PCより
1/3
ペンを止めて小柳さんの顔をチラッと盗み見る。
あの帽子可愛いなぁ。見滝原で見たのとは全然印象違うなぁ。食べちゃいたいくらい可愛い。なーんてね。
字が震えそうになる。筆圧強めで助かったな。お兄ちゃんならバレない。鈍感だし。
私、浦野舞は北畠智紀の従妹をやらせて頂いております。24歳、婦警です。
このたび入院中の智兄ぃに代わって小柳さんのお話を聞き、メモっているところです。
実は私も不可解な事件に遭遇したことがあるのです。
その時はあやしいツボ(?)と黒幕(?)をとにかく一杯撃って、巫女の子にバッサリやってもらって。
後日、始末書に追われたことを除けば大事にはならなかったのです。
なのにこの人たちは。私だってあの事件を武勇伝にしたいのに。できないよ。世界広すぎ。
見滝原で智兄ぃが事故に遭って大変なことになったとき。私は泣きじゃくって縋るしかできなくて。
ああ、詩織さんは立派だなぁ。お兄ちゃんが目の前で刺されたら、私、きっと何もできない。
この一件は通り魔の犯行として処理されるんだろう。ていうかそうする。そうさせる。小柳さん無実じゃん!
だからといってあの通り魔、一柳誠二に罪をなすりつけていいのか?いいのだ。
もとはといえばソイツが小柳さんを襲ったからお兄ちゃんが刺されて詩織さんも刺されて...!
ペンが震える。
予感がする。
このままお兄ちゃん達を放っておいたら。
きっと。
カバンの中の携帯も震える。
何気なく確認するとメールが一件。
父さんから。
そして最後に背筋が震える。
魔女がやってくる。
私のサイキョーサイアクの天敵が、来る。
2/3
いつごろだろうか、僕が医者に憧れたのは。
「家長さん、僕はたった一人の人間すら守れなかった」
「うん」
「一人くらい、って、軽く考えてました。たった一人の英雄なら」
「自分にでもできる?」
「結果がこれですよ。かっこつけて、無様にやられて」
「うん」
「まぁ、これがせいぜいなんでしょうね」
「・・・」
「ただの人間には」
「魔法少女?」
「ええ」
「突飛な話ね。あの三人とは顔見知りだけど」
「僕は僕のできることをすればいい。僕は特別じゃないから」
「魔法少女に全てお任せ?なんか昔のアニメみたいね」
「それでいいんですよ。足手まといになるくらいなら」
敵を討つのではなく、大勢の人を助けるヒーローに憧れていたのは。
「浦野警部・・・あなたの叔父によく言われたわ」
「え?」
「斜め15度上見て歩け」
「叔父さん」
「そ、舞のお父さん」
「どういう意味です?」
「人は勝手に堕落する生き物だから、少し上に向いているくらいでちょうど横ばいになるってこと」
「その理論だと、僕はまさに堕落してるところですね」
「現状維持に努める人間の末路なんてそんなものよ」
「手厳しい」
「現役時代よく言われたわ」
諦めた時期は明確に覚えている。高三。夏。偏差値という数学は残酷だ。
「家長さんはどうして警察になろうと?」
「言ってなかった?正義の味方に憧れてたのよ。それだけ」
「舞は叔父さんの影響みたいですが」
「柔道習うまではいじめられてたんだけどね。強くなって。守る事が義務だと感じてた」
「義務感だけじゃ続かない」
「そう。自分が可愛いのよね。それに気づいて辞めちゃった」
「未練は?」
「ない」
未練がましく命に携わろうとした。後悔はない。あるのは消えない劣等感。
「嫌だな、堕落するのは」
「彼女さんに見限られるものね」
「詩織さんは、きっと、一緒に堕ちてくれる人だから」
「ふふ」
「なお一層堕ちたくないんです」
「じゃあ安静にして一刻も早く傷を癒しなさい」
「はい」
「まさか北畠くんにノロケられる日が来るとはねぇ」
ああ、思い出した。
「家長さん」
「ん」
「ありがとうございます」
「漱石曰く、精神的に向上心のないものはばかだそうよ」
「恋は罪悪ですよとか書く人の言う事は聞きません」
おばあちゃんに憧れたんだ。
3/3 ようやく・・・
「アンタがオオタ=シオリかい?」
北畠と家長は同時に振り向いた。
そこに立つは一人の老女。
老女といえど質実剛健。
その眼には光が満ちている。
「いいや、違うね。聞いてた特徴と違うし、アンタァ、その眼はデカのだよ」
「あなたは・・・」
「おばあちゃん!?」
「おば・・・え?」
「オオタってのは医者だろ、トモ?そこの娘は誰だい、まさか二股かけてるわけでもないだろ。
爺さんと同じでトモにそんな甲斐性ないのはアタシがよ〜く知ってるからねぇ・・・ふぇふぇふぇ」
「いつ日本へ?」
「さっきさ。最愛の孫がブッ刺されたと聞きゃあ黙ってはいられんのがババアの性分よ」
家長は視線で北畠に訴えた。お邪魔かしら、と。
北畠は目で返す。頼むから二人きりにはしないで、と。
「ここの婦長・・・ああ、今は看護師だから師長かい?そいつがあたしの教え子でね。
新米のペーペーから鍛えてやったのさ。情報のパイプは便利だね。トモの話はだいたい聞いたよ。
ついでここに来る途中舞から絞りとった情報を合わせると・・・
察するにアンタは舞の仕業で同棲してた元デカさんだね?ああ、返事は聞いてない。間違ってたら言っとくれ。
・・・鈴木さんちの件でトモがトチ狂ったあげくでっかい金を送ってきたことがあったろう?
本当はね、その金を返しに来たのさ。利子付けてね。
こないだも、なんだっけか、ミタキハラ?そんな街で車にはねられたんだろう?
トモ、あんた、秘密を持つのは構わないがね、お母さんに心配かけるんじゃないよ。
早く孫の顔を見せてやりな。この金で色々工面すりゃすぐだろう。なぁ?」
「なんというか・・・元気なおばあさまね」
「うん・・・」
「あたしに言わせりゃ最近のガキの方がヘタってるだけさね。
ま、世間話はこれくらいにして、本題に入ろうか」
「おばあちゃん、このお金は」
「実弾は嫌かい?わかったよ、ちょっと不動産屋行ってくる」
「そうじゃなくて」
「ええい、まどろっこしいね。その金でさっさと式挙げるんだよ、トモ!」
「・・・前言撤回、元気すぎるわ、おばあさま」
「まぁともかくだ、看護婦として・・・ああ、あたしゃ古い人間だからね、
今の子はともかくあたしのことは看護婦と呼んでくれ。
看護婦としてな、トモ、これ以上危ない事に首突っ込むのはあたしが許さないからね。
おっと答えは聞いてないよ!
あくまで看護婦としてだ。孫に先立たれても悲しむほどメンタル弱いババアじゃないからね。
その腹の孔がキッチリ塞がるまではこの病院から抜け出すのは不可能だと思ってもらおう!」
「仕方ないわね、ゴタゴタがあれば私が行くわ。北畠君はおばあさまの言う通り休みなさい」
PLより
長くなりそうなので取り急ぎPLから
お疲れ様でした。
妙な違和感がPLにもPCにも感じ取れて、
でもそれがなんなのかわからなくて。
村柳さんの考えるシナリオ・演出すげーと思いました。
途中(二日目)からPCとPLに解離のようなものを感じ、
PLが恋愛経験薄いがためにPCの動きを制御できないのだと気づきました。
その点で今までとは違うベクトルではっちゃけてしまったような。
お見苦しかったら申し訳なかったです。はい。
一句さん:まともだと思いきや鬱憤溜まってた御様子で。彼もまたカオスに飲み込まれていくのでしょうか・・・
カラマンシーさん:フイウチとかかっこいい事言ってくださりやがって!稲場さんマジウルトラマン
柴馬さん:さすが主人公は格が違・・・まっく・・・ろ・・・だと・・・
駄メガネさん:4度ある事は5度6度と続いていくのですね。北畠にとって岡井さんは尊敬できる人間なのかもしれないです。
朝倉さん:アイラビュー!マモレナカッタ。今後も彼をよろしくお願いします。
takioさん:異色のトリオでしたがすんなり馴染めるあたりにもう嫉妬しちゃう!お姉さんかっこいいです。
KP村柳さん:みのるさんつえぇ・・・やはりナイトは格が違った。久々にハラハラするバランスでございました。