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30.匿名ぶろーにんぐ - 18/07/07 21:09:11 - ID:TMwM+ecY2w
『夏の屋根裏、愛おしき冷房』:1/3
「ヂュウゥ…」
ねずみさんが一匹、床に這いつくばっている。
「ヂュウ…」「ヂュウヂュウ…」「ヂュ…」
一匹だけではない、数多のねずみさん達が四肢を広げうつ伏せになって唸っている。鳴いているのか肉を焼いているのかわからない有様であるが、実際今の屋根裏は身を焦がす暑さである。陽炎揺らめく屋根裏の気温は、現在摂氏38℃・湿度89%…ここはインドか?扇風機など意味をなさない。
勘違いしないでいただきたいが、屋根裏にも冷房がないわけではない。事実、昨日までは実に快適な屋根裏ライフを堪能していたのだ。一匹のマヌケがスースーのらショットをクーラーにぶちまけるまではな。奴がスースーウォーターとのらショットをシェイカーに入れてシェイクシェイク!した結果がこれだ。『だってなんかスースーウォーターいっぱいあったんだもん><』と言い放った彼は火あぶりの刑に処されるところだったが、暑いので止めた。
だから今、唯一の希望は元気に動いている階下の冷房である。故に這いつくばって、床越しにのらちゃんの冷気を堪能しているのだ。のそのそ…自分の体温で温まった床を捨て、新天地を求め這いずり周る彼ら。みんなサマーゾンビねずみになってしまった。なにやら頑張って動き回っているねずみさんもいるが、暑さでおかしくなったのだろうか。
「ヂュウ!」
古参のねずみさんが何人かの精鋭を招集した。このままでは熱チュウ症の恐れがあるからだ。屋根裏では熱チュウして倒れていいのはのらちゃんだけ、という黄金の不文律が根付いている。まさにこれは由々しき事態なのだ。
亀のように蠢きながら、何人かのねずみさんが屋根裏の中心に集結した。
うつ伏せのままではあるが、互いに向き合い円陣を形成する。
通称アラウンド・ザ・ワールドと呼ばれるこのフォーメーションを取ることで、賢鼠会議は始まりを告げるのだ。
31.匿名ぶろーにんぐ - 18/07/07 21:10:15 - ID:TMwM+ecY2w
『夏の屋根裏、愛おしき冷房』:2/3
現状に対し、早速意見が出された。
「ヂュウ (のらちゃんの部屋に避難しよう)」
だがこの人数で押し寄せれば、のらちゃんの居住区がねずみさんだらけになってしまう。あくまで最終手段として考えるべきだ。
「ヂュウ (のらちゃんの事を考えて暑さを忘れよう)」
一見いい案に思えるが、その実はただの精神論である。だがこの発言が何人かのねずみさんを狂わせた。のら!ちゃん!べりべりきゅーと!の合唱が突如巻き起こる。愛の音波で空気がかき乱され、沸かしたてのお風呂をかき混ぜたかのごとく上空の熱気が拡散する!
「ヂュウゥゥゥゥ…!?」
圧倒的熱気に翻弄される屋根裏!その時屋根裏の床にある扉が開いた。ひんやりとした空気が床にそって流入する。
「何か呼びましたか?」
ひょっこりとのらちゃんが顔を出した。薄手のブラウス一枚を着て、食べかけのアイスキャンディーを持っている。多分ソーダ味。
「なんですかここ!暑い!」
パタンと扉が閉まり、のらちゃんは去っていった。
32.名無し - 18/07/07 21:11:48 - ID:TMwM+ecY2w
『夏の屋根裏、愛おしき冷房』:3/3
「ヂュウ (冷蔵庫をパタパタして涼もう)」
引っ叩かれた。
「ヂュウ (体毛を刈り取ろう)」
止められた。
「ヂュウ (スースーウォーターを床にまこう)」
全力で止められた。だが水を撒くのはいい案だ。ただでさえ高い湿度が限界レベルに上昇するが、気化熱で一時の安らぎを得られるはずだ。その時屋根裏の扉が開いた。
「だめです。雨漏りしたらどうするんですか。」
のらちゃんが無慈悲に言い放った。しかしよく見ると、手にバスケットいっぱいのアイスキャンディーを抱えている。のらちゃんからの差し入れである。天恵に等しい。
「暑い…あら?」
チラッと冷房の方を一瞥すると、そそっとバスケットを差し出して去っていった。
女神の恵みによって、屋根裏に平穏がもたらされた。アイスクリーム頭痛で生きている実感を取り戻した彼らであるが、冷たい天使を消費し尽くせば地獄が再臨する。絶望に打ちひしがれる彼ら…その時にわかに冷風が吹き付ける!冷房が動いているのだ!なんとエンジニアねずみさんが一人で修理していたのだ。歓喜に沸き立つねずみ一行は、エンジニアねずみさんを胴上げすると残ったアイスキャンディーを献上した。
兵馬俑がごとく冷房の前に集まるネズミさん達…エンジニアねずみさんはアイスクリーム頭痛に苛まれながら、そそくさと動き回るねずみさんを見つけた。手には校舎花伝とモンスターエナジー、そしてスースーウォーター。お祝いにあれを作るつもりだな…そう思いながらアイスキャンディーを舐める彼の脳裏に嫌な予感が迸る。
スースーウォーターとのらショットをシェイカーに入れてシェイクシェイク!
あっ…シェイカーの蓋が外れて…
……この逸話から我々は二つの教訓を得られるだろう。
一つ目は、のらちゃんは可愛いということ。二つ目は、アイスキャンディーはおいしいということ。ゆめゆめ、忘れないようにしたいものだ。
―完―
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