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『雪のクリスマス』


「ゆーーーきーーーだぁーーーーーーーっ!!!」
叫び声に目を覚ましたのが明け方のこと。昨夜からの不寝番はルフィだ。冬島の海域に入ったらしく急に
冷え込んだものだから、錨を下ろして夜明けまでやりすごそうとしたのだけど。
倉庫へ駆け込んできて、バンバンバン!と女部屋の扉を叩いてくるのに否が応でも目が覚める。けれど、
あまりの寒さに私はベッドから出られそうもない。
「冬島が近いんだから雪くらい降るでしょー…勘弁してよ、寒いし眠いのよ…」
ぼやくと、ハンモックで毛布に包まっていたロビンが、もそりと体を起こして髪をかきあげた。その間も
ルフィは起きろ起きろと上から呼びかけてくる。壁の向こうの男部屋からウソップが「うるせェ!!」と
叫ぶのが聞こえた。
「すごいはしゃぎ様ね。…いつもこう?」
「…なんでかあいつ、雪が好きなのよ」
「思い出でもあるのかしら」
「さぁ。…ねぇルーフィー…お願い、もうちょっと寝かせてよぉ…」
「なんだよー。なあ、ナミぃ、起きろよー。俺こんな雪初めて見たんだよ」
「…雪なら偉大なる航路に入ってすぐにだって、あとドラムでだって見たでしょ。ドラムほどの大雪どこで
見られるってのよォ」
「普通の雪じゃねぇんだよ!とにかくすげェんだ!」
「…寝かせて」
返事をするのも煩わしくてそれ以上応えずにいると、やがて諦めたのか不満声が遠ざかっていく。私は雪の
中で転げまわって遊ぶルフィの姿を思い浮かべながら、再び眠りに落ちていった。

「さっむーーーーーい!冗談じゃないわこの寒さ。やってらんないわよぉ」
「んナミさ〜ん♪恋の雪囲いいかほどに〜?」
「いかほどもへったくれもないわよ。きっちりやって!」
「アーイ」
「なんだよ、冷凍みかん食いたかったのになー」
「ざけんな!」
みかんの木が凍らないように、麻袋を切り開いた布を巻きつけているサンジくんの邪魔をして蹴り落とされた
ルフィは、そのまま陸に着地すると「にししっ」と笑った。ほんとになんだってそんなに雪が好きなんだか、
甲板に散々雪だるまをこさえたくせに、今度はかまくらの制作に熱中している。
それにしても参ったわ。完璧無人島じゃないの。ログが溜まる速さを見る限り三日はかかりそう。島の測量
には半日もあれば十分だし…っていうか。
「こんな金っ気のない島イヤ〜」
「お前はそればっかしか」
ダウンのロングコートを着込んだゾロがルフィの防寒服を持って船から飛び降りると、何時もの格好で遊び
呆けてるルフィに投げ渡した。そのまま山のほうへ向かっていく。
「ちょっと、どこ行く気よ」
「どこって…散歩だ」
「あんたは学習しないバカね。チョッパー、ついてってやって」
「う、うん!」
「あー待て待てお使いコンビ。山に入るならなんか食えそうなもん探して来い」
「誰がお使いか」
サンジくんがカゴを投げ渡すと、文句を言いながらも二人は歩いていった。あら?でも食べられそうなもの、
って…。
「ねぇ、食糧の蓄えヤバいわけじゃないでしょうね?」
「そこのゴムさえ大人しくしてくれればね」
「なんだと!サンジところでおやつ!」
「お前は痴呆かなんかか?さっき昼飯食ったばっかだろう」
「んじゃあ弁当作ってくれ!探険してくる!」
「なんだよしょうがねェなぁ…」
サンジくんはぼやきながらラウンジに向かう。………お弁当なら良いの?
ってそれより!
「ちょっとルフィ、一人で行くつもり?」
「ウソップと行こうと思ってたんだけどよ、なんか修理しなきゃなんねぇとかなんとかって」
「ったく…あんたも学習しないわねぇ。じゃあ私に付き合って」
「なんだ、お前も探検か?」
「測量よ。人が住んでる島なら売ってる地図で事足りるけど、こういう無人島は地図売ってないでしょ」
「あー、時々やってるあれかぁ。…あれに付き合えってぇ?」
思いっきり嫌そうな顔をするのに、カチーンときて。
「…嫌ならいいわよ、一人で勝手に探険してくれば!」
こんな無人島なら海軍に会う心配もないし、好きなだけ迷子になってりゃ良いのよ。ラウンジに向かうと
ルフィ用のお弁当を手に持ったサンジくんとすれ違った。

…私なんであんなのとつきあってるんだろう。バカでアホで大食いで前しか見てなくて自分勝手でちっとも
優しくない。そりゃ測量なんて一緒に行ったって荷物持ちだし、測ってる間はかまってなんかあげられない
けど。恋人のお願いもきいてくれないなんてあんまりよ。
「そういうこと期待する私もバカなんだけど」
「頭の中身漏れてるよ、ナミさん」
テーブルに突っ伏してたところに頭上から声がした。慌てて顔を上げると咥え煙草のサンジくんがコーヒー
を差し出してくる。
「やだ、いたの?」
「さっきからね。…またケンカしたんだ?」
「ケンカってほどのことでもないわよ。……『また』って言った?」
「違うのかい?」
「なんでもお見通しみたいに言うのやめてくれる?」
「傍にこんなお買い得な男がいるのに見向きもしてくれないんで♪」
「…………」
「あれ?乗り換え検討中?」
「なわけないでしょ、バカ」
「そりゃ残念。測量なら俺付き合うけど?考え事しながら歩いてると事故に遭うよ」
「…それもそうね。荷物持ちお願い」
はーっと溜息つくと、熱いコーヒーを啜った。
サンジくんがこう言う感じに、私にちょっかいかけてきても、ルフィは一向に気にしない。逆に私が嫉妬
されるくらいなのよ、贔屓されてるって。私はサンジくんに嫉妬するわ。コックだってだけで無条件にルフィ
に懐かれて。言えば男にモテても嬉しくないって言うだろうけど…。
「ナミさん、そっち崖だよ」
「わっ!…あ、ビックリした」
「予想以上に上の空だなぁ」
島の外周を確認しようと雪道を歩いていると、腕を掴んで引き止められた。機材を担いだサンジくんが
苦笑いする。
「もう止めたほうがいいんじゃない?」
「私の勝手でしょ!」
「へ?…測量をだよ?」
「あ」
ルフィとつきあうのを「もう止めたら?」って意味だと勘違いして私は顔が熱くなるのを感じた。サンジ
くんは暫く黙って私の顔を見ている。そしてポリポリ頬を掻くと、唐突に言った。
「愚痴りたかったら俺聞くけど?」
「…そんなみっともない真似できるわけないでしょ」
「あのね、ナミさん。君に怪我でもされたら俺は一生治らないほどの傷を心に負うわけ。それからちゃんと仕事ができてないことのほうがよっぽどみっともねぇよ?」
「………なによ、説教?」
「カウンセリングへのお誘いです♪」
「…サンジくんの意見じゃあいつとはかけ離れすぎてて参考にならないわ」
「そうかな」
「じゃあなんであいつが私を選んだのかとかわかる?」
「ナミさんとヤりたいからに決まってる」
あまりにストレートな物言いに呆気に取られた。同じ事言うにしたって、普段の彼ならもっとこうオブラートに
包んだ発言になるところじゃない?それを…それを……いや、そうじゃないわ、今の問題はそれじゃなくて。
「…それだけだって言うの?!あんまり馬鹿にしてるわ!失礼なこと言わないで!」
「でも俺、それってかなり純愛だと思うけど」
「どこがよ!邪まなだけじゃない!」
「本能で選べるってなかなかねぇよ?逆に俺あいつ羨ましいぜ、天然で計算なしだから」
「やっぱり参考にならない!」
「レディは理屈が必要だからなぁ」
「…男は違うって言うの」
「個人差あるけどね」
今日はもう諦めて帰ろう、と来た道を引き返すのに、私は何度も転びそうになってサンジくんに助けられた。

夕方になってチョッパーが籠いっぱいにキノコや山菜を採って帰ってきた。ゾロはウサギを狩ってきたらしい。
ぶらん、と両手にぶら下がったウサギの死体に私はたまらず悲鳴を上げた。
「イヤッ!見せないでよそんなの!可哀想じゃない!!」
「可哀想でも肉になりゃお前だって食うだろうが」
「狩猟もある意味本能だからなァ。嫌だったら食べなくても良いよ?別の料理作るしさ」
「も、ってのはなんだ。本能がどうした」
「なんでもないわよ、料理も食べるし!…今日の献立は?」
「兎肉の香草入りシチューキャセロール仕立てです♪」
「わぁ美味しそう♪」
チッ……いちいち癇に障る発言するわ、今日のサンジくん。
それにしても、もう日が暮れるっていうのにルフィが帰ってこない。どこかで迷ってるんじゃないかしら。
あのバカ、冬島でサバイバルなんてできるの?
「ナミ、どうしたんだ?ラウンジにいないと風邪引くぞ」
甲板へ出て岸をじっと睨みつけていると、チョッパーが外へ出てきて見上げてくる。確かに暖房設備のない
この船では、唯一火を使ってるラウンジが一番暖かいんだけど。…でも。
「ルフィが帰ってこないのよ。もう日が落ちるわ。チョッパー、こんな寒さで人って外で一晩やり過ごせる?」
「ええっ?うーん、眠らなければ一晩くらいなんとかなると思うけど…でもまだ日が沈むまで時間あるし、
帰ってくるよきっと」
「そうだと良いんだけど…雪が降ってきたし」
「気にしすぎだよ。おなかが減ったら帰ってくるよ、ルフィは」
チョッパーがパンツの裾を引っ張るのに仕方なくラウンジに戻ったけど、結局夕食にもルフィは帰ってこな
かった。外は雪が激しくなっている。話が違うじゃない。どうしよう、あいつ遭難したのかも!
スプーンを握った手をドン!とテーブルに叩きつけてキッ!とサンジくんを睨んだ。…皿は空っぽになって
たけど。えーえ、美味しゅうございましたよ、兎肉の香草入りシチューキャセロール仕立ては!
…けどね。
「サンジくん、あんたルフィにお弁当以外に何か持たせた?」
「リュックの中身まで確認しないよ。あー、でもそれほど重装備には見えなかったかな」
「何よ、ちゃんと確認してよ!」
「おいナミ、ちょっと落ち着けよ。大体サンジはあいつの保護者でもなんでもねぇだろ?」
「誰も保護しろなんて言ってないでしょ!私達みんなで監視しないとあの鉄砲玉はすぐどっか飛んでっ
ちゃうじゃないのよ!!」
「「「そうでした」」」
「でも航海士さん、夜になってしまっては捜索は無理よ。こちらが遭難してしまうわ」
「ま、普通に考えりゃそうだが。…ナミ、あいつなら平気だ。一人でもなんとかするさ」
ロビンの言葉を引き受けてゾロが言うのに、私は血管が千切れそうだった。
「あんたは雪山で寒中水泳しても平気かもしれないけど、ルフィはどうだかわからないじゃない!ねぇ
チョッパーぁ、なんとかならないの?あんたなら夜でも目が利くでしょ?」
「えええ?!でも俺みんなの安全までは保障できないよ」
「じゃああんた一人で行く?」
「地形もよく分からないのに無理だよ!」
…地形。
………私が昼間きっちり測量してたら捜索に使えたかもしれないってこと?!
がっくりうなだれるとチョッパーはベンチから飛び降りて、慌てて駆け寄ってくる。私の膝にぎゅっと蹄を
当てると、目をうるうるさせながら見上げてきた。
「ナミ、ルフィは大丈夫だよ。俺、あいつがドラムロッキー登ってきた時のこと覚えてる。あの時ルフィは…」
「ルフィは?」
「……頂上につくなりグースカ寝てた…」
「ダメじゃないのよドバカ!!!」
「うわぁんルフィーーーーー!!」
「お前らちったぁ落ち着け。俺とチョッパーで行く。昼間入った辺りならわかるだろ?」
ゾロが言うのに泣きべそ顔を上げると、チョッパーはこくんと頷く。ウソップが慌てて引き止めた。
「ちょちょちょちょっと待てぃ!お前さっき普通なら遭難するって言ったじゃねぇか!」
「こいつの言い分だと俺は寒中水泳しようが雪山でグースカ寝ようが平気らしいからな」
嫌味ったらしく指差してくるのに顔顰めることもできない。…だって私が行けないんなら誰かに捜索に
行ってほしいもの。
サンジくんが火のついてない煙草をパッケージに戻すとキッチンに向き直り、後ろ向きのまま話を引き継ぐ。
「どうしてもってんなら適任だな。まぁチョッパーがついてりゃ心配ないだろ。ちょっと待ってろ、弁当作る。
ウソップ、岸で火ぃ焚いとけ。帰ってくる目印になるから」
「お、おう!」
「山に入る準備をしてくる」
「お、俺も!」
みんながバタバタと走っていくのを見送りながら、ロビンは小さく溜息をついた。
「無茶だと言っても聞かないのはいつものことね。…長鼻くんを手伝ってくるわ」
「私も…」
「今夜不寝番でしょ?仮眠をとっておいたほうが良いわ」
………今日ほど自分の無力さを感じたことってない。言われたとおりに仮眠を取ろうと部屋で横になって
みたものの、私はちっとも眠れなかった。


「ダメだ、見つからねぇ」
「俺達が昼間入った辺りにはいなかったよ」
「そんな…」
深夜、岸で火の番をしていると、ゾロとチョッパーが戻ってきた。焚き火で暖をとりながら、探した場所の
状況を報告してくる。
高度はさほどないけれど、島の大半は山林。中央に流れる沢がある他は、目立つ水場は特になし。それ以上
の情報は得られなかった。
「沢を越えて山の裏側に行ったんじゃないかな」
「まぁなんにしろ今日はこれ以上の捜索は無理だ」
ウイスキーを煽って、ゾロが溜息をついた。チョッパーも心配そうにマグカップから顔を上げて、私の顔を
見ている。
「ナミ、ルフィならきっと平気だよ」
「一人で行かせるんじゃなかったわ。無理矢理でも測量につきあわせるんだった」
「後悔してんなら朝一で測量して地図を仕上げろ。明日は全員で捜すぞ」
「あ」
「何?チョッパー」
「………あ。いや、えっと……なんでもない」
「何か気がついたことがあるんなら教えて!」
「ご、ごめん、なんでもない!なんでもないんだよ…ごめん」
「寝とけチョッパー、疲れたろ。ナミ、お前もだ」
「私今日不寝番だもの」
「言ったろ、朝一で測量して地図を仕上げるんだ。火なら俺が見ておく。夜が明けたら起こしてやるから
今は寝ろ。ルフィは絶対に大丈夫だ」
…どうしてそんなに簡単に信用できるの?私は絶対そんな風になれない。心配で心配で、いつだってあいつ
から目が離せないわ。だってあんなにバカでアホで大食いで自分勝手で、前しか見てないようなやつなのに。
捕まえようとしても、どんどん先に行っちゃうようなやつなのに…。

夜が明けてから私は測量のために山に入った。みんなもそれぞれルフィ捜索に出かける。火を使ったりすれ
ばすぐに見つかるはずなのに、そうじゃないってことはキャンプを張ったわけじゃないんだろう。半日の
調査の結果をまとめて、地図に書き起こしはしたけど、ルフィ本人は見つかってない。夕方近くなって、
捜しに行ってたウソップが戻ってきた。
「あ〜〜〜〜さぶっ!うー、まいった死ぬ死ぬ死ぬ」
「縁起でもないこと言わないでよ!いたの?いないの?!」
「いやーそれがいるにはいたんだが」
「いるにはいたって何よどこにいたの何してたの無事なのっ?!」
「続き言わせろよ、ルフィは無事だ。昨日はかまくらで吹雪を凌いだってよ」
「…それでどうして今一緒じゃないのよ」
「それがなぁ…まだ帰らねぇって言うんだよ」
「はぁ?!帰らないってどういうこと?たいした装備も持たずに何やってるのよあいつは!」
「いやだから俺、マッチとか食い物とか置いてきたんだけどよ。どうもなんか探してるらしいんだ」
「なんなのよそれ!なんで連れて帰ってこないのよっ!」
首締めそうな勢いでウソップに迫っていると、ゾロとサンジくんに続いてチョッパーとロビンも帰ってきた。
一様にけろっとした表情で、荷物を下ろしている。
「…みんなもルフィに会ったの?」
「会ったっつうか、食い物の匂いに釣られてあっちから出てきたっつうか」
「結果的に食事作らされたよ」
「別に怪我とかもしてなかったぞ!」
「キャンプを楽しんでいるようだったわ」
「…それで、なんで帰らないって」
顔を見回すと、四人はそれぞれ顔見合わせて。
「「「「探し物があるから?」」」」
「…だからそれがなんなのよ」
「気になるなら自分で聞きに行けばどうだ。地図は出来たんだろ」
「今は火を使ってるからすぐわかるよ。えーっとこの辺かな」
サンジくんが指差したあたりは、沢の向こうの林の中。日没にはまだ時間もあるし、行こうと思えば行け
ない距離じゃないけど…。なんでみんな同行を申し出てくれないわけ?
「誰か一緒に…」
「ゴメン、ナミさん俺夕食の準備があるんだ」
「俺は寝る」
「あー…俺様はたったいま発明を思いついた!」
「私はちょっと調べ物が…」
「お、俺も…」
………なんなのこれ!良いわよわかったわよ一人で行くわよ!遭難したら呪ってやる!


リュックを背負って書きあがったばかりの地図を手に私は海岸に降りた。サンジくんが言ってたように、
火を焚いているらしく山の中から一筋煙が立ち昇っている。これなら迷うことはないと思うけど、急がないと。
ザクザク雪を踏みしめながら、林の奥をめざす。たちまちつま先が痺れるように冷たくなって、それも
やがて麻痺してきた。雪が降ってないのはついてたけど、凍える風にさらされた頬がつっぱるように痛い。
こんな雪の中で一晩火も焚かずにやり過ごしたなんて信じられないわ。そこまでして探したいものって一体
なんなのよ…。
針葉樹に積もった雪が時々落ちてくるのに驚かされながら進んでいくと、やがて沢が見えた。大きな木が
一本切り倒されて…これはゾロのおかげだと思うんだけど、私は難なく向こう岸に渡ることができた。
林の中を進んでいくとかまくらというよりはイグルーみたいな、大きな雪の家が見えた。その傍でパチパチ
と焚き火が爆ぜる音がする。
「…ルフィ?」
「んん?おお、ナミ!よく来たな!」
あっけらかんとした表情で火から顔を上げて私を見るのに、思わず溜息が出た。どうやら食事中だったら
しく、焚き火の傍には沢で釣ったのか串刺しの焼き魚やら皆が置いていったのらしいお弁当やらが散ら
かっている。
「よく来たなじゃないわよ!人を散々心配させておいてその態度はないでしょ!」
「や、それはすまん。まあ良いからこっち来て座れよ。みんながいろいろ置いてってくれたおかげで、
なかなか快適なんだぞ」
こいこいと手招きされて座るために倒したらしい木に腰掛けると、メシ済ませたか?と聞く。
そういえば夕食前に飛び出してきて、もう日が暮れるころだというのを思い出して私は慌てて話を切り出した。
「快適なのは結構だけどね、こんな無人島で探し物って一体何よ。帰らないってどういうこと?」
「雪だ」
「は?」
「雪探してんだ」
「周りに山ほどあるじゃない!」
「これと違うんだよ。とにかくすげぇ雪なんだ」
信じられない。お宝ならともかく雪?!こいつの脳みそって一体どういう構造してるんだか…。呆れ果てて
顔見てると、なんだよ、と笑う。魚食うかと差し出して来るのを受け取って、これは連れ帰るのは無理だな
と思ったんだけど…。
「…私が帰るのも、もう無理じゃない」
「んん?ここ泊まってけば良いじゃんか」
「言われなくてもそうするわよ。凍死の心配はなさそうだし」
背後のイグルーを振り返ると、ししっと得意げに笑う。
「火忘れたことに気がついたときは焦ったけどなー、寝なきゃ平気だろと思ってよ」
「で、一晩中起きてたの」
「んや、寝た」
「ダメじゃないのよ、バカ!戻ってきなさいよそういうときは」
叱ると次からな、と悪びれずに言う。でも絶対学習しないのよね…。

夕食を済ませるとすっかり日が暮れて、私はルフィの後に続いてイグルーの中に入った。雪の上に毛布を
敷き詰めた家の中は、寝袋や荷物が散らかってたけど、風が遮断されて思ったより暖かい。思わずほっと息を
つくと、ルフィはランプに火を点した。その熱がやがて室内を温める。オイルランプ一つで案外暖かいもの
ね。妙に感心してると、寝袋の上に転がりながらルフィはしししと笑った。
「な?結構平気なもんだろ?」
「そうね。あんたにサバイバル能力があるとは思わなかったけど」
「失敬だぞお前!失敬だぞ!」
「はいはい、すいません」
「でもついてたなー。お前呼びに行く手間省けたもんな」
「手間ってなによ!…って私を呼ぶ?」
「ん?」
「なんで私を呼ぶ必要があるのよ」
「んー」
急に黙り込んだのを不信に思ってると、ルフィは寝転がったまま私のほうに向かって手招きする。毛布の
上をにじり寄ると、突然抱き寄せられた。
「ちょっ…なによ」
「いやこうしてっと暖けぇから」
…仮にも恋人抱きしめるのに、暖けぇからって理由がある?ったくもう…確かにくっついてれば暖かいかも
しれないけど、湯たんぽじゃあるまいし、両手両足巻きつけてくるっておかしいんじゃない?色気まったく
ゼロ。…べ、別にこんなところで色気求めたりなんかしないけど!
…と思ってたんだけど。
全然そう言うタイミングじゃないのに、ルフィはいきなりキスしてきた。
「んっ………なに」
「お前って時々抜けてんな」
「なによ」
「気がついてないならそれでもいんだけどよ。チョッパーには悪いことしたなー」
…なんで今チョッパー?混乱してるとコートの前から手が入ってきた。
「ちょっとぉ!なにサカってんのよこんなとこで!」
「何ってお前二人っきりで一緒に寝てたらそうなるだろ」
「……それはもっともなんだけどもうちょっと状況考えてよ。ここどこだと思ってんの」
「…山?」
「”雪”もつくわね。やぁよこんな寒いとこで!」
「バカだなーナミ、したら暖まるだろ?お前いっつも布団被ってると暑いって蹴っ飛ばすじゃんか」
「っ!!!そういうことは良いの…ってちょっと!やっ……んむっ」
唇を塞がれて舌が差し込まれると、その意外な熱さに体が震える。私の口の中を探るように舐りまわして
くるのに、舌先を伸ばして応えると吸い取って絡めてきた。息をついて肩に顔を埋めると、背中側から
もぞもぞと手が入り込んできて服の中でまさぐっている。指先の冷たさにザワっと鳥肌が立った。
「ちょっと…ねぇ、ほんとに?」
「なんだ、嫌か」
「嫌じゃないけど…」
「なら聞くなよ」
「ひぁっ!」
たくし上げるようにブラを外されて、いきなり冷たい手が胸を包んだ。ビクビクッと体が跳ねるのを押さえ
込んで、ルフィはししっと笑う。
「へへ、やっぱ暖けぇ」
「私は冷たいわよっ!いや、…ん、もぉっ」
指先がふにゃふにゃ胸を揉んでくるのに、あんまり冷たくて過剰反応してしまう。ルフィの手が冷たいなん
てこと滅多にないからものすごく変な感じ。声が余計に出ちゃってる気がする。くにゅくにゅ乳首を捏ねな
がらルフィは耳に唇を寄せると囁いた。
「…もう固くなってる」
「や、ぁ…寒いっ…からっ、ん…ぁっ」
「ナミ、いつもよりエロい顔んなってるぞ」
かぁっと顔が熱くなるのを感じる。だって裸見られてるわけでもないのにこんなのってなんだかすごく
恥ずかしい。
押さえつけられて身動き取れないまま、爪を立てるようにして乳首を擦られて、私はショーツの内側が
どんどん湿っていくのに気がついた。…やだ、このままじゃパンツにまで染みちゃう…
「ル、フィ…っ」
「んん?」
「下…脱がせ、て…っ」
…どうしてそこできょとーんとするのよっ!そんでなんで困った顔すんのよ!あ、…あ、もう…こっちは
深刻なのよぉ…やだ、もうっ!
「お前寒いんじゃねぇの?」
「いっ…から、ちょっと、どいて」
がっちり押さえ込んでいた肩をどかせるとパンツのボタンを外す。ジッパーを下ろすと、ショーツとまとめ
て太腿まで引き下ろした。ぎょっとしたように私の顔を見ているルフィを睨みつけると、目をパチパチさせ
た後で、ししっ、と笑った。
「…なによ」
「いやー、正直こっから先どうしようかと思ってた」
「考えてなかったの?」
「だってお前寒い冷たいばっかだしよ」
「…へぇ、気、使ってくれるんだ」
「俺だってそれっくらいは考えるぞ」
「本当に気を使う人はこんなとこで始めないの!」
「うーん、それは無理だ」
んもぅ、何様よ。それに付き合っちゃう私も私なんだけど。
ぎゅっと強く抱きしめてきて、熱っぽいキスをしながらコートの中で手を下のほうへ滑らせると、ルフィは
耳元で囁いた。
「お前ほんとに俺のこと好きな」
「なっ…あ、んっ…!」
指がいきなりソコに触れて、ビクッと震えてしまう。ルフィはちょっと考えるような顔をしたかと思うと、
体を起こしてあぐらをかき、私を膝の上に跨らせた。コートが腰から下を覆う格好になって、確かに寒くは
無いけど身動き取れないし、これじゃなんだか…。
「しがみついてろよ?」
「えっ…あっ!」
くちゅ…とぬめった音がして、コートの裾から潜り込んだ指がソコを広げていく。入り口からクリトリスの
間をなぞり上げるような動きに、頭のてっぺんまで痺れるような快感が訪れた。服を着たまま大事なトコ
弄られるなんてすごく変。指が中に入ってくるのにびくんとすると、ルフィは小さく笑った。ちゅぷちゅぷ
掻き混ぜるみたいにされて、奥のほうからトロトロ出てくるのがわかる。身じろぎすると、ブラを押し上げ
られた胸の先が服の中でさりさり擦れてくすぐったい。
「はふっ…ん、あっ!…ルフィ、あんまり…しちゃ…」
「指、もう冷たくねぇだろ?ナミのここ、すげぇ、熱くてぐちゃぐちゃ…」
「あ!…っはぁ、ん…、んっ…!」
「入れてぇ。良いか?」
返事代わりに口づけると、パンツのジッパーを下ろしながら、舌を絡ませてくる。その間、ずっと目を合わ
せたまま。くちゅ、と先っぽが当たる感触がして、次に熱い塊が侵入してくる。
「は、あ、つぅいっ…あ…っ」
「キツ…しがみついてくるみてぇだ」
コートのまま抱き合って、そこと唇だけがつながって…もどかしい感じなのに感覚が集中しているみたい。
ルフィの膝の上で揺すられながら、もっと触って欲しくて…。
「ルフィ…もっと…ぁっ」
「んん?」
「触って、もっと…」
「ひひ、スケベ」
「バカ!だっ…て、身動きとれない、んっ…!」
コートの裾から手を差し入れて、つながった合わせ目をくちくちと弄ってくる。不安定な腰がゆらゆら揺れ
て、内側がルフィのに絡み付いてるのがわかった。それでももどかしくて、でもどうしていいかわからなくて。
「ルフィ、あお向け、に、なって…」
「ん?上に乗るか?」
「これじゃ動けないから…」
一度外してとうとうパンツの片方を脱ぐと、脚をコートで隠れるようにしてルフィの上に跨った。寒いのと
体が熱いのと、バランスがとれない感じ。入り口でぬるん、と逃げるルフィのを握って、そこへ導くと腰を
ゆっくり落とした。奥のほうまで突き当たって、それだけでもうイッちゃいそうな気分になるのに、ぺたり
と胸に顔を伏せると下からゆっくり突き上げられて、私は髪を振り乱して叫んでしまった。
私を見上げてくるルフィは、そんな様子を愉しんでいるようで、時々憎たらしい。でもこういうときの
ルフィは他のどの時よりずっと好戦的な目つきで、私をゾクゾクさせる。真剣な眼差しで、口元だけが
笑って。…でも、こんな顔見ていいの私だけだよね、ルフィ?そんな独占欲が、腰の動きを淫らにさせる。
じゅぷ、じゅぷ、と激しい音。私はルフィが差し出した両手に掴まって、まるでロデオに乗せられたみたい
に、暴れて、暴れて…。
「あ、あんんぁっ!イッっちゃ、イッちゃう、よぉっ!」
「ナミ、好い……ああ、俺も…っ!」
腰を持ち上げて突き上げてくるのに、私は真っ白な天井へ向かって叫んだ。全身の血が沸騰するようで、
つま先から頭のてっぺんまで、ルフィだらけになってしまいそう。
「あ、あ――――――!!!」
叫んだ瞬間、焼けつくように熱いルフィの猛りが一際大きさを増し、次の瞬間私の中で爆ぜた。


翌朝。
ぺちぺち顔叩かれて目を覚ますと、ルフィが満面の笑みで私の顔を覗き込んでいた。
あれから、交替で火の番をして、時々仮眠を取りながら夜をやり過ごしたんだけど、入り口から漏れる光は
夜明けを知らせていた。すっかり身支度を済ませたルフィが興奮気味に言う。
「急げナミ!雪だ!」
「雪ぃ?」
「おう、すっげーぞ!」
…って、探してたっていうあの雪?慌てて防寒着を着込んでもそもそ起きて外へ出ると、あまりの寒さに
震え上がった。昨日の比じゃないわ。…氷点下十度近いかも。
こっちだ、と腕を取られて林の中を進む。雪道で何度も脚を取られそうになるのを、半分抱きかかえられる
みたいにして進んで行くと、僅かに開けた場所に出る。朝日の中で新雪は光を反射して目に染みる程。
そして、スポットライトのように雲の切れ間から差し込む光が、キラキラと七色に光輝かせるそれは…。
「…ダイヤモンドダスト…」
「すっげーだろ?!前にさ、船で見たときお前寝てて見らんなかったからなー」
「え?」
私に見せたくて探してたって言うの?ダイヤモンドダストよ?氷点下十度以下の晴天でなけりゃ見られない
代物よ?私だって初めて見たわ。だいたい、気温や天候で見られたり見られなかったりするような物を、
ただ探してたって…。
「不思議雪なんだってよ」
「ルフィ、これは雪じゃないわよ。空気中の水分が凍って…」
「お前時々人の話聞かねぇよなー。いいか、不思議雪だぞ?すげぇんだぞ?」
「…どっちが話聞いてないのよ」
「チョッパーに聞いたんだ、これが見られると良い事あるんだってさ」
ああ、確かにドラムなら見られても不思議はないけど…そんな言い伝えめいたもの、ルフィが信じるなんて。
「俺はどうでも良いんだけどよ。お前に見せてやりてぇと思って」
「…どうして?」
「どうしてって…綺麗だろ?あと、天気のことだしな。それに…」
「それに?」
問い詰めると、唇尖らせて困ったような顔をして、その次に笑った。
「せっかくクリスマスなのに俺やれるもん何もねぇしよ」
「クリスマス?!」
…すっかり忘れてた。きれいさっぱり忘れてた。
いや待って?一昨日までは覚えてたのよ?そろそろクリスマスが近いわねーって。でもルフィ失踪騒ぎで
すっかり忘れて………ってこいつの所為じゃないのよ。
「ほんとお前時々抜けてるよなぁ」
「…誰の所為だと思ってんのよ」
「チョッパーの誕生日も祝ってやれなかったしなァ」
「あーっ!」
それも忘れてた!っていうか本人も当日の未明まで忘れてたんだけど…言えなかったんだわ、あいつ。
「まぁ良いんだそれは。見ろよ、綺麗だなー!」
「誤魔化すな!」
ぎゅううっ!と耳を引っ張るとゲラゲラ笑って、かと思ったら勢いつけて抱きつかれた。重みに耐えられ
なくて新雪の上に倒れて。二人して雪に埋もれて寒いし冷たいし良いことなんか一個もなかったけど。
「メリー・クリスマス!ナミ」
…真っ白の雪の中で、ルフィはキスしてくれた。そのあとで、ししっ!と歯茎まで剥き出しにして笑う。私の大好きなお日様みたいな顔で。
「…メリー・クリスマス、ルフィ」
私もキスを返す。こいつが良い。他の誰に出会っても、ルフィが良い。バカでアホで大食いで自分勝手で、
前しか見てないようなやつだけど。こうやってまったくの不意打ちで私を時々嬉しがらせるのよ。
も一度口づけて、二人して雪の上に仰向けに転がると、ダイヤモンドダストに目を上げた。キラキラ
キラキラ降り注いで、夢みたいな光景。
ねぇでもルフィ、知ってる?「良いこと」は、いっつも私の隣にあるのよ。

                                                   end.
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