リリカルなのはのKWAIDAN0話

とある真夜中の小学校…廊下に絵日記などが張り出されている中、
電話の音だけが闇をつんざいて木霊している。

「はいはいはいはい今出ますよお!」

中年の教師が電話にしぶしぶといったかんじで出ようとする。こんな夜中に
一体だれが…。

「はいもしもし〜北海鳴小学校ですが。」
「…私、メリーさん。今、正門の前に居るの。」

受話器から聞こえてきたのはくぐもった女の声だった。

「ハア?あの…もしもし?……あれ?切れちゃった。」

中年の教師はやれやれ、と言いたげな調子で受話器から離れようとする。
ところが数秒するかしないかといううちに再び電話が鳴り始めた。

「私、メリーさん。」
「どなたか知りませんが…悪戯はやめてもらえませんか?」

再び受話器から流れてきた女の子の声に中年の教師はやや強い調子で言った。

「…今、校庭に居るの。」
「え?」

電話をかけてきた少女は相変わらず生気のこもらない声で言った。
中年の教師はギョッとして校庭を見回すが、人影どころか猫一匹いない。

「…花壇のところよ。」
窓に顔をくっつけて辺りを見回す教師を嘲笑うようにそこまで言うと電話は切れた。

「ったく…もう…!!…」

教師が毒づいて受話器を放ったその時再び電話が鳴り始めた。

「私、メリーさん。今、昇降口の前に居るの。」

電話の主はそういうと電話を切った。中年の教師はおそるおそる職員室
から顔を出し、昇降口の方を見た。誰も…いない。その時再び電話が鳴り始めた。
職員室の物ではない。廊下の公衆電話の音だと解った。
既に恐怖を覚え始めていた教師は体を震わせながら受話器をとる…

「あんたいい加減にしろ!こっちは忙しいんだ!」

中年の教師は勇気を振り絞って怒鳴った。
「…私…メリーさん。今…あなたのうしろにいるの。」

「えっ…」

受話器からその台詞が聞こえてきた瞬間中年の教師の背後に悪寒が走り、
何者かの気配を感じた。ゆっくりと振り返る。すると…

「な…!?」

そこにはなんと…スイカが浮いていた。そのスイカは教師が驚いて立ちすくむのを
尻目にぐるりと回転。ハロウィーンのカボチャのように目と鼻と口の装飾が施された顔を
露にすると教師に向かっていった。


「うえあああああああああああああああ!!!!!」


中年の教師の絶叫が木霊する。やがて、静かになった廊下を赤い服をはおった
女の子がゆっくりと歩いていく…。
「その先生は翌日死体となって発見されました。おしまい。…………わっ!!」
「きゃああああああ!」
ピンク色の髪の少女がクリと震えて後ろへと飛びのく。
彼女が驚いた原因の大きな声の主は時空管理局機動六課のスターズ分隊の一員スバル・ナカジマだ。
「い…いきなり何するんですかあ!」
「あははは…ごめんごめんあんまり怖がるもんだからついおかしくって…。」
頬を膨らませるキャロにスバルがケラケラと笑いながら言った。
「何馬鹿な事やってんのよスバル。キャロをいじめるとフェイト隊長に雷落とされちゃうわよ。」
スバルの同僚、ティアナ・ランスターがスバルを咎める。
平時における機動六課のごく当たり前の風景だった。そう、あの出撃命令が
出るまでは…。

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2007年07月21日(土) 11:17:14 Modified by beast0916




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