1

湖の傍らでぽつり語り合う人魚と狼。
わかさぎ姫と呼ばれた人魚の愚痴を、今泉影狼は困った顔で相槌していた。
「はぁ…歌もぴんと来ないし、石集めも最近マンネリ…何か面白い事ないかなぁ」
「弾幕ごっこも互いの手の内分かってるから、中々勝負決まらないしねぇ」
「なんかわたし、退屈すぎて体とろけちゃいそうだよー…」
湖の周囲だけが行動範囲の彼女にとって、1度始まった退屈は中々解消し難いものらしい。
その様子を見かねて、思い出したように提案する狼。
「…あ、じゃあ、遊び道具プレゼントしてあげる。1日くらいは潰せると思うよ?」
影狼はそういうと、自らの眉を長い爪でぷつりと抜き、彼女に差し出した。
「狼の眉毛ってね、不思議なチカラがあるんだよ。私も昔はよくやってたなぁ」
「…眉毛なんて使い道もなにも思いつかないけど、どうやって使うの?」

2

「ふふーん、誰かが湖のそばに来たら、その人を眉毛越しに見つめてみて。きっと面白いのが見えるわ。私に向かってやっちゃ駄目よ?」
おもむろに景色を眺めだす人魚だったが、風景は何ら変わらず、はぁとため息をついてしまう。
影狼はわかさぎ姫を呆れた様子ながらも何とかなだめ、今日の晩にでもそれを試すよう諭すのだった。

- 晩、わかさぎ姫は人を探して暗闇のほとりを泳ぎまわっていた。
早く眉の力を試したいという気持ちが、彼女の尾ひれをすいすいと動かす。
と、陸から響く小さな足音。人間か妖怪かは分からないが、目的のため感付かれないようにゆっくりと水面へ浮上する。
そこには、河童と白狼天狗の姿があった。人知れずの逢瀬だろうか。
若干距離があるため会話の中身は聞こえないが、何やら楽しげな、冗談でも言い合っているような様子だ。
(ええと…眉越しに、人を見るんだったよね…)

3

ふたつ指で持ち上げた眉で、少し離れた二人をこっそり覗き込む。
彼女の視界には、一糸まとわぬ姿の少女が現れていた。
一瞬何が起こったのか分からず、眉を左右に揺らして視界に収めたり、戻したり。
どうやら狼の眉越しにものを見ると、服が透けて見えてしまうようだったのだ。
驚きつつも罪悪感は無いのか、そのまま逢瀬を眉越しに見つめ続ける人魚。
白狼のぺたりとした胸、河童の少しだけ膨らんだ胸。
大きさに差はあれど、どちらも小さな先端が薄桃色を滲ませている。
お腹や尻の曲線は凹凸こそ少ないが、幼いながらも女としての性を主張する
そして普段の服装では何をしようと全く見えないであろう場所…女性器までもが、眉越しの世界ではすっかり見えてしまっていた。
一本の縦線で示された無垢な性器。白狼は白い毛が生えているのに対し、河童は手入れをしているのかつるつる。
…人魚は無邪気に会話する2人の性特徴を、まじまじと観察していた。

4

荒くなる息を堪え覗きを続けていると、2人も何か盛り上がって来たのだろうか、徐々に朱に染まる顔が少しして、暗闇で2つ繋がった。
頬に手を添え、優しく口付けを交わす。
数度のバードキスを経て、直ぐに互いの舌を貪り始める。
さらりとした唾液特有の水音。卑猥な攪拌の音は、少し離れた位置の人魚の耳へも届けられる。
淫靡な空気に当てられたのか、人魚の手は徐々に、自らの性器へと向かっていく。
…気付けば眉の向こうの2人の手も、お互いの未発達へと触れられていた。
河童の指が白狼の一本線をぷにぷにと歪ませる。
白狼の指が河童の一本線をぱっくり広げ、中を露わにさせる。
期待に歪む内部からは、どちらも透明な液体が染みだしていた。
証拠に、指と秘部の隙間からは、とろりと控えめに糸が引いている。
大きかったディープキスの粘音に、下半身の粘音が近づいてくる。それに合わせて、3人の自慰と愛撫が徐々にエスカレートしていった。
(はぁっ♪…覗き見しながらオナニーするのっ…滅茶苦茶きもちいいよぉっ…♪)

5

体を密着させ震え始めるふたり。絶頂の時が近づいていた。
それを見て取ったわかさぎ姫も、蕩けた表情を餌にピークへ近づいていく。
舌を絡めたまま、びくんと同時に快感を弾けさせる。
ひくひくと震える性器は、それぞれの指を優しく咥えこんで痙攣する。
痙攣は一部始終を見ていた人魚にも伝染し、彼女もまた、水の中でびくりと絶頂を迎えた。
快感に染まったままで放心する人魚。
…絶頂感から覚めふと気が付くと、白狼と河童の2人が、なんと目の前まで来ていた。
言葉を失う人魚に、2人はこう囁く。
「ねぇ…あなたも一緒に、しよ?」
一糸まとわぬ姿でそう誘われたからか、見られていた事に気づかれていたのが衝撃だったからか。
兎も角人魚は、鼻の中に走る血の香りを感じたのを最後に意識を失った。

6

「……ーめ、ひーめ?おーい、もう昼だぞー」
「ん…影狼ちゃん?」
気がつけば、昨日眉を貰ったあの場所。
どうやら、陸に腕を掛けたまま眠っていたようだ。
「ほら、昨日退屈退屈って言ってたでしょ?いろいろ石探して持ってきてあげたよ」
(あれは…夢?)
「…ねぇ影狼ちゃん、わたし昨日、貴方から眉毛を貰わなかった?」
「へっ?眉なんて何に使うの?…へんな姫♪」
…全てが夢だったと悟り、なんとなく恥ずかしくて、その恥ずかしさのやり場がなくて、顔が赤く熱くなるのを自覚していく。
「…影狼ちゃんのばかぁぁあっ!!!」
大きなひれでばしゃりと水を掛けられる。狼はわけも分からず直撃を喰らい、理由も聞けぬままぺこぺこ頭を下げるしかないのであった。
(原話:狼の眉毛)

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