多人数で神話を創る試み『ゆらぎの神話』の、徹底した用語解説を主眼に置いて作成します。蒐集に於いて一番えげつないサイトです。

物語り

記述

その戦いは、少女の高らかな口上で幕を上げた。
「牙を剥け、赤かる顎(あぎと)、われらが怒りその身に宿し、
鍵たる剣持てわれらが土塊の出自を否定せよ!
われら、この身は水の御子、大海より出で暗闇に還る、深淵の申し子なりと知らしめよ!!」

栗色の髪をなびかせる少女は片腕を失っている。
眼前の敵はその腕と引き換えに少女に戦いの覚悟を与えたのである。
敵、否、もはや少女にとっての的はその口に少女の細腕を咥えながらも恐々としている。
少女の口に咥えられた真紅の宝石から放たれる威圧に恐れをなしている。
愚かなりと宝石が赤い輝きと共に笑うのだ。
的手はだ。
二足で立ち、三本の腕を両肩と臀部に持ち、鋭い牙と嗅覚を持つ、犬だ。
腕を、食い千切る。
骨が砕ける音と共に、少女の宝石が輝きを増した。
刹那の間、世界に光が満ちる。

次に訪れた静寂は一瞬で食い破られた。
広がる顎は犬の全身を数倍する。獰猛な牙の一噛みは犬の肉と骨を砕き散らし、
一撃の下に殺戮を遂行した。

牙の主は、獣だった。
犬よりも少女よりも、遥かに巨大な赤色の獅子。
獅子。王なる獣。
その中でも伝説と謳われし真紅の鬣を持つかの獣こそ、フォービットの魔獣
赤の幻視。太陽喰らい。フェンリス?の獅子。「symbol red」。
そして、真紅のフォービット。

少女は片腕のまま、得意げに笑う。
少女は魔獣使い。

魔王を倒さんとする、殺人嗜好者である。
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