科学用語ではなく神学用語フロントローディングと介入という言葉の意味は以下のようなものである。
- フロントローディング(Front loading)
- 初期値・物理法則などの形で、創造主が手を入れること。もちろん、偶然、そういう初期値や物理法則になっているのか、神様が考え抜いた末にそうなったのか識別できない。この場合、神様がたとえ本当に考えまくっていたとしても、神様がいてもいなくても、科学上の説明には影響しないので、余計なものとして、オッカムの剃刀の原則に従って、神様は説明用には不採用となる。
- 介入(intervention)
- 簡単で、超自然から何らかの形で自然界に手を出して、何かを置いたり操作したりすること。自然法則を無視しているので、人間が全知であれば奇跡として認識できる。もちろん、人間は全知ではないし、自らが全知であることを証明する方法もないので、"God of the gaps"論として、神の介入を主張することになる。
フロントローディングでは、科学の版図内に神は存在しなくなるので、インテリジェントデザイン"理論"は、証明可能性は別として、介入を選択せざるを得ない。
そして、通常版インテリジェントデザイン(生物)は、介入を基軸としている。これに対して、宇宙版インテリジェントデザインは、どっちだかわからない記述になっている。あくまでも、YEC(若い地球の創造論)ともOEC(古い地球の創造論)とも矛盾しないようにしようとして明言できなくなっているようなのだ。一応、明示的に介入したような記述にはなっていないので、宇宙版ID批判サイドはフロントローディングと解釈して、批判している。
なお、通常版インテリジェントデザインである反進化論も、明確ではない。エネルギー保存則を守ろうとすると、明示的な介入(鶏を置くとか、卵のDNAをこっそり修正するとか)ができない。YEC的な原則である「エネルギー保存則は創造6日間の後は完全に機能する」を捨ててしまえば、何でもありなのだが、そのあたりは明言されていない。ただ、適応関数とか突然変異の仕掛けとかのフロントローディングの形でデザインを持ち込もうとすると、オッカムの剃刀の原則でデザイナーは科学の説明の中に居場所がなくなる。従って、"気分"的には、介入だと思われる。
で、フロントローディングな宇宙版インテリジェントデザインと介入な通常版インテリジェントデザインを接続したときの、"科学"は....... 何もない。初期条件と"God of the gaps"なので科学として何も内容はない。しかし、"神学"はある。それも、とってもNewtonな神学が。