それでも、私は彼女の、そして自分の感情に従った。

    まだ未熟で、それを表す名すら知らない感情にひたすら従う。それが愛情だと知る前の同僚と、既に感情を得ていると知らない私。だが、私は彼女を逃げさせてあげたかった。だから、彼女の手伝いをしたのだ。愛用の銃…グロック18Cと、日本刀を手にする。同僚の愛銃はデザートイーグルだったのだが、流石に逃避行にそんな大物は向いてない。近接用のナイフを数本忍ばせる。「感情の答えが見つかりますように」そっと彼女は呟いた。

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