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神への願い


この世にいると思われる神様

俺は、今まで生きてきてそこまで神様に頼みごとをしたことなんかねえ

せいぜい家族で初詣に行き「今年ものんびりできますよーに」とかが最高だ

だからよ。今更「願いを叶えろ」とか命令形で言ったりはしねえ

大体、悪いのはハッキリしねえ俺じゃねえか

アイツは悪くない。アイツは極めて純心。ピュアだピュア

 ・・・でもよ・・・

宝くじの1等賞当選者とかに幸福与えるくらい太っ腹ならさあ

 ・・・一握りの幸せくらいくれねえかな?



「今日はさみいな」

レストランの窓から覗く真っ暗な空を見て呟いた。
もう少しで俺の仕事は終わり、着替えてとっとと帰ることになるだろう。
しかし、正直北海道の冬は堪える。もちろん、それ相応の厚着はしてきたんだが。
 ・・・それにしてもいいバイトだ。
そんなに忙しくもないのにちゃんと金は入る。ダベってても何をしていても関係無し。

 アイツも見れるしな


「そうだね。雪でも降るかな」

「困るな。無駄に寒い」

俺は基本的に歩いて帰る。
雪でも降られたら濡れるし寒いしでいいことなんか何一つねえ。
      • いや、あるにはあるが、確実にそんなシチュエーションに恵まれることはねえだろう。
俺はそういう方向ではとことん、本当にとことんツキが向かない。

「ま、なんとかなるんじゃないかな。・・・そろそろあがり?」
「おう。そうだな・・・じゃ、お疲れー」
「お疲れ」

後ろを見ずに顔の横で手を振り、更衣室へと向かった。



「やっぱり寒い」

ファミレスから出てすぐに出た言葉がそれだった。
吐く息は真っ白だし、首や手などがどんどん冷えていくのが分かる。
幸い雪は降っていないが、全く星が見えないのを見ると十分心配する必要がありそうだ。

「走って帰るか・・・」

そう呟き歩き出そうとした時、ファミレスの自動ドアが開く音がした。

何気なく振り向くと、そこにいたのは我がファミレスのチーフだった。

 ・・・いや、その前に俺の想い人でもあるんだがな。

「佐藤君。今帰り?」
「お前もか」

お前もか、というか・・・シフトは決まっているのだからこの返答はおかしい。
しかし、俺は基本的にパッパと着替えを済ませ、あまり周りを見ずに帰るため、今までここで出くわしたことはない。
それに、コイツは自分の仕事を終わっても店長に付きっ切りでなかなかでてこないからな。
今日は少し考えごとをしながら着替えたため、普段より遅れたから会えたのというのもあるだろう。
      • 今思えば、毎回こんぐらいの時間で帰ればよかった。と邪な考えが浮かんだ。

「ええ。今日は寒いわね」
「ああ・・・おまけに暗い」
「これだけ暗いと不安になるわね・・・」
「・・・ああ」

その言葉を聞いて、俺は少し考えてしまった。
勝手な妄想なわけだが、そのセリフが「送ってくれない?」に聞こえなくもなかったからだ。
      • うん、改めて考えたが、完全な妄想だな。学生か俺。いや、大学生だけどよ。

「・・・送るか?」

しかし、俺の口を動かす脳は妄想で確定してしまったのかそんな事を言ってしまう。
どうしよう。もの凄く恥ずかしい。帰りたい。あ、これから帰るんだ。
反応によってはもの凄くブルーな気分にもなってしまうため、彼女の顔を見ることもできない。

「・・・お願いしようかしら」

      • うぉーい予想外の展開?
まず喜ぶとか以前に俺のこの心臓が鳴り続けて破裂しないかどうかの心配が先な気がする。
彼女をチラリと見ると、こっちを見ながらニッコリと微笑んでいる。
そしてまた視線を逸らす。顔が赤いのが知られると恥ずかしい。

「・・・じゃ、行くか。どっちだ」
「こっち」
「・・・同じ方向か。行くぞ」

      • あーあ、我ながらそっけない反応。
自分で自分が嫌になる。どうにかなんねえのかねこの性格。
後ろから、慌てて駆け出す足音が聞こえて振り向いた。
彼女は先ほどと変わらない笑顔で俺のほんの少し後ろを歩いている。
それだけで相当可愛らしくて俺は視線を前に戻した。



ダメだ。この短時間で俺の心臓の鼓動は相当な速さへと変化している。
一緒に帰るだけでこんな反応・・・本当に中学生みたいだな。
歩き出してまだ数分だが、この時間が俺には凄い長い時間に感じられた。

 ・・・コイツはどう思っているんだろうな。

「なあ轟」
「何? 佐藤君」
「・・・誰かと一緒に帰ると安心するか?」

俺と、という言葉はあえて省いた。
さすがにそこまで言うと感づかれる気がする。


「ええ。・・・特に佐藤君は信頼できるから」

「・・・そうか」

あー。今結構死んでもいいくらい幸せだった。
心の中の俺は今ガッツポーズをとりまくっていることだろう。
あれ、何心の中とか言っているんだろうな。壊れてきたか俺。

「ねえ佐藤君」

「何だ?」

「私と歩いていて楽しい?」

今飲み物を口に含んでいたら間違いなく吐いている衝撃が襲い掛かる。
何だ、先ほどの攻撃の反撃か。意外と攻撃型か。うわ、何か俺おかしくないか?

「楽しいといわれると少し困るがな・・・。一人で帰るよりはずっといいな」

「私も。やっぱり一人だと心細いもの」

 ・・・こんな俺でも頼りにされるのか。

先ほどの壊れた脳内暴走に比べて、思考がぼんやりしているのは気のせいではない。
なんだか・・・ここまでうまくいっていると信じられなくなる。

俺の見解としては、この状況は最高にいいシチュエーションであって、彼女も微笑みを絶やさない。
ハタから見れば、カップルにしか見えないのかもしれない、と思うくらいだ。

夢なら覚めないでほしい。今までの事から考えると、今の状況は幸せすぎるんだから。
もしかしたら、今のこの瞬間が、俺とコイツとの一番いい状況なのかもしれない。
卑屈な考えだが・・・あながち間違いでもないはずだ。

「本当に今日は寒いわね・・・」

「あ、ああ・・・そうだな」



ずっと考え事をしていたので少し動揺してしまった。
確かに・・・俺はずっと恥ずかしさや嬉しさで暖かいのだが、彼女にとってはかなりキツイはずだ。

「・・・雪?」

目の前に白い粒が落ちてきたので呟いた。
空を見上げると、幾つもの綺麗な雪が降り始めていた。
外灯の明りを雪が吸い込んで、とても綺麗に見えた。

 ・・・へえ、このシチュエーションに俺が遭遇できるとはねえ。

ファミレスの中で、絶対に経験することが無いだろうと思われた事態に、俺はぼんやりと空を見続けていた。

「雪・・・寒いわけね」

彼女の声が少し沈んでいる気がしたので、勇気を出して顔を見た。

よほど寒いのか、頬は紅潮し、手袋もしていない手も赤くかじかんでいる。
両手を口の前に運び、ゆっくりと吐息を吹きかけていた。
更によく見ると、肩がふるふると震えている。

「大丈夫か?」

「え? だ、大丈夫。平気よ?」

「・・・手真っ赤じゃねえか」

さすがに、寒そうな彼女を見ると、自分のくだらない考えなんかどうでもよくなっていた。
俺が見る限り、彼女は相当寒そうだから。
彼女にはどう見えているのかは分からないが、俺は心配して・・・





 彼女の手を自分の手で包んだ






 自分がした行為がどのような事かを認識したのは、数秒経ってからだった。


え・・・心配していたからって、俺は何をやっている?
俺は今・・・何を包んでいる?
      • 何をしている?

恥ずかしいとかそういう考えはなく、とにかく思考回路がショートしそうだった。
無意識にやってしまっただけにタチが悪い。何をしていいのか、何を喋ればいいのか全く分からない。

このまま、無理矢理手を放して逃げるというのも手だった。
彼女がどう思っているか分からない。とりあえず、この場から逃げ出したいと思う。

よく考えてみれば、好きでもない男にいきなり手を握られたんだ。
俺は男だが、女としてはそれがどれほど嫌なことなのか。
そして、俺はそれを現在進行形でしている。

最低だ。自分の心の底の欲望が、この行動を生んだ。



いや、考えてみれば、いい機会だ。

いくら俺でも、成就することが無い恋愛をいつまでも続けられる自信は無い。

ならば・・・いっそ拒絶してもらえば吹っ切れる。
彼女を想う気持ちを完全に振り払うことができる。

それがどれだけ辛いことかは考えられない。

俺は最低な事をやったんだ。当然の報いだ。


頼む。拒絶してくれ。この手を振り切ってくれ。
そうすれば、俺は解放される。ハッキリしないまま、他の恋を見つけられない自分から。





でも、これも最低な考えだと思った。
いきなり心に真っ黒な闇が落ちて来た気がした。

自分の気持ちも伝えず、勝手にあれこれ考えて、勝手に恋を諦めている。
そんなの、彼女をちゃんと想っていないということだ。
勝手に一人で考えこんで、自分の気持ちすら裏切っている。
こんな風に想うなら、最初から好きになんじゃねえクソが。自分をそう叱りたい。

(どうすりゃいいんだよ・・・!!!)

涙が出そうだった。
どうしていいか、分からなくなった。

寒空の中、俺一人だけが取り残されている気分だ。

助けてくれ。誰でもいい。来てくれ。

そうすれば、手を放して言い訳をして誤魔化して、何とか前の関係のままでいられるかもしれない。

まだ彼女を愛せるのかもしれない。


小鳥遊、伊波、種島、店長、音尾のおっさん、相馬、山田!







「あったかい」




その言葉がしばらくの間理解できなかった。
何秒かしてから、俺は彼女の顔を見た。

その顔はほんのりと紅潮している。それが寒さ以外が原因なのかどうかは、俺には分からなかった。
多分、俺の顔は笑っちゃうくらいに唖然としていると思う。

とりあえず、そんなぼんやりとした思考の中で理解できたことは、彼女は俺の手を振り切ったりはせず、そのまま俺に微笑んでいるということ。


「凄くあったかい。佐藤君の手」

気のせいか、先ほどよりも頬を赤くして・・・彼女は俺に最高の笑顔を見せてくれた。


気づけば、振り続ける雪は、彼女を包んでいる俺自身の手に少し積もっていた。



 ・・・冷たさなど、全く感じないが





この世にいると思われる神様

ありがとう。幸せをくれて。いや、マジで感謝してる

これから初詣もしっかりやるよ。実家に帰ったら神棚も掃除するよ

だからさ・・・頼む、もう1つだけ願いを聞いてくれ

ガキの頃から普通、1度は願うことだと思うけど、俺は願ったことねえから

だから、今この願いを叶えてくれ




時間を、止めてくれ








2007年05月19日(土) 01:12:53 Modified by kakakagefun




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