後書き
『仙人入門』『仙人になる法』と書いてきて、この本で仙人シリーズは三冊目になる。
『仙人入門』は、商品カタログのようなもので、一読すれば、本当の中国仙道とは、どのようなものかが俯瞰的に理解できるようになっている。
『仙人になる法』は、完全なる実践書である。今のところ日本では、これほど詳しく具体的に「気」の扱い方を書いた本はない。実用的な面では、本場、中国の類書にも勝るとも劣らないと自負している。それに対して、本書は、日本で初めて中国仙道の不老不死の仙人の本質、ならびに修行法【大周天】を紹介した本である。また、前二書の研究書でもあり、その意味では画期的である。
ただ、対象が対象だけに、とても完璧に解き尽くしたとはいえない。ある意味では、ほんの上っ面を触れただけといえるかもしれない。これは、ひとえに、著者自身まだ研究途上の身の上、科学の各専門分野を完全にマスターしきれていないせいでもある。
もし、読者が、この本を読んで、もうひと味足らないなと思うなら、それは、仙道のせいでも科学のせいでもない。著者の表現力の乏しさである。事実、厖大な資料の内、この本で取り上げることのできたのは、ほんの一部しか過ぎない。実際に解っていることはこんな程度のものではない。もしさらに細かい点まで紹介できたら、すぐに不老不死の仙人になれるくらいである。ただ、それには色々な分野に関する幅広い専門知識と飽くなき探究心が要求されるので、いずれにせよこの本だけで解き尽くすのは無理である。
だから、この本を読んでみて、この程度のものかと思われたり、逆に、こんなに難しいのかと思われるのは早計である。
どちらにしても、この本ぐらいで、雲に飛びのり、天地を駆け巡るところまではいかない。まだ不老不死学の入口あたりに、少し足を踏み入れただけに過ぎない。仙人の本質への道は、ここから始まるのである。
願わくば、この本を踏み台としてさらに深いところへ、読者自身が研究修行の手を踏み入れることが、著者の心からの希望である。それが、仙道を現代に再び甦らすもとになるのである。もし、この本が、そういう方のための参考になれば、著者の幸いとするところである。
最後に、いつもながら、お世話になった大陸書房の高沢雅昭氏に、心よりお礼を申し上げておきたい。