【スレ00009の0665さん作】
流れぶったぎりますが>>498の続きを作ってしまいました。よろしければどうぞ
内容・中間中国18禁
注意・陵辱、流血、暴力、キャラの病み、闇化、愛は…一応あり
以上に嫌悪感を示される方は、どうぞ閲覧をご遠慮くださいますよう
お願い申し上げます。

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   灰は灰に 塵は塵に



 狭く暗い部屋の中、微かな灯火が二つの人影を照らし出す。窮屈そうにベッドの上で絡み合う一組の男女。男は女に
覆いかぶさりぴったりと体を重ね、決して激しくはせず、時々思い出したように動くに留まる。その度に、まだ少女と言える
女の口から短く切なげな悲鳴が上がった。
 それだけを見れば、仲睦まじい恋人達が二人の時が去るのを惜しむ一心でわざと時間をかけ愛し合っているかのようだった。
 少女の長く緋色に輝く髪は汗でその肌に張り付き、幼さの残る風貌とは裏腹な肉体の豊満さを強調している。そしてその体を
良く見れば男が爪を立てるほど強く握り締める少女の手首には濃い痣が、首筋には血の滲んだ噛み跡が数箇所、うっすらと
見て取れた。
 注意深く観察すれば他にも少女の白い肌には幾つかの打撲痕や小さな火傷がある。そしてどうやってついたのか、足の裏には
無数の切り傷があった。中にはひどく深いものも見受けられる。いずれも治りかけたものばかりではあるが。
 程なくして男は力任せに少女の手首を掴んでいた手の力を緩めた。否、力を緩めたのは少女のほうだ。これ以上反抗の
しようがないことを理解し、少女は四肢の力を抜いた。
だから男もまた、彼女を押さえつけていたその手を離したのだ。

 男の唇の端に僅かに自分の血が着いているのを少女は見た。それを拭いもせずに彼は少女の首筋に軽く口付け、両手を
ベッドにつき上半身だけを起こす。そして青灰色の目で眼下の少女を見下ろしてきた。少女はといえば乾きかけた涙の跡も
そのままに、ただ黙って顔を横に背けせめてもの反意を示した。
 いや、それだけではない。彼女はこの時その身を硬く強張らせた。…知っているのだ。抵抗を完全にやめた事を受け、これから
男が行うであろう苛烈な責めを。
 少女の唇が戦慄(わなな)く。律することのできない恐怖の記憶がよみがえり、止まりかけていた涙が再び次から次へと溢れ出る。
僅かな間に冷や汗が背に滲むと火照っているはずの肉体に悪寒が走った。
堪えきれず少女は許しを請う視線を男へと遠慮がちに向けた。そしてすぐに彼女は自らの行いを後悔した。暗さに慣れた目は、
それをはっきりと捉えてしまったのだ。
 氷のように無表情な男の青灰色の瞳と、その奥に冷酷な愉悦の光を灯る瞬間を。



 広々とした吹き抜けのあるオフィスビルのロビーを一人の男が歩いていた。褐色の肌をテーラードジャケットとタートルネックの
インナーにスラックスといったシンプルな衣服で包み、短めの銀髪を無造作に後ろに流した一見して会社員風の男。しかし、
良く見れば服では隠し切れない隆々とした体躯と、何よりも両目の傷跡が堅気ではないと思わせた。男の名前は、クリザリッド01。
『ネスツ』の幹部の一人である。彼は今工業都市の中心にあるこの一般企業の自社ビルを装ったネスツ施設に設けられた
専用の執務室へと向かっていた。今夜中に別の研究施設にヘリで5時間ほどかけて移動し、翌日は査察、以降はデータ取りの
予定となっている。だからその前に承認待ちの書類の決裁と、行き先の施設から既に送られているデータに目を通して
おきたかった。現時刻は既に18時を回っている。遅くとも19時には出発したかった。帰路につく部下とすれ違うたび軽い挨拶を
交わし、自室につくと電子ロックを解除して部屋に入る。彼は端末の前に着くとそれを立ち上げまずは決済処理、続けて報告書
の確認作業を始めた。一応確認、という程度ではあったので特に目新しい情報もなく、淡々とクリザリッドは膨大なデータの
中から必要な数値、報告のみを目で拾い上げていく。
 ほぼ機械的な作業を延々繰り返すと思いきや、ある一点にクリザリッドの視線が落ちた。

 Hong Meirin

 紅美鈴…この名前だけは、どうしても簡単に素通りできない。紅魔館の門番。鮮やかな緋色の髪を長く伸ばした少女…
考え込みそうになって頭を振り、とりあえずいつもどおりにデータに目をやる。以前にも思ったことだが、この女の最大の特徴は
繰り出される攻撃よりも傷の治りの早さだった。採取した細胞の活動や臨床実験で今回も驚異的な回復、結果を見せる。
先天的なものか、それとも『気』の力によるものかはまだはっきりとしていないが、これが応用できれば次世代改造兵士の
戦力の底上げにつながるのは間違いない。思いがけず拾い物をしたものだ。
 それにしても、と、クリザリッドは再度美鈴の名前を見やる。ごく僅かに早まる動悸を覚えつつ、クリザリッドは手を額に当てて
少しだけうつむいた。後悔、自責、罪悪感…この女に関する記憶と共に心に広がるのは、こうしたネガティブな感情ばかりだった。
2ヶ月前に彼女を拉致してから3週間の間同じ施設に属し、それから美鈴はより設備の整った研究所へ移送、自分はそれとまた
別にこの施設…というより地方に出向した。よってすっかり疎遠ではあったのだが、何らかの書類によってクリザリッドが美鈴の
名前を目にすることは少なくはない。
 同じ施設にいた間、クリザリッドは何度か実験体に対しては不適切な行動を取った…はっきりといってしまえば、美鈴を犯した。
実験体を不要に傷めつけたたというだけでなく、大の男が少女に乱暴を働くのは倫理(そもそも実験体という時点で倫理を
語るのはナンセンスで、『生まれてから今まで生きた年月』ならばおそらく彼女のほうが上だが)に悖(もと)る。
 きっかけは彼女に憐れみをかけられたことにある。

――こんなところに閉じ込められて人としての幸せも知らない…貴方は可哀想な人形だわ

 ネスツに属する自分を人形と呼び、憐れんだ。それはつまり見下したということだ。
 だから、犯した。今後反抗的な態度がとれぬよう1度で済ませるつもりだった。しかし無視された。クリザリッド02のことばかり考え、
目の前にいる俺を無視したのだ。
 自分がしてきたことだが、いざやられるなると腹が立つものだなとクリザリッドは自嘲した。今までクローンたちを単なる消耗品
として扱い、各個体の個性にはさほど価値を見出さず人格を無視してきた。その自分もまたクローンだったというのに。
 だからこそ、意固地になっのだ。自分には確かな人格があることを主張したかった。無視するならば、強引にでもこちらを
向かせたかった。結果として力に訴え、泣いて拒み頑なに閉じる少女の体を無理矢理開かせ傷つけた。こちらが傷つけられた
プライド以上に。
 貞操を奪い、散々汚しつくしてやったのだ。本来の目的は達せずとも少しぐらい気が晴れていてもいいだろう。それなのに
依然としてクリザリッドの心の霧は晴れず、むしろ一層暗さを増した。
『最中』はいいのだ。動物的な欲望を剥き出しにして余計なことにとらわれずにいられる。問題なのはその後で、一人になるたび
クリザリッドは頭を抱えた。自分の自制心の無さを痛感するというのもあるが、それよりも辛いのが美鈴の『芯』が折れない事
だった。彼女の意地を砕き、その都度許しの言葉を吐かせても、根底にある心までは侵せなかった。柔軟な強靭さとでも言えば
いいのかわからないが、美鈴がこちらを認める様子はまるで無かった。
 彼女のことを考えると妙に苛立つ。会えば欲望に身を任せたくなる衝動が膨らみ、実際そうしてきた。同じ施設にいてはどうしても
責任者である自分とは会う機会も増える。お互い違う場所に移ると決まったときは心底ほっとしたものだ。

(…ほっとした?)

 いや、違う。確かに心が漣(さざなみ)を立てることもなくなったが、会わねば会わぬである種の焦燥感が胸中を駆け巡る。
「…紅、美鈴」
 思わず自分が彼女のつぶやいていたことにクリザリッドは驚いた。馬鹿馬鹿しい話だ。たかが実験体一人のことをいつまでも
引きずってなどいられない。さっさと次の仕事を片付けなければ。
 その時ふと目にはいったディスプレイの時刻表示を見て、クリザリッドは改めて驚いた。出発の時刻までもう残り10分を
切っている。直に部下が呼びに来るだろう。
 急いで、しかし確実に残りの仕事を消化すると同時に部下から呼び出しの連絡が入る。特に荷物は持たず屋上へリポート
まで上がるとそこには既にヘリがアイドリング状態で待機していた。一見マスコミの取材用ヘリに見えるが、実際は軍用機を
改造したものだ。
 騒音の中ヘリの後部に控えていた部下と2、3軽く言葉を交わしてからそれに乗り込み着席すると、ヘリは間をおかずに
離陸する。クリザリッドは後部座席で腕を組むと目を閉じ貴重な仮眠を取った。もう3日ほどまともに寝ていない。必要なときに
素早く眠り休息をとるのも、大事な任務のうちだ。一度実戦となれば自由に眠ることもできないのだから。ただ、今日はいつもより
寝付くのに時間がかかったが。

 到着まで残り1時間を切ったところでクリザリッドは目を覚ます。眠りながらも働かせていた耳が、緊急、の言葉を拾ったのだ。
素早く眠気を払うとパイロットが報告するより速く通信機を取り、現地の管制と連絡を取る。管制官はこう言ってきた。
「報告いたします。紅美鈴が脱走しました」
 続けて現地の兵士から上がってくる現在地と予想される逃走経路の報告を受け、クリザリッドはパイロットに目的地変更の
命令を出す。少し経路から反れるが通り道のようなものだ。下手に損害を出さずに済むよう、直接自分が出向いたほうが効率は
いいだろう。
「相変わらずじゃじゃ馬だな」
 独り言をつぶやく。パイロットとコ・パイロットには聞こえていたはずだったが、二人は黙って聞き流した。無論この両名も
改造兵士である。先ほど命令を出したときも一切抑揚も面白みも無い返事だけをしてきた。そう、こういうのが人形だ。
俺は…人間だ。

 爆音を上げながらヘリは進路を変え、やがて夜の帳に溶け込み消えた。



 どのくらい走っただろうか?後ろを気にしながら美鈴は山中を走っていた。相変わらず服とは呼べない病院の検査着の様な
衣服。少し腕を動かせば脇から簡単に胸が見えてしまう。行く手を阻む枝を掻き分けながら裸足のままで、茂る草が足に傷を
つけるのには一切構わず美鈴は全力で駆け抜ける。
 正直こんな山の中だったとは誤算だった。外の様子を見る機会は無く、施設を移るときも薬品で眠らされていたのでここがどこ
なのかもまったくわかっていなかった。以前侵入した施設は街中だったのでそんなに田舎ではないとたかをくくっていたが、
冷静に考えれば甘いとしか言いようが無い。おまけに今夜は月まで出ている。満月からほんの少しかけた月、十六夜。
余りにも運が悪い。
 冷静な判断力、思考力はもはや自分には無いと思ったほうがいいかもしれなかった。繰り返される実験が、確かに自分を
蝕んでいるのだ。わけのわからない注射など何度受けただろうか?わざと怪我を負わされたことも少なくない。そのうち指を切断
され、それがくっつくかどうかぐらいはされそうだ。他の人がどうかは知らないが、ネスツの人体実験はおおよそ1週間続けば
3日程度の休息を与えられる。実験は昼夜を問わず行われるので、その際は時間の感覚が狂うが、一度休みになれば規則
正しい生活となるよう管理されるので、今が昼かそれとも夜なのかぐらいの目安はついた。目星どおり首尾よく夜に抜け出す
ことには成功したが…
 月は無慈悲な夜の女王、なんて小説が図書室にあったっけ。と、懐かしさと共に美鈴は思い出す。月は残酷なまでに輝いて
逃亡者である自分の姿を照らし出していた。
 そうしているうちに、ようやくとりあえずの目的地に辿り着いた。アスファルトで覆われた公道。見つかる危険も勿論増えるが、
道沿いに進めばいずれはどこかの町に出る。ネスツといえど、公の場では大胆な行動には出れないはずだ。そのまま美鈴は
道の端を走り始める。
 その時突然、鋭い痛みが足の裏を走った。突然の事に対処しきれず美鈴は前のめりに倒れこむ。転がったまま足元を
見やると誰が捨てたのか、そこには割れた空き瓶の破片が散乱していた。
(注意も散漫か。でもよりによって…最悪だわ)
 自分自身の注意力と運に毒づいて、注意深く美鈴は刺さったままの破片を取り除く。全力で走っていたため破片は奥深く
突き刺さり、血で滑って取り除くのに手間取る。ガラス片に着いた血は月光を受けてぬめぬめと光り、美鈴はそれを忌々しげに
見て投げ捨てた。。小さな破片については、もう無視することにする。追手はすぐそこまで迫っているのだから。
 そしてまた走り始めるも、明らかにその速度は落ちていた。走るたびに足跡には血が混じり、点々と道路の一部を紅く染めた。
余計に速度が落ちるのを承知で、仕方なく美鈴は道路から一旦離れ木々に身を隠しつつ道路に沿って進んだ。さっきまでは
出会っても倒せばいいと思っていたが、足の裏の怪我は戦闘において不利すぎる。運よくやり過ごせればいいけれど、
と美鈴は自分の運の悪さを承知で運任せに逃走を続ける。

 しかしそんな小細工は当然のように通用しなかった。追手の一人、M型改造兵士のセンサーに現在地を捉えられる。それと
一緒にやってきた改造兵士2人、計3人を相手取った戦闘に入る。その最中にも新手が到着しさらに追加で3人との戦いを
余儀なくされてしまった。
 いっそまとめてひきつけて彩光乱舞で吹き飛ばそうかと思ったが、それは既に知られた手の内だった。慎重に攻め込んでくる
改造兵士相手に美鈴は消耗戦を強いられる。追われて段々と山深く入り、囲まれないようにだけは気をつけながらどうにか
各個撃派に成功し息をつき、その場に腰を落とした。
 少し静かになったところで美鈴は気づいた。戦闘中は目の前の相手に注意するのが精一杯だったので聞こえなかった音…
ヘリが接近していることを。
 まさかこんな時間にテレビの取材でもあるまい。はっとして美鈴は倒したM型改造兵士を見やる。この兵士ならば現在地を
知らせるくらいどうということは無いはずだ。あのヘリだけじゃない。まだまだ追手がくると考えるのが自然だ。
(帰りたい…帰らなきゃ…)
 美鈴は地面に座り込んだ状態から立ち上がる。息が切れ体は大量に発汗している。ふと、穏やかな風が吹いた。いつもなら
心地よいと感じたかもしれないが、今の自分にはただ流れた汗を冷やし無情にも体温を奪い去って行くだけのものだった。
晩秋の夜風は、沁みた。
(…逢いたい)
 主に、同僚に、仲間に、友人に…そして…考えて、目頭に熱を覚える。
 心と体を奮い立たせ、ふらふらとどこかおぼつかない足取りで美鈴はその場を離れた。



 機内でバトルスーツに着替えたクリザリッドはM型改造兵士が最後に報告した地点の上空ギリギリにヘリをホバリングさせ、
そこから飛び降りた。木々の間を縫い着地してからまずは現地の兵士の所在を確認する。それはすぐに見つかり、幸いにして
一人だけ意識を保っている兵士がいた。
 その発言と事前に割り出されていた予想逃走経路を元にクリザリッドはゆっくりと周囲に注意を向けつつ先へ進む。走る必要は
無い。紅美鈴が走れる状態でないのはわかりきっているのだから。ここで焦れば、かえって見落とす虞がある。それにヘリの
接近に気づかなかったわけが無い。下手に動かずどこかで息を潜め、この場をやり過ごそうと考えているかもしれない。
 やはりこういうときはM型が便利だなと思う。連中の目なら、多少の障害物など無視して目標を補足できるだろう。かといって
改造手術を受けたくは無いが。
 そのまま進んだところで、木が余り生えていないひらけた場所に出た。身を隠しづらいこの場所にはいないだろうとクリザリッドは
身を翻そうとする。だがその時、闇に慣れた目が偶然地面に埋まった少し大きな石に付着した血を認めた。近くに寄って屈み、
やはり血であることを確かめる。月が出ていなければ、まず間違いなく見落としただろう。木が生えてなく影の少ない場所であった
ことも好都合だった。
 その血痕を追い、より奥へと進む。妙に逸る気持ちを押さえ込み、クリザリッドはより慎重に、気配を殺し足音にも気を遣いつつ
歩いた。
(近いな)
 生き物の、何者かの気配を肌で感じる。おそらくは向こうもこちらに気づいているだろう。

 沈黙は唐突に破られる。突如として視界の端に現れた月明かりに輝く緋色と、その奥から覗く空色の瞳。それらの持ち主である
一人の少女…その両手は胸の前に虹色の『気』を練っている。間髪いれず練り上げられたそれは砲弾の如く襲い掛かってきた。
咄嗟にテュホン・レイジで迎撃するも相殺…むしろかき消され、砲撃の僅かな余波が届いた。
 美鈴はこちらの懐に飛び込んでこようとはせず、中距離程度の位置から息つく間もなく連続で広範囲にクナイのような『弾幕』を
張る。夜の闇と月光が生み出す黒と白銀だけの世界に舞い出でた鮮やかな虹色。こんな場合でなければ、見物したいと思える
ほど息を呑む美しさ。
 彼女はこのような戦法は苦手な筈だ、とクリザリッドは迫る弾幕を紙一重で避けながら冷静に思考する。おそらく接近戦に
持ち込みたくないのだろう。
このまま足止めして機を見て逃げたいのだ。このように単純かつ強引な攻めで勝てるとはまさか考えていないだろうし、現に
美鈴は少しずつこちらと距離をとっている。
 得意の接近戦を避けたい理由…わかりきった話だ。殴り合いで勝てる要素がもはや無く、逃走の成功に一縷の望みをかけて
いるということだ。報告どおり、妙に足をかばった動きをみせる。理由は不明だが負傷しているのだ。踏ん張りがきかねば打撃の
打ち込みもできない。
 怒涛、といっても差し支えないほどの虹色の奔流。しかしすぐに繰り出される弾幕に一瞬のブレが生じたかと思うと、とたんに
質量も弾速も格段に落ち込んだ。やはり、もともと不得手な戦法だったのだ。美鈴の表情に焦りと疲労が浮かんだのが見える。
回避に徹していたクリザリッドはこのチャンスを逃さず多少の弾幕は無視して突進した。これに対処し切れなかった美鈴の
細い胴を掴むと、そのままの勢いで近くの大木にその体を強く打ちつける。肺を圧迫され声にならない悲鳴を美鈴があげた。
それと共に鮮やかな、呼吸器系からと思しき血が唇から微かに漏れる。
 美鈴の鳩尾に手を当て大木に押さえつける力を緩めず、クリザリッドは口を開いた。
「久しぶりだというのに、相変わらず随分な挨拶だな」
 その声に反応し、美鈴が苦痛から閉じていた目を開いてこちらを見てきた。明らかな敵意が見て取れる、鋭い眼光。敵意や
憎悪、殺意に満ちた視線などクリザリッドにとっては日常茶飯事だ。それだというのにこの視線だけは肌に刺さるほど痛く
感じられた。恐怖など感じないのに、どういうわけかたじろいだ。そうした自分の感情の動きに気が行き、自然と腕の力が
緩んでいた。
 気づいたときには遅く、美鈴は器用に大木とクリザリッドの間から抜け出る。逃げながらも後ろ手に先ほどの弾幕を今度は
狭い範囲に飛ばしてきた。その分弾速は上がっており、2、3発ほどまともに喰らってしまう。
 クリザリッドは内心舌打ちする。あんな弱りきった相手一人に何をやっている、と。彼はすぐに彼女との間合いを詰め、
格闘に持ち込んだ。

 美鈴は今宵最後と思われる自分の不運を改めて呪った。今夜脱走を実行に移したのも、追手の改造兵士たちを何とか
捌ききれると踏んだからだ。それがどうしてこんなことになっているのだろうか。ネスツの内部事情など知らないが、この男と自分は
違う施設にいたのは間違いなかったのに。案外近くにはいて、騒動の知らせを受けて出てきたのだろうか?
 どのみちもはや逃げられない。一か八か倒す以外に活路は無い。
 一撃で、仕留める。
 美鈴は身を沈める。すぐにその頭上をクリザリッド01の後ろ回し蹴りが薙いで行った。たたきつけるような風切り音がその威力を
示す。続き襲い来る蹴りを、今度は後ろに後退して避ける。そして僅かにだが、クリザリッドに隙が生まれた。
 今か?と美鈴は逡巡する。そしてすぐに結論が出る。まだだ、と。一旦空けた距離をあっさりと詰められ、再びクリザリッドの
ラッシュに押される形となる。押されつつも美鈴はつぶさにクリザリッドの動きを目で追う。何とか至近距離で、大きな隙が生まれる
ことを根気良く待った。
 そしてとうとうそのときが訪れた。正拳突きを外したクリザリッド01の脇があいている。肘鉄を作り痛みをこらえて大地を足で強く
蹴る。これで沈め、と念をこめて。

 案の定、美鈴は動いてきた。これまでにも小さな隙を作り誘ってはみせたがそれには乗ってこなかった。もっと大きな機会を
伺っていたのが見え見えだ。よほど冷静さを欠いているのだろう。2ヶ月もあれば、投薬実験で正気を失うものは多い。美鈴の
場合は戦闘能力の抽出よりもその特異なほどの回復力を研究の主軸にしている分余計だった。毒物、劇物、麻薬の投与も
実験内容に入っているのだ。むしろよくもっていると言える。
 美鈴の起死回生の一手をクリザリッドは難なく避け、上体をひねって美鈴の胴に手をやる。そのまま腕を彼女の重心の下に
潜り込ませ、天に突き上げるように片手ですくい上げた。その手は既に触れたものを火傷させる程度の熱を帯びている。
 その時声が聞こえた。美鈴が、吐息に混ぜるように何かを呟いている。
「帰りたい…帰して…」
 同じ事を言った実験体はこれまで何人いただろうか?平素であれば、クリザリッドはそうした言葉を全て聞き流してきた。
「…少し休め」
 それだけ言うと、美鈴を持ち上げる手に蓄えていた炎をクリザリッドは一気に解放する。炎というよりは爆発と形容すべきそれは、
2度3度と爆ぜて夜の静寂を打ち破り、やがて闇へと消えた。

 既に時刻は0時を回っていた。気絶した美鈴を抱きかかえたまま施設のほうへとクリザリッドは歩みを進める。その間、何度も
美鈴の最後の言葉が脳裏をよぎる。帰りたい、と呟く声が。
「諦めの悪い」
 誰に聞かせるでもなく吐き捨て、美鈴を抱きかかえる腕に少しだけ力を籠める。
 程なくしてクリザリッドは後を追ってきていた兵士たちと合流した。



 予定されていた査察を済ませたクリザリッドは、今は研究室の一角で各実験体の研究結果を担当から口頭で確認している。
あらかた終わったところで、クリザリッドはこう言った。
「紅美鈴の様子はどうだ?」
 朝、昼と眠り続け日が沈みきって尚治療用の薬の効果もあってか美鈴は眠っていた。本人は知るわけも無いが、眠っている間も
淡々と研究班による怪我の回復度合いの確認作業が行われる。それらに見切りがつき、治療室から通常の独房へと美鈴は
眠ったまま移動させられた。たった一晩のうちに多くの傷はほぼふさがり、大きかった怪我の痕が皮膚の表面に見えるに留まった。
「もうじき目を覚ます頃合だと思われます。明日からデータ取りをはじめますか?」
 言われてクリザリッドは少し考えた。余りに消耗していては実験の意味が無い。しかし元々の予定では今日がその日だったのだ。
予定を先延ばしにすれば後がつかえる。その悩みを見抜いてか、研究員が提案してきた。
「今から紅美鈴の状態を確認に行きますが、ご一緒されてはいかがでしょう」
 その言葉に内心どきりとしたが、平静を装って頷く。そのまま研究員に先導されつつクリザリッドは美鈴のいる独房へと向かった。

 扉を開き、研究員と二人で美鈴の独房に入る。扉を開けるときに既に見えていたが、狭い部屋の3分の1ほどを占めるベッドの
上に美鈴は横たわっていた。
 昨日はまるで死んだように眠っていた美鈴だったが、今は規則正しい呼吸をして穏やかな眠りの表情をみせている。血色も
よくなったようだ。洗浄と治療を受け、すっかり清潔感を取り戻し静かに横たわる姿は激しく戦闘をする昨日の姿とは別人の
ようだった。体に残る傷跡が無粋ではあったが、その寝姿は十分観賞に値する。
「まだ起きていませんね」
 研究員が彼女の肩を掴んで軽く揺さぶる。しかし、目を覚ます気配は一向に無い。何度も繰り返すが、美鈴は眠ったままだった。
研究員はこれでは埒が明かないと、懐から小型のスタンガンを取り出し威力を最低に調整する。それを見てクリザリッドが制止した。
「お前は次の仕事に向かえ。私は今日の仕事はもう全て終えている。後は私が確認しておこう」
 それでは、と研究員は引き下がった。それを尻目に、クリザリッドは改めて美鈴に向きなおる。
 そういえばこんなに穏やかな彼女の表情を見るのは初めてではないだろうか。そんなことを一瞬考えたがすぐにそれが何だ、
と頭を振る。さっさと体調を確認したら終わりにしよう。そう思って先ほど同様に体を揺さぶり声をかけてみるも、彼女は目を
覚まさなかった。余程疲れているのか、これはやはりデータ取りは少し見送ったほうがいいかもしれない。そう考えるクリザリッド
自身ここ最近の疲労が溜まっていたので彼女が眠るベッドの端に腰掛け、その場で明日以降の予定を考え直す。あらかた
考えがまとまったところで振り返ってみたが、やはり美鈴は目覚めない。
 もう起こすつもりなど無かった。明日の予定を変更しよう。早速タイムテーブルを組みなおさなければ。
 その時、ふと左手に何かが触れた。見るとその手を美鈴が軽く掴んでいた。目覚めたわけではない。ただ単に夢でも見ている
のだろう。…一瞬、口元がほころんで笑ったように見えた。


 夢を、見ていた。紅くて大きなお屋敷。だけどその大きさの割りに住んでる人は少なくて、でもその分一人ひとりかけがえの無い
人たちで…そのお屋敷がある街は、ちょっと変わった人ばかりだけど皆良い人たちばかりで…いつも見る、夢。楽しい夢なのに、
夢だとわかっているのが寂しい。
 でも今日は少し違っていた。指が、手が触れる。大きくて暖かい手に。ほんの少しの間だけ。もっと触れていたかったな。
やっぱり、少し寂しい。


 静かにその手を解きクリザリッドは立ち上がると入り口脇にあるスイッチを押して照明を落とした。落としたといっても、輪郭が
確認できる程度の明かりは残されているが。それからドアを開けて出ようとしたとき、背後で物音がした。
 振り返ると、紅美鈴が目を覚まし体を起こしていた。顔からは先ほどまでの穏やかさは消え、青い双眸は黙ってこちらを
睨みつける。いつぞやのように殴りかかってくるかと思ったが、背をぴたりと部屋の角に寄せ硬く身構えていた。恨み骨髄に
徹すといった雰囲気を醸し出しながら。

「どうしてこんな所に」
 彼女の第一声はそれだった。当然といえば当然だろう。自分は相当恨まれているはずで、彼女にしてみれば一番会いたくない
人間だから。
「仕事に決まっている。しばらくはここにいるからな。俺がいる間くらいはせいぜいおとなしくしていてくれ」
「貴方に命令なんてされたくありません」
 本当に嫌われているな、とクリザリッドは思った。
「命令だと受け取るのはそちらの勝手だが、一応親切心だと言っておこう。痛い思いは御免だろう?その気(け)でもあるのかは
知らないが」
 最後の一言は余計だったかな、と思うが早いかすぐに美鈴が言い返してきた。
「余計なお世話です。大体貴方が言う親切心だなんてまるで信用ならない」
 ぎゅっと美鈴は両手で自分の肩を抱きしめると長い睫を伏せた。
「消えて。あっちへ行って。私は、帰る。帰るの」
 途切れ途切れに美鈴は脈絡のない言葉を呟いた。帰れないのを知って『帰る』とは。あからさまな精神疾患の兆候が見られる。
こんなのは報告にはなかった。今は特別気が立っているというのもありそうだが、美鈴は繰り返し何かを呟いている。明らかに
異常だ。こんな調子ではデータ取りなどできない。
「美鈴」
 何の気なしに名前を呼んだ。その時、思いがけない反応が返ってきた。
「やめてっ!」
 美鈴が叫んだ。俯いたまま、両手で耳を塞いで。暗い部屋の隅で体を震わせたまま、彼女は続けて言った。
「名前を呼ばないで」
 直接の原因が自分にあるのはわかるが、昨日今日でいきなり精神が病むものでもない。まったく報告に上がってこなかったと
いうことは現場の見落としがあった可能性が高い。後日改めて時間を作り実験体の管理体制を確認することをクリザリッドは
決めた。やれやれ、仕事は増えるばかりだ。自分こそカウンセリングでも受けたいぐらいだ。
 先ほどまではさっさと独房を出て行くつもりだったが、様子を見ていこうとクリザリッドは考え直す。
「少し話をしようか、紅」
 無造作にクリザリッドは美鈴に近づく。とはいっても、ほんの1、2歩だけだ。刺激しない様注意したが、美鈴は過敏に反応した。
「やめ…こないで!」
 元々小さくなっていた体をさらに縮こまらせる。いつの間にか息が上がっていたのか、美鈴の肩は大きく上下していた。立てた
膝に顔を埋め、相変わらず手は耳を塞いでいる。これ以上ないほどに明確な拒絶だった。そしてその様子がどういうわけか、
クリザリッドの苛虐心を煽る。どうしても傷つけたくなる。後で後悔するのを知っていても。わかっているのならなぜまだ正常な
判断ができるうちにこの場を去らないだろう、とクリザリッドは自問する。大体にしてこんなところで考えること自体無駄だ。
自分の心理分析や哲学、言葉遊びなど後回しにすべきだ。今はそう…ここから出て行かなければ。
 そう思いながらも、体が動かなかった。美鈴の荒くなった吐息だけが耳に入ってくる。
「消えてって言ったんです。やめて。嫌い、貴方なんて…」
「嫌い、か。傷つくな。貴様さえもう少しおとなしければ、こちらも少しは温情をもって接することができるのだが」
 挑発には挑発で返す。もっとも、決して詭弁というわけではないが。美鈴は相変わらず俯いたまま叫んだ。
「よくも…心を疑うわ。いいえ、心なんてないくせに。貴方は人間じゃない。嫌い。大嫌い!」
 クリザリッドは目の前の少女に同情した。正常な判断力を失った故の発言ではあったが、彼女の言葉は少しずつ自分の神経を
逆なでする。もはや一切の遠慮なくクリザリッドは美鈴に近づく。
 部屋の隅、ベッドの上で震える美鈴のすぐそばまで近づいたからこそ聞こえた。少女が本当に小さく囁いた言葉を。

 助けて…クリザリッドさん…

 それが聞こえた瞬間、クリザリッドは右手で強引に美鈴の左手首を掴んでひねりあげた。たまらずに美鈴が伏せていた顔を
上げたところを逃さず、ベッドに左膝を乗せて身を乗り出すと彼女の細顎を左手で掴み固定する。
 顔を近づけ、クリザリッドは言った。
「一つだけためになることを教えてやろう」

 美鈴はクリザリッド01の言葉に力なく彼を睨んだ。
「クリザリッド02…奴はもうどう足掻いたところで2、3年しか生きてはいられない」
 一瞬、意味がわからなかった。美鈴は目を丸くしてクリザリッド01の顔を見る。
「嘘。そんな、だってまだ…」
 クリザリッド01は軽く唇を歪め、笑った。
「面倒な説明は省くが、クローンというものは寿命が短くなるものだ。02の寿命についてだが、これは奴を担当していた医師の
臨床所見だ。02自身は聞かされてない事だが、自分の正体を知った以上奴も自覚しているだろう。ネスツを離れ延命処置を
受けられなくなった今、もっと短くなっている可能性があるがな」
 それを聞き、美鈴は叫んだ。
「離して!」
 こんなの嘘だ。この男の言葉は信じられない。帰ろう。帰って、クリザリッド本人に確かめよう。
「離して、どうする?」
「帰るに決まっています。いいから離して」
 そう話す美鈴の口を閉じるように、顎を掴んだまま左手の親指でクリザリッド01は彼女の下唇を撫でる。そして冷笑混じりに
こう言ってきた。
「帰る場所など無い。美鈴、ここが君の居場所だ」
 名前を、呼ばないで。そう思った瞬間、美鈴は自分でも意外な行動に出た。力を込めて思い切りよく彼の指に噛み付いたのだ。
これには流石に驚いたのか、噛み付いた瞬間クリザリッド01は反射的にその手を引き眉根を寄せた。その指から流れ始めた血を
見た青灰色の瞳が怒りに染まる。クリザリッド01は再度ベッドの脇に立ち上がり、それと同時に美鈴の腕を掴んだままの右手を
強引に横へ引っ張る。
 美鈴は壁から引き離されてうつぶせの形でベッドに倒れこんだ。そのままのしかかられたのだろうか。背中にずしり、と重みを
感じる。
「お返しだ」
 耳元で声が聞こえたと思った瞬間、焼ける様な痛みが美鈴の左の首筋を襲った。

 暗い部屋の中でも良く見えるほど白い美鈴の首筋に、紅いものが滲んだ。クリザリッドはそれを満足げに見つめると、今度は
少し場所を変え再度少女の柔肌に歯を立てる。鋭く短い悲鳴がまたしても上がると共に、クリザリッドの口内に鉄錆にも似た味が
広がった。もう一度、今度は反対側へ強引な『キス』をする。
 それからクリザリッドは慣れた手つきでまずは美鈴の上着に手をかける。両脇を紐で縛っただけの単純な構造の服だ。左手で
彼女の左脇の紐を解き、引きしまったくびれに手のひらを当て、ゆっくりと愛撫する。
それからまるで何か確かめるような手つきで胴体全体にその指を這わせる。少し痩せたのか、少女の体は以前よりも小さく感じ
られた。
 もう何度も抱いた体だ。どこをどう責めればいいか、大体はわかっている。
 彼女の背中側から前へとまわした右腕を手前に引き寄せてベッドから無理矢理上半身を浮かせ、その隙間に空いた手を入れ
服の内側からその乳房を撫でる。輪郭の部分を弱い力で何度も往復しつつ、右脇の紐も解いてただの布切れ同然となった
上着を剥ぎ取ると、今度は少し力を入れて花のように色づいた頂とその周辺を刺激する。そのまま耳を甘噛みし、じわじわと
耳全体をねぶり上げ、最後に耳孔を舌で責め立てた。クリザリッドの右腕に上半身を押さえ込まれ、逃げ場無い中美鈴は悶える。
「やだっ!嫌…助けて…」
 辛うじて自由な美鈴の手は何度となくシーツを掴んでは引き寄せ、クリザリッドから逃れようともがく。だが圧倒的な腕力の差が
それを許さず、美鈴の行動は徒労に終わる。疲れて動きを鈍らせた美鈴に、クリザリッドは言った。
「どうした?もうあきらめるのか」
 気分が段々とサディズムに染まるのを感じながら美鈴に声をかける。返事はなく、代わりに哀れな嗚咽だけが耳に届いた。
不思議だな、とクリザリッドは思う。先ほど研究員が美鈴にスタンガンを使おうとした瞬間、自分は彼女を無用に傷つけたくは
ないと思いそれを制止した。その時は単にそこまでする必要はないからだと自分を納得させたが、今は…いや、自分は、自分
だけはそれをしても構わない。もっと虐げたいと思う。思いながらも今度は彼女のズボンに手をかける。腰の位置から足の付け根
まで下ろし、少し体勢を整えてから一気に引き抜いた。美鈴が息を呑んだのがわかる。
「今日は随分いい子じゃないか。できれば今後もそのぐらいおとなしければ助かるな」
 抵抗が激しければそれはそれで楽しめるが。その言葉を呑み込んで、うつ伏せのままただシーツを掴み体を硬くする美鈴から
目だけは離さずに、クリザリッドは自分の服を脱ぎ始める。全て脱ぎ終えたところで少女の肩を掴み仰向けの姿勢をとらせる。
久々に見る彼女の肢体は、多少のやつれも怪我の痕も問題にならないほど美しかった。少女の顔を見やると、その表情には
明らかに諦観が見て取れた。
 諦めて抵抗をやめてしまえば早く終わるとでも思っているのだろう。残念ながらその期待には添えられないな、と思いながら
クリザリッドはまずは優しく彼女の体に自身の体を重ねた。

 まず触れられたのは唇だった。先端が触れる程度の柔らかな口付け。彼の唇はそのまま頬を撫で、ゆっくりと首に向かう。
やがてそれは先ほどつけられた噛み傷に触れ、美鈴はびくり、と痛みに体を震わせた。
その反応に気を良くしたのか、クリザリッド01は続けて舌で傷をなぞり始める。やがて痛みは消え、代わりに快楽の波が
押し寄せてくる。
 美鈴は目を閉じて、早くこの夢から醒めなければと思っていた。これは、悪い夢なのだ。きっと今は何かの実験の最中で、
自分は今薬による幻覚を見ているに違いない。そうでなければ、憎い相手に愛撫され快楽を感じているなど許せる話では
ないのだから。
(夢…これは、夢…)
 何度も心の中で呟いてみるも、ぼんやりとした頭と違い肉体は鋭いほどの現実感を訴えてくる。濡れた首筋を這う暖かな
舌が、太腿をさすりどことなくくすぐったさを生む男の手が、時々「美鈴」と囁く声が…これは現実だ、と責め立てるのだ。
せめて声だけはあげてやるものかと思っていたのに、気づけばいつの間にか美鈴はその口から何度となく喘ぎ声を漏らしていた。
 自分でもわかるほど声は段々と大きくなる。クリザリッドは性感帯からほんのすこしずれたところを何度も愛撫するので、美鈴
としてはどうにもじれったい。そうするうちに下腹部に少しずつ熱が宿ってくる。
 すると無造作にクリザリッドが互いの下半身を密着させてきた。互いの肌が触れ、美鈴はその時初めて早くも自身が濡れていた
ことを知る。肌よりは冷たく感じられる愛液の感触と熱くなった互いの体、相反する二つの感覚が美鈴の秘所を刺激する。
 愛撫をやめ、クリザリッドが美鈴の体をきつく抱きしめてきた。そしてどこか溜息混じりに彼はいった。
「本当に久しぶりだ…可愛いな」
 特別何をされたわけでもないのに、不思議とその言葉に美鈴は過剰に反応した。具体的に言えば背筋が弓なりに反って、
瞳が潤み、下半身は尚も物欲しげに濡れ始める。抑えきれない熱い吐息をもらす唇には甘い痺れが生まれていた。

 自分自身の発言にクリザリッドは驚いていた。一体自分は何を言ったのだろう?大体にして、何故こうも自分はこの女に執着
するのかがわからない。ただ性欲を処理するだけなら他に方法はいくらでもあるし、そもそも任務以外のことなどかつての自分
にはさほど関心が無かった。では、何故。
 彼女が自分のクローンを愛しているから?それとも自分のクローンが彼女を愛しているから?
 考えて、クリザリッドはこう結論付けた。自分には何もないからだ、と。今の立場も、記憶も、全てネスツから与えられたものだ。
それに不満があるわけではないが、かつて肉親と信じていた者さえ蓋を開けてみればもっとも身近な他人でしかなかった。
その事実と自分の正体を知ったあの時の喪失感は、およそ他人に計り知れるものではない。霞む意識の中奈落の底へ
堕ちていく自分にただあったのは、孤独感だけだった。

 今の自分が感じるこの気持ちは、たとえるなら自分専用の野球グローブを手に入れた少年の気分だろう。それも、ただ親が
買い与えたものとはわけが違う。何ヶ月もかけて小遣いを貯め、ようやく目的のものを手に入れた達成感というべきだ。捏造された
記憶とはいえ、確かな喜びの記憶はこの胸にしっかりと宿っている。
 つまりこの女は自分にとって新しい玩具なのだ。ようやく手にした、自分だけの存在。それならばこの執着心も納得いく。どんな
ものでも一度手にすれば、手放したくないのが普通だろう。
 独占欲を自覚したクリザリッドは、改めて少女に口付ける。深く舌を絡めると、これまでとは打って変わって弱々しいながら美鈴
のほうからも少しだけ舌を絡めてきた。そう、使っていくうちに道具はやがて馴染むのだ。
 クリザリッドは唇を重ね彼女の両足の間に自身の下半身を差し入れたまま、体を上下する。自分の茂みと美鈴の濡れすぼった
箇所が摩擦をおこし、重ねた唇の端から彼女の切ない声が聞こえた。
腰に回した手を下へ、一旦太腿とその内側を軽く撫でながら少しずつクリザリッドは指を少女のもっとも敏感な部分へと滑らせる。
いきなり中心には触れず、まずはぎりぎり触れるかどうかというところまで。それなのに早くも指全体に粘液が絡み付いてくる。
いつまでも周辺ばかりを責めるのがもどかしいのか、美鈴は腰を震わせていた。わざとそっけなく、クリザリッドは彼女から唇を
離してみる。
「あ…」
 名残惜しいのか、美鈴は哀れみさえ感じるほどか細い声を上げた。閉じていたはずの瞳はうっすらと開けられ、どこか焦点が
おぼろげながらも悲しそうにこちらを見つめていた。
「俺のことは大嫌いじゃなかったのか?」
 そう言うと、美鈴の表情はますます悲しげに歪んだ。それからクリザリッドは、今度は指を彼女の陰唇に沿って激しく上下に
擦り合わせる。そこはもはや火のように熱かった。粘液によって濡れきっているため、かなり強引に愛撫しても何の抵抗、摩擦も
無い。むしろ弄ぶほどにそこは潤いを増した。
「嫌い…大嫌い!」
 説得力に欠ける言葉だった。
「俺は君のことが好きなんだがな」
 美鈴は目を見開き、信じられないといった表情でクリザリッドを見つめてきた。クリザリッドはわざと悪戯かつ冷酷な表情を作ると、
こう続けた。
「美鈴。君は俺の大切な、玩具だ」
 その言葉と共に、クリザリッドは少女の陰核を責め立てる。それから中指を膣へと差込み軽く勢いをつけて出し入れをしてみる。
嫌、と叫ぶ声が聞こえたような気がするが、もうそんな事はどうでも良かった。

 だが、先ほどまであんなに大人しかった玩具が、再び抵抗を開始してきた。足をばたつかせ、その手でこちらの肩を掴み
引き離そうともがき始める。仕舞いには爪を立てて猫のように引っかいてくる始末。引っ掻かれた肩と鎖骨の辺りは赤く変色して
いた。恐慌状態に陥ったのか、美鈴は泣き叫びながら身を捩り全力で逃げようと足掻く。
 こちらを突き放そうと再度繰り出してきた右手の手首をクリザリッドは左手で掴むと無遠慮にそのままベッドにたたきつけるように
押さえ込んだ。同様にもう片方の手も、少女の華奢な手首の骨がみしみしと悲鳴を上げて折れかねないほどに強く握り締める。
「助けて、クリザリッドさ…」
「美鈴!」
 大粒の雫を蒼い瞳から頬に幾筋も伝わせ、居もしない人間に縋り少女は叫んだ。その言葉を遮って、クリザリッドは怒りも顕わに
恫喝する。美鈴は雷に打たれたかのように、呼吸さえ憚られるといった感じで指一本動かさず大人しくなる。
 クリザリッドは忌々しげに美鈴の瞳を睨みつける。一方の美鈴といえば、ただ怯えた双眸でこちらの顔色を伺っていた。睨まれ、
その相手から目も離せずにいるいたいけな少女。瞳だけではない。その肉体もまた、恐怖に縮み上がっている。
「まだ躾が足りなかったか?」
 わざと低い声色でそう吐き捨てると、彼は折角血が止まりかけていた少女の首筋にある傷を再びきつく噛み締めた。
 悲痛な叫び声が、暗い部屋に響いた。

 躾が功を奏し幾分か抵抗は弱まったが、まだ少女は四肢の力を緩めない。一旦彼女の左手を掴む右手を離し、今度は彼女
の足を掴むとそれを強引に開く。そして現れた彼女の膣口に自身を押し当てると、クリザリッドは一気にそれを奥まで差し込んだ。
美鈴は快楽とも痛みによるものともつかない短い悲鳴を上げる。クリザリッドはもう一度彼女の手首を掴み自由を奪うと、激しく腰を
動かし始めた。助けを求める声など無視する。犬猫の躾に必要なのは毅然とした態度だ。物覚えの悪い相手には、心を鬼にして
接しなければ。
 突き上げるほどに、まるで失禁したかのごとく美鈴の膣からは大量の蜜が溢れ出る。それは面白いとさえ感じられた。段々と
美鈴の上げる悲鳴が艶を増し、それに合わせてクリザリッドは微妙に角度や動くタイミングをずらしながら彼女を犯した。特に
引き抜く際、亀頭が膣に引っかかるのが余程心地よいのか美鈴はその度に恍惚とした表情を見せる。
 何度も繰り返すうちに徐々に美鈴が全身を強張らせ、そして遂に背筋を大きく仰け反らせた。目をつぶって声も上げず忘れた
かのように呼吸さえ止めて。ほんの僅かな合間だけそうすると程なくして力なく背中から倒れこむ。それから一瞬遅れて膣が収縮
したのをクリザリッドは感じた。美鈴の体は激しく汗ばみ始め、頬は汗と涙に濡れ真っ赤に染まっていた。
「一人で早くも休むのか?俺はまだだ」
 腰を動かしながらもそう言うと、彼女は小さな声で哀願してきた。
「待って…やめ…」
 少女の太腿が痙攣し始め、クリザリッドは彼女の体力が早くも限界に近いことを知る。残念だが、一旦ここは済ませてしまうのが
得策だった。一層激しく腰を打ち快楽を貪欲に求め、程なくして彼女の中に精を放つ。少女の恥辱に濡れた美貌を快く見下ろし
ながら。

 そして二人はつながったまま、互いの肌を寄せて重なり合い横になる。クリザリッドは十分すぎるほど余裕があったが、美鈴の
ほうはといえば激しい疲労から全身の筋肉を震わせていた。彼女の荒々しい息が整うのを待ちながら、クリザリッドは額や頬、
鎖骨にキスをする。そのうちにまた陰茎が張り詰めるのを感じ、それが萎えない程度にのみクリザリッドは動いた。美鈴はそれに
応えるかのように、小さく鳴いた。
 やがて観念したのか、美鈴は完全に全身を脱力させた。クリザリッドは硬く握り締めた彼女の手首をゆっくりと解放すると、そこに
くっきりと残ったどす黒い痣を見て少し虐め過ぎたかと考えた。
 そして未だ鉄錆の味が残る唇で美鈴の首に再度触れ、上半身を起こして少女の顔を見つめた。こちらに対して顔を横にする
物憂げな表情がいちいちクリザリッドの心を刺激する。まったくもって可愛げが無く…やはり、可愛かった。その感情を表には
出さず、黙ってクリザリッドは彼女の横顔を、汗ばむ扇情的な肢体を陶然と見つめる。

――次はどう哭かせてやろうか。

 そう思った瞬間、こちらの思いが伝わったかのように美鈴の体が緊張した。淡く色づいた唇が半開きのまま何か言いたげに
小さく動く。空色の虹彩を持つ瞳から新たな涙が流れ始める。もはや次に彼女がとる行動など、予想がついていた。

――そうだ、それでいい。そうでなくては愉しくはない。

 許しを請え。言いかけて、それを抑え込む。わざわざ口にせずとも…ほら。
 美鈴はゆっくりとではあるが、背けた顔を自らこちらに向け始めた。そして恐る恐る目蓋を少しずつ持ち上げ、探るような
視線でこちらを見つめてくる。目が、合った。そのたった一瞬で美鈴の瞳が恐怖に染まるのが見えた。当たり前だ。許してやる気
など毛頭ない。目が合えばそれで十分こちらの意図は通じる。何度も同じ夜を過ごした仲なのだから。

 クリザリッドは一旦完全に上体を起こし、左腕で美鈴の右膝を持ち上げてそれを舐る。少しずつ唇を滑らせて、痛々しい傷が
残る足の裏に数回ほど口付ける。素直に可哀想だと思えた。自分がつけた傷ではないのだから。そのまま持ち上げた彼女の
脚を位置を変えて下ろし、姿勢が仰向けから横向きになるようにしてやる。そうすることで開きっぱなしだった脚が楽になったのか、
僅かにではあるが美鈴の息がより整い始めた。
 だが、これ以上の休息など与え無い。両手で美鈴の腰、特に骨盤の辺りを掴むと、それを強引に持ち上げ腰を突き出した
うつ伏せの姿勢をとらせる。それから最初に彼女の姿勢を変えている最中に抜けた自身の肉棒を再度捻じ込んだ。

 美鈴は自分自身に侵入してくるクリザリッド01に対して、もはや一切抗うことなく快楽も苦痛も全て受け入れる事を覚悟した。
何度と無く痴態を晒し、無闇に抵抗すれば1を10にも100にもして返される。どうしてこの男がこんなにも自分を傷つけるのか、
一体何がそこまで彼の神経に障るのかなんてわからないし、もうわからなくてもいい。
 熱くなる身体と相反するように美鈴の心は冷え込み、少しずつ光を失う。この男はいわば天災のようなものだ。地震や台風を
完全に避けることなどできない。それらに遭遇したときできることは、せいぜい無事に過ぎ去ることを祈るぐらいのことだろう。
この男は異常に自分に執着している。単純に身体だけでなく、こちらの心を蹂躙することに悦びを感じているようだ。
ならば、何もかも委ねてしまえば楽になれるだろう…下手な抵抗さえやめれば、少なくとも痛い思いだけはしないで済むのだ。
 そこまで考えて、はたと美鈴は思い出す。目蓋に焼きついた愛しい人の面影を。一緒に過ごした期間は決して長くは無い
けれど、確かに自分は彼を慕っている。
――やっぱり、全てを受け入れるなんてできない。
 クリザリッド01が、美鈴の肉体を乱暴に突いてくる。腰はとうに砕け、彼が支えなければたちまちに崩れ落ちてしまう。どうにか
顔の前に両腕を置き上半身を支え胸の圧迫を軽減するも、呼吸の自由さえ奪われていく。
 酸欠のせいで、既に鈍っていた思考がますますおぼろげとなる。両膝は主人の意思に反し、抑えるのが不可能なほどに痙攣し
始める。
 そのうちに、前後に出し入れされる男の陰茎の動きが今度は膣内を掻き回すように変化した。その変化に耐え切れず、息の
苦しさも忘れて美鈴は叫んだ。
「あ…ああぁっ!?」
 視界が白黒するほどの快楽の波に抗えず、早くも美鈴は果てる。それでも尚、男の責めはやむことを知らない。
 狂いそうだった。あるいはもう…そう、既に狂っている。自分も、相手も。
「か、え…」
 涎が顎を伝いながらも、美鈴は言葉を搾り出す。
「…帰し、て」
 言った瞬間、腰を支えるクリザリッド01の両手が痛いほどに爪を立ててきた。まだ言うのか、と言外にそう恫喝してくる。彼の責め
は一層厳しさを増した。それでも美鈴は必死に言葉を続ける。自分でも意味がないのを自覚しながら。
「好…き、です…」
 帰ろう。帰ったらまずはこの思いを伝えよう。迷惑かも、知れないけれど。
「クリザリッド…さん…大好き」
 言い切った。胸の奥が達成感で満ちる。気がついたときには、美鈴は涙を溢れさせつつも声を上げて笑っていた。

 狂気の入り混じった乾いた笑いを耳に受けながら、クリザリッドは嫌な汗が背筋に流れるのを感じていた。さっきようやくこの手に
掴みかけた少女の心が、両手の指をすり抜けて零れ落ちていく錯覚が容赦なく自分を嘲笑うかのようだった。
 次第に笑い声はやみ、再度それは切なげな喘ぎ声に変化するがもう素直に悦ぶことはできなかった。黙っていると不安と焦り
ばかりがこの身を苛み、クリザリッドはそれを払拭するよう幾度も抽送を繰り返す。
「う…う、あ…」
 美鈴の喘ぎ声が段々小さくなる。このような時は、むしろ絶頂が近いときだった。クリザリッドは少しだけ体勢を変え、自分の顔を
美鈴うなじへと近づけてそれを舐める。それだけで美鈴は肌を粟立たせ、快楽に悶えた。
 段々と美鈴の膣内が震え出す。クリザリッドは左腕だけを後ろから彼女の胸のすぐ下に回し、右腕全体で彼女の腰を支えつつ、
右手首から上を使ってその茂みをまさぐる。指が少女の陰核に触れたのを感じると、そのまま摘み弄ぶ。
 もはや声も出せずに喘ぐ少女の肉体をクリザリッドは夢中で貪る。同様に、彼女の膣内もまた彼自身を吸い尽くすように絡んで
くる。少女の肉体が切ないほどに陰茎を何度も何度も締め上げてきた。
「くっ…美、鈴…」
 思わず名前を呼んだ。その瞬間、少女の内部が一気に熱くなるのを感じ、それに堪えられずクリザリッドは果てる。そして美鈴も
彼とともに絶頂を迎え、彼が放った精子を一滴も余さず奥へと絞り上げた。



 美鈴は何度目かの快楽の解放と共に、ついに何かの糸が切れたようにその場にくず折れた。既に意識は無い。その彼女を
引き寄せ自らの膝の上に座らせると、クリザリッドは包み込むように優しく抱擁する。彼は執拗に責めていたときとは打って
変わった穏やかな眼差しで腕の中で眠る美鈴を見つめ、その額に静かに唇を当てた。
 だが、徐々にその表情が険しさを増していく。
(クリザリッド…02)
 クリザリッドの瞳の奥に、怒気が篭る。
(必ずこの手で)
 胸中にはこれまで感じたことがないほどの憎悪が渦巻き心臓が早鐘を打つ。頭痛を覚えるほど頭には血が上り、クリザリッド02に
対する殺意が、今はまるで嵐のように心を掻き乱した。
 上層部にはまだ02の再利用を検討している節があるが、それが何だというのだろう。美鈴の心がこちらに傾き掛ける度、幾度と
無く邪魔をした。この少女は足の爪先から髪の毛の一本に至るまで自分の所有物であり、余人が立ち入る隙などあっては
ならない。理由はそれだけで十分だ。上層部への申し開きなどいくらでも立てられる。
 クリザリッドは美鈴の頬を手の甲で撫でながら考える。できれば、いや、必ずだ。必ず、この少女の目の前で…

――殺す

 肉を裂き、骨を砕き、臓腑をぶちまける。それではまだ足りない。

ashes to ashes, dust to dust

 この手の炎で、灰の一片たりとも残さず灼き尽くしてやる。
 所詮は自分のスペアでしかない。必要ならまた造ればいい。数多ある塵芥の一つなど、灰塵に帰せばいいのだ。そう考える
クリザリッドの青灰色の瞳にはもはやいつもの冷静さは無く、あるのは狂おしいほどの怒りと残虐性だけだった。

 その時、腕の中の少女が微かに動いた。それを見やるクリザリッドの目に穏やかさが戻る。もしもクリザリッド02が美鈴の眼前から
消え失せたなら、彼女はどう思うだろうか?ようやく、自分のものになるだろうか…?

 答えを告げるものは何処にも無く、クリザリッドはただ黙って今は腕の中にいる美鈴の額に頬を寄せ、決して手放すものかと
強く抱きしめた。


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三度の飯よりエロが好きなうp主です。

まずは485様(交互にやる中間中国)。
美鈴の逃亡シーンというネタ被りについて、この場を借りてお詫び申し上げます。

それといきなりですが、クリザリッド01と02の寿命についてです。超捏造なので、元ネタ様、及び公式からはどうか完全に分離した
ものとご理解ください。
ウィキペディアをはじめとしネットで得た知識によるとクローンは基本的に寿命が短く、それはクローンを生成する際に使用する
オリジナルの体細胞のテロメアが短くなっているためとの事でした。
これ自体はまだまだ確定ではないようなので将来的にこの説が否定される可能性があると思われますが、とりあえず当SSでは
この説を採用します。
クリザリッドは01、02共に「生まれたときから大体29歳(01は違うかもしれませんが)」です。ですがいきなり成長してから生まれてくる
人間なんているわけありません。よく(私が)目にする説に「強制的に成長させられた」というのがあります。強引ですが
「成長=細胞分裂=テロメアの消耗」とします。
29歳の姿で生まれてきたということは、既にその時点で29年分の寿命を消費しているのだと考えた場合、少なくとも以下のような
ことがいえます。

・01が消費したテロメア=29年分
・02が消費したテロメア=58年分(29×2)

さらに01は元々K'のクローンであることを計算に加えます。いつ、どのタイミングで作られたのかはわからないので適当
(必殺・当てずっ砲)にですがK'の年齢は低く見積もっても
16歳とされているので、大体K'が15歳の時に01が作られたと(本当に強引に)考えてみると…

・01が消費したテロメア=44年分(29+15)
・02が消費したテロメア=73年分(29×2+15)

と、なりました。さらにクリザリッドがアイルランド系ということで、予想される寿命をこの国の男性平均寿命から参考にしたところ
78歳となりました。
以下が「私の考えた二人のクリザリッドの残り寿命」です。

・01の寿命=34年(78-44)
・02の寿命=5年(78-73)

ネスツは健康管理がかなり厳しそうではありますが、強化手術や薬物の使用に日常的な戦闘も考慮し、SS内ではさらに
短く設定しています。
ほんとーにおおざっぱなうえ研究者の皆様からは突っ込みどころ満載でしょうが、とりあえずこんな感じでしょうか。
さあボウヤ達?いつでも(突っ込みを)受け入れる準備はできてるわ。
とりあえずアナタたちの(考え)を、私に(聞かせて)頂戴…?(できる範囲で…構わないから)

あとさも当たり前のようにクリザの目の色を青灰色(あおはいいろ・せいかいしょく)と言っちゃってますけど、
公式絵を穴が開くほど眺めても正直何色かわかりませんでした。K'はしょっちゅうサングラスしてるし。

それから言い訳。美鈴の見せ場がまるでありませんが、全部実験とか不意打ちとかのせいです。美鈴は東方素手ゴロ最強
なんだからね!

もひとつそれから。このSSは続きます。次がラストと思われますが、マルチバッドエンドになるかも知れませんし、
ただのバッドエンドかも知れません。お暇な方はどうぞお付き合いください。

編集にはIDが必要です