QEDシリーズの十三作目。QED〜flumen〜九段坂の春の第四話。
そんなことを考えながら、凍てつく潮風に吹かれて福森麗奈は歩く。
端から眺めれば酔狂な趣味に映るだろう―と苦笑いした。
季候の良い時期ならばともかく、一月の海岸線だ。
熊野灘から吹きつけてくる風は頬を凍えさせ、海原も暗く沈鬱で、足元の砂も冷たく硬くスニーカーの底に当たる。
しかし高校に入学してから、二十歳になる今年まで、毎日殆ど欠かさずに行っている習慣が
早朝の海岸線の散歩なのだ。
こうして、朝の海岸線を一人歩いていると―今などは身も心も凍える季節なのに―段々と気持ちが柔らかく
同時に頭の中が徐々に鋭角的になってくるのを感じる。
登場人物
- 福森麗奈:那智女子大に通っている。二十歳。
- 五十嵐彩子:深影佳勝に言い寄られている。高校生。
- 深影佳勝(みかげよしかつ):那智勝浦の大地主の一人。四十二歳。
- 高橋みか:深影佳勝の愛人。元キャバクラ嬢。
- 深影冴子(みかげさえこ):深影佳勝の妻。
- 深影隆弘(みかげたかひろ):深影佳勝の息子。高校生。
- 五十嵐弥生:五十嵐彩子の母。
- 五十嵐徹也:五十嵐弥生の夫だが、すでに他界している。
- 五十嵐勝:五十嵐徹也の父。
- 御名形史紋:福森麗奈の従兄。紀伊和歌山大学の大学院生。
- 御名形クリス:御名形史紋の母親。
- 神山禮子:橋立家から神山家へ養女へ入った。
警察
病院
- 熱田記念病院:和歌山市に開設された個人病院。御名形クリスが勤める。
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