たなえり小ネタ集 #02
最終更新：ID:9ziMhbsmAg 2013年02月28日(木) 17:57:43履歴
←#01
(40-269)
ﾉdc ’∀’)从*・ ｡.・） !! (｀ヮ ´*bヽ
「おっさゆ！ってあれ？後ろの子誰？」
「道重さんのお知り合いの方ですね？中等部3年の石田と申します！」
「3年って事はフクちゃんと同じか。で、なんでさゆと一緒におると？」
「なんかこの子さゆみの事が好きみたいなの」
「ちょっ道重さん/// そんなハッキリと///」
「ふーん、世の中には物好きな男もおるもんやね〜ｗ」
「どういう意味なのそれぇ？！もうっ絵里に言いつけてやるの！」iPhoneｺﾞｿｺﾞｿ
「あのぉ…道重さん、それなんですか？」
「iPhoneだけど？知らない？」
「はい…携帯電話は知ってますが…」自分のを見せる石田君
「（うわっ古いの…モノ持ちがいいのかそれともビンｂ…）」
「おっ、懐かしいの持っとるんやねぇｗ」
「懐かしいんですか……あ、ところで道重さんのえっと…アイフォン？
どこを探してもボタンがありませんけど、どう使うんですか？」
「どうって、こう画面を指で…」
「あぁっ駄目ですよ！触ったら指紋ついちゃいますって！」
「「は…？」」
「あ〜あ、ちょっと付いちゃった…ﾌｷﾌｷ…はい、綺麗になりましたよ☆」
「うん…ありがとう…」
「なんかまた面白い子が増えたっちゃね…」
「ん？ん？」
「そんな事より、さゆ昼飯食った？」
「まだだけどこれから学食行く予定なの」
「じゃあ俺も一緒に行くｗ今日はとんこつラーメンな気分なんよｗ」
「あっそ。あ、だーいし君はどうする？」
「僕は弁当がありますけどご一緒させて欲しいですっ！」
「（白くて小さくて女顔で…何かれーなみたいだけど、案外グイグイ系なんだｗ） うん、じゃあ行こうっか」
「到着〜。うぁ〜結構混んどうね」
「だったら僕、先行って席確保しておきますねっ！」ﾋﾟｭｰ
「お〜もう行っちゃった。なんか真面目な子やね〜」
「そこも可愛いじゃん。あ、そんなことより早く食券買うの！れーなのせいで列になってるから」
「お、おうっ！」
「道重さ〜ん！田中さ〜ん！こっちでーす！」
「席取っててくれてありがとう、あゆみん♪」
「そんなあ、あゆみんだなんてっ…照れますっ///」
「さーゆ、あんまだーいし君で遊ぶなってｗ」
「待ってくださいっ！！！」 ﾊﾞﾝｯ!!
「へ？なんか俺悪いこと言ったと？」
「た、田中さん…そのラーメンなんですかぁ？！」
「ん？とんこつチャーシューメンやけど？」
「チャーシューが…1、2、3、4、5、6…ろ、6枚も乗ってるじゃないですか！」
「うん…それがどうかしたと？」
「どうもこうもないですよ！田中さんの家って、もしかして『セレブ』ってやつですか？！」
「いや、ふつーの家やけど…」
「そんなわけないですよ！…って、道重さんそ、そそそそれはぁ！？」
「女の子らしくないけど今日はカツカレーなの♪それがどうかした？」
「か、カレーライスの上に…と、トンカツが･･･なんだ？祭りか？祭りなのか？！」
「だーいし君？」「あゆみん？」
「チャーシューメン…カツカレー…都会は恐ろしい所じゃあ…」ﾜﾅﾜﾅ
「「………」」
その後、ラーメンとカレーをガン見しながら塩むすびとたくあんを食べるだーいし君に
二人が少し分けてあげたところ、そのおいしさのあまり校内を10周ほど駆け回ったそうです。
びんぼーネタでごめんよｗ小ネタ おわり
(40-333)
「も〜〜、じれったいの！」
「はぁ？」
放課後、教室で雑談していたときのこと、みちしげ君はガタンと立ち上がった。
いままでケータイでなにかのサイトを見ていたみちしげ君の突然の行動に、れいなもかめい君も一瞬ポカンとする。
「あの初々しさはｷｭﾝｷｭﾝするの！だけどとにかくさゆみも行くしかないの！」
「……何処に？」
「じゃ、さゆみ、行くから！」
「だから何処に？！」
れいなとかめい君とツッコミをよそに、みちしげ君はカバン片手に教室を飛び出した。
彼が見ていたサイトが某巨大掲示板の某スレッドであることなど、もちろんふたりは知る由もない。
「若、お気をつけて……」
ちなみに、廊下の柱の陰に、黒い服にサングラスをかけた人物がいたことも、ふたりは知らない。
・・・
譜久村聖君は放課後、カバンをふたつ持って屋上へと立ち寄った。
ひとつは自分のものだが、もうひとつの持ち主は同じクラスの生田衣梨奈のものだった。
彼女は日直の仕事があり、日誌を書いたり、掃除をしたりしている。
聖はそんな彼女と一緒に帰るために此処で待っている。
「なんかいっつも此処にいるなぁ」
空をぼんやりと見ながら、聖はそう呟いた。
燻った聖の想いとは裏腹に、此処から見上げる空はいつも青くて澄んでいる。
初夏を感じさせる熱い太陽と白い雲が浮かび、世界を綺麗に染めている。
空を見ていると、自分の悩みなんて小さいものに思えてくるのだけれど、それでも聖は未だに悩んでいる。
―「えりぽんさ、昔のこと、覚えてる？」
―「あんま覚えとらんとよねー。小学校の入学式とかは覚えてるっちゃけど」
先日の会話をぼんやりと思い出した。
衣梨奈はあの頃の記憶を恐らくを覚えていない。
確かに、物覚えはお互いに良い方ではないし、成績だってクラスで中間地点に位置するふたりなのだけれど、
そのときのことは、なんとなく覚えていてほしかったなぁと思う。
それがずいぶん、自分勝手なことだということは、聖だって承知の上なのだけれど。
「王子様なんて、古臭いよなぁ……」
「だがそれがイイの！！！」
急に開いた扉とともに飛び込んできた声に聖はビクッと肩を上げた。
振り返るとそこには、聖が何処かで見たことのあるようなないような人が立っている。
「キターーーーなの！！！久しぶりのこっちなの！！」
ひとりで楽しそうにはしゃぐその人を聖は訝しげに見る。
長い黒髪をひとつに結び、可愛い制服を着たその人は、高等部の道重さゆみ先輩によく似ている。
それもそのはず、彼は夢世界を飛び越えてやって来たみちしげさゆみ君その人だった。
もちろん、そんな彼の存在を、聖は知らないのであるが。
「道重さん……？」
そう声に出してみたが、聖はなにか、違和感を覚える。
あの楽しそうに笑う表情、くるくる回る仕草、いまにも「今日もさゆみは可愛いの」と言いそうな唇、
確かにそれらはすべて道重さゆみに似ているが、なにか、なにかがおかしい気がする。
「だれ……？」
頭に浮かんだ疑問を口に出すと、その人はくるりと聖に向き直り、ずんずんと近づいてきた。
大股で歩くそのさまは女の子のかけらもない。
「そんなのどうでもいいの」
「全然良くないですよね」
「王子様は黙って衣梨奈姫を守るの！」
その名前を言われて聖は押し黙った。
どうして彼女のことを知っているのだろう？やはりこの人は道重さんなのか？それにしては雰囲気が微妙に違う…
なにが違うのか、分かりにくいのだけれど、なにかがおかしい。
「早くしないと、れいな君に取られちゃうの。それでもいいの？」
「そ、それは……」
聖の鼻の前にぐいと人差し指を突きだし、その人は言葉を続ける。
「まーれいな君は確かにモテるし、さゆみだっていっぱいいろんなことしたいくらいなの。
もう、ガーってやって、バーってして、それからシャーってして、それからそれから……」
ひとりで鼻息を荒くし興奮しながらジェスチャー交じりに説明するみちしげ君を見ながら聖は眉を顰める。
なんだか段々話がそれていっているようなと思いながらも、この状況はどうしたものかと思う。
目の前にいる人物はだれか分からないし、急に現れて「衣梨奈姫を守れ」なんて言われてもどうして良いのか分からない。
「とにかく、告白するの！」
再び聖の前に人差し指を突きだしてみちしげ君はそう言った。
聖は「はぁ」とため息をつき、どうしてみんな簡単に「告白」なんて言うのだろうと肩を落とした。
「それができれば、こうして悩まないですよ…」
先日会った絵里もそんなことを言っていた。
女の子は待っているのだと。
だけど、彼女が自分の想いを待っているなんて確証はない。
というよりも、衣梨奈がれいなを好きだというのは、見ていてなんとなく分かる。
小さい頃から知っていて、同じ屋根の下で暮らしているのだから、好きになっても当然といえば当然だけど。
そんな彼女に告白して、玉砕して、いまの関係が崩れてしまうのは、イヤだった。
「どっちの世界でもみんなヘタレなの…グイグイ肉食系は絵里と石田君と鞘師君くらいなの」
やれやれと言いたげにみちしげ君は腕を広げてため息をつく。
いったいなんの話をしているのだろうと思うが、聖は一瞬「待てよ」と思う。
いま、目の前にいるその人は、「絵里」「石田君」と聖の知っている名前を出した。
そこまでだったら、この人が高等部の道重さゆみだと信じるところだった。
だが、最後に言った「鞘師君」とはだれだ？
確かに中等部にも「鞘師」はいるが、それは可愛らしい女の子だ。
中等部の鞘師里保にも弟がいるが、6歳年下らしく、とても肉食系とは程遠いのではないか。
鞘師なんて名字、日本に12世帯しかないらしいが、さゆみがその12世帯のうちの他の「鞘師」を知っているというのだろうか。
自分は、「譜久村」の名字は鞘師よりも多いはずなのに、親戚以外で一度も会ったことがないというのに。
「だいじょうぶなの。どうせ両想いだから」
ひとりぐるぐると頭を悩ませる聖をよそに、みちしげ君は話を進めた。
聖はぐしゃりと前髪をかきあげながら「なんの話ですか」と切り返した。
すると、ぐいとみちしげ君は聖に顔を寄せる。その距離はあまりにも近くて聖は思わず腰を反らす。
彼の顔立ちはまさにさゆみそのもので綺麗だった。大きな瞳、仄かに染まった頬、整った鼻筋、控えめな唇。
みちしげ君の放つ「女の子モード」に、聖はクラリと反応し、思わず胸が高鳴った。
「やっぱ聖君もカッコいいの……」
「はっ？！」
「れいな君みたいな白くて可愛い子も好きだけど、聖君みたいな端正でカッコいい子も好きなの」
屋上を風が吹きぬけ、みちしげ君の長い髪が揺れる。
ふわりと香る不思議な匂いにやられたように、聖君は生唾を呑み込んだ。
憧れの存在である絵里や、世界でいちばん大好きな衣梨奈とはまた違う魅力を感じた。
鼓動がうるさくなっていく。なぜだか一歩も動けない。体が震える。
それが緊張なのか、それとも、身の危険を感じているのかは、判別できない。
「みーずーきぃぃ〜、終わったっちゃよ〜！」
金縛りを解いたのは、衣梨奈の威勢の良い声と屋上の扉が開く音だった。
みちしげ君越しに見つめた彼女の表情が一瞬にして曇ったのを見た聖君はさーっと血の気が引いた。
「み、み、聖……」
「あ、ちょ、待って、違うから！違うっていうか、なんでもないから！」
「ちっ……邪魔が入ったの」
みちしげ君のセリフに「僕の恋の応援してたんじゃないのか！」と思ったがさすがに口には出さない。
そうこうしている間にも、衣梨奈はスカートをぎゅうと握り締め、唇を噛み、体を震わせる。
「亀井さんだけじゃなく…他の人も好きだったなんて……」
「だから違うって！この人は全然知らな」
「衣梨奈、日直終わらせてすぐ来たのに……」
「えりぽん落ち着いて！ホントに僕は」
「聖のバカぁぁ！もう知らんちゃぁぁ！！！」
聖の言い分を一切聞かず、衣梨奈は踵を返して走り出した。
「待ってえりぽん！」
聖は目の前にいるみちしげ君を勢いよく引っぺがしたかと思うと、カバンを持って彼女のあとを追いかけた。
脚の速さなら彼女の方に分があるが、それでも聖は必死になって追いかけた。
「あーあ、あと少しだったのに…」
尻もちをついたみちしげ君は制服の埃を払うと、屋上からグラウンドを見た。
すると、しばらくしてから泣きながら走る衣梨奈と、息を切らしながら必死で追いかける聖の姿を認めた。
「ま、青春ってこんなもんなの」
そうして笑ったみちしげ君は鼻歌交じりに屋上を降りていく。
もうそろそろ自分の世界へ帰ろうかと思っていたが、帰り際に田中れいな君に挨拶していこうと階段を駆け降りた。
みちしげ君の荒っぽいアドバイス たなえりPONPON小ネタ 終わり
(40-712)
満員電車の圧迫感が好き、という人間は珍しい。
亀井絵里はその珍しい部類の人間のようだ。
今日も絵里は眠い目をこすって高校へ行くために、この満員電車に乗っている。
「ふへぇ…今日も多いねぇ」
そんな独り言を漏らしながら絵里は電車に揺られる。
いつもいっしょに登校するれいな君はといえば、今朝起きるなり、腰が立たないなどと言いだした。
「絵里……激しすぎ」
そうやって照れたように彼は呟いたが、どうも本当に腰が痛くて起きられなかったらしい。
そろそろ出席日数も足りなくなるので遅刻してでも行くとは話していたが、果たしてちゃんと来るのかは疑問だった。
腰の立たない情けない恋人……ではなく、友だち以上恋人未満の彼を置き去りに、絵里はひとりで登校していた。
ガタンゴトンと電車は揺れながら目的地へと走る。
絵里の高校までは此処から30分程度。
乗客は駅を通り過ぎるたびに順調に増えていき、高校に着くころには乗車率は200%にでもなっているのではないかと絵里は思った。
実際、いまの乗車率がどれくらいかは知らないが、身動きがとれないほどであるのは事実だった。
いくら圧迫が好きとはいえ、息苦しさは耐えきれない。
絵里は「ふぅ」とひとつ息を吐き、電車の天井を見上げた。新鮮な空気はなかなか吸えそうにない。
と、そのときだった。
絵里は自分の腰のまわりに感じたその“手”にピクリと反応した。
嫌な予感がした絵里は、ほんの少しだけ体を動かし、その感覚から逃れた。
それも束の間、その感覚は再び絵里にまとわりついて来た。
ああ、完全に痴漢だと絵里は肩を落とした。
電車通学を始めて以来、痴漢に遭うことは多々あった。
好きでもない女性の尻や胸を触ってなにが楽しいというのだろう。
こっちだって、好きでもない人間から触られて楽しいことなどなにもない。
嫌悪感しか抱かないのだが、彼らはそういう反応が好きなのだろうか。
―もー……朝から最悪…
とりあえず見えない相手と距離を取るように体を揺すってみる。
いちどは手は離れるが、ほんの数秒ほどするとまた手は戻ってきて、絵里に触れる。
スカートの上から触れていた手は、そのうち中へ入ってこようとするが、それは避けようと絵里は自分の手で振り払う。
―諦めてくんないかなぁ…絵里そーゆー趣味はないんですけど
見えない相手にそう愚痴を零すが、一向にその手は止まらない。
いちどは離れても再びやってくるその手に、絵里は段々と怒りを覚える。
振り返って「痴漢です」と叫んでやろうかこのクソ親父と思っているのも束の間、手は絵里の太股に触れた。
そのまま舐めるようにずるずると上がっていく感触に絵里の怒りは頂点に達した。
絵里は自分の手で思いっきり振り払おうとしたときだった。
―え？
自らの手はしっかりと掴まれ、身動きが取れなくなった。
振り払おうとしてもその手は相手に掴まれたままどうすることもできない。
あまり派手に動くこともできずにいると、男は鼻息を荒くしたままもう片方の手を絵里のスカートの中へ入れる。
絵里はその行為に怒りを通り越して吐き気を催しそうになった。
いい加減にしろよこのクソ親父と負のオーラを漂わせる。
か弱い女の子を封じて、陰でベタベタ触ってなにが楽しいんだと眉を顰めた。
絵里はその逞しい脚で、思い切りこのふざけたハゲ親父の水虫の足を踏んでやろうと決めた。
果たして相手がハゲていて水虫であるかは定かではないが、絵里は盛大に溜め息をつき、軽く脚を持ち上げた。
そのとき、電車はカーブにさしかかり、ガタンと大きく傾いた。
吊皮を持っていなかった絵里の体は大きく揺れ、そのまま前のめりになる。
絵里の体を這っていた男と絵里との間に少しの隙間ができた瞬間だった。
フワリと優しく、絵里の体はなにかに包まれた。
「だいじょうぶですか、亀井さん」
小声でそう低く呟いた彼の声を、絵里はよく知っていた。
彼は絵里の腹部に優しく手を伸ばして彼女の体を支えている。
思わず振り返ろうとしたのも束の間、彼は絵里の奪われた手を男から解放させた。
彼が男を黙って睨みつけると、彼のその瞳に圧倒されたのか、男は舌打ちをし、目を逸らした。
すぐに電車は駅に滑り込み、大勢の乗客は我先にと降りていき、絵里を触っていた男も、その流れに乗って消えていった。
「……もう、だいじょうぶですよ、亀井さん」
そうして彼はそっと絵里から離れた。
絵里が振り向くと、そこにはやはり、中等部の譜久村聖君が立っていた。
「聖君……どうして？」
「えーっと…僕も同じ電車だったんで」
「じゃなくて、なんで気付いたの？」
絵里の言葉の真意を噛み砕いた聖君は「あぁ」と呟いたあと、吊革につかまった。
電車は再び動き出す。
「たまたま亀井さんを見つけたんですけど、なんか様子がおかしかったんで……すぐ後ろにあのオッサンがいたんで、察しはつきました」
聖君の言葉に絵里は仄かに赤く染まった頬を手で扇いだ。
様子がおかしかったとはどういう状況だったのだろうとボンヤリ思う。
あのときの絵里は、そのオッサンへの怒りに溢れ、思いっきり脚を踏んでやろうという気しかなかったのだが。
殺気に満ちた目を見られなかったら良いなとと絵里は苦笑した。
「ごめん、心配、かけちゃったね」
「いえ、僕こそすみません、もう少し、早く気付いていれば…」
「聖君が謝ることないのに」
そうして絵里がまた笑おうとしたのも束の間、絵里の体は震え出した。
「あれ？」と声に出すが、震えは止まらない。自分でも気付かない内に、恐怖を感じていたのだろうかと絵里は思う。
いままでなんども痴漢には遭ってきたが、慣れることはないんだなと漸く気付いた。
「亀井さん……」
聖君はそんな絵里に気付いたのか、その肩にそっと触れ、引き寄せた。
絵里の体はなんの抵抗もなく聖君にもたれかかる形になった。
「駅まで、支えてますから……」
そうして小声で呟いた彼に、絵里は離れることもできずにただ黙って頷いた。
聖君の胸は広くて、いまごろ部屋で唸っているれいな君とは随分違うんだなと、絵里はぼんやりと思った。
「ごめん、助かったよ」
駅から高校へ歩く道すがら、絵里は聖君にそう言った。
聖君は不安そうに絵里を見つめるが、絵里は努めて明るく「平気へーき」と笑ってみせた。
実際、電車内で聖君に支えられていたため、絵里は随分と落ち着いていた。
「いーなぁ、えりぽんは」
「へ？」
「こんなしっかりしてカッコいい聖君から愛されてさー」
そうしておどけて言う絵里に対し、聖君の顔は真っ赤に染まった。
どうも彼は褒められるのには慣れていないらしいと絵里は解釈した。
しかし実際のところ、憧れの女性である絵里から褒められて照れているのだということに、当人の絵里は気付いていない。
「羨ましいなぁ」
そうして絵里は笑って前を向いた。
絵里のその表情は相変わらず綺麗で、聖君はやはりドキッとしてしまう。
それと同時に、大切な人の一大事に、れいな君はなにをしているのだろうと、彼への不信感が募る。
どうして絵里は、あの人のことがあんなにも好きなのか、聖君はいよいよ理解に苦しんだ。
「聖君は、絵里の王子様でしたよ？」
瞬間に聞こえたその声に、聖君はハッと顔を上げる。
隣で微笑むその人は、まるで聖君のことを分かっていたかのようにその言葉を出した。
その瞳はまるで、「だから、だいじょうぶですよ」と伝えているような気がした。
いったいなにが、どうだいじょうぶなのかは判別できないくせに、聖君は自然とそう解釈した。
「きっと、えりぽんにとっても、そうだと思うけど？」
やはり、見透かされていると聖君は直感した。
絵里に対して、衣梨奈と聖君の過去の話をしたことはいちどもない。
いちどもないくせに、絵里はすべてを知っている気がした。
その理由は分からないけれど、なんとなく、そう思った。
「僕は……」
聖君がなにかを言いかけ、学校の校門まであと数歩というときだった。
ふたりの向こうから歩いてきたその人物は、生田衣梨奈その人だった。
「あ……」
衣梨奈は聖君と、その隣に歩いていた絵里の顔を交互に見たかと思うと、下唇を噛み、靴箱へと走っていった。
ああ、なんでこうもタイミングが悪いんだと聖君は頭を抱えた。
「行け、王子様！」
すると、隣にいた絵里はそう笑って聖君の背中をドンと押した。
思わず聖君の体は数歩前に出るが、絵里は気にせずに笑顔で手を振る。
「だいじょうぶ。たぶん、いましかないよ？」
絵里の言葉は随分とテキトーで軽いものだった。
だけど、そう伝える彼女の瞳はやっぱり真剣なもので、聖君は有無を言わさない力を感じた。
結局、この人には敵わないと聖君は思う。
絵里にそんなこと言われてしまったら、なんとなく、それしか答えがないような気がしてしまうから。
「亀井さんも…」
「うん？」
「言えると良いですね、王子様に」
そうして精一杯の強がりを口にして、聖君は走り出した。
いつもタイミングが悪くて、勘違いばかりしてしまう、おてんばなお姫様に、伝えるために。
自分の素直で真っ直ぐな想いを、なんとか伝えようと聖君は走り出した。
「いやぁ……それは難しいんですよ、聖君」
そうして絵里は寂しそうに呟いて歩き出すと、後方からうるさい足音と「えーりぃぃ！」という声が聞こえてきた。
「あーーー、追いついた………」
絵里が眉を顰めていると、すぐ隣には息を切らしてペタンコなカバンを手にしているれいな君がいた。
髪の毛もボサボサだし、制服だってぐちゃぐちゃだ。
「れーな、腰だいじょうぶなの？」
「アホっ……こんな場所で言うな…」
そうしてれいな君は上がった息を整える。
お盛んなことを理由にサボるのは許さんと父親に一発殴られたら治りました、とは言えず、れいな君は体をぐっと伸ばした。
「ほれ、行くっちゃよ」
そうしてれいな君は我が物顔で絵里の数歩先を歩く。
まったく、随分と身勝手な男だなと絵里は苦笑しながらも、彼の隣を黙って歩いた。
その頬はいつの間にか緩んでいて、朝の出来事を忘れてしまうほどだった。
結局のところ、この人はやっぱり、自分にとっての王子様なんだろうかと、絵里は楽しそうに笑った。
王子様と告白と たなえりPONPON小ネタ おわり
(41.1-180)
「ふぎゃっ」
れいな君は今夜も、愛しのえりりんからベッドから蹴落とされてしまった。
彼女のこの寝相の悪さはいかんともしがたい。
はぁと溜め息をつき、よいしょとベッドに上がると、窓を風が叩いた。
「た、台風なんて怖くないけんね……」
そう言いつつも声は震えている。
関東の台風は九州・沖縄と比べて比較的勢力は小さい。
しかし、雨風に打たれて音を立てる窓は怖い。特に午前3時のいまは。
「……にゃっ」
れいな君はベッドに上がると絵里の胸元にするりと滑り込む。
絵里の柔らかな胸に顔を埋め、シアワセそうな顔をしながら目を閉じた。
台風であろうと、彼女といっしょの空間にいれば怖くなんかない。
そうしてれいな君は温もりを感じながら夢の世界へと泳いでいった。
「んんー……れーなぁ…」
そんな彼女の寝言を、れいな君は夢の入口で聞いたような気がした。
たなえり保全小ネタ おわり
(41.1-242)
学校帰りにカラオケにやって来た聖君とえりぽん
大好きなアイドルの曲を歌って盛り上がります
「次なんにするとかいな〜♪」
サイドの髪を耳にかけて、えりぽんはリモコンをタッチペンでカチカチ操作します
えりぽんの綺麗な首筋に目がいき、聖君はゴクリ、と喉を鳴らします
手を伸ばして近づいて、えりぽんの耳の辺りにキスをしました
「なーん？聖のえっち〜」
えりぽんは楽しそうにケラケラ笑います
聖君はえりぽんを抱き寄せて今度は彼女の唇を指で触れ、自分のを重ねようとします
ﾉﾘ*´ｰ´ﾘ＜でも、そうはならなかった！妄想乙！
ﾉd�鵝� _l｀)ﾘﾎﾁｬﾝ…
聖君放課後のカラオケデート妄想小ネタ保全
(41.1-495)
,--ノハヽ---､ ZZZzzz… / ﾉﾉ*´ｰ｀) ./ ./ _／⌒ヽ､_つ/ 〜 .γ⌒'ヽ_ / （_,,.--､__.,ノ / 〜 i ミ（二i ./ (_,（_ﾉ .,/ 丶,,_| |ﾉ ｀￣￣￣￣￣ . r-.! !-､
496 名前：名無し募集中。。。[] 投稿日：2012/06/26(火) 12:30:36.91 O
夏のお昼寝かい？
497 名前：名無し募集中。。。[] 投稿日：2012/06/26(火) 12:46:54.82 0
ﾉd；｀ -´) ｳｰﾝ…
そろそろ教室に戻らないといけないのにえりりんの寝顔が可愛すぎて起こせないれいなに君
498 名前：名無し募集中。。。[] 投稿日：2012/06/26(火) 13:09:17.49 O
ﾉﾉ*´ｰ｀) れーにゃぁ…zzZ
ﾉd*´ -｀) ……たまにはいっか
ということで一緒にお昼寝
499 名前：名無し募集中。。。[] 投稿日：2012/06/26(火) 13:17:58.10 0
ﾋﾟｯﾀﾘ♥
∋o ノハヽ ノハヽ---､ ZZZzzz… ﾉd*´ -ﾉﾉ*´ｰ｀) ./ ﾉ つ／⌒ヽ､_つ/ 〜 .γ⌒'ヽ_ ( （_,,.--､__.,ノ / 〜 i ミ（二i ｀(_ﾉ_ﾉ(_,（_ﾉ .,/ 丶,,_| |ﾉ ｀￣￣￣￣￣ . r-.! !-､
(41.1-783)
ある放課後、聖くんは何となく屋上に上がり、中庭を見下ろしていました
中庭では、中等部の女の子が数人、鬼ごっこをしてるようです
（あ、えりぽんだ）
えりぽんもキャーキャー言いながら、走り回っています
（元気だなあ）
聖くんが目を細めて見ていると、
「あ、みーずきー！」
聖くんに気付いたえりぽんがぶんぶん手を振ります
聖くんも小さくひらひら振り返してると、
「あ！」
えりぽんは普通に鬼にタッチされました
聖くんがクスクス笑ってるのを見て、
「笑うな〜！バカ聖！」
えりぽんは少し赤くなって、ブンブン腕を振って叫びました
梅雨の晴れ間保全
(41.1-815)
「ちょ、も〜」
強風で制服のスカートがめくれ、えりぽんは慌てて押さえました
「（真っ赤な地に後ろに大きなドクロプリントって…）」
現場に居合わせた聖くんは、えりぽんのあまりにも派手なパンツに、見れてトクしたようなそうでないような、微妙な気持ちになりました
「聖、見た？」
えりぽんがちょっと睨みつつ上目遣いで言うと、聖くんはふるふると首を振ります
一方、シゲくんはかめーくんの次くらいに好きな田中くんに会いに、勝手にこちらの世界に来てました
（あ、道重さんだ）
普通にこちらの世界のさゆみん（♀）だと思い、聖くんが声を掛けようとすると
「キャ、イヤーン！」
強風でシゲくんのスカートがめくれ、丸見えになりました
「（は、しまった！さゆみ今日、ノーパンだったの！）」
シゲくんがひとり照れる一方、女性の道重さん（と思ってる）に本来ついてないものがついてるのを見てしまい、聖くんは
ﾉd�鵝� _l゜）
かなり遠くに旅立ちました
ﾉd�鵝� _l゜）ﾐﾁｼｹﾞｻﾝﾆﾅｾﾞﾐﾁｼｹﾞｻﾝﾆﾅｾﾞｱﾝﾅﾐﾁｼｹﾞｻﾝｶﾞｷｮｺﾝﾐﾁｼｹﾞｻﾝﾆﾀﾏﾐﾁｼｹﾞｻﾝｶﾞﾃﾞｶﾁﾝﾐﾁｼｹﾞｻﾝｶﾞ
「聖？みずきーーー！？」
えりぽんは慌てて旅立った聖くんの肩を揺すりました
ﾉd*≧ 。.・)ｂ＜みんなもお出かけの時はパンツ履き忘れちゃダメだゾ☆ テヘ☆ペロ 保全
(41.1-830)
学校帰りの電車内
聖君と衣梨奈ちゃんは仲良く下校しています。
運良く座れた２人は他愛もない話をしながら最寄り駅までの時間を潰します。
「明日はモーニング娘。の50枚目の発売日だからさ」
「うん………」
「えりぽんも一緒に買いに行かない？」
「んー………」
「えりぽん？」
途中、会話が途切れたかと思うと、衣梨奈ちゃんは規則的な寝息を立てていました。
聖君はそんな彼女に優しく微笑みながら本を読み始めます。
するとそのうち衣梨奈ちゃんはコテッと聖君の肩に寄り掛かりました。
よっぽど疲れて眠いのか衣梨奈ちゃんは全く起きる気配もありません。
聖君は彼女の寝顔をそっと見つめます。
―可愛いなぁ………
少しだけ長い髪が流れ、頬はほんのり赤く染まっています。
唇はぷるんと潤い、柔らかく光っています。
聖君はキョロキョロと周囲を見回しますが、同じ車両にはだれもいません。
高鳴る鼓動を感じながら、聖君はそっと、衣梨奈ちゃんの唇に自分のを重ねようとしました。
「――――次は………前。………前。お出口は…」
瞬間、聞こえてきた車内アナウンスにバッと離れると衣梨奈ちゃんが起きました。
「あれー……寝てたとー？」
「あ、うん、そう。次、降りなきゃ」
聖君は慌ててカバンを持ち立ち上がりました。
２人がイチャイチャするにはもう少し時間が必要みたいです。
電車のふたり―――聖君とえりぽん保全
ﾉd*・ ｡.・）｡oO(早くキスしてエッチすればいいの…)
と、ノーパンのみちしげ君が近くで実況しているのはまた別のお話ですｗ
おわれｗ
(41.1-974)たなえりとPONPONの里帰り
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