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◆赤ピーマン◆



ねぇ、私……世界で一番素敵な恋をしたの。
ええ、本当よ。
だって、あんなにきらきらした日々を過ごしたんですもの。
誰にもいえないけれども。
ねぇ、あなたにだけはいえるの。
あの人のことが、大好きだったの。





「なぁ、ビビちゃん。危なっかしくて見てられねぇンだけど」
咥え煙草でサンジはビビの左手を押さえた。
作ろうとしたのは、簡単なシチューとサラダ。
それでも今まで包丁など持ったことのなかった王女様にとっては全てが未知の体験だった。
「きゃ……ッ…」
「おわ!!指切ってんじゃん。見せて」
人差し指の爪を削って、ぽたりと流れる赤い雫。
白い肌を染めて、指を浸食していく。
「俺があとはやるよ。ビビちゃんはそこに座ってて」
「でも、サンジさん。私も……」
「ビビちゃんは、味見。それでどうだい?」
いつも、彼は彼女が欲するものを彼女が告げる前に作ってしまう。
風の音や室温。その日の気候で変わる人間の味覚を察知する優れた料理人。
口は悪いが腕はいい。
そういったのは世界一の剣豪を目指すといった男だった。
女の子には弱いけれど、悪い男にはめっぽう強いのよ。
同室の航海士はそんな風に笑った。
王宮を飛び出して、国を守りたいと荒波を潜り抜けて。
そして今、この船に居る。
「ホットミルクと、ホットチョコ。どっちがいい?」
「サンジさんにおまかせします。私よりも、私の好きなものをサンジさんは知ってるし」
ギャルソン仕様で華麗にその手は食材に魔法を掛けていく。
小麦粉も、牛乳も。
彼の手に掛かればかくも麗しい午後を演出する一品になるのだ。
「私、サンジさんみたいに魔法使いになりたいな……」
閉じた瞼。伏せた睫。
懐かしい故郷は砂の国。
かかる月と、黄砂のおりなすアラバスタ。
「魔法使い?」
「だって、人を幸せに出来るもの。サンジさん」
瀕死の故郷を守るために、彼女はたった一人で立ち向かう。
運命という名前の荒波に。
身長よりも、ずっと高いものを飛び越えるために助走をつけて走るのだ。
「お菓子も、お料理も……サンジさんは魔法の手を持ってるの……」
「……ありがと。料理人は美味いって言ってもらえるのが一番嬉しいんだ」
籠の中には真っ赤なパプリカ。
味や栄養価だけではなく、彼は彩と美しさも追求するから。
『食文化』まさにその言葉を伝えるため。
その手が織り成す文化は、いつだって疲れたクルーの心を癒してきた。
「私の国は……砂の国なの。一年中暑いけど、でも、とっても綺麗なの」
「ビビちゃんみたいな美人が生まれるわけだ」
「あははは。海と砂しかないけれど、その分誰よりも緑の美しさは分かるつもり」
灰白の髪と白い肌。
灼熱の国の血を引くとは思えないその容姿。
「もうすぐ、ビビちゃんの国につくからさ。もう、無理して笑わなくたっていいんだぜ」
「え…………」
「思い切り笑って、思い切り泣いていいんだ」
少し骨張った手。
細かな傷と、優しさの詰まった掌。
「俺は客商売してきたからさ、何となく読めるんだ。だから……」
そっと頬に触れる指。
「無理しなくていいんだ。泣きたい時は泣いたって」
「……サンジさん……ッ……」
ぎゅっと唇を噛む。
誰にも気付かれないように押し殺してきた不安と恐怖。
勝てるか分からない勝負でも、引くわけには行かない。
彼女の細く、小さな手に祖国の運命は委ねられているのだから。
「ルフィとゾロはナミさんの買い物に付き合って今夜は帰って来ない。ウソップはチョッパーと見張り。
 泣いたって、誰も気付かない。俺も、後ろ向いてるから」
手を伸ばして。
シャツの胸元をぎゅっと掴む指先。
何もなければきっと綺麗に飾られていたであろうその爪。
掌に、肘に、腕に。
彼女が戦ってきた証はしっかりと残っている。
「……サンジさん……ッ……」
「今まで頑張ってきたんだ。一日くらい、泣いたって誰も責めやしないよ……」
煙草の匂いのしみこんだシャツ。
額に触れる唇も、抱き寄せてくる手も。
「よく頑張ったね、ビビ……」
ぼろぼろとこぼれる涙。
そっと払った指には、小さな魔法。
転がったパプリカ。
絡まった影二つは、一つに重なった。





「……恥ずかしいかも……サンジさん……」
初めて他人に体を晒す行為は、思ったよりもずっと抵抗があった。
いつか素敵な王子様が…とまでは思わなくても、だれにでもそんな思いはあるからだ。
ましてや本物の王女であるならば、相手もそれ相応の男が宛がわれる。
「どうして?凄く綺麗だよ」
首筋に降る甘いキス。
舐めるように触れて、ちゅ…と吸い上げてくる。
その感触の不思議さと、何ともいえないくすぐったさにビビは身を捩った。
「……あ、やだ……っ……」
耳の後ろを舐められて、ぴ君と肩が揺れる。
ほんのりと赤い痣が一つ、二つ。少しずつ彼女の肌で花咲く。
「恐い?」
「……怖くないって言ったら、嘘になるけど……」
「けど?」
「……嫌じゃないの……どうしてかしら……」
灰色の硝子玉のような瞳。
哀しい色の影をこれ以上強めないようにと、瞼に触れる唇の甘さ。
手首を取ってその甲に、爪に、指先に。
慰めるように、癒すように、数え切れないキス。
「……あ!……ぅん……」
ぎゅっと両手で乳房を掴まれて、その先端をクリームでも舐めるかのように舌先が確かめる。
ちゅぷ、と口中に含んで軽く当てられえる歯先。
その周辺を焦らすかのようにちろちろと舌が這う。
右も、左もこぼさないようにちゅるんと舐め上げられて、切なげな息がこぼれ始める。
他人に触れられることの不安と、安心感。
二つがせめぎ合って、何かを生み出す。
「あ!!あ、あぁ……!!」
なだらか腹部に接吻して、腰骨をかり、と噛む。
じんわりと濡れ始めた入口に添えられた指先。
「力抜いてて、ビビちゃん……」
耳元に囁く声は、低く重く……とても優しいから。
不安でも恐怖でもないのに、涙があふれてしまう。
「……ッ!……やぁ……」
関節一つ分だけ、入り込ませて内側の柔肉をちゅくん、と押し上げる。
誰も受け入れたことのない、まっさらな身体。
「あァ!!やぁ……!!そんな……とこ……!……」
指先で肉芽を剥いて、ちゅ…と唇を当てる。
口中で転がすように吸い上げてると、狭い入口からとろとろと甘い体液がこぼれ始めて。
時折強く吸われて、じんじんと痺れたような熱さが体の奥で生まれていく。
細い腰を抱かれて、溢れた蜜をじゅる…と吸われる度に逃げたくなるような感覚と恍惚が混ざり合う。
「あぁっ!!!あああんッッ!!!」
一際強く吸われて、仰け反る喉元と真白になる視界。
力なく投げ出された手にくれたキスは、ただそれだけなのに酷く熱かった。
砂漠の国の太陽よりもずっと熱い肌。
重ねて、絡めて、抱き合って。
「ビビちゃん、俺に掴まってて……」
その手を取って、北の海で生まれた男は優しく微笑む。
「サンジさん……」
男としては細身の身体。
細やかでしなやかな筋肉で構成された中性的な身体は、昔夢で見た王子という人に似ていたのかもしれない。
金の髪に、青い瞳。
白馬の代わりに包丁と、フライパンを持って王女の手を取る王子。
御伽噺のような、甘い甘い恋。
「大きく息吐いて……そう……俺に呼吸合わせて……」
不安を取り去るように、降る唇。
膝を左右に割って、入り込む男の身体。
何度も恐くないと言い聞かせて、彼女は目を閉じる。
「……や!!やぁ……ッ!!」
びくつく腰をぎゅっと抱いて、傷つけないように慎重に腰を進める。
縋るように背中に回された手。
きつく抱きしめあって、噛み付くようなキスを繰り返した。
「……っく……!……ぅ……ンっ!!……」
顎先を舐めれて、こぼれるのは甘い吐息。
「ビビちゃん……」
御伽噺のお姫さまは王子と幸せなキスをしたところで頁は終わってしまう。
それでも、王子は男で王女は女。
現実の恋はもっと過酷で、もっと甘い。
手を伸ばさなければつかめないのだから。
「……ごめん……ビビちゃん……」
小さな頭を掻き抱いて、サンジはそう呟いた。
「……サンジ……さん……っ……」
王位尾継承者が女であるならば、本来結婚するまで誰とも体を交わさない。
それがアラバスタの通例だった。
彼女は、紛れもなく砂の国の未来の女王。
一介の料理人の自分とは住む世界が違うのだ。
「……俺、どうしてノースブルーに生まれたんだろ……」
「……サンジ……さん……?」
「君の国に生まれれば、君を守れた。君とはなれることも、なかった……」
繋がった箇所がじりじりと痛む。
抱かれた腰も、貫かれて押された子宮も、腿を伝う処女だった証も。
鉄で打ち付けられように痛むはずなのに。
「君を、守れないことが悔しいよ……」
それなのに、こうして抱かれているほうがずっと苦しくて痛むのは何故なのだろう。
離れてしまうその前に、伝えたいことがたくさんあるのに。
「……サンジさん……私……」
いえないままの「I LOVE YOU 」は、お互いに切り出せなくて。
「ビビちゃん……」
傷を舐めあう愛でも構わない。
後悔なんてものはひとかけらもないから。
「あ!!あ、や!!……!!」
胸の谷間に顔を埋めて、包むように乳房を揉む手。
男の頭を抱いて、涙がこぼれないように少しだけ顔を上げた。
「それも、君が好きだよ……」
「……私も……サンジさんが好き……」
胸の奥に産まれた小さな光。
消さないように、絶やさぬように互いに抱きしめた。
離れてしまうその前に、甘い甘いキスをした。
『明日君が僕のことを忘れても、僕は君の事を忘れない』
誰かが書いた小説の一文。
「……最初の人が、サンジさんでよかった……」
政略結婚がないとは言い切れない情勢は、誰よりも彼女自身が分かっている。
だからこそ、好きな男に抱かれることを選んだ。
王位も、柵も、何もかもを忘れさせてくれる魔法を持つ男に。
「……好き……大好き……」
クリームよりも、ハニーよりも、シロップよりも。
スプーンいっぱいの砂糖で海をも甘くする魔法をかけて、夢を見ようと囁きあった。
「……サンジさん、私のこと……忘れないで下さいね……」
「どうやって、忘れろって言うんだよ……ビビちゃん……」
「……サンジさん……」
きらきらと光る涙。
小さな彼女の欠片が、船にそっと染みていた。
砂の国を出発して数日。
海軍と一戦交えて船は順調に進んでいた。
(ビビちゃん、きっとカッコいい女王になるんだろうな)
砂の国に王女が即位するのはまだまだ先の物語。
埃まみれで笑う彼女の顔が瞼に浮かぶ。
なれたはずの煙草も、どこか苦い気がして海に投げた。
窺いがちに自分の名前呼ぶあの声が、もう無いのだ。
『いつかまた、私のことを仲間だと言ってくれますか?』
泣きそうな声。
(仲間……いや、君は俺の永遠の恋人だよ、ビビちゃん……)
鳥篭の中の小鳥が得た束の間の自由。
広い海も、広がる雲も。
甘い恋も。
その羽根に隠して鳥は静かに写真の中で微笑むのだ。
「サンジーーーー!!お前にかもめの手紙来てるぞ!!!」
「おお、悪ぃな」
キッチンナイフで封を切って、その文面に息が止まる。
『サンジさんへ。元気ですか?私は少し元気ではないみたいです。毎日、忙しくて目が回りそう。
 イガラムやお父様に叱られながら復興のために走り回ってます』
近況から始まって、目はその先を追う。
『夜、眠る前に祈ってます。また、皆に会えますようにって。サンジさんに逢えます様に、って。
 アラバスタは、海賊を受け入れる国にしてみせるってお父様と決めました』
くるくると笑う彼女の顔。

『サンジさんの魔法……解ける前に、逢いたいです……』
最後の文字が少しだけ滲んでいた。
それは彼女の涙だった。
『大好きです。ずっと』
最後に書かれた文字。その文字に、彼は少しだけ笑った。
(俺も、大好きだよ、ビビちゃん……)
魔法が解ける前に逢いに行こう。
それまで、ほんの少しだけのお別れだと手紙に囁く。
砂の国は、緑と水を守る美しい国。
その国に輝く宝石を奪いに行こう。
海賊として、男として。



「ねぇ、カルー……私ね、恋をしたの。世界で一番素敵な恋なの」
彼女は親友にそう語る。
今は遠く離れる恋人のことを思いながら。
復興した砂の国の女王の傍らで、笑う金髪の男。
その写真が世界に届くまではまだまだ時間がかかるようだ。
「私、この国で頑張るの。そしてね、あの人に逢いに行くのよ」
こぼれる砂のような運命。
砂は、水を得ることで形を変える。
その水を彼女は手にしたのだから。
「行こうか、カルー。皆がまってる」



それはとある国の女王の恋の物語。
語り継がれる御伽噺。
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