日本の周辺国が装備する兵器のデータベース


▼HMMWV搭載の捷羚(陸軍型)。発射機左側にFLIRを、発射機頂部に捜索用レーダーを装備。乗員は車両から離れて操作している。

▼HMMWV搭載の指揮統制装置。


▼4×4トラックに搭載された捷羚(空軍型)。空軍基地の防空に使用される。

▼空軍型の予備弾薬搭載車両。TC-1 12発を搭載している。


CM31装輪装甲車に搭載された捷羚(試作のみ)


▼指揮統制を行うCS/MPQ-78低高度射撃統制システム(牽引型)


天剣1型地対空ミサイル性能緒元
全長3.048m
直径12.7cm
重量86.2
最大速度M2.5
照準装置光学照準/全方位赤外線誘導
最大射程9,000m
最大射高3,000m
弾頭9.072 HE弾

対空ミサイル・システム「捷羚」(アンテロープSAMシステム)は、台湾国産の「天剣1型」赤外線誘導空対空ミサイル(TC-1)を原型に開発された近距離防空用の地対空ミサイル・システムである。開発は中山科学研究院(CSIST:Chung-Shan Institute of Science and Technology)によって1995年7月から開始され、現在実戦配備が開始されている。システムの名称である「捷羚」とはレイヨウ(羚羊/アンテロープ)のことであるが、兵器としては優雅なこの名は、開発主任が女性であることに由来するもので台湾の兵器の中でも珍しい名称の付け方である。

台湾では近距離地対空ミサイルとして既にアメリカからM48チャパレルと「アベンジャー」近距離地対空ミサイルを調達・運用していた。しかしチャパレルは1960年代に開発されたミサイル・システムで旧式化が進んでおり、アベンジャーについても射程の短さ、弾頭が小さく標的を確実に撃破出来ない恐れがあること、調達価格の高さという不満があった。特に中国軍が開発中の各種巡航ミサイルに対して、アベンジャーでは能力不足であるとの認識がなされるようになった。これを受けて台湾陸軍ではより長射程、高威力な近距離地対空システムを独自開発することを決定した。防空システムの自力開発は、兵器供給を外国に依存するリスクを回避するためにも必要とされた。

「捷羚」対空システムは天剣1型対空ミサイル、4連装ミサイル発射機、ミサイル・システムの指揮統制車両、通信車両から構成される。これらは全てM998 HMMWV多用途車に搭載されており、高い機動性を有している。拠点防空に当たる空軍型では、牽引式のCS/MPQ-78低高度射撃統制システムが指揮統制を担当する。

「捷羚」対空システムの開発に当たっては、1991年から台湾空軍で運用されていた天剣1型赤外線誘導空対空ミサイルを流用することとされたが、これは開発コストの抑制と開発期間の短縮の意図があった。地対空ミサイル化においては後部フィンの形状が変更され、空対空型では2つだったジャイロが1つにされる等の改修が施された。弾頭はアクティブ・レーザー近接信管付きの高性能炸薬弾片化弾頭で、直撃もしくはレーザー近接時限信管で炸裂する。最大射程は9000m、最大射高は3,000m。ミサイルの誘導はIRセンサーによるため、発射後の管制は必要なく撃ちっ放しが可能である。

ミサイル発射機には4発の天剣1型対空ミサイルが搭載される。最大俯角は90度で直上の目標に対する垂直発射も可能。発射機左側の上下ミサイルの間には前方監視赤外線(FLIR:Forward Looking Infra-Red)システムが、発射機頂部にはレーダープラットフォームが装備されている。これらのセンサーにより、夜間や悪天候時でも目標の探知照準が可能な全天候性能を有することに成功している。発射機にはこのほか、射撃統制装置や汎地球測位システム(GPS:Global Positioning System)も搭載されている。システムに必要な電力は車両のエンジンとは別の補助発電機(APU:Auxiliary Power Unit)により供給される。発射機はモジュール化されており、陸軍では機動性の高いM998 HMMWV多用途車に、要地防空用で野外機動性を必要としない空軍では4×4トラックに搭載している。現在開発中のCM32装輪装甲車「雲豹」への搭載も検討されている。

「捷羚」対空システムの頭脳となるのが、中山科学研究院が「天勇専案」のプロジェクト名で開発したMPQ-78低高度射撃統制システムである。MPQ-78システムは捜索・追跡レーダー、それに連動するレーザー・赤外線・光学用測距儀と敵味方識別装置(IFF:Identification Friend or Foe)を備えた光学電子追跡機から構成され、4連装ミサイル発射機とエリコンGDF002 35mm連装機関砲やT92 40mm機関砲等の牽引対空機関砲システムの指揮統制を行う。MPQ-78はT92 40mm機関砲と「捷羚」対空ミサイル発射機9両を同時に統制する能力を有しており、20km範囲の移動目標を探知し20目標の追尾が可能で、4.5秒以内に目標への攻撃を行うことができる。

「捷羚」対空システムはMPQ-78によるレーダー統制射撃のほかに、各ミサイル発射機が独立して装備しているレーダーやFLIRを使用して照準・射撃を行うことも可能。各発射機に必要な要員は、射手と監視センサー操作手の2名。目標探知後の諸源計算は発射機に搭載された射撃統制用電算機によって自動的に行われ、射手の負担は最小限に抑えられている。また行進間射撃も可能とされる。

「捷羚」対空システムは低コストで簡便な防空システムであり、機動力の高いM998 HMMWV多用途車に搭載されることにより迅速な陣地展開と発射後の退避が可能となっている。台湾陸軍では「捷羚」対空システムは既存の「アベンジャー」近距離地対空ミサイルに比べて、射程、命中率、撃破率、取得性、全天候性のいずれの点において勝る事に成功したと評価している。また国産のシステムになったことで部品調達の利便性も向上したとの事。「捷羚」対空システムは台湾陸軍だけでなく、台湾空軍においても配備が行われる事が決定された。また開発元の中山科学研究院では、「捷羚」対空システムの更なる改良を計画しており、天剣2型アクティブ・レーダー誘導空対空ミサイルを「捷羚」対空システムに搭載することも検討している(「天剣2型」中距離地対空ミサイル(TC-2))。

【参考資料】
華夏経緯網 「透視台軍捷羚防空系統」
Military Matchups PRCvs.ROC
FAS
軍事・兵器大事典

「天剣1型」赤外線誘導空対空ミサイル(TC-1)
台湾陸軍

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