最終更新: chorus_mania 2020年07月02日(木) 14:57:08履歴
柳河風俗詩 | ヤナガワフウゾクシ | 指示 | 速度 | 調性 | 拍子 | 備考 | |
1 | 柳河 | ヤナガワ | やや早く、優美に | 4分音符=126 | ニ短調 | 4/4 | Tenor Solo |
2 | 紺屋のおろく | コウヤノオロク | 早く、焦り気味に | 4分音符=144 | イ短調 | 5/4 | |
3 | かきつばた | カキツバタ | ゆったりと(そしてわびしく) | 4分音符=60 | イ短調 | 3/4 | |
4 | 梅雨の晴れ間 | ツユノハレマ | 早く、律動的に | 2分音符=88 | ニ短調 | 2/2 |
歌詩の解釈で、『紺屋のおろく』を初恋の相手への屈折した愛を表現との解釈が一般的であるが、北原白秋研究家の最近の調査では、初恋の相手のいる紺屋の女中に“おろく”という女性を確認できるとの事である。文字の額面通りの“にくいあん畜生”であったのだ。
『梅雨の晴れ間』はタイトル通りの風景をコミカルに書いた詩であるが、今から演じようとしている田舎芝居の演目は登場人物の名前から“義経千本桜”と考えられる。その四段目・吉野山の最後を飾るのが“狐六法”である。
時折現在の行政区分(柳川市)と照らし合わせての、『柳川風俗詩』という表記が稀に見受けられるが、詩集が上梓された1911年時点では「柳河町」となっているので『柳河風俗詩』が正しい。
『梅雨の晴れ間』はタイトル通りの風景をコミカルに書いた詩であるが、今から演じようとしている田舎芝居の演目は登場人物の名前から“義経千本桜”と考えられる。その四段目・吉野山の最後を飾るのが“狐六法”である。
時折現在の行政区分(柳川市)と照らし合わせての、『柳川風俗詩』という表記が稀に見受けられるが、詩集が上梓された1911年時点では「柳河町」となっているので『柳河風俗詩』が正しい。
『紺屋のおろく』の終盤において、当初は「赤い夕日にふとつまされて…」という歌詩で作曲された。ただ、原典では「赤い入日に…」となっており、のちに原典どおりの形に改訂されている。
『梅雨の晴れ間』の「青い空透き、日光の」となっている部分は、原詩では「青い空透き、日の光」であり作曲者が取り違えた可能性がある。参照
『梅雨の晴れ間』の「青い空透き、日光の」となっている部分は、原詩では「青い空透き、日の光」であり作曲者が取り違えた可能性がある。参照
もうし、もうし、柳河じや、
柳河じや。
銅の鳥居を見やしやんせ。
欄干橋をみやしやんせ。
(馭者は喇叭の音をやめて、
赤い夕日に手をかざす。)
薊の生えた
その家は、……
その家は、
旧いむかしの遊女屋。
人も住はぬ遊女屋。
裏の BANKO にゐる人は、……
あれは隣の継娘。
継娘。
水に映つたそのかげは、……
そのかげは
母の形見の小手鞠を、
小手鞠を、
赤い毛糸でくくるのじや、
涙片手にくくるのじや。
もうし、もうし、旅のひと、
旅のひと。
あれ、あの三味をきかしやんせ。
鳰の浮くのを見やしやんせ。
(馭者は喇叭の音をたてて、
あかい夕日の街に入る。)
夕焼、小焼、
明日天気になあれ。
* 緑台、葡萄牙の転化か。
柳河じや。
銅の鳥居を見やしやんせ。
欄干橋をみやしやんせ。
(馭者は喇叭の音をやめて、
赤い夕日に手をかざす。)
薊の生えた
その家は、……
その家は、
旧いむかしの遊女屋。
人も住はぬ遊女屋。
裏の BANKO にゐる人は、……
あれは隣の継娘。
継娘。
水に映つたそのかげは、……
そのかげは
母の形見の小手鞠を、
小手鞠を、
赤い毛糸でくくるのじや、
涙片手にくくるのじや。
もうし、もうし、旅のひと、
旅のひと。
あれ、あの三味をきかしやんせ。
鳰の浮くのを見やしやんせ。
(馭者は喇叭の音をたてて、
あかい夕日の街に入る。)
夕焼、小焼、
明日天気になあれ。
* 緑台、葡萄牙の転化か。
にくいあん畜生は紺屋のおろく、
猫を擁えて夕日の浜を
知らぬ顏して、しやなしやなと。
にくいあん畜生は筑前しぼり、
華奢な指さき濃青に染めて、
金の指輪もちらちらと。
にくいあん畜生が薄情な眼つき、
黒の前掛、毛繻子か、セルか、
博多帯しめ、からころと。
にくいあん畜生と、擁えた猫と、
赤い入日にふとつまされて
瀉に陷つて死ねばよい。ホンニ、ホンニ、……
猫を擁えて夕日の浜を
知らぬ顏して、しやなしやなと。
にくいあん畜生は筑前しぼり、
華奢な指さき濃青に染めて、
金の指輪もちらちらと。
にくいあん畜生が薄情な眼つき、
黒の前掛、毛繻子か、セルか、
博多帯しめ、からころと。
にくいあん畜生と、擁えた猫と、
赤い入日にふとつまされて
瀉に陷つて死ねばよい。ホンニ、ホンニ、……
柳河の
古きながれのかきつばた、
昼は ONGO の手にかをり、
夜は萎れて
三味線の
細い吐息に泣きあかす。
(鳰のあたまに火が点いた、
潜んだと思ふたらちよいと消えた。)
* 良家の娘、柳河語。
古きながれのかきつばた、
昼は ONGO の手にかをり、
夜は萎れて
三味線の
細い吐息に泣きあかす。
(鳰のあたまに火が点いた、
潜んだと思ふたらちよいと消えた。)
* 良家の娘、柳河語。
廻せ、廻せ、水ぐるま、
けふの午から忠信が隈どり紅いしやつ面に
足どりかろく、手もかろく
狐六法踏みゆかむ花道の下、水ぐるま……
廻せ、廻せ、水ぐるま、
雨に濡れたる古むしろ、円天井のその屋根に、
青い空透き、日の光
七宝のごときらきらと、化粧部屋にも笑ふなり。
廻せ、廻せ、水ぐるま、
梅雨の晴れ間の一日を、せめて樂しく浮かれよと
廻り舞台も滑るなり、
水を汲み出せ、そのしたの葱の畑のたまり水。
廻せ、廻せ、水ぐるま、
だんだら幕の黒と赤、すこしかかげてなつかしく
旅の女形もさし覗く、
水を汲み出せ、平土間の、田舎芝居の韮畑。
廻せ、廻せ、水ぐるま、
はやも午から忠信が紅隈とつたしやつ面に
足どりかろく、手もかろく、
狐六法踏みゆかむ花道の下、水ぐるま……
けふの午から忠信が隈どり紅いしやつ面に
足どりかろく、手もかろく
狐六法踏みゆかむ花道の下、水ぐるま……
廻せ、廻せ、水ぐるま、
雨に濡れたる古むしろ、円天井のその屋根に、
青い空透き、日の光
七宝のごときらきらと、化粧部屋にも笑ふなり。
廻せ、廻せ、水ぐるま、
梅雨の晴れ間の一日を、せめて樂しく浮かれよと
廻り舞台も滑るなり、
水を汲み出せ、そのしたの葱の畑のたまり水。
廻せ、廻せ、水ぐるま、
だんだら幕の黒と赤、すこしかかげてなつかしく
旅の女形もさし覗く、
水を汲み出せ、平土間の、田舎芝居の韮畑。
廻せ、廻せ、水ぐるま、
はやも午から忠信が紅隈とつたしやつ面に
足どりかろく、手もかろく、
狐六法踏みゆかむ花道の下、水ぐるま……
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