多人数で神話を創る試み『ゆらぎの神話』の、徹底した用語解説を主眼に置いて作成します。蒐集に於いて一番えげつないサイトです。

彼は平凡な騎士だった。勤勉に励み規則に忠実な、けれど時には金に目を焼かれて知らぬふりをする。
そんなありふれた騎士だった。農民上がりの下級騎士だった。
特別優れた才能があるわけでもなく、彼は只の凡人に過ぎなかったから、特にこれと言った武勇も持ちえずに、上の命令と騎士の規則との間で板挟みの、華の無い生活を繰り返していた。遠征に参加したときに遠征先で祖国の滅亡を知るまでは。
彼は自由に成ったのだ。代わりに彼が流されるべき川は穏やかなものから緩急の激しいものへと切り変わった。
大義をなくした遠征軍は最終的に散り散りになって彼も何処かへ逃げ出した。

金がない。国が滅んだので帰る故郷もない。
もしかしたらまだ残っているかもしれないが、戻るにも金が必要だ。
稼ぐ伝手は無いので、彼は近くにいた同胞と共に盗賊になることにした。
いわゆる騎士崩れだ。

殺人は癖になる。犯すのは心地よい。
今ある己の苦しみ、恵まれず不安に満ちた境遇から目を背けさせてくれるから。
人生は楽だ。とても楽しいし充実している。けれど、己を戒める声が消えてくれない。
夢の中で見知った誰かが、ないし己の写し身が己の所業を糾弾する。死者の怨嗟を身勝手に代弁する。
それに苦しんで、同時に安堵している自分がいる。
まだ俺は外道に堕ちきった訳じゃないのだと。
まだ自分は善良で不幸なだけの奴だと、熱心に思い込もうとする。
まるで自分が生粋の悪人で、唾棄すべき外道などではないのだと信じ込もうとする。

ある時、彼は仲間達と共に一つの村落を襲った際に戦利品として一人の少女を手に入れた。
その少女は名をルチカといった。
光輝く娘。なのにソレはとても窶れて見えたのだ。
ちなみに彼は盗賊団の中ではそこそこ優秀で、頭領にも一目置かれていた。
タグ

関連リンク

其の他のリンク

アマゾンアソシエイト

管理人連絡先

amogaataあっとまーくyahoo.co.jp

紹介サイト


メンバーのみ編集できます

メンバー募集!