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ブレーカーシューズ


「なぁ、なんで曹長ってあんなブーツなんだろうな」
海兵たちはそんな話をする。女っ気の無いこの海軍、曹長であるたしぎは目の保養だ。
細い身体に似合わぬ太刀筋は屈強な海兵たちでも太刀打ちできるものは少ない。
難攻不落。
それが彼女につけられた渾名だった。
「お前ら名にサボってんだ?」
「たっ、大佐!!」
海軍大佐スモーカー。煙に変化することのできる悪魔の実の能力者。
「いや、その、曹長のブーツの話を……」
「あ?たしぎの?」
「はい、結構年代物っぽいじゃないですか」
「ああ、あれか。あれは俺がアイツに入隊記念かなんかでやったやつだ」
スモーカーは葉巻に火をつける。
なんど新しいものをやるといっても彼女は頑として譲らない。
この上司と部下、似通ったところは強固な意志。
彼女は大事そうに何度もブーツをレストアしていた。


「ってこなとを言われたんだが」
「スモーカーさんがですか?」
地図を抱えながらその重さにふらふらとたしぎの足が揺れる。
「オラ、仕方ねぇな。よこせ」
「いえ、大丈夫です。これくらいっ……!!」
スモーカーは気の長いほうではない。面倒だと判断した時点でたしぎごと持ち上げて歩き始めた。
「下ろしてくださいよ!!」
「うるせぇ。大体んなものでふらついてんじゃねぇ!」
資料室に叩き込まれ、たしぎはのろのろと片付けをはじめる。
(このブーツは大事なのものだから……)
何年も前の代物は既にあちこち傷だらけで、何度も何度もレストアしてきた。
幾つもの街をこのブーツとスモーカーと共に過ぎてきた。
これは彼女の歴史そのもの。
(それに、スモーカーさんがはじめて私にくれたものだから……)
持っていた地図を思わず抱きしめる。
不器用な男はぶっきらぼうな言葉でしか愛の言葉をくれない。
それは酷く偏屈で、優しい言葉。
思わず顔が綻んでしまう。
(えへへ……さっきも手伝ってくれたし)
少し緩んだ組紐が邪魔になっても。
この壊れかけのブーツが愛しかった。



砂の国アラバスタ。
海軍はこともあろうか海賊たちに心意気で負けた。
この国を救ったのは正義ではなく、友のために動いた勇敢な海賊。
正義は絶対なるものではない。
それは海軍曹長として生きることへの疑問という形になる。
「コラたしぎ!開けろっつってんだろ!!」
がんがんとドアを叩く男。
ベッドの上で膝を抱え、耳を塞いだ。
「開けねぇとぶち破るぞ!!」
今度は蹴りも加わってくる。どうやら本気でドアを壊すつもりらしい。
仕方なく立ち上がり、ドアを開けた。
「……何やってんだよ」
「……なんだっていいじゃないでずがっ……」
涙声。隠すこともせずたしぎは俯いたまま答えた。
「その……お前の取った行動は海軍としちゃあ厳罰もんだ。だがな……人間としちゃ上出来だと思うぜ」
「……ぼんどにぞうおぼいまずがっ!?」
「だからまず鼻水なんとかしろ!」
「……ばいっ!!」
ハンドタオルでがしがしと顔を拭いて愛用の眼鏡を掛けなおす。
「ったくひでぇツラだぞ、お前」
「……すいません……」
「泣くほど悔しかったらもっと強くなれ。あの男よりも。お前にはそれだけの器がある」
「……はい……」
「そ、そんだけだ……」
泣いてる女相手にはさすがのスモーカーでも暴言を吐くわけにもいかず、彼は足早に部屋を出ようとする。
その上着の裾をたしぎの手が掴んだ。
「何だよ」
「……行かないで下さいっ」
ぎゅっと掴んでくる手。
「いっつもスモーカーさんはわたしを呼ぶじゃないですかっ……だから今日は私が呼び止めますっ……」
「……………」
「ここに居てください……一緒に居てください……」
ぼろぼろと涙がこぼれる。
「だから泣くなっていってんだろ!」
「泣いてなんていません!!」
「……分かったから離せ……」
余程悔しかったのだろう。たしぎの部屋は珍しく荒れていた。
その嵐の中央にあるのは愛刀。
叩き折ろうとして止めた形跡。
言葉は無力で、できることは彼女を抱き寄せることくらい。
剣士としても、人間としてもあの男に負けた。
己の未熟さを痛感させられた。
「悔しかったか」
「………」
だまって頷く。涙を必死にこらえて、肩が震えた。
顎を取られて、少し乱暴なキスが降る。
何度目か分からない、葉巻の煙の味のする少し苦いキス。
「…っは……」
止まりそうな息と、離れる唇。
外れるボタンと脱がされる衣類。
そして、ブーツ。
「お前もえらく傷だらけになったな」
細かい傷の付いた乳房を掴む手。
指も腕も、体中にある傷たち。
己の信じるものために。正義という名の下彼女は揺ぎ無く進んできた。
「…あっ……」
軽く噛まれて、上がる嬌声。
今までに何度となく抱かれてきても、どこかこの男が恐いと思う。
無骨な指が腹を滑り、まだ少し濡れ足りない入り口に入り込む。
「んっ……!!」
内側で動く感覚に身体が震える。
「ああっ!!!」
押し上げられる度に弓なりになる身体。
口元を両手で押さえて、声を殺す。
濡れ始めて、スモーカーの指に体液が絡んでくる。
ぐちゅぐちゅと上がる音に、今更ながら自分が『女』であることを自覚させられた。
「…ス……スモーカー…さん…っ……」
震える指が部屋の隅を指す。
「あ?」
「何でもいいですっ……音……鳴らして……っ……」
例え公然の秘密でも、羞恥心はあるから。
大佐は黒い懐剣を持っている。そんな風に揶揄する輩もいた。
傍目に見れば細身で頼りなさそうなこの女が曹長という立場に居ること自体が疑問だった。
士官学校のエリートでも。そうそう上がることは出来ない。
下世話な噂好きたちはこぞって彼女が大佐と寝たからだと囃し立てた。
そして彼らは知ることになる。
彼女の強さを。
百戦錬磨のスモーカーと行動を共にして、多くの海賊たちを仕留め、捉えてきたその姿。
愛用の日本刀は彼女に相応しく誇らしげにその細越に。
懐剣は鋭く、美しい。
「あ!あんっ……!!」
「ったくしょーがねーオンナだ……」
言われたように鳴らしたのはたしぎがよく歌っていたある曲。
多少耳障りなギターの音とノイズが少しだけ彼女の声を消した。
膝を持って、体を折らせて少し強張ったままの体に注入する。
「ああっっ!!!」
貫かれて少し浮いた腰。
汗ばむ手はシーツを掴み、力任せに引く。
押さえつけられて胸に男の胸板が重なる。
手を伸ばしてその首を抱いて、縋るように身を寄せた。
他人の黒い噂をものともせずに、ただ前だけを見つめてきた。
その広い背中を追いかけて、あなたが唱える正義の下、やれるだけやってきたはずだった。
「!!!!」
ぼろぼろとこぼれる涙は、どの意味を持つのだろう。
「あ、あ、あ……」
「……泣きたきゃ泣け……ここには俺とお前しかいねぇんだからよ……」
「……スモーカーさん……っ……」
その腕の中、声を上げてたしぎは泣いた。
生まれて初めての徹底した敗北感。
自分の中で何かが壊れるのが分かった。
それは砂の城、まるでこの国のよう。
「……っ…ふ……」
今までにないくらい、優しいキス。
それは言葉足らずの彼の精一杯の思い。
その髪に指を挿し、引き寄せて同じように舌を絡ませる。
女に生まれてことを悔やんだ日々もあった。
どう足掻いても力で男に勝つことは出来ない。
けれども今は、女であることを誇りに思う。
「あ!あああっ!!!」
揺さぶられて黒髪がシーツの上で咲き乱れる。
「お前もイイオンナになったじゃねぇか……」
上がる息と、掠れる声。
「や、あぁっ!!」
脊髄まで犯されるような感覚。
それは脳内麻薬と男の匂いが引き起こす一種の幻覚。
「…あんっ!!…やぁ……!!」
加速する動きに、連動する腰つき。
「あああああっ!!!!!」
半ば悲鳴にも似た声を上げて、彼女は男の腕の中で意識を飛ばした。
「とんでもねー歌聴いてんだな、お前」
流れる音を聞きながら葉巻に火を点ける。
「そうですか?素敵だと思いませんか?」
「なんなんだ。『俺は彼女に殴り殺されたいんだ』っつーのは……」
「いいじゃないですか〜、駄目ですか?」
「お前の趣味にまで一々口出しするわけねぇだろうが」
その腕の中、たしぎはようやく笑みを浮かべた。
「…スモーカーさん…わたし、あの時死んじゃうんだって思ってました……」
咲き乱れる手は彼女の自由を奪い、その喉元にナイフを付きたてようとした。
「死んじゃったらもう、スモーカーさんに会えないんだって……」
ぽつぽつとこぼれる言葉。
「また怒られちゃうって……」
「死んだやつを怒鳴りつけるほど俺は無粋じゃねぇぞ」
たしぎの顎を取って、男は口付ける。
「だから、死ぬんじゃねぇ。怒鳴る相手もいねぇんじゃ張り合いがないからな」
「…はいっ……」
あなたから素直な言葉はもらえないけれども。
「……わたし、女に生まれてよかったって思ってます……」
時折見せてくれる不器用な優しさが。
「だって、スモーカーさんのこと、好きになれたから……」
どうしようもなく、好きなんです。
「一々言わんでもいい……」
少し照れた顔も。
不器用な愛情表現も。
「……好きです……」
全部丸ごと愛したいのです。
今日も彼女はブーツのかかとを鳴らして走り行く。
「たしぎ!遅ぇぞ!!」
「すいませんっ!!!!」
さぁ、靴を鳴らして、地響き立てながらあの人のところへ行こう。
この靴を鳴らして、世界を飛び回ろう。
晴れ渡る空、ブレーカーシューズ引っさげて。

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