ポータブル編成

広くは、VRMユーザーのWeb/blogからダウンロードして利用することの出来る、スクリプトによる各種ギミック組み込み済みのVRM4用の編成ファイルがこう呼ばれる。狭くは、ghost作“ポータブル編成ギミック一発組み込み”スクロールを組み込んだ編成ファイルのこと。

定義

“ポータブル編成”はghostによる造語で、概ね以下の特徴を備えた編成ファイルを指す。
  1. 各種ライトの消点灯やパンタグラフ昇降、方向幕変更などのギミックがスクリプトによって組み込まれている。
  2. ギミックをキー操作によって制御することができる。
  3. レイアウト上のすべての編成に同じキー操作が割り当てられる。
  4. キー操作は、その時点で選択されているアクティブな編成に対してのみ有効となる。
  5. 編成ファイルをレイアウトに組み込む際、レイアウト側も編成側もスクリプトを修正する必要がない。
  6. 以上の機能すべてを編成/車両スクリプトのみで実現している。
上記の特徴を備えることにより、この編成ファイルは、そこに含まれる車両がインストール済みのVRM環境であれば、どんなレイアウトに対しても“持ち運んで=portable”遊ぶことが出来る。これがポータブル編成の名前の由来である。
現時点で、スクロールとしてこの特徴を実現しているのは、後述する“ポータブル編成ギミック一発組み込み”のみである。なお、ポータブル編成の概念自体は実装を問わないため、必ずしもスクロールである必要はない(スクリプトを手書きして上記定義を満たした編成ファイルもポータブル編成と言える)。

誤用

厳密に言うと、以下のような編成ファイルはポータブル編成とは呼べないが、VRMユーザーの間ではこれらも含めてポータブル編成と呼ぶ習慣が見られる。
    • 画像リソースによるユーザー独自の方向幕やヘッドマークが設定された編成ファイル(キー操作によるギミックがない)。
    • キーイベントが固定的に割り当てられた編成ファイル(レイアウト上に同種の編成ファイルを展開するとキー操作が重複する)。
    • レイアウトへの編成読み込みに際し、レイアウトへ何らかのスクリプトの記述を必要とする(自由に持ち運べない)。

ポータブル編成の入手方法と楽しみ方

以下のWeb/blogで、ポータブル編成の作例をダウンロードすることが出来る。(順不同)
http://www31.tok2.com/home2/tetsudougazou/VRM4PORT...
http://caldia.tuzikaze.com/v4portable/port00.html
http://members.jcom.home.ne.jp/yy-nkt/portable.htm...
http://kinokuni-station.sakura.ne.jp/ptatrain/inde...
http://tetudoumania.hp.infoseek.co.jp/reiauto2.htm
http://www.geocities.jp/colleda50_azusa/
http://tenhama.at.webry.info/
http://suchacool.seesaa.net/category/1456514-1.htm...
http://ntvosaka.cocolog-nifty.com/blog/2007/01/vse...
http://www.geocities.jp/tokyu5112f/trainfile.htm
http://animekodama.rakurakuhp.net/i_376731.htm

ダウンロードしたポータブル編成の使い方

  1. 上掲のWeb等から、ポータブル編成ファイルを含むアーカイブをダウンロードする。
  2. アーカイブファイル(lzhやzip)を展開し、ポータブル編成ファイルを取り出す。
  3. VRMレイアウトに適当な長さのレールを敷いてから、編成部品を配置する。
  4. 編成部品を右クリックしてポップアップメニューの中から〔編成エディター〕を選び、編成エディターを開く。
  5. 〔ファイル再生〕をクリックすると、ファイルダイアログが開くので、2.で取り出したポータブル編成ファイルを選ぶ。
  6. 編成と編成名が表示されれば読み込み完了。

ポータブル編成にまつわるFAQ

車両が表示されない

“車両”は編成ファイルには含まれてません。車両は、それが収録されているVRM製品パッケージを買わないと手に入りません。たとえば、キハ82系のポータブル編成を楽しむには、お手元のPCにVRM4第4号がインストール済みである必要があります。

ビュワーが起動できない

ポータブル編成に限らず、VRMビュワーを起動するには編成に含まれる車両を並べるのに十分な長さの線路が必要です。長さが足りなかったり、途中にバリアブルレールやポイントレールがあると、エラーレポートが表示されてビュワーが起動できません。

方向幕が切り替わらない

複数パターンの方向幕画像リソースが組み込まれていないポータブル編成では、[Shift]+[c]キーを押しても方向幕は切り替わりません。

キー操作が効かない

ポータブル編成のギミックを使うには、まずその編成を選択しアクティブな状態にする必要があります。

編成の組み方や方向幕の表示が間違っている

ポータブル編成の作者に教えてあげてください、喧嘩にならない程度の配慮を添えて。

編成エディターの〔進行方向反転〕にチェックを入れたら、画像リソースの割り当てがおかしくなった

ポータブル編成ギミック一発組み込み(広くはGetCarNumber命令で車両に割り当てる画像リソースIDを算出しているすべてのスクリプト)は、進行方向反転には対応していません。ビュワー起動後に[HOME]キーを押して方向転換してください。

ポータブル編成ギミック一発組み込み

ポータブル編成の定義を満たす編成ファイルを作成するためのVRM4用スクロール。事実上、編成ファイルをインターネットで配布するVRMユーザーの間では標準規格として通用している。

機能

スクロールの組み込みだけで利用できるもの

    • 各種ライト消点灯、パンタグラフ昇降のキーによる操作。[Shift]+[z]が点灯&パンタグラフ上げ、[Shift]+[x]が消灯&パンタグラフ下げに割り当てられる。
    • ライト消点灯とパンタグラフ昇降に時間差を設けることができる。たとえば、[Shift]+[z]キーを押した場合、まずパンタグラフが上がって、少し間を空けて各種ライトが点灯する。
    • [Shift]+[x]の消灯に連動して、車両のアイドリング音が消音される。
    • パンタグラフを2つ装備する車両でのどちらか一方のパンタグラフの昇降。点灯状態で[Shift]+[z]キーを押すことで、スクロール組み込み時に選択した側のパンタグラフが昇降する。
    • 入換識別標識灯の消点灯。[Shift]+[v]キーが割り当てられる。
    • 編成の切り離し。この機能はスクロール組み込み時に有効/無効を選択できる。[Shift]+[v]キーが割り当てられ、有効時は入換識別標識灯の点灯が連動する。

画像リソースを別途用意することで利用できるもの

    • 形式番号、方向幕などの画像リソースの車両への自動割り当て。編成に含まれる車両の数だけの画像リソースが必要。
    • 方向幕のパターン切替。編成に含まれる車両の数×切替パターン数の画像リソースが必要。[Shift]+[c]が操作に割り当てられる。
    • LED式方向幕装置の日英表記交互表示。編成に含まれる車両の数×2+1の画像リソースが必要。方向幕パターン切替との併用も可能。

スクロールの入手方法

下記URLからダウンロードできる。過去バージョンも公開されているが、最新版の利用が推奨される。
http://www.nodus.ne.jp/ghost/vrm/ptrain/download.h...

スクロールの利用方法

ダウンロードできるアーカイブに必要最低限のreadmeが付属するが、より詳細な利用方法については下記URLのオンライン組み込みマニュアルを参照されたい。
http://www.nodus.ne.jp/ghost/vrm/ptrain/manual.htm...

ポータブル編成の歴史

ポータブル編成は、VRM4.0.1.x時代(2005年前半)に端を発し、それ以降、複数のVRMユーザーによる提言、試行を経て確立されていった。メーカー主導ではなく、ユーザー主導で成立した標準規格としては初であり、また最も顕著な成功例とも言える。

VRM4の所有パッケージ差異によるビュワー起動不能問題

Tatsuo氏(http://www5b.biglobe.ne.jp/~taturitu/vrm_001.htm)により問題提起された。
要約すると以下の通り。
    • それぞれのユーザーが所有しているVRMパッケージは異なる。
    • 自分が持っていないパッケージ収録の部品にスクリプトが組み込まれたレイアウトファイルは、スクリプトエラーが原因でビュワーの起動すら出来ない場合がある。
オリジナル発言の抜粋とその意義については、以下のURLに詳しい。
http://silver.ap.teacup.com/ghost/950.html

編成間のギミック共通化問題

深鈴由羽氏(http://mwn.jp/vrm3/index.html)が、I.MAGiCスクリプト会議室メッセージNo.38にて提起した問題。
要約すると以下の通り。
    • レイアウト上に存在する複数の編成に共通する操作キーを割り当てたい。たとえば、どの編成もLキーを押すとライトが点灯する等。
    • 編成に組み込むギミックは、可能な限り編成側で定義したい。これにより、最小限の手間で編成ファイルを他のレイアウトへ持ち込むことを可能にする。

編成スクリプト標準化試案

上記の問題提起は、VRM3時代に盛んであった編成ファイルのネット上での公開が、方向幕の変更機能が実装されたにも関わらずVRM4初期において盛り上がらなかった原因について、的を射たものであった。
これらの問題への対策として、ghostによる以下の試案が提出された。
http://www.nodus.ne.jp/ghost/vrm/tec-ex3.html
この論考の中には、後の「ポータブル編成ギミック一発組み込み」につながる以下のアイデアが含まれている。
    • 編成のアクティブ化/非アクティブ化に連動してキーイベントを設定/解除すること。
    • 編成ファイルのレイアウト間の持ち運びの便を図るため、レイアウト側でポイント操作等に利用される可能性の低いキー(Shift同時押しを伴うキー)を編成ギミックに割り当てること。

VRM4.0.2.0での改善

VRM4.0.1.xまでは、編成のアクティブ化/非アクティブ化をスクリプト側で直接知る方法が提供されていなかった。
VRM4.0.2.0よりSetEventFocusIn/SetEventFocusOut命令が実装され、編成スクリプト標準化試案では強引な実装となっていたキーイベントの設定/解除が容易になった。
      • ただし、この時点ではSetEventFocusInイベントがビュワー起動時のアクティブ編成で発生しない=ビュワーを起動した瞬間にどの編成がアクティブであるかは、スクリプト命令だけでは知ることができない、という制約があった。これが足枷となり、ポータブル編成が、真にポータブル編成(一切スクリプトをいじらなくても、どのレイアウトにも組み込める)となるには、この問題が改善されたVRM4.0.5.0を待たねばならなかった。
同じくVRM4.0.2.0より、スクリプトウィザード(スクロール)機能が実装された。これにより、スクリプトに関する十分なスキルを持たないVRMユーザーであっても、スクロールを利用することで後に「ポータブル編成」と呼ばれることになる編成ファイルを容易に作ることが可能となった。

鉄道模型シミュレーター4エキスパートガイドにおけるポータブル編成

VRM4.0.2.x時代に執筆された『鉄道模型シミュレーター4エキスパートガイド』(工学社、2006年)に、初のポータブル編成の定義を満たした編成ファイルが収録された。
http://www.kohgakusha.co.jp/books/detail/4-7775-11...
ただし、この時点では「ポータブル編成」という用語は未登場で、スクリプトはすべて手書きされた(スクロール化されていない)。また、紹介意図も、独自画像リソースを組み込んだ編成作りの唱導に軸足があり、後のポータブル編成とは若干異なるものとなっている。
なお、同書付録CD-ROM所収の「スクリプトの教科書」に、ポータブル編成のスクリプト技術解説が収められている。

ポータブル編成ギミック一発組み込みβ(1)版のリリース

2006年2月26日に、ポータブル編成を簡易に作成することが出来るスクロール「ポータブル編成ギミック一発組み込み」がghostによってリリースされた。
http://silver.ap.teacup.com/ghost/498.html
その応用作をいち早く公開したのはtoukaidou211氏(http://wave.ap.teacup.com/futeiki/9.html)であり、これはスクロールリリース当日のことで、文字通りの最速記録である。

その後のバージョンアップ履歴

以降、ポータブル編成ギミック一発組み込みは、試用したVRMユーザーからのフィードバックを受けて数度のバージョンアップを重ねている。主なものを以下にしめす。

片昇降パンタグラフ選択機能(β2より)

天狗亭氏(http://blue.ap.teacup.com/tengutei/)の発案による。
経緯は下記URLに詳しい。
http://silver.ap.teacup.com/ghost/540.html

ライト・パンタグラフ時間差動作機能(β2より)

和樹氏のよるVRMスクリプト会議室メッセージNo.222の発言による。

電源オフ停車時消音機能(β3より)

moko氏(http://plaza.rakuten.co.jp/hsmini/)他の発案による。
経緯は下記URLに詳しい。
http://silver.ap.teacup.com/ghost/723.html

スクリプトの軽量化(β3Lite)

toukaidou211氏によるVRMのバグ報告(編成ファイルのスクリプト+画像リソース収容量に未知の制約があった)に対応すべく、利用率の低い機能を削除した軽量版が作成された。
経緯は下記URLに詳しい。
http://silver.ap.teacup.com/ghost/962.html
なお、このバグはVRM4.0.6.0で解決している。

派生の話題

ポータブル編成ギミック一発組み込みへの機能追加

「ポータブル編成ギミック一発組み込み」は、VRM4が有しているすべての機能を使い切ることよりも、その組み込み=オリジナル画像リソースとギミックを含む編成ファイル、を簡単に作れること、を優先した設計となっている。この弱点を補う以下の手法が公開されている。

貫通路付き先頭車の幌の制御

幌を付ける方法と、編成切り離しに連動して幌を消す方法が下記URLにて紹介されている。
http://silver.ap.teacup.com/ghost/708.html

室内灯の常時消灯

寝台列車牽引機関車の室内灯のみを、常に消灯しておく方法が下記URLにて紹介されている。
http://silver.ap.teacup.com/ghost/919.html

m4g/1.0サウンドギミック拡張

「ポータブル編成ギミック一発組み込み」の音声リソース版、と言うべきスクロール集。
ポータブル編成ギミック一発組み込みと併用できる他、以下の特徴を有するが、その組み込みがポータブル編成ギミック一発組み込みほど容易ではないため、あまり活用されていない。
  1. スクリプトをまったく書かずに、オリジナルの音声リソースを編成に組み込むことができ、かつ、編成ファイルとしてのポータブル性が確保される。
  2. 低速/高速の二段階であった走行音に、出発・停車の走行音が加わる。
  3. 力行(加速中)/惰行(定速走行、トラコンモードではゆるやかな減速を伴う)/制動(減速中)の走行音をそれぞれ設定することが可能。
  4. 背景音も同様に力行/惰行/制動に応じて切り替えることが可能。
  5. 低速/高速や、力行/惰行/制動の音声切替の際の唐突な音の変化の違和感を和らげるために、警笛音を利用した瞬間的な効果音を自動的に発声することが可能。
  6. 走行中にもコンプレッサーをランダム発声することが可能。
  7. ビュワーによる手動操作(通常/トラコンの両モード)はもちろん、スクリプトによる自動運転にも対応。
スクロールは以下のURLからダウンロード可能。
http://www.nodus.ne.jp/ghost/vrm/m4g_sound/downloa...
利用方法等は下記URLから詳細なマニュアル/リファレンスが参照できる。
http://www.nodus.ne.jp/ghost/vrm/m4g_sound/index.h...

連結でガチャンッ

編成連結時の連結器衝動音を再現するスクロール。
ポータブル編成ギミック一発組み込みと併用できる。
入手は下記URLから。
http://silver.ap.teacup.com/ghost/921.html

方向幕切替センサー

編成が通過したタイミングで、自動的にポータブル編成の方向幕(厳密には画像リソース)を切り替えるセンサーを作ることができるスクロール。
入手は下記URLから。
http://silver.ap.teacup.com/ghost/1229.html
2008年02月29日(金) 22:14:52 Modified by ID:+D27K/+DtQ




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