やっと呼べた
投下しますよ
佐藤と八千代です。二人の間にどんな記号が入るかは投げますw
エロなし短い。なのにムダに3か4分割くらい
すごくひさしぶりにSS書いたらこのザマだよ!
「ねぇ佐藤くん。今ちょっと大丈夫?」
いつも通り微妙に人気のないワグナリアの厨房で暇を持て余していた俺は、フロアの方からやって来た轟に声を掛けられた。
「どうした八千代。俺は新しい種島いぢめの考案で忙しいんだ」
「またそうやって……ぽぷらちゃんと仲良くしてあげてね。ぽぷらちゃん、佐藤くんには何でも話すし特に仲良いんだから」
「そうか? 別にそんなつもりはないんだが」
いつの間にか隣まで来ていた轟にドキリとしつつもフロアの方に視線を移すと、小鳥遊と伊波と種島が裏で食器拭きをしながら仲良くじゃれあっているところだった。
「相変わらずフロアの高校生組も仲が良いわね。まひるちゃんもだいぶと男の人に慣れてきたみたいだし。これも小鳥遊くんのおかげね」
「こっちとしては殴られなきゃなんでもいい。小鳥遊には悪いが」
最近の伊波は本人の努力の賜物か、小鳥遊の忍耐の結果か、対男限定の暴力の回数が減ってきていた。
接客では子供と年寄り以外の男にはまだまだ難があるものの、数少ない男スタッフには少なくとも業務上での最低限のコミュニケーションは取れるほどに改善されてきていた。
「今はね、小鳥遊くんを殴っちゃうのはほとんど照れ隠しなのよ。やっぱり好きな人の為なら頑張れちゃうのね」
それに気づけない小鳥遊くんは本当に鈍いんだから。もう、ダメね、と頬に手を当てたままぽわぽわした口調で続けた。
おいおいお前が言うかよと口に出しそうになったものの、自分のヘタレ具合も(不本意だが)多少なりとも自覚があるため短くなった煙草の煙と共に吸い込んでおく。
「それで。何か用があって来たんじゃないのか?」
「そうそうそれでね。まひるちゃんも改善されてきているし、次は佐藤くんの番じゃないかなぁって」
「……はぁ?」
いやいや何を言っているんだ。俺には苦手なものも理不尽に殴る病気もないぞ。流れで行くなら次は小鳥遊のミニコン辺りだろ。
「あのね、佐藤くんは私の事名前で呼んでくれているでしょ? それでやっぱり私も佐藤くんの事を名前で呼びたいの」
「前も言ったが俺は名前で呼ばれると持病の喘息がだな」
「うん……無理は良くないと分かっているけど……これから先、その……前言ってた好きな人にもし名前で呼ばれるような時に咳き込んでばっかりじゃ辛いと思うから……」
ダメかしら? と少し申し訳なさそうに、見間違えでなければ寂しそうに続けた。
これくらいの歳になると名前で呼ばれる事もほとんどないし、いやいやそもそも轟に名前で呼ばれるのがダメというか、ダメじゃないが余りの破壊力に咳き込んでしまうというか。
「本当はね、私が佐藤くんを潤くんって呼びたいだけなんだけど……」
「げふんごふん」
「ああっやけに棒読みな咳だけど大丈夫!?」
やっぱりダメだったかしら、とおろおろと心配そうな顔で覗き込んできた。あぁそうだよこういう顔も性格も好きなんだよ。本当の理由なんて隠しておけばいいだろ。
まぁ分かってはいたんだけどな。轟は仲の良い同性とは名前で呼び合っているし、一つのバロメーターというか。今までろくに友人のいなかった轟なりの距離感の縮め方なんだろう。
その厚意から俺は一度、自分勝手な理由で避けていたんだ。
覚悟は以前に真柴二号といざこざがあった時にしたし、幸いにも相馬は非番でいない。明日出勤してきたらいきなり何か言われそうだがそれでもいいさ。自分で決めた事なんだからな。
「すまん八千代、大丈夫だ。それでだ、何て言うか名前の事なんだがな……その、なんだ別に構わん」
「……本当に?」
せっかく吹っ切れたのにそんな叱られてうつむいていた子供の前にお菓子を出したような顔で尋ね返されたらたまんねぇじゃねえか。
普段から轟にアホとか言ってるけど今の自分も相当だな。
「ああ。ひとおもいに言ってくれ」
「ひ、ひとおもいに? じゃあ先に佐藤くんが私を呼んで、その返事で言うわね」
自分から言い出したのに照れちゃう、と恥ずかしそうにしているのに轟の顔には嬉しさも垣間見える。轟からしてみれば友達の名前を呼べるようになるだけなんだがな……
『友達』か……それだけ轟にとって俺は良くも悪くも大切な『友達』ってわけか。『友達』……ね。
「佐藤くん? やっぱり嫌?」
「あ? 悪い大丈夫だ。じゃあ呼ぶぞ」
またネガティブになりかけたが今は目の前の事に集中しよう。そうすれば──
「八千代」
『友達』かもしれんが一歩進んだ友達になれるかもしれないじゃないか。
「はい、潤くん」
「あれ? 八千代さん、さとーさんどうしたの? 二人とも顔が真っ赤だよ?」
「な、なんでもないのよぽぷらちゃん。ね、潤くん?」
「…………ソーデスネ」
「あー! 八千代さん、さとーさんを名前で呼んでる! 仲良いんだね! さとーさん、私も名前で呼んでいい?」
「種島、俺を名前で呼ぶと背が縮むぞ」
「えっ、だって八千代さんは? ……きゃーやめてよさとーさん髪いぢらないでよー」
この先、この呼び方に慣れる日がくるのだろうか。でも今は取り合えず──
「それでね潤くん、杏子さんがね……」
惚気話もあまり苦にならんところは有り難いな。
おまけ
「(宗太くんってよんでみたいなーでも無理だよね……治ってきたとは言え、付き合っているわけじゃないし名前を呼ぶなんて)」
「伊波さん、伊波さん」
「(でもでも、いつかは手を繋いでデート中に宗太くんって呼んでみたりして! きゃー!)」
「伊波さん? おかしいですよ? 大丈夫ですか?」
「えっ? あ、何、かな、そうたく……」
「そう……?」
「そ、そ、そう……そうだ! 14卓にお冷注ぎに行ってこなきゃ!」
「14卓は男性客ですよ?」
「え、あのえっと……ごめんなさい!」
「やっぱ殴られるんですね!!」
おまけ2
「足立くん。下の名前で呼んでくれないかしら」
「えっあの、どういうことかな?」
「私達付き合ってるんだし、それくらい普通だと思うんだけど。高校生に感化された足立くん」
「ちょ、それはやめてよ。わかったから」
「じゃあお願い。まさか名前を知らないなんて事ないわよね? 着替えようとしてもなかなか出ていってくれなかった足立くん」
「もうやめてください……名前もきちんと覚えてるから!」
「じゃ、改めてお願い」
「…………さゆりさん」
「…………」
「あ、やめてドライアイスは流石にまずいから! 照れてるの!? 嬉しいの!? 恥ずかしいの!?」
「うるさい無理やりキスした正広くんうるさい」
「そっちも名前で呼ん冷たい痛い痛い!」
佐藤と八千代です。二人の間にどんな記号が入るかは投げますw
エロなし短い。なのにムダに3か4分割くらい
すごくひさしぶりにSS書いたらこのザマだよ!
「ねぇ佐藤くん。今ちょっと大丈夫?」
いつも通り微妙に人気のないワグナリアの厨房で暇を持て余していた俺は、フロアの方からやって来た轟に声を掛けられた。
「どうした八千代。俺は新しい種島いぢめの考案で忙しいんだ」
「またそうやって……ぽぷらちゃんと仲良くしてあげてね。ぽぷらちゃん、佐藤くんには何でも話すし特に仲良いんだから」
「そうか? 別にそんなつもりはないんだが」
いつの間にか隣まで来ていた轟にドキリとしつつもフロアの方に視線を移すと、小鳥遊と伊波と種島が裏で食器拭きをしながら仲良くじゃれあっているところだった。
「相変わらずフロアの高校生組も仲が良いわね。まひるちゃんもだいぶと男の人に慣れてきたみたいだし。これも小鳥遊くんのおかげね」
「こっちとしては殴られなきゃなんでもいい。小鳥遊には悪いが」
最近の伊波は本人の努力の賜物か、小鳥遊の忍耐の結果か、対男限定の暴力の回数が減ってきていた。
接客では子供と年寄り以外の男にはまだまだ難があるものの、数少ない男スタッフには少なくとも業務上での最低限のコミュニケーションは取れるほどに改善されてきていた。
「今はね、小鳥遊くんを殴っちゃうのはほとんど照れ隠しなのよ。やっぱり好きな人の為なら頑張れちゃうのね」
それに気づけない小鳥遊くんは本当に鈍いんだから。もう、ダメね、と頬に手を当てたままぽわぽわした口調で続けた。
おいおいお前が言うかよと口に出しそうになったものの、自分のヘタレ具合も(不本意だが)多少なりとも自覚があるため短くなった煙草の煙と共に吸い込んでおく。
「それで。何か用があって来たんじゃないのか?」
「そうそうそれでね。まひるちゃんも改善されてきているし、次は佐藤くんの番じゃないかなぁって」
「……はぁ?」
いやいや何を言っているんだ。俺には苦手なものも理不尽に殴る病気もないぞ。流れで行くなら次は小鳥遊のミニコン辺りだろ。
「あのね、佐藤くんは私の事名前で呼んでくれているでしょ? それでやっぱり私も佐藤くんの事を名前で呼びたいの」
「前も言ったが俺は名前で呼ばれると持病の喘息がだな」
「うん……無理は良くないと分かっているけど……これから先、その……前言ってた好きな人にもし名前で呼ばれるような時に咳き込んでばっかりじゃ辛いと思うから……」
ダメかしら? と少し申し訳なさそうに、見間違えでなければ寂しそうに続けた。
これくらいの歳になると名前で呼ばれる事もほとんどないし、いやいやそもそも轟に名前で呼ばれるのがダメというか、ダメじゃないが余りの破壊力に咳き込んでしまうというか。
「本当はね、私が佐藤くんを潤くんって呼びたいだけなんだけど……」
「げふんごふん」
「ああっやけに棒読みな咳だけど大丈夫!?」
やっぱりダメだったかしら、とおろおろと心配そうな顔で覗き込んできた。あぁそうだよこういう顔も性格も好きなんだよ。本当の理由なんて隠しておけばいいだろ。
まぁ分かってはいたんだけどな。轟は仲の良い同性とは名前で呼び合っているし、一つのバロメーターというか。今までろくに友人のいなかった轟なりの距離感の縮め方なんだろう。
その厚意から俺は一度、自分勝手な理由で避けていたんだ。
覚悟は以前に真柴二号といざこざがあった時にしたし、幸いにも相馬は非番でいない。明日出勤してきたらいきなり何か言われそうだがそれでもいいさ。自分で決めた事なんだからな。
「すまん八千代、大丈夫だ。それでだ、何て言うか名前の事なんだがな……その、なんだ別に構わん」
「……本当に?」
せっかく吹っ切れたのにそんな叱られてうつむいていた子供の前にお菓子を出したような顔で尋ね返されたらたまんねぇじゃねえか。
普段から轟にアホとか言ってるけど今の自分も相当だな。
「ああ。ひとおもいに言ってくれ」
「ひ、ひとおもいに? じゃあ先に佐藤くんが私を呼んで、その返事で言うわね」
自分から言い出したのに照れちゃう、と恥ずかしそうにしているのに轟の顔には嬉しさも垣間見える。轟からしてみれば友達の名前を呼べるようになるだけなんだがな……
『友達』か……それだけ轟にとって俺は良くも悪くも大切な『友達』ってわけか。『友達』……ね。
「佐藤くん? やっぱり嫌?」
「あ? 悪い大丈夫だ。じゃあ呼ぶぞ」
またネガティブになりかけたが今は目の前の事に集中しよう。そうすれば──
「八千代」
『友達』かもしれんが一歩進んだ友達になれるかもしれないじゃないか。
「はい、潤くん」
「あれ? 八千代さん、さとーさんどうしたの? 二人とも顔が真っ赤だよ?」
「な、なんでもないのよぽぷらちゃん。ね、潤くん?」
「…………ソーデスネ」
「あー! 八千代さん、さとーさんを名前で呼んでる! 仲良いんだね! さとーさん、私も名前で呼んでいい?」
「種島、俺を名前で呼ぶと背が縮むぞ」
「えっ、だって八千代さんは? ……きゃーやめてよさとーさん髪いぢらないでよー」
この先、この呼び方に慣れる日がくるのだろうか。でも今は取り合えず──
「それでね潤くん、杏子さんがね……」
惚気話もあまり苦にならんところは有り難いな。
おまけ
「(宗太くんってよんでみたいなーでも無理だよね……治ってきたとは言え、付き合っているわけじゃないし名前を呼ぶなんて)」
「伊波さん、伊波さん」
「(でもでも、いつかは手を繋いでデート中に宗太くんって呼んでみたりして! きゃー!)」
「伊波さん? おかしいですよ? 大丈夫ですか?」
「えっ? あ、何、かな、そうたく……」
「そう……?」
「そ、そ、そう……そうだ! 14卓にお冷注ぎに行ってこなきゃ!」
「14卓は男性客ですよ?」
「え、あのえっと……ごめんなさい!」
「やっぱ殴られるんですね!!」
おまけ2
「足立くん。下の名前で呼んでくれないかしら」
「えっあの、どういうことかな?」
「私達付き合ってるんだし、それくらい普通だと思うんだけど。高校生に感化された足立くん」
「ちょ、それはやめてよ。わかったから」
「じゃあお願い。まさか名前を知らないなんて事ないわよね? 着替えようとしてもなかなか出ていってくれなかった足立くん」
「もうやめてください……名前もきちんと覚えてるから!」
「じゃ、改めてお願い」
「…………さゆりさん」
「…………」
「あ、やめてドライアイスは流石にまずいから! 照れてるの!? 嬉しいの!? 恥ずかしいの!?」
「うるさい無理やりキスした正広くんうるさい」
「そっちも名前で呼ん冷たい痛い痛い!」
2010年05月14日(金) 00:24:11 Modified by kakakagefun