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カプチーノさゆりver

 いつものようにあなたはわたしを車で家まで送り届けてくれる。
あなたは饒舌なタイプじゃないから、車の中は沈黙に支配される。
それがイヤなのかあなたはカーオーディオのスイッチを入れる。
FMラジオから流れてくる音楽に合わせてわたしは今日の一日を振り返る。

『あと少しあたしの成長を待って あなたを夢中にさせたくて
藻掻くあたしを可愛がってね』

 ねぇ…いつもあたしのいたずらにつきあってくれてありがとう。
フードに雪を入れても苦笑して許してくれるあなた…小学生みたいと
言われるかも知れないけど、からかい甲斐があるあなただからこそ、
わたしはあなたにイタズラするのよ…わかってる? でも、あなたは
いつも苦笑いでおしまい…あなたはわたしをなんだと思っているの?
あなたは意識していないかも知れないけど…そこがちょっぴり歯がゆいの。
でもね…わたしも最近あなたにどう触れたらいいかわからなくなってきているの。



『今度逢う時はコートも要らないと そんなに普通に云えちゃうのが理解らない
 ・・・
 ミルクの白に茶色が負けている』


 バレンタインのお返し…そう言う名目で画材の買い出しにつきあってくれるあなた。
なんだかんだ理由をつけて誘っているのはわたしの方なのに、きちんと
つきあってくれるのは、やっぱりうれしいの。暖冬のせいか最近暖かくなってきた。
「もうコートもいらないかもね」
あなたはそう気軽に言うけども、それって今度またわたしとお出かけして
くれると言うこと? 言質を取った訳じゃないけど、期待していいのかしら?
なんだかいつもと逆でわたしが振り回されているようでくやしい。どんな
お返しをしてあげようかしらん?
「足立君…」
「何? 村主さん」
「コーヒーにミルクを注いだときにミルクの白色が思い人のイニシャルを描くって言うわね」
「そうなんだ…でも、俺はブラック派だからなぁ」
「そう…じゃ、わたしはミルクを入れて試してみるね」


『コーヒーの匂いを間に挟んで 優位の笑みを隠し切れない様子で居る
 ・・・
 苦いだけじゃ未だ中庸が取れない』

 注文した飲み物が届いた。あなたにあわせてせっかくだからカプチーノを
頼んでみた。さっき言ったとおりミルクを入れてみる。
「これは…」
「Mか…ハートかしらね」
 あなたはあきれた顔をしている。悪い? わたしだって女の子なのよ。
少しは夢を見せてくれたって…くやしいからコーヒーをかき混ぜてみた。
ミルクが溶けて淡い色になる。それから一口飲んでみた。苦さに顔をしかめる。
「ほら…やっぱ無理だったんじゃない?」
あなたが苦笑いする。なんだか『おまえにはカプチーノはまだ早い』と言われているようで
くやしい。さっきもそうだけど、今日はなぜかあなたにリードされているような気がする。
まるでこのカプチーノのように、いつものわたしたちの関係が壊れそうで怖い。



『梅の散る午後にもちゃんと二人は 今日と同じ様に人混みを
擦り抜けられるかしら
それぞれが只忙しくして居たら
引く手の加減も曖昧に 忘れちゃいそうで不安なのに』

 喫茶店を出て歩行者天国を歩く。休日の昼下がりはさすがに人出が多い。
わたしが手をそっと差し出すと、あなたは遠慮がちに手を握ってくる。
普通逆じゃないかしら? でも暖かい…やっぱり男の子の手だ。

 あなたはわたしの半歩前を行く。あなた自身の性格かも知れないけど、
道の真ん中を行くというよりも、人混みをさけてひらりひらりと人を交わしていく感じ。
そんなところが自己主張の少ないあなたらしくて好き…でも、あなたはいつまで
わたしの手を引いてくれるのかしら? おじいさんおばあさんになっても
引いてくれるの?

「あっ」
つい歩道の割れ目につまずいて倒れそうになった。
「大丈夫? 村主さん」
あなたはあわててたずねてくる。
「大丈夫よ…でもね」
「でも?」
言えるもんですか…今日のあなたはいつもより歩幅が大きいなんて…
そのおかげでわたしがついていくのがやっとだなんて…それくらい男の子の
方から気づいてくれなきゃ…わたしが黙ったのを見てあなたはわたしから
視線を逸らす。意気地なし。


『あなたが此処に居る約束など 1つも交わして居ない
何時の間にか淡色が当たり前に香り 二人を支配しそう』

 あなたの左手とわたしの右手…そしてわたしは半歩後ろをあなたに引かれるの。
いつもこのポジションは決まっている。いつの間にか…そういつの間にか決まった
わたしたちのこの位置。あなたにとってわたしは何? 職場の同僚? 女友達?
それとも? きちんと約束した訳じゃないのに今まで護られてきたこのバランス。
いつ崩れるかわからないから怖い。でも、いつまでも続いていきそうな気がする。
さっきのカプチーノじゃないけど、曖昧な関係がこのまま続くのかしら。


『誰よりもあたしをちゃんと見透かして
口の悪さや強がりは’精一杯’の証拠だって』


 ねぇ…あなたはいつまでおびえた瞳を見せるのかしら。わたしはこんなにも
あなたに惹かれているというのに。そうでしょう? わたしが笑顔を見せるのも
あなただけ…イタズラをするのも、チクチクっといじめるのもあなただけなのに…
でもね、これもあなたの気持ちをわたしに向けるため…だってしょうがないじゃない。
男の人とおつきあいをしたことがないんだから、どうやってアプローチしたらいいかも
知らないんだし…でも、あなたはいつになったら気づいてくれるのかしら?




『何よりもあなたに逢って触れたいの 全て味わって確かめて
イーブンな関係に成りたい
変わりゆくあたしの温度を許して
もし我が儘が過ぎてても 黙って置いて行ったりしないでね』

 夕方になるとさすがに冷たい風が吹いてくる。
「本格的に冷える前に帰ろう」
そう言ってあなたはわたしを車の助手席に押し込む。残念…あなたの首筋から
暖をとる口実がなくなっちゃった。でも…いつもは人とコミニュケーションを
とるのを嫌がるあなたがわたしの買い物につきあってくれる。これって、
わたしとあなたが特別な関係と考えていいのかしら? わたしはあなたに触れて、
あなたの温かみを感じたいの。あなたはどうなの? わたしに触れるときも
かなり遠慮がちだけど、もっと大胆に来てくれてもいいのよ?

 口では言えないけど、もっとわたしのことを知って。わたしもあなたのことを知りたい。
ねぇ…いつも思うんだけど、結局のところ、あなたはいつもわたしをうまくあしらって
いるのよね…だってわたしはあなたの本質なんかつかんでいないんだもの。
いつの日か、半歩後ろでなく、あなたの隣を堂々と歩きたい。だからこそ、
これからもあなたにいろいろと仕掛けて、あなたの本質を暴き出してやるんだから。
覚悟してね。でも…それはあなたの目から見たらわたしのわがままに見えるかも知れない。
ううん。違うの。これもすべてあなたを深く知るため…というかあなたの堅いガードを
解くために必要なこと。だからあなたがすべてをさらけ出すまでつきあってもらうからね。

 「最近の村主さん…なんだか…」
そう言ってあなたは黙り込む。ズルいわね…言い出して黙るなんて。でもうれしいな。
少しはわたしのことを意識してくれているんだ。最近のわたしね…そう。これは娘から
大人の女に変わる上で仕方がないことなの。だからわたしはきっとこれからも
あなたを振り回す。お願いだからきちんと受け止めてね。わたしを振り払ったり
しないでね。もし…そんなことをしたら、後が怖いんだよ? わかっていると思うけど。

「それじゃ、村主さん。またあした」
車の窓を開けてあなたはそう言う。
「足立君。今日はありがとう。また明日ね」
わたしはそうこたえる。同時にあなたは車のアクセルを踏む。遠ざかるあなたの影を
わたしは見送る。ねぇ足立君。いつになったらわたしのベクトルとあなたのベクトルが
交差するのかしら? わたしはいつでも待っているのに。わたしだけが努力するんじゃなくて、
あなたも努力して欲しいな…

 家での夕食後にもう一度カプチーノにチャレンジする。ミルクを入れてみると、
ミルクの白色が水面に字を描く。M…かな? それから…これはA?

 そのままかき混ぜることなく口を付ける
「苦い…」
足立君…そうこの複雑な味はあなたそのものよね…ううん。あなたの前では素直に
なれないわたしそのものでもある…そう考えながらもう一度口にした。
2007年03月06日(火) 00:31:31 Modified by kakakagefun




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