更紗模様 | サラサモヨウ | 指示 | 速度 | 調性 | 拍子 | |
1 | 時は逝く | トキハユク | Andante | 4分音符=72 ca. | ヘ長調 | 4/4 |
2 | 初恋 | ハツコイ | Allegretto | 4分音符=104 ca. | ト短調 | 3/4 |
3 | 車上 | シャジョウ | Lento | 4分音符=52 ca. | ニ短調 | 3/4 |
4 | 手まり唄 | テマリウタ | Allegretto | 4分音符=120 ca. | ホ短調 | 4/4 |
5 | 二人 | フタリ | Andante | 4分音符=72 ca. | ニ短調 | 4/4 |
6 | 朝 | アサ | Moderato | 4分音符=92 ca. | ホ短調 | 5/4 |
河原林昭良氏(同志社グリークラブ第28代指揮者)の遺族からの意思を受け、それを末永く形ある財産として残せるものにしたいということで、河原林氏の記念として委嘱。
テキストは、河原林氏の指揮で初演された組曲「雪と花火」のような詩に作曲してほしいという委嘱者の要望に沿って選ばれた。
タイトルは、白秋の芳醇な語彙によって綴られる詩情から様々な色彩が感じ取ることができること、白秋の詩や文章に「更紗」が散見されることから命名された。
組曲に含まれる詩の中では、第5曲『二人』に「印度更紗」がある。
また、たとえば「思ひ出」序文「わが生いたち」第2段落に「更紗模樣」が出てくる。
テキストは、河原林氏の指揮で初演された組曲「雪と花火」のような詩に作曲してほしいという委嘱者の要望に沿って選ばれた。
タイトルは、白秋の芳醇な語彙によって綴られる詩情から様々な色彩が感じ取ることができること、白秋の詩や文章に「更紗」が散見されることから命名された。
組曲に含まれる詩の中では、第5曲『二人』に「印度更紗」がある。
また、たとえば「思ひ出」序文「わが生いたち」第2段落に「更紗模樣」が出てくる。
……さうして歩むにつれて、その水面の隨所に、菱の葉、蓮、眞菰、河骨、或は赤褐黄緑その他樣々の浮藻の強烈な更紗模樣のなかに微かに淡紫のウオタアヒヤシンスの花を見出すであらう。……
春の夜なりき。さくらびと
月の大路へ戸を出でぬ。
燈あかき街の少女らは
車かこめり、
川のふち
霧美くしうそぞろぎぬ。
美き人なりき、花ごろも
かろく被ぎて、――母ぎみの
乳の香も薫ゆり、――薔薇のごと
われをつつみぬ。
ひとあまた、
あとの車もはなやぎぬ。
いづれ、月夜の花ぐるま、
憂き里さりて、野も越えて、
常うるわしき追憶の
国へかゆきし。――
稚子なれば
はやも眠りぬ、その膝に。
月の大路へ戸を出でぬ。
燈あかき街の少女らは
車かこめり、
川のふち
霧美くしうそぞろぎぬ。
美き人なりき、花ごろも
かろく被ぎて、――母ぎみの
乳の香も薫ゆり、――薔薇のごと
われをつつみぬ。
ひとあまた、
あとの車もはなやぎぬ。
いづれ、月夜の花ぐるま、
憂き里さりて、野も越えて、
常うるわしき追憶の
国へかゆきし。――
稚子なれば
はやも眠りぬ、その膝に。
いつも二人で、
TONKA JHON と GONSHAN と、
油屋のまへを通れば
ぎいごつとん、ぎいごとん、
菜種油をしぼる音。
溝渠の柳に、
赤い夕日が照りつける、
みんな一緒に鉄輪まはせば、
ぎいごつとん、ぎいごつとん、
菜種油をしぼる音。
汗すこし
ついた手首に
うつし絵貼つたり、やんま捕つたり、
ぎいごつとん、ぎいごつとん、
菜種油をしぼる音。
叱らアれて、叱られて、
死んでやろかと、出て見たら、
夜のくらさに、水のふかさに、
ぎいごつとん、ぎいごつとん、
菜種油をしぼる音。
裸男の、
男やもめの、
いつもきさくな兄哥が、
赤鼻の兄哥が、
ぎいごつとん、ぎいごつとん、
菜種油をしぼる音。
しぼる音。
TONKA JHON と GONSHAN と、
油屋のまへを通れば
ぎいごつとん、ぎいごとん、
菜種油をしぼる音。
溝渠の柳に、
赤い夕日が照りつける、
みんな一緒に鉄輪まはせば、
ぎいごつとん、ぎいごつとん、
菜種油をしぼる音。
汗すこし
ついた手首に
うつし絵貼つたり、やんま捕つたり、
ぎいごつとん、ぎいごつとん、
菜種油をしぼる音。
叱らアれて、叱られて、
死んでやろかと、出て見たら、
夜のくらさに、水のふかさに、
ぎいごつとん、ぎいごつとん、
菜種油をしぼる音。
裸男の、
男やもめの、
いつもきさくな兄哥が、
赤鼻の兄哥が、
ぎいごつとん、ぎいごつとん、
菜種油をしぼる音。
しぼる音。
夏の日の午後……
瓦には紫の
薊ひとりかゞやき、
そことなしに雲が浮ぶ。
酒倉の壁は
二階の女部屋にてりかへし、
痛いやうに針が動く、
印度更紗のざくろの実。
暑い日だつた。
默つて縫う女の髪が、
その汗が、溜息が、
奇異な切なさが……
悩ましいひるすぎ、
人形の首はころがり、
黒い蝶の断れた翅、
その粉の光る美くしさ、怪しさ。
たった二人、……
何か知らぬこころに
九歳の児が顫えて
そつと閉めた部屋の戸。
瓦には紫の
薊ひとりかゞやき、
そことなしに雲が浮ぶ。
酒倉の壁は
二階の女部屋にてりかへし、
痛いやうに針が動く、
印度更紗のざくろの実。
暑い日だつた。
默つて縫う女の髪が、
その汗が、溜息が、
奇異な切なさが……
悩ましいひるすぎ、
人形の首はころがり、
黒い蝶の断れた翅、
その粉の光る美くしさ、怪しさ。
たった二人、……
何か知らぬこころに
九歳の児が顫えて
そつと閉めた部屋の戸。
日は皐月、
小野のしら花
鈴状に咲きて夜あけぬ。
静なり、ひとり坐れば。
静なり、ひとり坐れば。――
くるる戸の
きしるにほひも。
君は早や、
麦の青みを――
鈴鳴らし朝の禱りに、――
白ぎぬに摺りもこそゆけ、
白ぎぬに摺りもこそゆけ、
野の寺へ。――
かくも思ひぬ。
ああしばし、
星のうすれに、
髪なぶる風のなよびも、
水鳥のほののしらべも、
水鳥のほののしらべも、
われききぬ。
きみがこころも。
小野のしら花
鈴状に咲きて夜あけぬ。
静なり、ひとり坐れば。
静なり、ひとり坐れば。――
くるる戸の
きしるにほひも。
君は早や、
麦の青みを――
鈴鳴らし朝の禱りに、――
白ぎぬに摺りもこそゆけ、
白ぎぬに摺りもこそゆけ、
野の寺へ。――
かくも思ひぬ。
ああしばし、
星のうすれに、
髪なぶる風のなよびも、
水鳥のほののしらべも、
水鳥のほののしらべも、
われききぬ。
きみがこころも。
タグ
コメントをかく